沿線点描

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7828編成の登場と今後の展望

年度末の近づくこの季節は時にドッキリが潜んでいるから油断できないのだ。

2月5日朝の運行を最後に京成車8両編成としての運行を終了,今年度導入の新造車3036編成(3000形13次車)にバトンを渡した3778編成であったが,このほど北総鉄道向けリース車7828編成となることが確認された。

この記事では,もうじき来るであろう北総車の新しい仲間について,今後の展望を含めて考えていきたい。

 

まずは7828編成の現況から。

車両の外観は2月12日時点で京成時代の帯を剥離したのみであるが,上画像において山側#3扉の右側戸袋に掲出された「7821」の車号板からも分かるように,明確に北総車へと生まれ変わりつつある。

3748編成→7818編成の改造時には,山側は京成帯のまま車号板・社名板が取替えられていたが,今回は帯と板を同時に施工しているようである。

これについては,留置される洗浄54番線は外部より海側の確認が難しいことから,実際には海側で京成帯のまま北総車号板となっている可能性も否定しきれない。

車号板と対になる社名板も既に取替えられている。車号板同様にまだリベットの頭が青くタッチアップされていないものの,社名板を掲げるその姿はまさしく「北総鉄道」の車両である。

帯の剥離に伴うマスキングが剥がされたばかりであるため,「HO<‘SO」ロゴマークはまだ貼られていないが,これは帯の施工と並行して行われるだろうから,近日中に姿を現すと見て良いだろう。

車両正面の車号については,前回…つまり2016年度の改造施工車である9808編成では1枚板のプレートで施工された。一方で,前々回…2014年度改造の7818編成や2002年度改造の7808編成は,京成時代の車号を一部流用しながら切り抜き文字で施工されている。9808編成のプレート施工が千葉ニュータウン鉄道車両だからなのか,北総鉄道車両でも全て今後はプレートになるのかは前回の不確定要素であったが,今回の7828編成への改造はこの不確定要素を確定させる上で重要な改造である。

結果的には,7828編成の正面車号がプレートとなることはほぼ確定的だ。7821号車になる3771号車の文字は全て撤去されており,これは以前の7818編成や7808編成の改造時には起こり得なかった状況である。7808編成の場合は3808編成からの改造だったため「808」および「801」の文字を残して千位「3」を「7」に貼替えた。7818編成は3748編成からの改造だったが,一位「8」および「1」は京成時代のものを残し,千位~十位の「781」を貼り替えている。これらの改造の過程では流用する文字は車体に残したまま施工されていたが,今回3778編成→7828編成で活用できそうな一位の文字まで剥がされているということは,文字の流用を考えていない証左であろう。つまりプレート施工となる可能性は極めて高く,「前回同様」のフレーズで施工計画が進むとすればプレート施工は既にスタンダードなものとなっているだろう。

 

現時点での特筆すべき事項は,車号板の書体が北総鉄道標準のヘルベチカではなく千葉ニュータウン鉄道標準の書体(京成と同じ固有のもの)を使用している点であろうか。7818編成の時に平成丸ゴシックになってしまった社名板の書体は今回しっかりナールになっており,この辺りの塩梅は9808編成の時と同じと言って良い。7800形だけで見れば7808~7828編成それぞれがバラバラ(7808→車号:ヘルベチカ/社名:ナール,7818→車号:ヘルベチカ/社名:平成丸ゴシック,7828→車号:京成系標準/社名:ナール)という統一感のNASAであり,かつてのデザインポリシー委員会が聞いて呆れるような有様だが,趣味的には面白い…のかもしれない。

車号板・社名板の書体云々は先述の正面車号がプレート施工となる件と合わせて考えても9808編成の改造仕様を踏襲したものだろうから,現時点で未確認の妻面車号板・社名板・客室車号板・客室禁煙表記などは9808編成のそれと同仕様であると予想されよう。つまるところ9808編成の北総帯バージョンというのが7828編成と考えて良さそうだ。

 

現状の確認としてはこんなところだが,車両をマクロ的に捉えると7828編成は一体何なのだろうか。

北総が車両を調達する理由としては,これまで大きく分けて3つの理由が存在した。

1つ目は,路線の延伸による走行キロ増加に合わせた必要車両数の増加。都心直通時に導入した7300形や公団2期線延伸時に導入した9100形はこの理由で調達している。

2つ目は,老朽化による車両の代替。7500形や9200形がこの理由で調達しており,それぞれ車齢30年程度の7000形と9000形を代替している。老朽化したリース車両もこれで交換しているが,リース車両の代替は京成側で新造車を導入し,その玉突きで交換するため,時期を外した場合はいくらボロでも生きながらえる運命にある。過去には7050形1次リース車の7054~7051や7260形が上手く生きながらえており,1~2度の定期検査を通過してしぶとい活躍を見せた。

3つ目は,何らかの理由で車両が使用できない時のツナギとしての調達である。先述のようにタイミングのシビアなリース車代替の関係で,7050形の検査期限延長を目論んで借り入れた3400形がこの例にあたる。

 

では,7828編成の導入は上の3つの理由のどれにあたるのだろうか?

