沿線点描

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北総線よもやま話1807

2018年7月の北総線よもやま話。このよもやま話は将来的に四季報として纏めていく前段階の落書きコーナー。

三浦海岸ゆき

3者直通50周年なんだって。
歴史の浅い北総はまだ50年も歩んでいないので,当然今回のそれは蚊帳の外。だからこのウェブサイトで三浦海岸行を取り上げることはないのサ…。

しかしこの話題には北総車の仕様を考える上で重要なヒントが潜んでいる。

結論から言えば,表示制御器の登録上限が判明したということだ。

今回の三浦海岸表示の追加は,長い歴史をふまえると「復活」と言えるのだが,どうやって追加したかという手法に注目すると,今回の運転は興味深いものとなる。三浦海岸の行先表示は現在の京成車には搭載されていない。今回の運転では,設定器の始発・終着駅コード15番,すなわち金町を三浦海岸に置換えたことが確認できた。

しかし,なぜ置き換える必要があったのだろうか。

まず第一に設定器と表示制御器は別物である。設定器は停車駅予報装置の制御部として,始発・終着駅の組合せから走行経路を確定させ,走行距離の算出を行うもの。一方の表示制御器は,設定器から送信された設定情報を元に,車外や車内の表示器に行先などの表示指令を出すものだ。

行先を追加するには,設定器に駅コードを足して列車情報を送信できるようにして,追加された駅コードを表示制御器で読み替えて表示器に指令できるようにして,かつ表示器に必要な表示を足すという改修が必要になる。すなわち,設定器,表示制御器,表示器の3機種(正確には車内と車外の表示器で4機種)が行先の追加に対応できる状況になければ,追加はできないということだ。

こうした状況の中で,これまでも京成車の行先表示追加は幾度となく行われてきた。直近はアクセス線開業時の成田湯川追加だが,このときも設定器の71番,表示制御器の40番で成田湯川を登録した。表示制御器と表示器はSPCで接続されていて,表示器に登録された番号と表示制御器の指令番号は一対になっているので,表示器内部アドレスの行先40番に成田湯川が入っていることになる。

三浦海岸を単純に続番を取って登録しなかったのは,「しなかった」のではなく「できなかった」環境があるのだろう。

設定器も表示制御器も行先を入力するサムロータリスイッチは10進2桁で,I/Fは00から99まで100通りの入力を受け付けることになる。その理屈でいくと設定器も表示制御器も番号自体はかなり空きがある。特に設定器は30番台を京急線内の駅に割り当てているので,京成線に割り当てた15番を使う必要なく,すんなり追加できるはずなのだ。考えうるのは,設定器と表示制御器のどちらかが既に行先駅に割り当てているアドレスを使い切っているということ。I/Fで100通りの入力ができても,内部のROMがそれ以下しか入らなければ,容量オーバーになった時点で上書きしていかざるを得ないのだ。

ではどちらの機器だろうか。

確証はないが,その答えは表示制御器,すなわち小糸側の問題だろう…。現在,設定器には対照表上で34種の駅コードが入っているが,対照表にない隠しコードを含めると過去に35種を超えていたこともあり,追加の余力は十分あると思われる。ゆえに表示制御器が40種しか登録できないということになるが,この数字は京成車のサービス機器としては納得のいく数字で,もともとの方向幕が40コマを制御の上限としていて,表示制御器やLED表示器はこれを置き換えるシステムであること,つまりは40コマ上限を踏襲したシステムとして構築された可能性は十分に考えられるのだ。

とはいえ,表示制御器以下のSPC接続されたシステムには,表示器に登録された表示パターン情報であったり,表示制御器に刺さった運行カードに入っている案内表示制御情報であったり様々な情報があって,この全てが40種しか登録できないのか,一部だけに40種の上限があるのかは分からない。機器それぞれにソフトがあり,それらの組合せで動作する以上,どれが制約なのかは様々な事象から帰納的に求めていかざるを得ない。その特定ができるほどの証拠は今のところ手元にないのである。

アクセス線にいろんな京急車が…

アクセス線に限らず高砂より北に京急車を走らせようとすると,かねてより「停車駅予報装置」の問題がつきまとってきた。

停車駅予報装置は京成車に搭載されている乗務員支援機器で,始発・終着駅や種別の組合せとTGから算出した走行距離に応じて,停車駅予報や進路,無線の確認を促すというもの。都営車と京急車には別メーカのものが付いていて,音色も動作も若干異なっている。両者の車両には大して興味がないので踏み込めないが,モニタ装置に付随する機能のひとつであり,京成車のように仰々しく装置と呼ぶまでもない,あくまで付加機能どまりな存在である。都営車には今のところ全編成搭載されているこの機能だが,直通運用の少ない京急車には8Fや一部の8Vなど限られた編成と車種にしか搭載されておらず,未搭載車は必然的に高砂以北の運用に制約があった。

