/無料公開
北総線よもやま話1909
2019年9月の北総線よもやま話。このよもやま話は将来的に四季報として纏めていく前段階の落書きコーナー。
旅客:券売機更新でついにMX-7全廃
昨年度より進めてきた北総線各駅の自動券売機更新について,今年度も継続件名として,残る6台のMX-7の更新が行われた。
北総線にはMX-7とMX-8という2種類のマルチ券売機があって,旧型の前者23台(うちCNT所有6台)についてMX-8への更新が進められてきたのね。すでに昨年度時点で13台(うちCNT所有2台)を更新していて,今年度は千葉ニュータウン鉄道のみ先行して6月に2台を更新し,残るCNT持ち2台は廃止していた。したがって,北総線のMX-7は北総持ちの6台(矢切,東松戸,新鎌ヶ谷,西白井,白井)のみだったわけ。
今回は最後まで残っていた6台が一斉にMX-8に更新され,ついに北総線からMX-7が消滅。2007年度に導入されてから12年で全て置き換わったことになるね。
ちなみに昨年度から更新しているMX-8は従来のMX-8と若干仕様が違っていて,過去の記事で取り上げたように,ICカードの利用履歴を印字すると幅や文字のビットマップが従来のものと異なっていた。…のだけど,今回の更新と前後してソフトウェアが変わったようで,従来のMX-8と同じ幅で印字されるようになった。ところが,入出場や物販,オートチャージなどを記す「種別」欄はなぜか欄だけ存在して内容が印字されなくなるという謎の現象も発生中。これはそのうち直るのかな?
【9/29追記ここから】
↑のICカード利用履歴の件については,やはり意図しない不具合だったようで9/27頃に各駅で券売機による利用履歴の表示・印字機能の使用停止措置がとられてしまった。緊急でソフト修正を実施しているようで,早くも9/28には新鎌ヶ谷など一部の駅で新しいソフトに切り替えられており,更新完了した駅では使用停止措置を解除している。
修正ソフト適用後の履歴では当然種別の印字が復活しているのだけど,不具合ソフトで狭まっていた印字幅が再び広くなり,昨年度末導入時点と同じ幅で印字されるようになっている。
【9/29追記ここまで】
旅客:小室・牧の原・日医大のサイン新意匠化
2017年度から3カ年計画で進めていた北総線各駅の案内サイン更新施策によって,中旬までに小室,牧の原,日医大の3駅のサインが更新された。
さて,今回の施策はバリアフリー施策の一環として案内サインの多言語化を行うとともに,サインの意匠を全駅で統一するというもの。2017年度には東松戸管区,2018年度には新鎌ヶ谷管区を対象に実施したのだけど,新鎌ヶ谷については新京成線高架化の関係で構内改良が見込まれていたので,この分は千葉ニュータウン中央と順番を入れ替えて実施していた。したがって,2019年度は千葉ニュータウン中央を除く千葉ニュータウン中央管区の各駅と新鎌ヶ谷の4駅が対象で,すでに新鎌ヶ谷は6月までに更新を終えているので,これで全14駅の更新が完了したということになるのね。
更新内容については,これまで展開してきた各駅と同じで駅名標を除くサイン類を一式取り替えている。ただし,新意匠化によって若干の方針転換も見られ,2018年度までの各駅では出口案内サインに周辺施設名を列挙していたものの,これを再び省略するようになるなどの変更点もある。また,アクセス線については2015年度の日医大更新時からオレンジ色のJISピクトを併用してきたのだけど,これも今回はオミットされている。
第6世代の特徴である「区切り線」を活用した情報の整理は今回の3駅でも相応の成果を出していて,見やすくなった表示も多い。なかには相変わらず不便な表示もあるのだけど,以前のように「上りホーム→」なんて不親切極まりない案内はなくなっていて,従来よりもサイン設置箇所が増えていることも改善点として挙げていいだろうね。
その一方で,相変わらず地色の黒と青の輝度コントラスト比の小ささは見直されていないので,印刷したシートをアクリル板に貼っている電照式のものは内部の照明が点いていない限り地色の差は認識しづらい。ガイドライン等では白内障等の患者に識別しづらい色の組み合わせとして黒青はやめとけって書いてあるものもある。
そして極めつけは牧の原3番線。ここは下りホームながら上り列車の発着があるので,2013年度のサイン更新以来その旨を赤文字で注意書きとしていたのね。今回も注意書きを踏襲しているのだけど,黒地に細い白縁取りと同じく細い赤文字という組合せで正直読めない。ホーム上の小さいサイズのものに至っては番線の意匠が幅をとった関係で駅名の割付が詰まってしまい,注意書きの文字は以前よりも級数が小さくなっていよいよ読めなくなった。3番線しかないのに「(3番線:~)」なんて同じこと書いてるあたりチェックも甘い。
