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2024年度の北総線動静
2024年度(2024年4月~2025年3月)の北総線においては,沿線自治体等と連携したコラボレーション企画の実施や「ほくそう春まつり」等のイベント開催を通じた地域活性化への取組みに加え,区間列車の増発を盛り込んだダイヤ改正による利便性の向上,自動列車停止装置(ATS)等の設備更新による安全面の強化が図られるなど,安全安定輸送の実現と需要喚起に資する施策が展開された。本稿は当年度における北総線の主な動静を概要として紹介するものである。
全社の動静
経営企画・広報
沿線活性化トレインの運行
北総線沿線自治体と北総鉄道から構成される北総線沿線活性化協議会(活性協)における沿線活性化への取組みとして,昨年度に引続き広告貸切列車「北総線沿線活性化トレイン」が当年度も7月31日から1月末までの約半年にわたり運行された。
北総線沿線活性化トレインは北総線沿線の魅力発信や知名度向上といった沿線活性化を目的として2022年度より運行されている広告貸切列車で,3回目となる当年度は9201編成を使用車両として運行された。当年度は車体外部への広告掲出が復活したほか,車両正面には円形のヘッドマークが掲出され,客室内には各自治体や活性協,北総鉄道の広告が掲出された。車内外の広告は当年度より市川市が加わったため割当が見直され,各自治体の共用車両が1両,市川市が1両,鎌ケ谷市が2両,白井市および印西市が各2両,千葉県は各車両北寄の車端部,活性協および北総鉄道は側窓に割当てられた。
運行開始に際しては,運行初日となった7月31日に印西牧の原駅で出発式が挙行された。活性協を構成する千葉県や沿線各市の長と北総鉄道の室谷会長,持永社長が出席し,沿線活性化トレインの披露と初列車となる印西牧の原発新鎌ヶ谷行の臨時列車の見送りが行われた。また,式典では印西市のマスコットキャラクター「いんザイ君」が7000形車両に乗っている姿の「電車いんザイ君」ぬいぐるみが千葉ニュータウン中央駅開業40周年記念として藤代印西市長から持永社長に贈られた。
当年度に贈られた7000形版「電車いんザイ君」ぬいぐるみは12月下旬より千葉ニュータウン中央駅に展示され,2022年度の沿線活性化トレイン運行開始に際して贈られた7500形版のぬいぐるみは印西牧の原駅に移設された。また,7000形版「電車いんザイ君」ぬいぐるみについては,印西市によって高さ15cm程度のミニサイズが2022年度と同様に制作され,10月14日の鉄道の日にあわせて千葉ニュータウン中央駅前で発売された。
白井市との地域活性化の取組み
沿線自治体のひとつである白井市と北総鉄道は2021年3月に「白井駅・西白井駅周辺地域の活性化に関する協定」を締結していたところであるが,協定に基づく取組みとして株式会社Cygamesの展開するクロスメディアコンテンツ『ウマ娘 プリティーダービー』(以下『ウマ娘』)とのコラボレーション企画が両者共同で10月17日から実施され,当該作品のファンを筆頭に大きく注目を集めた。
本件企画は,2021年3月に白井市と北総鉄道との間に締結された連携協定「白井駅・西白井駅周辺地域の活性化に関する協定」に基づく取組みで,日本中央競馬会の教育訓練施設である競馬学校を擁するなど馬との深い関係を有する白井市における「馬の繋がりを活かした地域活性化の取り組み」として,株式会社Cygamesの協力により実現したものである。
北総鉄道においては,『ウマ娘』に登場するキャラクターと9100形車両をコラボレーションさせたキービジュアルが描き下ろされ,このイラストを使用した記念乗車券の発売や,先の協定に基づいて「梨も騎手も育つ街」の副駅名が設定されている西白井駅への駅装飾の実施など様々な企画が展開された。西白井駅への駅装飾に際しては,初日となった10月17日に同駅でお披露目式典が実施され,笠井白井市長,山下白井市副市長,室谷北総鉄道会長,持永北総鉄道社長のほか,来賓として株式会社Cygamesの八木ライセンス事業本部長が出席し,白井市のマスコットキャラクター「なし坊」も駆けつけて企画の開始を盛大に祝った。
さらに,『ウマ娘』に登場するキャラクター「サクラローレル」役の声優・真野美月氏を起用した特別放送が,12月6日から西白井駅および同駅到着時の北総線列車で放送された。当該放送は西白井駅でのコラボレーション企画の実施を紹介するもので,それぞれ9時から22時まで放送されていた。
沿線地域と連携した魅力向上の取組み
北総鉄道においては2022年度に定められた成長戦略ビジョン「Next Hokuso」に基づき,個別戦略として掲げる「沿線事業基盤の拡充」において地域との連携が進められてきたところであるが,当年度においては「住んでみたい・住み続けたいまち千葉ニュータウンの実現」を目的として,独立行政法人都市再生機構,株式会社千葉ニュータウンセンターとの間で三者による連携が開始された。
本件連携は,千葉ニュータウン地域を筆頭に全国で広く住宅供給を手掛ける独立行政法人都市再生機構と,千葉ニュータウン地域において商業施設等の管理を行う株式会社千葉ニュータウンセンター,および北総鉄道の3者が連携するもので,1月23日付プレスリリースによれば「住宅・鉄道・商業が互いの強みを活かしつつ一体となって地域関係者と連携し、千葉ニュータウンの魅力向上(リブランディング)や積極的な定住促進の推進」を図るとされている。
なお,連携の一環として後述のイベント「千葉ニュータウンわくわく発見フェスタin牧の原モア」が,2月16日に印西牧の原駅最寄りの商業施設「牧の原モア」で開催された。
沿線観光資源の活用
プロ野球チーム・北海道日本ハムファイターズの二軍本拠地である鎌ケ谷スタジアムについては,北総線大町駅から直線距離で約1.7kmの位置にある沿線観光資源のひとつであり,これまでも後述のスポンサードゲームの開催などが行われてきたところであるが,当年度においては公式戦開催の土休日における大町駅と鎌ケ谷スタジアムを結ぶ臨時バスの設定や同駅ホームへのインフォメーションボードの設置など,観光資源のさらなる活用が図られた。
大町駅と鎌ケ谷スタジアムを結ぶ臨時バスはこれまでも不定期に運行されてきたところであるが,当年度においては公式戦の開催される土休日すべてを対象とした本格的な運行に発展した。臨時バスの運行は北総線各駅や北総所属車両への広告によって周知されたほか,大町駅上りホームには横断幕も掲出された。また,横断幕の掲出と前後して北海道日本ハムファイターズのインフォメーションボードも新たに設置され,鎌ケ谷スタジアムや同チームを観光資源として活用する取組みの強化が図られた。
公式ウェブサイトのリニューアル
北総鉄道の公式ウェブサイトについては,2003年度の開設以来これまで2度のリニューアルが行われてきたところであるが,3月27日付で3度目の大規模なリニューアルが実施された。
当年度のリニューアルに際しては,「サイト内の構成を見直し、ホームページ全体のデザインを一新することで、使いやすさ・わかりやすさにこだわった」ウェブサイトとされ,沿線地域に多い子育て世帯を対象としたコンテンツや,採用活動の強化を目的として各部門の業務を紹介する仕事紹介など,北総鉄道の戦略をふまえた新たな内容が加えられた。沿線のイベントや観光情報のページにはイラスト主体のポップな専用デザインが起こされ,暖かみのある親しみやすいページとなった。
熱中症対策標語コンテストの実施
地域社会と連携した熱中症対策の一環として,大塚製薬および印西市,白井市,北総鉄道の主催による「熱中症対策標語コンテスト」が実施された。
本件施策は夏季における熱中症対策の推進活動として実施されたもので,印西市および白井市の小中学生を対象に熱中症対策標語の作品募集が行われた。募集は4月から5月にかけて行われ,174点の応募作品から選ばれた受賞作品24点を掲載した自治体別のポスターが夏季を通して各駅や客車内に掲出された。なお,コンテストの表彰式は7月に自治体別で実施されている。
運輸部門の動静
輸送関係
