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北総線よもやま話1910
2019年10月の北総線よもやま話。このよもやま話は将来的に四季報として纏めていく前段階の落書きコーナー。
営業:さらに縮小された秋の1日乗車券
毎年恒例となる秋の1日乗車券が今年も10月5日から22日までの約3週間にわたって発売された。
8月の記事でも紹介したように,北総線の1日乗車券は今よりもずっと経営が厳しい時代に手作りの増収施策として始まったものだった。現在では春夏秋冬の年4回発売されていて,いずれも「1日乗車券」と同じ名前を名乗っているのだけど,もとを辿れば春夏秋冬それぞれに異なる出自があって,2014年度までは各時期で名前も違っていた。
秋に発売される1日乗車券は長らく「コスモス・ラーバンきっぷ」と呼ばれていて,さらにその前は「コスモスまつり1日乗車券」という名前だった。コスモスは「秋桜」と書くようにまさしく秋の花で,秋の行楽期に発売する1日乗車券として季節感をもたせた名前なのだけど,それだけが由来ではない。
この乗車券が最初に発売されたのは,北総線が印西牧の原まで延伸した1995年度のこと。今では面影がすっかりなくなってしまったけど,当時の千葉ニュータウンは駅前ですら広大な空き地を残していた。その一部はコスモス畑として活用されて,「コスモスまつり」が開かれていたのね。
それが乗車券の名前の由来であり,沿線内外からコスモスを見に訪れる人を取り込むための施策だった。この時期になると沿線内外へのPRを兼ねて7000形や7150形にヘッドマークを掲出していたのもその一環。都営地下鉄各駅から高砂までの往復割引乗車券「コスモスみどころキップ」を京成や都交の協力により設定していたこともあった。
したがって当初の発売日はコスモスの見頃にあわせて10月の土日祝日だったのだけど,千葉ニュータウンがコスモス一辺倒だった時代はそう長く続かず,時代の変化とともに乗車券の名前や発売日も見直されていった。最近では9月下旬の連休から11月上旬の連休までを発売日としていて,当初よりも長い期間発売されるようになったのね。
ところが昨年度から1日乗車券の発売日が見直されるようになり,秋の1日乗車券では既に9月下旬の連休が対象から外されていたのだけど,今年度は11月上旬の連休はおろか10月末の土日も外されてしまった。発売日はわずか8日のみで,これは秋の1日乗車券の発売日として過去最も短い。縮小の続く1日乗車券,今後どうなっていくことやら…。
ちなみに春夏秋冬の年4回発売されている北総線1日乗車券で最も長い歴史を持つのが秋の1日乗車券。夏の前身「生徒諸君!夏休みきっぷ」と冬の「ゆくくるきっぷ」は1998年から発売している。
運転:10.26ダイヤ修正
8月から取り上げてきたように,相互直通運転を行う各社局にあわせ10月26日付で運行ダイヤが修正され,No.117-5ダイヤが施行された。
北総線列車に対する変更は少なく,あくまで他社局の都合による調整の意味合いが強い「修正」ではあるものの,新鎌ヶ谷~印西牧の原間の平日下りの有効列車が1本増えている。新ダイヤに関する詳細は会員向けの記事を参照。
ダイヤ修正に伴って日医大と車両基地留置車が変更になる件については,25日の第1965T牧の原で都営車と北総車を車両交換することで都営車を車基に収容,北総車はそのまま最後まで走って日医大泊…という流れで対応している。あまり興味がなかったので事象だけ掴んでおしまいちゃん。
運転:新京成80000形搬入に伴うあれこれ
京成に続いて新京成でも新車80000形を入れるということで,今月は新京成80016編成の搬入に伴う動きに北総も協力。
8月のAE9編成と同様に80016編成も越谷から陸送で印旛に搬入されており,印旛からは恒例の高砂・津田沼経由でくぬぎ山へ回送という流れ。北柏や北初富の連絡線が今もあったらどれだけ楽なんだろうね。
搬入に先立つ6日終車後には81F運行でくぬぎ山からN828編成が車基に送り込まれた。これは北総線内(と京成線内)を自走できない80000形をN800形で牽引するためだったのだけど,この日新京成車が北総線を下ったのは直通運転廃止以来27年ぶりだった。新鎌ヶ谷本屋口の件といい,今年度は新京成絡みで歴史の重さを感じることが多いね。
陸送搬入後の80016編成は車基起点方の砕石積込線に留置され,N828編成はしばらく21番線に留め置かれた後に80000形2両を3-4号車間に組み込んだ8両編成となった。こうした入換を行う際において,過去のN800形搬入時の実績では15tモータカーを使用していたのだけど,それがお役御免になったこともあって,今回は牽引役のN800形を使用していた。N800形はまず南北3両ずつに分割され,北方3両が起点方の保守基地手前まで自走して待機。その後,砕石積込線から80000形2両を人力でN800形の手前まで押してきて連結し,N800形の牽引でS3番線に移動。残ったN800形の南方3両を連結して8両編成とする…という流れ。