ひとまず2017年度からの施策としては今回の3駅で完了ということになるのだけど,目的のひとつである多言語化については達成されているものの,意匠の統一については新鎌ヶ谷のリニューアルにあわせて新しい意匠のサイン(第6世代)を導入してしまったので未達成。最終年度の4駅が新意匠で見た目全く別物となったので,もはや統一感としては施策展開前のほうがまだマシ。あくまで意匠の統一は「分かりやすい案内」を実現するための手段のひとつにすぎない…と割り切れば良いのかもしれないけど,ちょっと残念だね。しばらくすれば各駅が新しい意匠で揃うのだろうけど,その前に見直すべきところを見直したほうが傷が深くなる前にいいと思う…。
ちなみに今回更新した3駅のなかで牧の原は2013年度,日医大は2015年度に全てのサインを更新したばかり。統一感もそうだけどこういうの施策としてどうなのかね。
運転:10.26ダイヤ修正の概要明らかに
先月の時点では「Xデー」が他社の動向から明らかになった程度だった今年度のダイヤ改定について,ついに北総公式からもプレス発表があった。またまたまたまた修正だって。
もはや次の改正がいつになるか見通せないレベルで「修正」である。ダイヤ番号はNo.117-5となり,枝番号は前代未聞の5に達している。
今回はスカイライナーの20分間隔化などアクセス線列車については大規模な変更があるものの,北総線列車についてはアクセス線につられて調整する程度となるため「修正」といった感じ。そんなこと言ったって過去の「改正」は…とか思うところはあるものの,北総線列車が大きく変わらないという意味ではまさしく修正ダイヤである。
はてさて,現段階の情報で気になるのは新鎌ヶ谷始発となる下り普通列車の新設だろうか。ヒに書いた通り,「新鎌ヶ谷始発」としては震災ダイヤ以来8年ぶり,「新鎌ヶ谷始発となる下り」としてはアクセス線開業時の2010年7月改正で下り初電が矢切始発となって以来9年ぶり。「新鎌ヶ谷始発となる下り」の一列車として見れば,下り初電が矢切で夜間滞泊するようになった2006年12月改正以来13年ぶり。そして,初電ではない時間帯で考えると2001年9月改正で区間列車がなくなって以来18年ぶり…とまあ色々さかのぼって「復活」とこじつけることはできるかな。もちろん輸送障害による運転変更とかを考慮すると年数はだいぶ縮まるけどね。
しかし実態としてはアクセス線列車のスジが動いたことによって運転間隔が保てなくなったとかそういう調整の意図による新設で,今回は他にも多数こういったスジの動く箇所があるだろうから,列車の新設とまではいかなくても妙ちきりんなスジが調整の結果生まれていてもおかしくはない。むしろ,かなりの数の北総線列車が影響を受けているはずで,規模としては「改正」レベルで動きがあると見てもいいだろうね。
京成とか他社線の事情をこのウェブサイトで論ずるつもりは毛頭ないので,そのへんは他をあたられたし。
車両:7500形・9200形の客室灯等がLEDに
ここ数年ほど北総では車両に限らず蛍光灯灯具のLED化を進めているのだけど,このほど7500形・9200形の両形式について客室灯と乗務員室灯がLED化された。
客室灯等のLED化については,2016年度に7300形2編成,2017年度に9100形3編成を対象に実施してきた実績があるのだけど,これらは車内に掲示されているように二酸化炭素排出抑制対策事業費等補助金という部外資金の調達によって施工してきた。詳細にいえば,当時環境省と国交省が進めていたエコレールラインプロジェクトという事業があって,LED照明の導入については1/3の補助率で助成金が得られたのね。これを活かして車両や駅照明のLED化を進めたのだけど,ここから不勉強なのでよくわかってないのが,北総としては経年の浅い設備については対象外としてきたことだった。たとえばアクセス線開業に際して増設したホームとかがそれで,7500形なんかも例に漏れず対象外だった。
そんな7500形や9200形についてLED化が始まったのだけど,今回の特徴はなんといっても部外資金を得ず自己資金で施工している点だろうね。件の補助金をもらうと規程上その旨を表示しないといけないので,表示がないということは自己資金なのだ。補助金自体は若干見直されながらも今も続いているので,部外資金が得られなくなった…というわけではなさそう。やはりミソは経年なのかね。
ちなみに灯具の仕様はすでに運用している7300形や9100形と同じ。この記事を書いている時点では9201編成が中旬から,7503編成が下旬から改造を終えて運用入りしている。
信通:松飛台・大町の簡易表示器が復活