No.120ダイヤ改正の実施
直通運転先の各事業者に合わせたダイヤ改正が11月23日付で実施され,区間列車1本の新設を盛り込んだNo.120ダイヤが同日より施行された。
本件ダイヤ改正では,平日夜間に新鎌ヶ谷・印西牧の原間運転の下り区間列車1本が新設された。区間列車は下り最終アクセス特急列車に新鎌ヶ谷で接続するもので,当該のアクセス特急列車から新鎌ヶ谷・印西牧の原間のアクセス特急通過駅を利用する場合,到着時刻を最大8分早められる。今回の区間列車の設定により,平日の下りアクセス特急列車は朝一番の1本を除き全列車が新鎌ヶ谷で普通列車と緩急接続するようになった。
アクセス線列車においては,新鎌ヶ谷に停車するスカイライナーが各日上り1本,下り2本の増となった。上りは成田空港発21時から23時までの20分ヘッド化に伴うもので,成田空港21時20分発の上りスカイライナーが新たに新鎌ヶ谷停車便として設定された。下りは京成上野19~20時台発の下りスカイライナー2本が新鎌ヶ谷停車便となったものである。夜間下りの新鎌ヶ谷停車便は今回のダイヤ改正が初設定であり,帰宅時間帯における着席保証列車としても機能する。
また,車両運用の変更に伴い,京成高砂(高砂車庫)に夜間滞泊する北総所属車両の運用が新たに設定されたほか,印旛車両基地で滞泊する京成所属車両の運用も設定されるようになった。いずれも過去に設定された実績のない運用方で,本件ダイヤ改正を象徴する車両運用のひとつである。
到着番線確認標の新設
下り列車に対して到着番線の再確認を促すことを目的とした看板が千葉ニュータウン中央駅および印西牧の原駅に設置された。
当該看板は運転士に対して到着番線の再確認を促すもので,次駅名と「到着番線再確認」の文言が記されている。看板の設置箇所は千葉ニュータウン中央駅2番線,印西牧の原駅3番線および4番線の各終点方で,すなわち下り列車の運転士に対して折返し時の到着番線を再確認させる目的と推察される。
なお,各看板には北総所属車両のイラストが添えられていて,千葉ニュータウン中央駅2番線用は7308編成,印西牧の原駅3番線用は9201編成,同4番線用は9108編成とされている。看板の地色は印西牧の原駅4番線用のみ青色で,他は緑色である。
乗務員関係
搭載鞄のビジネスバッグ化
乗務員の使用する搭載鞄については,従来箱状のハードケースが使用されてきたところであるが,当年度末においてビジネスバッグ状の鞄に変更された。
新たな搭載鞄はいわゆるビジネスバッグ状で,表面下部に北総ロゴマークがあしらわれた特注品である。表面にはポケットが設けられていて,後述の運転士用タブレット端末を収容することができる。また,鞄側面の番号表示については従来手書きされていたが,新たな鞄では番号札をポケットに収める表示方とされている。
タブレット端末の貸与範囲拡大
乗務員用タブレット端末については,これまで自動放送等で使用する車掌用端末が車掌に貸与されてきたところであるが,当年度において運転士用端末が新たに運転士向けに貸与されるようになった。運転士用端末は車掌用に比べて小型で,用途の違いからケースについても異なるものが使用されている。
手笛の電子ホイッスル化
閉扉時等において車掌が使用する手笛については,当年度末において電子ホイッスルに変更された。なお,京成乗務員は先行して電子ホイッスルを使用している。
乗務員用ロッカー設置駅の拡大
一部駅のホーム上に設置されている乗務員用ロッカーについて,当年度は未設置だった区間列車の折返し駅にロッカーの新設が行われた。
乗務員用ロッカーについては,これまで列車の折返し駅である印西牧の原および印旛日本医大の各駅ホーム上に設備されてきたところであるが,区間列車の折返し駅である矢切および新鎌ヶ谷には設備がなかった。当年度においては,区間列車の折返し駅である両駅ホーム上にロッカー各1台が新設され,折返し駅に対するロッカーの設置が進められた。
営業関係
通学証明書の指定様式変更に伴う旅客営業規則の改正
通学定期乗車券(通学定期券)の発売に係る通学証明書の様式変更に伴う旅客営業規則の改正が4月1日付で実施された。
本件改正は,旅客営業規則第29条2に定められた通学証明書の様式を変更するもので,変更後の様式では性自認の多様化への配慮から性別の記載を廃止するとともに,卒業見込年月日の記載欄が新たに設けられた。卒業見込年月日の追加については,パスモ(モバイルパスモを含む)での通学定期券に対して卒業見込年月日をあらかじめ登録することで,2年次以降の在学確認を要さずに自動券売機での継続購入を可能とするものである。
新紙幣発行開始に伴う営業機器の改修
当年度においては7月の日本銀行による新紙幣(F号券)発行開始に伴う営業機器の改修が実施された。
一連の改修のうち自動券売機においては段階的な対応となった。新紙幣の発行開始当初は原則として定期券発売に対応する券売機のみが改修対象とされ,各駅1~2台程度の改修に留められていたが,残った未改修機は年度末の他改修とあわせて後追いで新紙幣に対応した。なお,当年度においては本件改修と前後して昨年度に発売終了した回数乗車券のボタンが自動券売機の接客画面から抹消されている。
担架のホーム設置廃止
各駅ホームに設置されていた担架については,7月より駅事務室内の配置に変更された。ホーム上の担架収容箱および看板は撤去せずに残置されているが,担架の表示はフィルムシートにより抹消された。なお,収容箱の扉は当初シールにより封印されたのみであったが,後に留め金が追加されている。
新京成線改称に伴う案内表示等の変更
新京成線の路線名称変更については,改称日である2025年4月1日を前に各駅および客車内における案内表示等の変更が実施された。
各駅においては,3月上旬から路線図や運賃表の変更が実施された。路線図については全体取替,運賃表については新京成線に関連する箇所のみを板単位で変更する対応とされた。いずれも4月1日の改称まで関係箇所がマスクされていたが,変更箇所が些少な新鎌ヶ谷駅の運賃表についてはマスクされないまま改称日を迎えている。また,新鎌ヶ谷駅のサイン類については3月28日翌亘で一斉に取替が行われ,北口をはじめとするラチ外の各サインが京成電鉄に近い意匠へと変更された。
客車内の車額に掲出されている路線図については3月下旬から順次変更された。駅と異なり変更箇所のマスクは行われず,「2025年4月1日時点」表記のもと一足早く改称後の路線名を見ることができた。変更後の路線図は9128編成を除き紙に戻されていて,新京成線の路線名称のほか,品川駅の乗換路線として記されている東海道新幹線のピクトグラムが正規の青色(以前は東北新幹線と同じ緑色)に変更されている。
企画乗車券・記念乗車券の発売
多客期に設定されている1日乗車券については,当年度も年4回の発売が実施された。各発売期間は,春季において3月23日から5月26日,夏季において7月20日から8月25日,秋季において10月5日から11月24日,冬季において12月21日から1月19日で,各駅窓口及びスマートフォンアプリ・RYDE PASSを通じて発売された。昨年度に引続き,京成線の東京都内区間の1日乗車券とセットになった「北総・下町めぐりきっぷ」も同期間で発売された。
また,千葉県と県内の交通事業者との連携による企画乗車券「サンキュー♥ちばフリーパス」及び「サンキュー♥ちばフリー乗車券」が当年度も発売され,北総線においては千葉県内区間(矢切・印旛日本医大間)がフリーエリアに設定された。発売期間は9月1日から10月30日と1月4日から2月27日(利用期間は各発売終了日の翌日まで)で,JR東日本の指定する主要駅の指定席券売機を通じて発売された。
記念乗車券については,鉄道ファン向けとして,ほくそう春まつり号の運転に伴う「ほくそう春まつり号運転記念乗車券」,および現社名への変更20年を記念した「北総鉄道社名変更20周年記念乗車券」がそれぞれ発売された。前者はほくそう春まつり号運転日の4月21日よりほくそう春まつり会場及び北総線各駅にて500部限定・1部500円で,後者は社名変更から20年となった7月1日より北総線各駅にて500部限定・1部1,000円でそれぞれ発売された。なお,北総鉄道社名変更20周年記念乗車券には社名変更前の車両に取付けられていた北総開発鉄道の社名銘板を模したマグネットシートが付属した。