結果から言えば3つ目であろう。1つ目については,現時点で北総車の走行キロ数が大幅に増える要素が無いため,あり得ない。北総線の利用者数は右肩上がりであり,近年では2期線沿線の開発が進んだことから輸送形態が変わりつつあるのも事実であるが,増発の可能性があるかと言えば現状では低く,乗務員の人数やダイヤを見ても7828編成の増備だけで何とかなる話ではない。なにせ印旛車両基地の能力は12編成分しかない。やすやすと13編成目を増やしたところで,保守管理する能力が追いつかなければ破綻してしまう。また,1号線系統の運行形態が大きく変わるような新線開業・延伸も今のところはなく,万が一にも芝山鉄道が例の看板のごとく九十九里まで伸びたとか,千原線が海士有木まで伸びたとか,諦めきれず久里浜線が油壺まで伸びたとかしても,北総車の運行範囲からして影響は少ないだろう。現実的なのは,東京オリンピック開催や訪日外国人の増加など社会的事象を元に成田スカイアクセス線の強化が図られ,北総車や都営車が分け隔てなく入れるようになることだろうが,前者は2020年度のことであるから,増備するのであれば2019年度…というシナリオが無駄なく出来るところで,2017年度末に増備するのは些か早すぎる。なお,このシナリオに沿って導入が確定しているのがAE形の増備編成であり,四半期報告書において既に2019年9月の導入が示されていることから,あながち考え方の照準はズレていなさそう。

2つ目を否定する要因としては,北総車で車齢の高かった車両(代替されうる理由のある車両)の代替が2016年度の9018編成代替を以って完了しているためだ。現時点での最古参は1990年度導入の7300形2編成であるが,1994年度導入の9100形と合わせて車体改修(北総の安全報告書では「オーバーホール」と記載)を施工しており,これら2形式と同時期に製造された7800形・9800形も7808編成を除き,京成時代に車体改修を施工されている。このため,これら形式は今後も10~20年程度の継続使用が見込まれ,現時点で代替を必要とする車両は存在しないことになる。車体改修未施工の7808編成の施工は近い将来あり得るだろうが,車体改修のために京成に返却し,改修済の別編成を借り入れるよりは,車体改修期間が長く不都合なら3408編成のようにその間だけ車両を借りればいい話である。なにより7300形などの先例を踏まえて車体改修と定期検査の施工時期を調整すれば,わざわざ代替や暫定的な借り入れの必要は無いのだ。しかも,走行キロか前回検査からの経過年数で決まる定期検査(北総社内では月検査も定期検査に含むが,以下では月検査を除いた重要部検査,全般検査を指す。北総の規定上,重要部検査は4年or60万キロ,全般検査は8年を超えない範囲で行う)の施工時期は,走行キロの伸びが遅いことから北総車は後者で決まることが多いが,これには年毎の偏りがあり,4年サイクルの中で検査施工編成の少ない年が必ず回ってくる。この年に車体改修を施工するよう計画すれば,恐らく影響は最低限になるだろうし,大きな問題があるとは思えない。

そうなると消去法で3つ目になるわけだが,これを裏付けそうな情報が既に出始めている。暫定調達ということは,前回の事例(3408編成)がそうであったように北総車が何らかの理由で使えないことが背景にあると見て良い。その理由が無くなれば京成に返却されるだろうし,理由が無くなるまでは借り入れておくといったところだ。つまり,北総車が使えなくなる理由に目星をつける必要があるが,前述の7808編成の車体改修はあまり現実的ではないため,別の理由であろう。この理由となりそうなのが,前述の京成の四半期報告書に記された「列車無線設備更新」というものだ。機器のリプレースなのかシステムごと別のものに更新するのかは判断が付かない書き方だが,2022年度末までの足掛け5年にわたって総額72億円が投じられる大規模な投資計画として記載されていることは注目に値する。2013年度から直通先の京急でIRからデジタルSRへの更新が進んでおり,将来のSR完全切替があるならば京成や北総車も当然対応する必要があること,京成でも3000形12次車からSRアンテナの台座が2箇所に増えていることなどを踏まえれば,件の列車無線設備更新とは京急同様のデジタルSR化であると考えて良さそうで,北総線内がデジタルSR化するかは分からないが,デジタルSR化される京成線・京急線に直通する北総車のデジタルSR対応工事は少なくとも必要な工事である。