先月に引き続いて忘れた頃に…な案件。松飛台と大町に設置されている旭光製の簡易表示器がようやく復活した。
これは17年度末に両駅に設置されたもので,列車の接近条件が入ると導光板に彫られたメッセージが光り,音とともに接近を知らせてくれるというもの。機能としては既設の発車標と駅放送装置で完全にカバーできているし,むしろ両者が列車を詳細に案内できることを考えれば,簡易表示器は別になくてもそんなに困らない。むしろ要らないレベルの設備といっても過言ではないだろうね。
ともあれ,導入以来この簡易表示器は沈黙している期間が妙に長かった。導入してもすぐには使用開始にならず,稼働したあとも2019年1月の発車標更新によって再び沈黙という有様。ここまでの経緯には色々な事情があるのだろうけど,それにしても「調整中」の期間が長すぎてすっかり筐体には養生テープの痕が残ってしまっている。
動作する条件や動作状態については発車標更新前と変わらず。
施設:北国分駅の外壁修繕が終わる
7月のよもやまで取り上げた北国分駅の外壁修繕工事が予定の工期を終えて竣功した。
工事件名の時点で察することができるけど,駅舎の見た目が変わるような大きな工事というわけではない。
でも海側の駅名表示は取り上げておきたいね。7月の予想通り,やはり今回の工事にあわせて電照文字化されているのだ。
電照文字の詳細については7月に書いた通りで,照明を点けていない昼間は黒文字に,夜間には照明の光がフィルムを透過して白文字になるというもの。名前は「デュアルカラーフィルム」と呼ぶそうで,スリーエム社のウェブサイトに仕組みの解説が載っている。
北総線内ではすでに新柴又,東松戸,千葉ニュータウン中央,牧の原に導入されているのだけど,いずれも間近で見られるような駅ではない。こんなに面白い機能をもった特殊フィルムを間近で見られるだなんて…とかモタキ心をくすぐられてみたり。
ちなみに以前は2期線各駅で標準となっていた青い立体文字だった。海側(南口)は駅舎に,山側(北口)はロータリーに面して看板が立っていたのだけど,後者は数年前に撤去されている。それとは別に駅舎の屋根にも「北国分駅」と大書きされていた過去もあるが,今回の修繕工事ですっかり面影はなくなってしまった。
施設:牧の原駅コンコースの床タイルに変化
牧の原のコンコースといえば乳白色のテラゾータイル…だったのは数年前の話。今ではすっかり黒ずんだ床タイルが美観を損ねまくっている。
そんな牧の原の床タイルについて,月初から中旬にかけて改札内の一部が新しいタイルに取り替えられるという動きがあった。
床タイルの取替は部分的で,改札とA・C階段に挟まれた箇所だけを取り替えている。がっつり全部取り替えないのが気になるところだけど,工事件名を見てみると「印西牧の原駅ラチ内コンコース床タイル調査補修工事」というそう。全部は替えないよ(今回は)…というニュアンスが件名から伝わってくるね。
ここで牧の原コンコースの床タイルを振り返ってみると,他の例に漏れず,ここも開業当時のタイルをつい数年前までそのまま使ってきた駅だった。ところが,雨天等で滑りやすくなるというタイルの特性を改善すべく,15年度末にタイルの表面を削って粗く加工してしまった。
これは目論見としては成功でたしかに滑りにくくなったものの,代わりに汚れに対する弱点が生まれてしまった。削った直後は白くて綺麗に見えた床タイルは早々に黒く汚れてしまい…今に至っているというわけ。
床タイルに対する滑り止め対策としては,2000年代初頭に1期線各駅のテラゾータイルに滑り止めを塗布した実績があり,こちらも一定の効果はあったのだけど,牧の原では採用されなかった。結果として美観を損ねてしまったのだけど,今回これに対して手を打った…というのはあり得るだろうね。もちろん単純に経年で陳腐化してきたというのもあるだろうけど,ニュータウン中央を差し置いてまでやる意味はなかろう。
今回の取替では,すでに1期線各駅に導入されているような滑りにくいタイプの床タイルが採用されている。概ね色味や意匠は従来からの牧の原のそれを踏襲しているけど,目地割りはオリジナルと異なっている。今回の様子を見て近いうちに全部取り替えることになるだろうから,そのときには目地割りの違いも気にならなくなるかな。
安推:安全報告書の公表
9月といえば上期の終わりでもあり,安全報告書の季節。もう2019年度も折り返しなんだね。
はてさて,安全報告書といえば北総の施策を理解する上で重要な資料のひとつ。なにせ北総は他社局と違って対外的に発信している情報が圧倒的に少ないのだ。
とくに工事計画に関係する記載を拾ってみると,まず設投の金額は昨年度比で117%となる1,355百万円を計画している。この金額は概ね2015年度以前の水準といったところ。2016~17年度には耐震補強の関係で増額していたため,それを考えれば今年度も例年通りの工事量という認識でよさそうだね。