コラボレーションによる記念乗車券としては,『ウマ娘』とのコラボによる「クリアファイル付き ウマ娘 プリティーダービー×北総鉄道 記念乗車券」,および映画『男はつらいよ』とのコラボによる「男はつらいよ55周年×北総1期線開業45周年記念乗車券」がそれぞれ発売された。
前者については,『ウマ娘』のキャラクター「サクラバクシンオー」,「サクラチヨノオー」,「サクラローレル」と9100形車両の描かれた北総鉄道コラボのキービジュアルを使用した「西白井駅バージョン」,および同「ゴールドシップ」と白井市の公式キャラクター「なし坊」の描かれた白井市コラボのキービジュアルを使用した「白井駅バージョン」の2種類が10月17日より北総線各駅等にて各1,000部限定・1部1,500円で発売された。各種類とも発売状況が好調であったことから,11月1日付で西白井駅バージョンを1,000部,白井駅バージョンを500部の追加発売が行われた。
後者については,『男はつらいよ』のキービジュアルや後述のヘッドマークを台紙にあしらい,11月2日より新柴又駅にて1部550円で発売された。
沿線イベントの開催
当年度におけるイベントの開催については,昨年度に引続き年間を通して盛況な開催状況であった。
昨年度復活した「ほくそう春まつり」は,当年度も千葉ニュータウン中央駅を最寄りとするイオンモール千葉ニュータウン提携駐車場を会場として4月21日に開催された。印西市,白井市,ベイエフエム,北総鉄道からなる実行委員会形式での開催で,当年度は千葉県誕生150周年記念の冠事業と位置づけられた。また,ほくそう春まつりの開催に伴う臨時列車「ほくそう春まつり号」が設定され,当年度は京成線東成田駅から京成高砂駅経由で千葉ニュータウン中央駅までの特急列車として,7308編成を使用して運転された。なお,同列車に使用する車両の送り込みは従来当日朝に行われてきたが,当年度は前日に宗吾回送行路により宗吾車両基地に回送する取扱いとなった。
ウォーキングイベント「北総ウォーク」については,当年度も日時を指定しないフリー参加方式で第51回と第52回の2回が開催された。春の第51回は3月19日から5月12日までに開催期間が繰上がり,小室駅から小室公園,宗像神社経由で千葉ニュータウン中央駅に至る約9kmのコースが設定された。秋の第52回は10月18日から12月1日の開催で,矢切駅から柴又帝釈天経由で新柴又駅に至るコースだった。途中水元公園を経由する約11kmのロングコースと,経由しない約7kmのショートコースの2コースが設定された。
他社と共催するウォーキングイベントについては,東葉高速鉄道および東武鉄道とのコラボウォークが設定された。東葉高速鉄道と共催する「北総・東葉コラボウォーク」は2022年度以来2年ぶりの実施で,10月5日から11月24日を開催期間としたフリー参加方式で行われた。コースは白井駅から船橋アンデルセン公園,京成バラ園を経由し,イオンモール八千代緑が丘までの約11kmであった。東武鉄道とのコラボウォークは当年度より「北総・東武合同健康ハイキング」に改称され,白井駅から海上自衛隊下総航空基地を経由して東武アーバンパークライン高柳駅に至る約9.5kmのコースで2月23日に開催された。
鎌ケ谷市に二軍の本拠地を置くプロ野球チーム・北海道日本ハムファイターズのイースタン・リーグ公式戦スポンサードゲーム「北総鉄道DAY」は,当年度は9月21日に実施された。例年通り球場前でのミニ電車の運転や物販のほか,試合前には持永社長による挨拶や室谷会長による始球式も行われた。始球式では背番号「668」の特製ユニフォームを着用した室谷会長がノーバウンドでの投球を披露した。
沿線の飲食店を巡るスタンプラリー「北総グルメラリー」は,9月14日から11月30日まで第3弾が実施された。昨年度の第2弾までとは対象店舗やルールが変更され,高架下テナントのチェーン店主体から沿線の個人店主体となったほか,限定メニューの指定がなくなり喫食内容が自由化された。3店舗以上のスタンプを集めた際の景品は,7500形・7300形・9100形車両をあしらった湯呑みだった。
また,当年度においては沿線内外でのコラボイベントが多数開催されたほか,イベントへの後援や協力も年間を通して積極的に行われた。
昨年度に連携協定を締結した市川市との間では,大町駅を最寄りとする市川市動植物園とのコラボイベントとして「市川市動植物園×北総鉄道コラボまつり」が10月26日に開催された。園内でのミニ電車の運転や物販のほか,京成パンダや市川市の公式キャラクター「市川梨丸」の着ぐるみとの記念撮影などが行われ,来園者にはオリジナルシールも配布された。
当年度に連携協定を締結したUR都市機構,千葉ニュータウンセンターとの三者連携イベントとしては,2月16日に印西牧の原駅最寄りの商業施設・牧の原モアにおいて「千葉ニュータウンわくわく発見フェスタ in 牧の原モア」が開催され,北総鉄道においても物販ブースの出展が行われた。
このほか,11月で新鎌ヶ谷駅が3線乗換駅となって25周年を迎えたことから,新京成電鉄,東武鉄道,京成電鉄の各社と連携して「新鎌ヶ谷3線乗換駅25周年記念イベント」が11月24日に新鎌ヶ谷駅最寄りの商業施設「アクロスモール新鎌ケ谷」で行われ,物販ブースや子ども向けの記念撮影コーナー,写真展などが展開された。
有料イベントの開催
当年度も北総鉄道の主催する有料イベントが多数企画され,昨年度に開設されたウェブサイト「ディスカバリー北総」を通じて周知および募集が行われた。
新たに企画されたイベントとしては,4月13日開催の「大人向け車両基地見学会」,8月3日開催の「矢切駅未仕上げ見学及び北国分駅間トンネル見学ツアー」,9月14日開催の「レアな車内自動放送も聞ける!夜間撮影会イベント」,11月23日開催の「大人向けイベント『ナイトウォーク』」があり,夜間開催や大人向けと称されるイベントの開催が続いた。
4月13日に開催された「大人向け車両基地見学会」は,小学生を対象に毎年開催されている「ほくそう車両基地まつり(旧・ほくそう電車教室)」の大人版として位置づけられたイベントで,自動洗浄機通過体験,検修庫の見学,運転台での記念撮影,保守用車への乗車などの内容を体験することができた。
8月3日に開催された「矢切駅未仕上げ見学及び北国分駅間トンネル見学ツアー」は,矢切駅の非公開施設や矢切・北国分間の栗山トンネルを終車後に見学するイベントで,駅事務室やコンコースの奥に広がる未仕上げ室,換気設備,非常時の避難通路を見学した後に,矢切駅から北国分駅まで線路上を歩いて栗山トンネルやその排水設備を見ることができた。さらに,ツアー中は技術系社員も同行し,各設備の紹介やそれらにちなんだ工事・保守におけるエピソードも聞くことができた。
9月14日に開催された「レアな車内自動放送も聞ける!夜間撮影会イベント」は,昨年度に開催された車両基地での夜間撮影会イベントの内容に一部変更を加えた企画である。臨時列車への乗車行程や弁当の喫食が省略された一方で,新たに車内自動放送の試聴体験が盛り込まれた。車内自動放送の試聴体験は当年度の新入社員研修の一環として発案されたもので,異常時放送や珍しい行先種別の案内放送等を21番線に留置された9808編成の車外スピーカを介して試聴することができた。撮影会は24番線に9201編成,25番線に9128編成,26番線に7502編成を配置して行われ,車両の小移動を挟みながら3回の撮影時間内で撮影することができた。
11月23日に開催された「大人向けイベント「ナイトウォーク」」は,印西牧の原駅から車両基地に至る入出庫線を終車後に歩くことができるイベントである。入出庫線のウォークイベント前後では,印旛日本医大駅の展望台や印西牧の原駅滞泊車両の留置処置の見学,車両基地での留置車両の撮影会などが盛り込まれた。各行程の移動手段については,印旛日本医大駅から印西牧の原駅までは定期回送列車(第2404K),車両基地から解散場所の印旛日本医大駅および東横イン印旛日本医大駅前,印西牧の原駅まではちばレインボーバスの貸切バスが用いられた。
