2021年度の北総線動静
2021年度(2021年4月~2022年3月)の北総線においては,沿線地域との間における長年の懸案事項であった運賃水準の値下げが発表されたほか,待合室の新設や旅客トイレの改修,ダイヤ改正での区間列車の増発などによる利便性の向上,デジタル列車無線の運用開始やC-ATSの区間拡大など安全面での強化が図られ,コロナ禍が続くなかでも骨太の施策展開が続けられた。本稿は当年度における北総線の主な動静を概要として紹介するものである。
全社の動静
安全推進
青砥駅列車脱線事故
当年度において北総鉄道に起因する事故及びインシデントは発生していないが,2020年6月に京成線青砥駅で発生した北総所属車両の列車脱線事故については,当年度も継続して運輸安全委員会による調査が行われ,3月24日付で鉄道事故調査報告書が公表された。
運輸安全委員会は事故当日から本件事故に関する調査を実施していたが,5月27日付で本件事故の調査について「事実情報に関する情報の入手、原因の分析及び再発防止策の検討のために更に一定の時間を要する状況」であり,「本事故が発生した日から一年以内に調査を終えることが困難であると見込まれる状況」から,調査の経過報告を公表した。その後,2月24日に鉄道事故調査報告書の議決がなされ,3月24日付で公表された。
なお,北総鉄道は7月30日付で公表した「安全報告書2021」において,「京成電鉄青砥駅構内での当社所属車両の列車脱線事故について」として本件事故の発生概況を掲載し,当面の対策として検査時の台車枠表面の清掃,打音及び目視による点検の強化,2名体制による検査とチェックシートの作成(作業手順書の具体化)等を行う旨を掲載した。また,鉄道事故調査報告書が公表された3月24日付でプレスリリースを行い,事故について陳謝するとともに,「本報告書に記載の内容について克明に理解を深め、鉄道事業者の使命である安全輸送の確保に向けて、必要な作業すべてにおいて万全を期すことを再度徹底」するとした。
原因等については当該事故調査報告書を参照,当該車両の処遇については本稿内「7800形リース車両の変更」を参照されたい。
小室・千葉ニュータウン中央間災害支障
小室・千葉ニュータウン中央間において鉄道敷地外の法面が崩壊し線路を支障,列車と衝撃する事象が8月15日早朝に発生した。北総線は新鎌ヶ谷・印旛日本医大間の千葉ニュータウン開発地域内において国道464号に挟まれた切取区間を走行しているが,とりわけ谷田駅予定地付近から終点方については国道464号の高速部供用によって法面が線路に近接している。近接区間の法面はコンクリートで防護されているが,本件事象の発生した区間は高速部の終端に位置し,一般部に合流するランプウェイの法面は防護されていなかった。本件事象は,大雨によって防護されていない海側の近接法面が崩壊したことによるもので,崩壊に巻き込まれた路肩のU字溝等が上り線の軌道内に流入し,これに上り初電の第500Kが衝撃した。
衝撃した当該の第500Kは正面スカートに衝撃痕が認められたものの運転を継続,続く第520Nから運転を見合わせた。なお,第520Nは支障区間まで走行し,その後千葉ニュータウン中央まで退行したことが当日の列車運行状況から判明している。以降は新鎌ヶ谷・印旛日本医大間で運転を見合わせたが,10時30分頃に該区間45km/hの臨時信号機を設けて運転を再開し,翌日初電以降は通常速度での運転となった。
本件事象は鉄道敷地外で発生した部外要因であり,該区間の法面は当年度末時点でもブルーシートが被せられたまま本復旧には至っていない。