…というのが過去の話になった。

かねてよりデジタルSR無線取付改造中の京急車だが,あわせて各車種に搭載を進めているモニタ装置に停車駅予報機能が付いているため,上記の制約も無意味になり,7月1日付でどれでもおっけーって感じになった。

ところが,あくまでこれは京成本線の話。アクセス線に入ってきてはいけないことになっている8Sは,これとは別問題なのでやっぱりだめ。なのに早々2日に入れようとしちゃったんだねぇ…。ちょうどダイヤが乱れていた日ではあったけれど,当日の状況を整理するとダイヤ乱れは無関係で,穴向こうの担当者がうっかり入れちゃった,というのがどちらかというと正解に近そう。

どこで気付いたのか,誰が気付いたのかはともかく,8Sのアクセス特急はアクセス線入線直前に阻止に成功。3050形が高砂以北を代走することで解決させた。ただし,3050形に文庫行の表示がなかったので,お得意の即席貼り紙対応となった。注目すべきは表示制御器による種別のみ表示指令…京成にしては珍しい対応だったけど,その週末には↑↑の件で堀ノ内行となった際に京急線内で同じような対応をしている。まあ…京成車がこれらの行先を入れるまでは貼り紙問題はつきまとうだろうね…。その解決ができるかといえば,↑↑のように三浦海岸ひとつでこのザマなので厳しい…。

ちなみに8Vとかは編成問わずSR改造完了車は入れるようになったので,別に黄色かろうがなんだろうがただの定期列車,どうでもいい…

京成は強冷房,北総は…

今年の暑さが関係しているのかは分からないが,6月頃から3000形の一部で空調制御プログラムの改修が進んでいる。

3000形などの空調操作器は「除湿」「冷房」「暖房」と3モードを切り替えられるようになっているのだけれど,「冷房」よりも「除湿」を入れたほうが体感的に涼しいこともあって,乗務員はこれまで「除湿」を多用してきた。なぜ除湿が多用されたかというと,除湿モードの制御プログラムがミソだった。これは温湿度計で計測されている客室内の実温度と無関係に,弱めの冷房を強制的に動かし続けるというもの。通常の冷房モードでは,プログラムに設定された冷房設定温度のしきい値次第で冷房の強弱どころか動作すら止まってしまうので,除湿はマイコンのプログラムを無視して強制的に冷風を出せるという利点があったわけだ。

…というのが良いか悪いかといえば,あまり良い話ではなかろう。少なくとも一般利用者に「冷房」ではなく「除湿」を入れているといえば,なぜ冷房を入れないのだとクレームになるだろうし,連続稼働の負荷で冷房機の故障が増える可能性も孕む。そんなこんなで昨年夏頃から京成車の冷房設定温度は若干下げられていたのだが,本件でさらに設定温度が下がるという事態になったのね。

なんと改修車では「除湿」ボタンが「冷房強」ボタンに変更された。機能自体も除湿と違って,設定温度ベースの冷房動作なのだけれど,設定温度がとにかく下がっているよう。走行時間や外気の影響を考慮して列車を選び調査してみると,それまでの車では約26℃だった客室内の温度が約24℃にまで下がっている。1~2℃ほど設定温度が下がったということになるが,これは弱冷車と通常の車両の温度差に匹敵するもの。つまるところ,冷房強モードの弱冷車はそれまでの冷房モードの通常車両と同じくらいの温度になっているというわけ。

今年は暑いので冷えてくれる分には全然良いのだが,中には冷えてほしくない人もいるのね。キンキンに冷やす路線になった京成とは対照的なのが北総で,なんと7月中旬から弱冷車のラインデリアが完全に止まってしまった。

別にラインデリア自体は冷気を出すものではなく,ラインデリアは「横流ファン」の一般名詞からも分かるように,扇風機のように風を起こして空気をかき混ぜるだけの装置。ただ,ラインデリアと蛍光灯の間にあるスリットが冷風の吹出口なので,ラインデリアが動くと真下に出ていくだけだった冷風が車両内レール方向に広く行き渡るのだ。ラインデリアを止めると冷風が行き渡りにくくなり,冷風が直接人体に当たりにくくなるから,「寒い」という苦情も出にくくなる…というのが狙いかな…

とはいえ北総車は京成から来た一部編成を除いて吹出口への整風板を付けていないので,相変わらず不均等に冷風が吹き出しているのだから,そこを改善したほうが良いのでは…?と思わなくもないが,そもそも整風板でどこまで均一になったのかは確認の術がなく,プラシーボである可能性も否定できない…。今のところ整風板も冷房強も北総車に波及してくる雰囲気はナシ。相変わらず東芝の車はホントに冷えないし9100形のCU765Bは超冷えるし,冷房機を選びたくなる季節はまだまだ続く…。

△7828編成に取付けられている整風板

矢切の覆工補修が本格化

6月中旬から始まっていたのだけれど,このところ矢切駅ホーム部の側化粧壁を取り外して,裏に隠れていた本来の覆工を補修する工事が本格化してきた。

昨年度2Q~3Qにかけて1番線側の側化粧壁を外し,1番線で夜間滞泊となる車両を2番線泊に長期間変更してまで何やらやっていたのは記憶に新しいが,あれは今回の補修工事に向けての調査だった。