また,昨年度以前からの継続イベントとして,「運転体験」,「夜間レール交換作業見学ツアー」,「ほくそうビール列車」がそれぞれ開催された。
運転体験は車両基地内の指定距離を3回運転することができるもので,当年度は9100形車両を使用したイベントとして,一般向けが5月18日,親子向けが8月25日,印西市のふるさと納税返礼品対象者向けが3月15日に実施された。一般向けの開催は2022年度以来2年ぶりで,親子向けの開催は当年度が初めてだった。
夜間レール交換作業見学ツアーは,ロングレール更換作業を見学するイベントとして2022年度に新鎌ヶ谷駅終点方で実施されたものである。当年度は2年ぶりの開催で,西白井駅付近でのロングレール更換作業にあわせて7月12日翌亘と8月30日翌亘の2回が設定された。山越器でのレール移動や緊張器を使用した設定替,ゴールドサミット溶接など一連のレール更換作業の見学のほか,作業前後で西白井保守基地の見学や横取り装置の操作体験も行われた。
ほくそうビール列車は,臨時列車の車内で生ビール等が飲み放題となるツアーイベントで,当年度は7月20日に「夏本番ほくそうビール列車」,1月18日に「新春ほくそうビール列車」として実施された。実施内容は例年通りで,7500形車両を使用した臨時列車で矢切・印旛日本医大間を約2時間かけて1往復するツアー形式のイベントだった。なお,昨年度と異なり途中駅でのミニライブの実施はなく,車内での余興は当年度の新入社員による抽選やクイズに変更された。
このほか,車両撮影会等の他者主催イベントや学校教育,映画等の撮影に際して北総所属車両や施設の貸出が行われた。当年度においては,9100形を使用した団体臨時列車が京成上野まで入線するなどの動きがあった。
グッズの発売
当年度においては,主に子育て世代をターゲットとした一般向けグッズのほか,鉄道ファン向けグッズやコラボグッズなど幅広い商品展開が行われた。
一般向けのグッズとしては,9月1日より沿線ゆかりのイラストをあしらった「ループ付きハンドタオル」800円,および「ステンレスボトル」5色(ホワイト,カーキ,ネイビー,スモークブラック,レッド)各1,200円が発売された。ステンレスボトルは旧商品の色変更版で,低彩度のアースカラーやマットな色調が選ばれている。さらに,10月5日より7500形車両をモチーフとした「電車型ペンケース7500形Version2」1,500円,および「走る!鳴る!電車型貯金箱7500形」1,800円が発売された。電車型ペンケースは旧商品の行先種別表示を「急行印西牧の原」から「特急印旛日本医大」に変更し,定規の付属を省略したものである。
イベント限定グッズとしては,7500形車両をあしらったワッペン「もこでんワッペン&つり革型ワッペンホルダー」2種類がほくそう春まつりにあわせ4月21日より各2,000円で発売された。もこでんワッペンの製作に際しては社会福祉法人コスモスおよび多機能型事業所ワルツの協力を得ている。また,2010年に発売され2013年頃より品切れとなっていた鉄道玩具「プラレール 北総鉄道7500形」が10月27日より3,000個限定・2,800円で再販された。再販初日には新鎌ヶ谷駅終点方の高架下において販売会が開催され,一時は300mを超える待機列が形成されるほどの盛況ぶりを見せた。
新鎌ヶ谷駅ラチ外コンコースやイベント会場にて発売されているカプセルトイ(ガチャガチャ)については,計画当時に用いられていた仮称駅名をあしらった駅名標キーホルダー「仮称駅名キーホルダー」6種各400円が9月1日より,北総所属車両の正面イラストをあしらった「電車ハンカチ」5種各500円が1月11日より発売された。
記念グッズとしては,昨年度末の北総Ⅰ期線開業45周年および千葉ニュータウン中央駅開業40周年に関連して「周年記念手焼きせんべい」が4月21日より各500円で発売された。印西市の米菓店「えびはら米菓」による手焼きせんべいで,発売当初は「こがね」,「胡麻」,「あおさのり」の3種類,後に「のり唐辛子」を加えた4種類の味が展開された。
さらに,9100形車両の就役30周年に関連して,「電車型ペンケース9100形」1,500円,「走る!鳴る!電車型貯金箱9100形」1,800円,「子ども用靴下「鉄下」9100形」500円,「9100形デビュー30周年記念ゴルフボール」1スリーブ3球入り1,800円,「9100形デビュー30周年記念ゴルフマーカー」500円が3月22日より発売された。
鉄道むすめ「白井まきの」を起用したグッズとしては,4月21日のほくそう春まつりより立哨中の立ち絵と7500形車両をあしらった「アクリルスタンド」800円,印旛日本医大駅で立哨している姿の「クリアファイル(Ver.3)」400円,印西牧の原駅の駅名標と立ち絵をあしらった「クリアファイル(Ver.4)」400円,白井まきのまつりにあわせ3月22日より「白井まきのアクリルマルチスタンドVersion3」および「白井まきのアクリルマルチスタンドVersion4」各800円がそれぞれ発売された。
また,伊豆箱根鉄道とのコラボ企画にあわせ12月7日より「北総鉄道「白井まきの」×伊豆箱根鉄道「修善寺まきの」コラボクリアファイル」400円,および「北総鉄道「白井まきの」×伊豆箱根鉄道「修善寺まきの」コラボアクリルコースター」600円が発売された。伊豆箱根鉄道コラボのクリアファイルおよびアクリルコースターについては伊豆箱根鉄道で発売される伊豆箱根鉄道バージョンもあり,11月23日に伊豆箱根鉄道大場車庫にて開催された「いずはこねふれあいフェスタ 2024」で北総鉄道バージョンとともに先行発売された。
当年度はコラボグッズも多く企画され,前述の鉄道むすめにおける伊豆箱根鉄道とのコラボグッズのほか,印西市,山崎製パン,『ウマ娘』,京成グループ鉄道各社においてもコラボグッズの発売があった。
印西市とのコラボグッズとしては,市内3駅の駅名標を表面,市の公式キャラクター「いんザイ君」を裏面にあしらった「駅名標キーホルダー」3種が4月21日より各500円で発売された。山崎製パンとのコラボについては,昨年度のバウムクーヘンに続き,7300形車両をモチーフとした外装箱の「マーブルケーキ」1箱5個入りが10月1日より500円で発売された。
『ウマ娘』とのコラボグッズは,「ウマ娘 プリティーダービー×北総鉄道 コラボトートバッグ」が500個限定・2,000円,および「ウマ娘 プリティーダービー×北総鉄道 コラボ駅名アクリルキーホルダー」4種が各500個限定・500円で10月17日より発売された。トートバッグは前述のウマ娘と9100形車両を描いたキービジュアルを絵柄としたもので,アクリルキーホルダーは表面に駅名標,裏面に『ウマ娘』のキャラクターがあしらわれている。各アクリルキーホルダーの絵柄は,「西白井駅バーション(サクラバクシンオー)」,「西白井駅バーション(サクラチヨノオー)」,「西白井駅バーション(サクラローレル)」,「白井駅バーション(ゴールドシップ・なし坊)」の4種類だった。なお,前述の記念乗車券と同様に発売初日から好調な販売状況であったことから,トートバッグ200個,アクリルキーホルダー各1,000個が11月1日より追加発売されたが,トートバッグについてはさらに300個が12月1日より発売された。一連のグッズについては発売初日から完売となる駅が複数生じる状況で,北総鉄道の公式ウェブサイト等において各駅の在庫状況の発信が続けられた。
鉄道事業者とのコラボグッズとしては,千葉県内の鉄軌道事業者13社とコラボした「キラ鉄クリアファイル」600円が4月21日より発売されたほか,京成グループで鉄道事業を営む京成電鉄,新京成電鉄,関東鉄道とのコラボグッズとして「京成グループ4社 コラボハンドタオル」が10月5日より500円で発売された。いずれも北総鉄道バージョンにおいては7500形車両が絵柄に選ばれている。
鉄道むすめ「白井まきの」の活用