また,C-ATSの全線展開と列車無線のデジタル化についても言及があった。この2項目は7月に発表された18年度決算報告書にも記載されていたので,事柄としての新規性はないんだけど,注目は完了年度について明言されたことだろか。C-ATS化は2023年度,DSR化は2020年度運用開始,2022年度導入完了とのこと。だいたい過去に予想した通りのスケジュール感(参考1,参考2)で計画されているみたい。現状の進捗としては,C-ATS化については高砂~矢切間がほぼ竣功間近という感じ,その他区間は設計段階みたいで目に見えた変化はなし。DSR化は7500形,9200形,7800形で計4編成が車上局準備工事完了,地上局はぼちぼちというところ。
電気分野から一転して施設分野を見てみると,昨年度末に竣工した東松戸の新旅客トイレについて言及されている。駅施設のバリアフリー化は毎年度紹介されているのだけど,2018年度は旅客用トイレを全駅で洋式化する施策の完了年度だった。そういう点で東松戸の新旅客トイレは重要な意味合いがあるのだけど,バリアフリー化をもっと広く考える上では松飛台・大町の多機能トイレ新設と大町のエレベータ設置は目下の目標だろうね。とくに大町のエレベータ関係は18年度に現地測量を終えて設計に着手している様子なので,そろそろ動きがあってもいいと思うのだけど…。
おまけ
20日と21日の2日間,京成の新車3100形がアクセス線内試運転の関係で日医大まで来るということなので様子見。各車に測定用の配線が仮設されており,とりわけブレーキ受信装置など制動装置関係に配線が目立ったことから,その手の測定をしていたと見ていいだろうね。
…ともあれ,このウェブサイトは北総線に関するウェブサイトであって京成の事情については対象外。北総線に関係するといえば日医大の折返しくらいなもので,入換信号機12Rの制御によって1Tから引上線BTに進路をとり,こんどは入換信号機14Lの制御で2Tに据え付ける…という一連の入換だけ見に行った。
なにせ3100形はアクセス線の新車なのでど~~~~せ営業開始したら腐るほど見るし…ということで,表示差分になりそうな写真はしばらくお預け。
【9/29追記ここから】
↑で「京成の事情については対象外」なんて書いてるにもかかわらず京成の話題…のように見えて北総にも関係してくる話題が飛び込んできた。
というのも表示制御器と設定器に関するお話なのだけど,10月改正まで1ヶ月というこの絶妙な時期になって京成車で行先表示に京急久里浜を追加し始めたのだ。ろこつ~
これが意味するところについては時期的なものを考えればダイヤ改正を見据えて…というところだろうね。異常時に使える表示を増やす意図というのも考えうるところではあるし,実際に京成車による京急久里浜行は過去に何度か走ってしまっている。その点で久里浜は出る順上位で未対策というわけだけど,なにも今更やる必要はなかろう。
…まあ京成の事情は特に扱うつもりはなくて,このウェブサイトとして注目なのは今回の改修内容について。ざっくり書くと純増で,設定器では38番,表示制御器では43番に当該表示が追加されているのね。
これの何が気になるかといえば,昨年うだうだと書いた三浦海岸対応とちょっと違う感じの動きを見せている点なのだ。あのときはイベント列車として恒久措置ではなかったから,設定器15番,表示制御器19番の金町を三浦海岸に置き換えていた。そしてこのウェブサイトでは,その理由についておそらく表示制御器側が40種類しか表示を持てないんじゃないか…なんて予想を書いていたのね。
ところがどっこい今回は純増である。41種類目の表示が入ってしまったことで「実はできた」という新たな答えを突きつけられたわけだ。つまるところ小糸系の表示システムにはまだまだ余力があることが分かったのだけど,41種類目の表示が「43」に登録されたのはちょっと気になるよね。
この辺の事情は確かめる術がないのだけど,おそらく表示制御器で飛ばされた41番と42番には経由表示用のデータが入っているんじゃなかろうか。どっちが本線でアクセス線で…というのは知らんけど,単独表示はしないものの経由表示も表示は表示なので隠れてアドレスを持っているんだろうね。そして京成車はアクセス線開業のときに経由表示を追加したから,この時点で39番まで埋まっていたので40番から先に湯川と経由表示2種を突っ込んだ…というのが10年前の真相だったんじゃなかろうか。
次年度には京急線内の駅名改称が控えているけど,そんな改修いまやったらLCDが羽田国際を追加したときみたいに闇になっちゃうじゃんね。半年も。
【9/29追記ここまで】