京成車のデジタルSR工事については,京成の所有編成が91編成(2017年度頭時点。3500形は全て最小単位の4両編成に直して算出。リース中の車両は京成資産のため京成所有編成に計上)であり,計画が5カ年であることを考えると,5年間ずっと車両改造を行っていたとしても(1826日で91編成改造)1編成あたり約20日の改造日数が必要という計算になる。実際には5年間で新造される車両分の代替車両は施工しないだろうから,改造編成数は約80編成と見積もることができるが,改造に費やせる全体の日数は改造場所となるだろう宗吾区の工場稼働日数に左右されるだろうから,年間休日を110日程度として250日程度の勤務で考えれば(1250日で80編成の改造)現実的な1編成あたりの改造日数は約15日と算出される。

北総車ではどうかと言うと,現在の12編成のうち3編成(7808・7818・9808編成)は京成の資産であるため,この3編成は京成側の予算で施工することになる。すなわち,3編成の施工場所は宗吾区と考えられるが,一方の9編成は印旛で施工しなければならない。京成と同じペースで施工するとすれば,たった9編成なので改造所要日数は累計で135日となる。これをどのくらいの年数で施工するかは分からないが,5年計画なら年平均施工日数は約26日となり,1編成欠けた状態が年間で1ヶ月増えることになるのだ。北総の運用数は最大10運用のため,11編成あれば予備車込みで最低限の数字上は間に合うのだが,実際には4~6日程度かかる月検査や車輪転削などの保守管理で使えない編成が毎月発生するため,定期検査の多い年には到底これで良いわけがない。しかも,京急がそうであったように,台座などを設置するだけの準備工事とアンテナ本体が付く本設工事の2種別で工事が進むとしたら,年間で1編成欠ける日数は更に増加するだろう。検査等の定期的な事象以外の理由で1編成が一定期間離脱するのは7808編成の車体改修と同じだが,SR工事は全編成を断続的に施工する点で異なっており,こちらの方が追加車両の調達の必要性は高い。つまり,7828編成は北総車のデジタルSR工事中の予備車両であり,1編成が工事中でも他の12編成でこれまで通りの配車を行える…という目論みあってのことだろう。また,件の京成の「列車無線設備更新」が今年3月から始まるため,7828編成のリースがこの時期なのは工事の一環であるという証左にもなる。

 

というようなシナリオで7828編成が代替なしの「純増」するとなると,7800形は9100形・7500形と肩を並べる3編成の大所帯となり,オリジナルの7300形を数で追い越してしまう。車両システムがほぼ同じの7300形・7800形・9100形・9800形の総数は9編成。ここまで増えると”印旛沼”がさらに深くなること間違いなし。

 

長々と書き連ねてはみたが,実際にそうであるかどうかは数年後にならないと分からないだろう(なにせ7828編成自体まだ走っていない!)。SR工事が始まり,実際に予備車両としての役目が立証され,工事完了と前後して返却され…というシナリオを辿れば,この仮説は正しかったことになる。返却されずにまたまたまたまた借りパクしてしまったらただの増備車両だったということになるが,この場合は将来の増備車両を見越しつつSR工事も…という目論みだったということになろう。いずれにせよ今回のキーと見ているSR工事の完了は京成で2022年度末。鬼が笑うというか,中期経営計画に匹敵する長さであるから(2022年度には京成の現行長期経営計画すら終わって次の計画に入っている),この先二転三転して全く違う結果になることだってあり得るわけだ。5年後の1号線に答えがあるのだとしても,その答えはまだ確定し得ないだろうから,ちょっとの間のお楽しみ…ということでこの記事は〆ておこう。

13番目の北総車,果たしてどうなることやら…

 

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もうじき「高砂第一工廠」を始めて12年目に突入するそうな…

 

個人ウェブサイトとしてはだいぶ後発であり,ウェブログやSNSに移り変わる前夜のようなタイミングではあったが,このサイトも少なからずそういった潮流にのまれてブログをメインとした時期もあった。

かれこれ5年ほど前までは北総線関連の情報発信を速報的に行っていたこともあったが,今ではすっかり放置気味なのは言うまでもなく。

最近は同人誌を主力媒体にシフトしていることもあり,尚更ウェブサイトは放置気味なのだが,その間に個人ウェブサイト全盛期にお馴染みだったレンタルサーバが続々とサービスを終了。

何となく予感はあったが,いよいよこのサイトが借りているレンタルサーバも月末で終わるそうである。北総線情報の速報サイトだった頃には月間6~10万PVほどあったが,おそらく今は10分の1も無いだろうこのサイトを次のサーバに移すかと言えば……

5年後にこの記事の答え合わせをするも何も,このサイト自体がこのままいくと今月廃車(w