トミーテックの展開するキャラクターコンテンツ『鉄道むすめ』における北総鉄道のキャラクター「白井まきの」については,マナー啓発ポスターやイベントの開催等を通じた利活用が進んだ。
当年度は白井まきのを主とした鉄道ファン向けのイベントが初めて企画され,印西牧の原駅への異動を記念した「白井まきの異動記念イベント」が7月20日から8月25日まで印西牧の原駅で実施されたほか,3月22日からは異動1周年を記念した「白井まきの異動1周年記念イベント」が5月25日まで同駅で開催されている。両イベントともにラチ内コンコースのラウンジ付近にポスターやのぼり,等身大パネルの展示が行われたほか,改札窓口でのグッズ発売も実施された。7月の白井まきの異動記念イベントに際しては同駅コンコース設置の発車標が改修され,次列車シフト時に白井まきののミニキャラ画像が表示されるようになった。また,3月の白井まきの異動1周年記念イベントを前に新たなポスターが作成され,駅務管区ごとに異なる3種類のポスターが掲出された。
さらに,「ほくそうマナーシリーズ」の後継として当年度より掲出開始となったマナー啓発ポスターへの起用や,伊豆箱根鉄道の鉄道むすめ「修善寺まきの」との「まきの」つながりによるコラボレーション企画が実施された。伊豆箱根鉄道とのコラボレーション企画においては,前述のコラボグッズに加え,北総鉄道においては7503編成,伊豆箱根鉄道においては1300系2202編成を使用したヘッドマーク電車が11月12日から12月3日まで運行されたほか,11月23日に伊豆箱根鉄道大場車庫で開催された「いずはこねふれあいフェスタ 2024」にて両「まきの」の等身大パネルを並べた展示が行われた。
このほか,2025年4月開催の「ほくそう春まつり2025」のPRとして,大井川鐵道「井川ちしろ」,伊豆箱根鉄道「塚原いさみ」,関東鉄道「寺原ゆめみ」,首都圏新都市鉄道「秋葉みらい」,埼玉高速鉄道「川口みその」,千葉都市モノレール「葭川となみ」,富士山麓電気鉄道「大月みーな」,流鉄「幸谷なのは」,北越急行「松代うさぎ」とのコラボレーション企画が実施され,白井まきのを加えた10社10名の描かれたコラボレーションヘッドマークが3月28日より順次各社で掲出・展示された。コラボレーションヘッドマークについては,北総鉄道,大井川鐵道,関東鉄道,富士山麓電気鉄道,流鉄の5社においてヘッドマーク電車を運行,他5社は駅での展示とされ,このうち北総鉄道については3月28日より7828編成に掲出されている。
横断幕・駅装飾の展開
当年度も各駅では季節にちなんだ様々な装飾が展開された。鯉のぼりやクリスマスツリー等の大規模な装飾を展開した駅や,受験シーズンや新年度にあわせて応援メッセージを掲出した駅など,各駅で工夫をこらした取組みを数多く見ることができた。印旛日本医大駅では,段ボールで作られた7000形車両や9000形車両などの前頭部や「偉大(医大)神社」など様々な手づくりの装飾がコンコースに置かれ,話題づくりに取組む様子が見られた。
横断幕については,松飛台駅を最寄りとする大相撲・佐渡ヶ嶽部屋所属の力士・琴櫻関が11月の九州場所で初優勝を果たしたことから,松飛台駅1番線ホームに横断幕が掲出された。
ヘッドマーク電車の運行
当年度のヘッドマーク電車については,ほくそう春まつりや花火ナイターなど催事関係のほか,周年記念やコラボレーション企画による運行があった。
催事に伴うヘッドマークとしては,4月21日の「ほくそう春まつり2024」開催に伴う臨時列車「ほくそう春まつり号」のヘッドマークが7308編成に,当年度の「第23回京成グループ花火ナイター」開催に際して当年度の「花火ナイター号」ヘッドマークが6月13日から7月13日まで7828編成にそれぞれ掲出された。このほか,前述のビール列車においてもそれぞれヘッドマークの掲出があった。
周年記念に伴うヘッドマークは,昨年度末からの継続で「北総Ⅰ期線開業45周年記念」が7503編成に,「千葉ニュータウン中央駅開業40周年記念」が9808編成にそれぞれ6月30日まで掲出された。北総Ⅰ期線開業45周年記念については映画『男はつらいよ』55周年とのコラボレーション企画でもヘッドマークの掲出があり,10月31日から3月23日まで7502編成がヘッドマーク電車となった。
また,コラボレーション企画による掲出としては,前述の通り映画『男はつらいよ』のほか,キャラクターコンテンツ『鉄道むすめ』に関して伊豆箱根鉄道とのコラボヘッドマークが11月12日から12月3日まで7503編成で,「ほくそう春まつり2025」PRを目的とした鉄軌道10社とのコラボヘッドマークが3月28日から7828編成で実施されている。このほか,前述の「沿線活性化トレイン」に使用された9201編成についても運行期間中にヘッドマークの掲出が行われていて,当年度においては7月後半の2週間弱と3月下旬の1週間弱を除けば年間を通してヘッドマーク電車の運行があった。
副駅名広告の導入
秋山駅に副駅名「聖徳小・光英VERITAS中高前」が3月17日付で設定された。同駅を最寄りとする東京聖徳学園運営の聖徳大学附属小学校,光英VERITAS中学校・高等学校(旧・聖徳大学附属中学校・高等学校)の副駅名広告で,「親しみをもって認知していただくとともに、同学校の認知度向上に寄与し、沿線地域の活性化に繋がること」が設定の目的とされている。
副駅名の導入に際しては駅出入口およびホーム設置の駅名標32枚が副駅名を併記したものに更新された。導入初日には両学校の校長や児童,生徒らによるセレモニーが実施された。
交通広告の展開
駅や客車内における交通広告については,沿線商業施設と連携したデジタルサイネージの設置やエレベータシャフト等を活用した大型広告枠の展開など,当年度は多様な需要に対応する広告媒体が新たに設定され,広告代理店との連携による交通広告枠の確実な管理と積極的な販売が進められた。
新たな広告媒体としては,千葉ニュータウン中央駅出入口付近に大型のデジタルサイネージ「ステーションビジョン」,印西牧の原駅コンコースにエレベータシャフトを活用した大型広告枠などがそれぞれ設置された。
千葉ニュータウン中央駅のステーションビジョンは,駅近隣の大型商業施設「イオンモール千葉ニュータウン」と連携したLED式デジタルサイネージで,横幅5mからなる表示画面とスピーカによって音声付きの動画広告を表示できる。正式稼働は3月1日付で,稼働開始に際しては広告媒体として異例のプレスリリースが行われた。なお,当該広告枠はイオンモールで管理されていて,筐体下部にイオンモールを連絡窓口とする旨の表示がある。
印西牧の原駅の大型広告枠は,ラチ内コンコースのエレベータシャフト側面を活用したものである。各エレベータに対して1枠が第3四半期に設定され,コンコース内で最も大きな表示面積を持つ広告枠として販売されている。
千葉ニュータウン中央駅改札横には,印西牧の原駅と同様の大型広告枠である「パワフルハーフ」が新設された。さらに,改札正面の階段付近にあったポスター広告枠が拡張され,B1判ポスターを上下2段に掲出できるようになった。いずれも第3四半期に設置されていて,乗降人員の多い同駅における新媒体として販売されている。
一方で客車内における交通広告については,9月頃より枠番号が明記されるようになった。対象は北総所属車両における中吊り,窓上,ドア横の各広告枠で,枠番号を数字で記した黒地に白抜きの円形シールが広告枠周囲に掲出された。なお,7300形や9100形の広告枠に表示されている以前の枠番号は引続き残置されていて,付番法則の相違から新旧の枠番号が一致していない箇所もある。
このほか,千葉ニュータウン中央駅の「ステーションビジョン」と新鎌ヶ谷駅ラチ内コンコース階段付近の電飾看板については,北総鉄道の営業広告数点が掲出されるようになった。
自動販売機の展開
各駅に設置されている飲料等の自動販売機については,昨年度に引続き話題の創出や利便性向上につながる自動販売機が積極的に導入され,飲料に加えて女性用衛生用品を販売する「女性ヘルスケア応援自販機」や,冷凍洋菓子を販売する自動販売機などが設置された。