2期線開業から27年,矢切駅付近の栗山トンネルは1989年12月に貫通しているので,実際には29年もの月日が経っているわけだが,その間に特に大きな補修という補修をしなかったからか,それとも工事中から漏水問題のあったトンネルだからか,昨年度の調査結果が良いものでなかったのは想像に難くない。

化粧壁を剥がして現れた4番線側の覆工は,外力によるひび割れや漏水によって無数の変状が確認できる状態。特に漏水の痕跡は酷いもので,北方から順に修理に着手しているが,完了している箇所は導水樋だらけになってしまった。

△化粧壁がなくなった矢切駅4番線

△導水樋だらけになった北方

4番線側が終われば1番線側を施工するようで,まだまだ時間はかかりそうな感じ。

矢切とは別件だが,日医大でも月初から足場の組み立てが海山両側で始まっていて,こちらも補修工事が始まりそう。

デジタルSR無線のついた7300形

4月のよもやまに書いたとおり,京成車ではデジタルSR無線導入に向けた改造が4月から始まっているが,3000形最優先なのかしばらく3000形ばかりが施工されてきた。

そんな中で車体改修を行っていた3828編成が3700形最初のデジタルSR無線準備工事車として出場。車体改修による長期間の運用離脱のおかげで,ついでに施工できるだけの日数が稼げたんだろう。

車体改修自体はど~~~~~~~でも良い内容だが,屋根上に生えかけのSR無線台座が現れたことは注目しないわけにはいかないだろう。今回の3828編成に対する施工が,将来施工されるだろう7300形とその他同型車の範となるのは当然のこと。3000形4次車以降のSR台座付き設計で作った7500形や9200形はその台座にSR無線アンテナが生えるだけだろうけれど,アンテナ台座のない7300形ほかがどうなるかは気になる話題ってわけだ。

さて,3828編成の台座取付位置だが,なんとIR送受信アンテナの中間に台座が設けられた。この位置は,かつて7300形が新京成直通用にSR無線アンテナを付けていた位置そのものなのだ。3700形には新京成SRアンテナを付けていた実績はないが,7300形と共通設計である以上,取付場所としてこの場所を選ぶのは至極当然のことか。

そしてこの取付位置といえば,かつてSRアンテナを生やしていた7300形では,アンテナがなくなってからも屋根のビード処理が途切れていてあからさまに痕跡を伝えている。ここに台座が取付けられれれば,新京成直通時代の痕跡はまた一つ失われることになるだろう。

△デジタルSRアンテナ取付台座が付くとこうなる?

位置が決まったらあとはアンテナが生えてくるだけ。ということで数年後には実際に走ることになるデジタルSRアンテナ付きの7300形を予想してみると…

△デジタルSRアンテナが生えたすがた

SRアンテナが引っこ抜かれた約25年前には思いもしなかったことだが,運命とはフシギなものである…。あの場所に再びSRアンテナが生えてしまうのだから。

そして,いずれは不要になるIRアンテナの処遇だが,これは撤去となるか残置となるか,どちらに転ぶかはまだ判断材料に乏しく,未知数だ。もし引っこ抜いてしまうなら,台座の処理をどうするかだが,仮に台座を残置してアンテナ本体を撤去するだけとしたら…

△ダサ…

ちょっとどころでなくマヌケな7300形になるだろう。IRアンテナありきで設計された車両なので,送受信アンテナの離隔などを考慮して後位に寄った冷房機の配置は無駄になってしまうし,なによりIRアンテナそのものが一号線直通車両としてのアイデンティティだっただけに,喪失感すら覚える。

7300形はほんの一時期だけ冷房機を撤去して非冷房車として本線を走ったこともあるが,冷房機だろうがアンテナだろうが当たり前のものがなくなるのはあまりよろしくない…。今後数年でやってくるその運命を受け入れられるだけの心の準備をしておけという啓示だとすれば,今回の3828編成の一件はど~でもいいとか言ってられない感じ。。

9108編成故障相次ぐ…

この頃9108編成が何やら不調な感じ。。

発端は7/20の1732N新柴又での保護で,このときは復旧させて運転を継続した。当該は9107号車だったようで,21日いっぱい運休して22日の71N運行で矢切まで試運転。
これで直ったかと思えば,25日に再び故障。やはり9107号車で,どうも主回路機器に不具合がある模様?

9107号車といえば2013年3月と10月に相次いで制御器を焼損させた経歴のある車だが,はてさて今回はどんな不具合だったのやら…。続報待ち。

9108の件もそうだけれど,調査中案件としては6月7月となぜか北総車の宗吾回送行路が往路のみ所定のNo.1(89N)から40分遅い93Nという別のスジで走っているのだけれど,これは一体…??? 情報求む。。