新鎌ヶ谷駅の旅客トイレ前に設置された「女性ヘルスケア応援自販機」は,自動販売機設置事業者のひとつであるダイドードリンコの展開する自動販売機で,飲料のみならず女性用衛生用品を購入することができる。また,東松戸駅および千葉ニュータウン中央駅ラチ内には不二家の冷凍洋菓子を販売する冷凍自動販売機各1台が導入され,ケーキをはじめとする洋菓子が手軽に購入できるようになった。
このほか,新鎌ヶ谷駅下りホーム起点方のベンチ付近に飲料自動販売機2台が新設され,対面の利用者の視線を気にせずベンチを利用できるようになった。
外部サービスの充実
北総線各駅に導入されている外部サービスについては,当年度はネットスーパーの受取ロッカー「ピックアップロッカー」や,鍵の無人受渡しサービス「KEY STATION」が導入されたほか,ATMやコインロッカーの設置見直しなども実施された。
新規導入サービスとしては,6月14日付でKeeyls株式会社の運営する鍵の無人受渡しサービス「KEY STATION」,イオンリテール株式会社の運営する「イオンネットスーパー」の受取ロッカー「ピックアップロッカー」が12月上旬よりそれぞれ千葉ニュータウン中央駅に導入された。千葉ニュータウン中央駅では後述のコンビニエンスストア「ファミリーマート千葉ニュータウン中央駅店」の増床に伴うサービスコーナーの支障移転が実施されていて,「ピックアップロッカー」はサービスコーナーの移転にあわせて設置された。また,支障移転にあわせて「みずほ銀行」ATM1台が撤去されたほか,「ろうきん」ATMの更新が実施された。
既導入サービスについては,「セブン銀行」ATMが新柴又駅ラチ外コンコースに,表示灯株式会社の運営する広告付周辺案内図「ステーションナビタ」が白井駅ラチ外コンコースにそれぞれ設置された。このほか,新柴又駅ではコインロッカーの更新が行われたほか,前述の「KEY STATION」導入に伴い千葉ニュータウン中央駅ラチ外コンコース設置の公衆電話1台が撤去された。
未利用空間の利活用
鉄道施設の未利用空間を活用したテナント誘致等の状況については,既設コンビニエンスストアや倉庫が増床するなど,当年度も未利用空間の利活用拡大が図られた。
秋山第2トンネル地上部のレンタル収納「イナバボックス松戸秋山店」については,2023年9月の開店当初から多くが満室となる好調な利用状況であったが,当年度において12月18日付で「イナバボックス松戸秋山2号店」が終点方に隣接して開店した。また,千葉ニュータウン中央駅ラチ外コンコースでコミュニティ京成によるフランチャイジーとして運営されているコンビニエンスストア「ファミリーマート千葉ニュータウン中央駅店」については,ラチ外コンコース山側のほぼ全体を使用する大規模な増床工事が第3四半期より開始されている。
新鎌ヶ谷駅高架下通路で2018年4月より株式会社イデカフェが運営していた「イデカフェ 新鎌ヶ谷駅連絡通路店」については,3月14日付で同社の運営する別業態の飲食店「鶴兵衛 新鎌ヶ谷駅中店」に転換された。当該箇所のテナントは2012年12月から2018年4月の「イデカフェ」化まで「鶴兵衛 新鎌ヶ谷店」として営業していた経緯があり,約7年ぶりに「鶴兵衛」ブランドの店舗となった。
技術部門の動静
施設関係
高架橋における高欄の更新
北総および公団Ⅰ期区間の高架橋に構築されているコンクリートブロック造の高欄については,当年度は白井・小室間二重川高架橋および小室・千葉ニュータウン中央間小室高架橋を対象として老朽化した高欄の更新が行われた。
本件工事では,二重川高架橋の両側,小室高架橋の海側を施工範囲として,コンクリートブロック造の既設高欄を解体後,ほぼ同じ高さの高欄が新設された。2023年度においては成田スカイアクセス開業時にスムースボード工法で嵩上げされなかった鎌ヶ谷高架橋終点方における同一構造の高欄が防音壁に改良されたところであったが,当年度施工の両高架橋においてはH鋼および金属製折板による高欄に更新された。
西白井保守基地旧検査庫の修繕
西白井保守基地において前身の西白井車両基地時代から使用されている旧検査庫建屋については,昨年度に引続き外壁等の修繕工事が実施された。
修繕工事が進められている旧検査庫は,車両に対し日常的な列車検査等を実施するために設備され,現在は保守用車の収容に使用されている延長約80mの建屋である。2023年度までに終点方の約20mが修繕を終えていて,当年度は昨年度の修繕範囲に起点方で隣接する約20mが施工対象とされた。
施工内容は昨年度と同様に外壁や天井における波形スレート板の全面的な取替,換気塔の撤去,鉄部の再塗装などである。施工時期は昨年度より前倒しされ,第2四半期を中心に施工された。旧検査庫のうち1978年度の車両基地開設にあわせて設備された範囲の修繕は当年度をもって完了し,今後の修繕工事は北総Ⅱ期線開業に伴う輸送力増強に際して1990年度に増築された建屋に対するものとなる。
駅構内におけるテラゾータイルの張替
北総線各駅のコンコースに使用されているテラゾータイルについては,雨天時に滑りにくい加工を施す等の安全対策が実施されてきたところであるが,経年による劣化や汚損が見られることから,タイルの張替が進められている。当年度は北国分駅で昨年度に引続き張替が行われた。
既設タイルに滑り止め加工を実施していた北国分においては,経年による滑り止め加工の剥がれと表面の汚損が進行しており,昨年度までにコンコースの大部分でタイルの張替が実施されていた。当年度は昨年度に引続きラチ内を施工範囲として,未了だった階段や起点方のカーテンウォール付近の張替が行われた。なお,当年度の施工をもって北国分駅コンコースのテラゾータイルは張替を完了した。
運転区出入口通路における防風壁の新設
印西牧の原駅構内に2006年度より設置されている運転区建屋と上りホームを結ぶ出入口通路について,新たに防風壁が設置された。防風壁は仮囲い等に用いられる鋼板と単管を用いたもので,既設の通路上屋の構造を活かした設置方とされている。
エスカレータの更新
一部の駅に設備されているエスカレータについては,矢切駅の1基を皮切りに2023年度より更新工事が順次開始されたところであるが,当年度においては北国分駅1基,東松戸駅2基の計3基について更新工事が実施された。
当年度に更新されたエスカレータは,北国分駅の地下コンコース階と上りホームを連絡する1基,東松戸駅のJR武蔵野線側地上出入口と2階コンコースを連絡する1基,および同駅2階コンコースと3階改札階を連絡する1基の計3基である。東松戸駅のJR武蔵野線側の地上出入口と2階コンコースを連絡する1基はJR武蔵野線東松戸駅開業に伴う出入口新設にあわせ1997年度に,その他の2基は北総Ⅱ期線開業にあわせ1990年度に設備されたものだった。北国分駅の1基は2022年4月に実施された早朝深夜の運転見直しにより6時から22時の時間運転,東松戸駅の2基は初電から終電までの終日運転とされてきた。
更新工事では,内側板やデッキカバーなど既設エスカレータの部品を再利用することで工期短縮と費用の縮減を図るとともに,駆動機等の更新に加えて人感センサを設けて自動運転化する昨年度までの基本方針が踏襲された。自動運転化に際しては,三菱製の北国分駅においては他駅で実績のある人感センサ付ポールが新設された一方で,日立製の東松戸駅においてはインレット付近の乗降板に小型の人感センサを設ける方式とされた。また,東松戸駅のJR武蔵野線側地上出入口と2階コンコースを連絡する1基については,乗降板やステップ,乗降口コム付近のコムシグナルなど更新箇所が多岐にわたったが,続いて更新された同駅2階コンコースと3階改札階を連絡する1基については,いずれも既設の流用に留められた。
なお,東松戸駅における更新工事に際しては階段の通行区分が暫定的に変更され,下り区分のエスカレータ寄りに上り区分を設けることでエスカレータ休止による動線の混乱を防止する対応が行われた。当該の対応は各箇所の工事完了にあわせて解消されている。
継目箇所のラダーマクラギ化
継目箇所における軌道狂い対策として実施されてきたラダーマクラギ化については,当年度は北国分・秋山間の上下線で施工が行われた。当年度の施工箇所は,京成高砂駅起点5k900付近の下り線および6k100付近の上り線で,すなわち秋山駅下り場内相当および上り出発相当の絶縁継目2か所である。
ロングレールの更換
当年度もリフレッシュ工事の一環としてロングレール更換が進められた。当年度の主な施工箇所は,西白井駅起点方から西白井・白井間白井高架橋の終点方付近までで,このうち西白井駅前後においては前述のイベントを通じて更換作業の公開が行われた。
電気関係
船尾変電所の更新
小室・千葉ニュータウン中央間の開業にあわせて設備された船尾変電所については,老朽化による更新工事が2021年度に監督官庁より認可され,かねてより工事が進められてきたところであるが,当年度においては2022年度に整備された新たなトランス室に整流用変圧器やシリコン整流器等の各機器が搬入,設置されている様子が確認できた。銘板によれば当年度に搬入されたのは2号系の機器類で,更新前と同様に明電舎製である。
電気掲示器の消灯
各駅の駅名標などサイン類の表示に用いられる電気掲示器については,一部で年度初より内部照明を消灯する措置がとられるようになった。消灯の対象とされたのは,屋内および旅客上屋等に設置され,他の光源によって文字等の情報が視認可能な電気掲示器である。広告や屋外設置の駅名標等については対象外として引続き点灯している。
なお,新鎌ヶ谷駅南北自由通路に設置されている電気掲示器については,新京成線の改称対応にあわせた3月末より消灯,およびコンビニ横にあった縦型掲示器の撤去が行われている。
照明設備の更新(LED化)
かねてより実施されている鉄道施設における照明設備の更新については,昨年度に引続き印旛日本医大駅のLED化が実施された。当年度の施工箇所は印旛日本医大駅ホームで,旅客上屋に設置されているベースライトおよびダウンライトが更新された。
ベースライトについては,旧公団線区間における標準的な旅客上屋では更新前後ともに埋込型灯具が使用されてきたが,印旛日本医大駅の更新に際しては逆富士型灯具に変更された。既設の灯具は撤去されておらず,蛍光灯のみを抜いた状態で上から塞ぎ板を被せて残置されている。また,新たなベースライトは既設よりも短いものが採用されたため,更新前後でベースライトの設置数が大きく増加した。
セクションゾーン表示板の新設
電車線設備の区分箇所においては京成線列車に対するものとしてセクションゾーン表示板が設置されてきたが,当年度において従来設置されてこなかった渡り線箇所などにも当該標識の新設が行われた。新設された標識については,電化柱に固定する従来方式と異なり,マクラギ上に抱かせる格好で設置する方式が採用されている。なお,当年度においては京成線内や京成津田沼駅の新京成管理範囲内においても同様に当該標識の新設が行われている。
自動列車停止装置の更新(C-ATS化)
2018年度より実施されている中間閉そく区間における自動列車停止装置の更新については,かねてより施工されてきた新鎌ヶ谷・小室間が当年度よりC-ATS化された。残る小室・印西牧の原間では信号側の本体工事が始まった。
新鎌ヶ谷・小室間については,2月15日付でC-ATSへの切替が完了した。当該区間は連動駅間単位で実施されてきた本件工事における5回目の切替区間で,今回の切替をもって京成高砂・小室間の北総鉄道区間は全線でC-ATS化が達成された。本件区間の切替に際しては,第3回切替の東松戸・新鎌ヶ谷間以降と同様に切替前の試験が簡略化され,実列車による事前の走行試験を省略,切替当日の早朝に確認列車が設定された。確認列車は前日深夜に印西牧の原3番線に据え付けられ,上り初列車の前に切替区間を含む新鎌ヶ谷・印西牧の原間を1往復走行した。
最後の切替区間と見込まれる小室・印西牧の原間については,B点におけるループコイルや器具箱等の現場設備の施工が始まり,切替を前に本体工事が本格化した。年度末までにはB点標の設置も行われている。
列車無線更新に伴う誘導無線設備の撤去
2018年度より実施されている列車無線のデジタル化については,昨年度のデジタル列車無線への完全切替によって廃止された誘導無線によるアナログ列車無線設備の撤去が当年度も進められた。当年度においては,京成高砂・小室間の北総鉄道区間における誘導線等の地上設備が第3四半期以降に順次撤去され,地上側の誘導無線設備が全線で撤去完了した。
ITV装置の更新(フルハイビジョン化)
曲線等によって乗降の確認が困難なホームに整備されているITV装置については,2021年度よりフルハイビジョン化が進められ,あわせてモニタの縦型化が図られてきたところであるが,当年度においては2駅5ホームが更新された。
当年度に更新されたのは,新鎌ヶ谷駅3番線下り用,同4番線,小室駅1番線,同2番線,同3番線の5ホームである。ITVのモニタ面数は,小室駅3番線の3面を除きすべて2面で,既設のモニタと面数に増減はない。既設のハウジングに大規模な背板が設けられていた新鎌ヶ谷駅4番線および小室駅2番線については,昨年度の松飛台駅2番線と同様に背板なしのハウジングで更新された。
発車標の更新
旅客案内設備のひとつである発車標については,昨年度の印西牧の原における更新をもって東芝製発車標の代替が完了していたところであるが,当年度においては小室の発車標が更新され,全線で標準的に使用されている日本信号製発車標の更新工事が始まった。
日本信号製発車標は,東芝製発車標に次いで2007年度から2018年度にかけて導入されてきた発車標で,印西牧の原を除く13駅に設備されている。成田スカイアクセス開業に際して実施された運行管理システム・HTCの更新にあわせて2007年度に東松戸,新鎌ヶ谷,小室,印旛日本医大の4駅に導入されたのがはしりで,2010年度から他の各駅にも導入が進められた。すなわち小室の日本信号製発車標は全線で最も古い発車標のひとつで,上下ホームの各1基は2007年製(上りホームは2008年度末供用開始だが,発車標自体は2007年製を使用),コンコースの1基は2013年製だった。
本件工事では,コンコースに上下線別のLCD式が各1基,下りホームにフルカラーLED式が2基,上りホームに導光板式が2基それぞれ設備された。コンコースと下りホームにおいては昨年度の印西牧の原で実績のある新陽社製が採用された一方で,上りホームにおいては松飛台および大町で2017年度に新設した実績のある旭光通信システム製が採用された。従来は発車標のなかった終点方の階段付近にも発車標が新設された反面,導光板式となった上りホームにおいてはホーム上の発車標から次列車の発車時刻や通停等の詳細情報を知得することはできなくなった。なお,本件上りホームのような簡易な設備については,かつて行先や列車種別が単一的であった白井と小室の下り方面に対して使用されていたことがあるが,当時とは大きく環境の異なる今日においては設備方針の転換と捉えることができる。
LCD式発車標における時刻表示方の改善
昨年度末に導入された印西牧の原駅コンコース設置のLCD式発車標については,電気時計の代替として発車標画面左下に時刻表示が導入されていたところであるが,当年度において表示方の改良が実施された。
LCD式発車標における時刻表示は「現在時刻 HH:MM」形式で画面左下の時刻表示部に表示されるもので,昨年度末の導入当初においては黒文字で表示されるのみで周囲と地色の区別等は行われていなかった。本件改修は10月ころに実施され,表示部の地色が青色に変更されたほか,文字は黄色かつ太文字として強調表示されるようになった。なお,前述の小室駅においては改修後の仕様で導入されている。
このほか,印西牧の原駅については,本件と前後してコンコースに時計の設置が行われた。発車標更新時に撤去された電気時計の代替と推察されるところであるが,新たに設置された時計は一般的に市場で流通している電波時計で,親時計を必要とする信号通信設備としての電気時計ではない。当初はトイレ出入口上部に設置されていたが,後に電気時計や発車標のあったカーテンウォール下部に移設された。
矢切駅防災設備の更新
全線唯一の地下駅である矢切駅においては,万一の際における駅社員の対応の簡略化および効率化を目的として防災総合卓が開業時より設備されている。前述のイベント公開時において当該の防災設備について当年度に更新を行う旨の説明がなされていたところであるが,年度末までに更新工事が完了していることが確認できた。なお,当該設備は駅事務室内にあることから,詳細等については次年度以降のイベント公開時に確認するものとする。
秋山駅における画像解析ホーム監視システム実証試験の実施
日本信号により開発中の「画像解析ホーム監視システム」の実証実験に北総鉄道が協力することとなり,10月18日より秋山駅での実証実験が開始された。
画像解析ホーム監視システムは,信号メーカーの日本信号によって開発中のシステムで,監視カメラの映像をAIにより解析し,転落等の危険な状態を検知した場合は駅社員等への速やかな通報を行う機能を具備している。本件の実証実験は当該システムの製品化に向けた最終検証として,北総鉄道の協力により実施されるものである。
実証実験に際しては秋山駅下りホーム終点方に監視カメラ1基が仮設され,10月18日より検証が行われている。なお,検証期間は当初2025年3月31日までとされていたが,1年延長のうえ2026年3月末までに変更されている。
車両関係
定期検査の施行
当年度においては3編成の定期検査が施行された。各編成の検査種別及び施行日は,9201編成の重要部検査が4月9日付,7838編成の全般検査が11月15日付,7501編成の全般検査が1月22日付である。
11月に全般検査を終えた7838編成については,先頭車両の外板に掲出されている車いすステッカーの変更が行われた。他車種と同一の小型ステッカーに統一されたものであるが,貸借前の京成時代から端に寄っている特異な掲出位置については変更後も同様である。また,貸借開始時に一部が残置されていたリブレ京成の広告入禁煙銘板が検査にあわせて完全に撤去され,他編成と同様のピクトステッカーに統一された。
1月に重要部検査を終えた7501編成については側窓に掲出されている優先席ステッカーが変更され,後述の9100形側窓更新車で実績のある各種表示を一体化した大型ステッカーとなった。
列車無線更新に伴う誘導無線設備の撤去
列車無線のデジタル化については,デジタル列車無線への完全切替をもってアナログ式誘導無線で使用していた車上装置の撤去が進められており,昨年度においては千葉ニュータウン鉄道所有車両を対象に撤去工事が実施されていたが,当年度においては北総鉄道所有車両を対象に撤去工事が実施された。
当年度の撤去工事は5月に7500形3編成,6月に7300形2編成に対して実施された。施工内容は昨年度の車両確認に基づき空中線や送受信機等の撤去を行うもので,6月中旬の7318編成への施工をもって北総鉄道および千葉ニュータウン鉄道所有車両9編成の撤去工事が完了した。なお,京成電鉄からの貸借車両4編成については京成件名での撤去工事待ちで,同社においては当年度より3100形および3000形から車上装置の撤去を順次開始している。
補助電源装置の更新(SIV化)
東芝製DC-DCコンバータを対象とした補助電源装置の更新については,昨年度に引続き9100形の更新が行われた。当年度においては2月に9128編成が更新され,当該の更新をもって9100形における更新工事が完了した。また,9100形以前に実施された7300形,京成件名で実施された7800形・9800形についても更新が完了していることから,当年度をもって北総所属車両における東芝製DC-DCコンバータの更新が4車種すべてで完了した。
9100形車両における側窓固定化・座席更新
9100形で実施されている側窓の一部固定化や座席詰物の更新については,昨年度に引続き1編成が施工された。当年度に施工されたのは9118編成で,9月から10月にかけて昨年度施工の9108編成と同様の内容が印旛で施工された。なお,9118編成は外板の優先席ステッカーが9100形で唯一戸袋に残っていて,改修車の特徴である側窓の大型かつ各種表示の一体化された優先席ステッカーとの組合せを見ることができる。
運行番号表示器の更新
車両正面における運行番号表示については,昨年度に7300形2編成を対象として白色LED式への更新が行われたところであるが,当年度においては北総件名として7500形3編成,京成件名として9800形1編成に対して更新が行われた。
運番表示器の更新は,7500形が1月に印旛で,9800形が3月に宗吾でそれぞれ施工された。いずれも昨年度更新された7300形と同様の白色LED式で,表示文字の字形及び文字種は既設表示器と同等である。
非常通話装置押し釦クラッカープレートの廃止
客室内に設置されている非常通話装置(非常通報器)においては,誤操作を防止するため押し釦の上にクラッカープレート(破壊板)が設けられてきたが,当年度において当該のクラッカープレートが廃止され,赤色のリングに変更された。
クラッカープレートの廃止に際しては,代替として押し釦の周囲に厚みのある赤色のリングが新設され,誤操作防止および押し釦の明確化が図られた。クラッカープレートの廃止および赤色リングの設置は5月に7501編成で先行して実施され,その後10月よりクラッカープレートを使用する車両すべてに展開された。
旅客案内装置の改修
当年度においては,京浜急行線内の列車種別名称,京成立石駅の開扉方向,新京成線の路線名称においてそれぞれ変更対応が生じたことから,車内案内表示器をはじめとした関係機器における改修が実施された。
京浜急行線内における列車種別名称の変更対応は,2023年11月のダイヤ改正において同線で運行されていたエ急行が急行に改称されたことによるもので,表示制御器上の運行パターンに急行のデータが新たに登録された。改修は4月より順次実施され,改修車は設定器に「急行対応済 エ急行不可」の表示が行われた。当該の表示については,車内案内表示器に係る運行パターンを持つ表示制御器のみが改修対象と推察されるところであるが,乗務員の設定操作をふまえて設定器側に改修状況の表示が行われたものと考えられる。改修は6月までに全編成で完了し,種別名変更後もエ急行表示での運行を継続してきた状態は終了した。
京成立石駅における開扉方向の変更対応は,同駅付近の連続立体交差事業の進捗に伴い11月に下り仮線への切替が行われたことから,車内案内表示器の開扉方向表示を変更したものである。本件および新京成線の路線名称変更の各対応は関係機器のカレンダー機能を用いた予定日での自動切替とされた。なお,京成立石駅に係る改修状況は機器に表示されておらず,前述の種別改称対応と同時に実施された可能性が考えられる。
7800形・9800形車両における搭載鞄置きの撤去
貸借車両である7800形および9800形において,設定器上部に設けられていた搭載鞄置きの撤去が実施された。
両車種の搭載鞄置きは貸借前から設置されていたもので,京成3700形2次車における改良点のひとつとして各編成の導入当初より設備されてきた。本件は各社における搭載鞄の形状変更等に関連したものと推察され,京成所属車両における撤去の一環として両車種に展開されたと考えられる。撤去は10月以降に順次実施され,12月までに対象4編成すべての施工が完了した。なお,搭載鞄置きの撤去跡には保護板が設けられていて,導入当初より搭載鞄置きのない7300形とは引続き外見上の相違がある。
7500形・9200形車両における制輪子の変更
北総所属車両に使用される制輪子については,7500形および9200形は曙ブレーキ工業製が使用されてきたが,当年度より栃木日信製に変更された。
制輪子の変更は7501編成の定期検査にあわせ1月より順次実施された。新たな制輪子は7300形等で実績のある栃木日信製の合成制輪子で,M台車用は7300形等と同一のNS-540B型式で,T台車用はNS-749型式である。なお,これまで北総所属車両の制輪子供給は,7500形および9200形を曙ブレーキ工業,7300形等を栃木日信の2社体制とされてきたが,本件変更に伴って栃木日信の1社単独供給となった。