既存車両で新造車を挟んで搬入するという今回の回送は,過去にN818編成を9000形で挟んで搬入した時を思い起こさせるのだけど,ちょっと事情が違っていて,むしろそれが今回のミソだった。N800形は北総で車両確認を実施していないので営業時間帯の運転はできず,終車後の間合いで線路閉鎖して機械扱いで回送するしかないのね。これでは色々な制約が加わるので,一晩に運転できるのは往復どちらか一方向だけ。すなわち送り込みか搬入どちらかしか運転できないので,1回の回送で2両しか搬入できないのに1編成で回そうとすると最短で6日もかかってしまう。
9000形は当然営業時間帯でも運転できたので,くぬぎ山に運んだあとは営業時間帯に印旛に戻すことができた。なので搬入回送を1編成で毎晩運転できたのだけど,N800形では二晩に1回になってしまうというわけだ。そこでN800形を2編成使って送り込みと搬入を交互に担当させることで3日間での搬入を実現するというパワープレーに。
今回の回送は全て土休日に運転されたのだけど,これは新京成車2編成が常に回送で拘束されることになるため,運用数の多い平日には運転できない…という事情があるんじゃなかろうか。ちなみにもう1編成のN800形はN848編成だった。
この回送を行う上で最もベストなタイミングは12~14日の3連休で,実際に最初のN828編成の送り込みのタイミングを考えると恐らくこの3日間で電撃的に回送してしまおうという心づもりだったのかもしれない。計画がどうだったのかは知らないけど,現実には13日と14日,そして22日の終車後にそれぞれ搬入を行っている。19日と20日に回送していないのは,↓↓で他の作業と競合していたからってことだろうね。
運転:京成3100形運用開始に伴う乗務員教習
新京成に続いて車両基地を賑わわせたのが京成の色違い…もとい3100形だった。これは3100形が26日のダイヤ改定より運用開始となることから,これに先立つ19日から21日にかけて教習のため車基に来ていたもの。
新車の教習といえば昨年夏の都営5500形のそれが記憶に新しいところだけど,今回はわざわざ本線に出して習熟運転するまでもないと全日とも車基S4番線に留め置いたままだった。教習中はちょうど月検査の谷間だったようでS4番線に常に留め置けていたのだけど,教習に先立って送り込まれた直後は22番線に留置。ちょうど21番線には↑で紹介した80000形を組み込んだN800形が留置中で,わずか数時間ではあったものの新京成,京成,北総の3社の車両が留置線に並ぶ場面も見られた。ちなみに北総の車庫でこの3社の車両が1フレームに揃うのは1991年5月のモハ204号宗吾搬入時以来…かなあ。
京急都営と違ってまっっっったく注目されずしれっと終了したものの,3100形の送り込みは18日,返却は23日の37K運行でそれぞれ成田空港経由だった。諸事情あってか車両確認が未完のようで当面は北総線列車としての運用ができない模様。京成としては車両確認済みなのでアクセス線では26日から普通に走っている。非認定事業者だと時間かかるね…。
車両:9128編成の優先席表示に変化
正確には先月の話題なのだけど,先月末に検査出場した9128編成の優先席表示に小変化があった。
9100形に限らず北総車では,側窓と化粧板のほか,車体側面にも優先席を示すシールを掲出している。このシールの掲出位置は優先席設置箇所の最寄りの側引戸周辺であり,9100形においては戸袋の識別帯に重ねるように掲出していたのね。
ところが定期検査にあわせて9128編成の掲出位置が見直されて,なんと幕板部に移設されてしまった。具体的には長手方向の位置はそのままなのだけど,幕板の「せぎり」にシールの下端を合わせている。こんなに高い位置に掲出するのは800形以来かなあ…。
理由はよくわからんち。今までの位置で不都合があったとも思えないのだけども。とはいえ一昔前と違って側窓のシールが車外からでも視認しやすくなっている現状を鑑みれば,車体にシールを貼り続ける意義はそんなにないと思うんだよね。
しかも9128編成の車内にはシールタイプの優先席表示銘板が登場している。9100形では公団様式の水色のアクリル銘板を優先席付近の化粧板に掲示しているのだけど,2013年4月に増設した優先席箇所には掲示されていなかった。7300形など北総車は青地のシールタイプ(7800形はアクリル銘板)なので増設時にもすんなり対応できていたのだけど,公団仕様だった9100形は放置されていた…というわけ。
信通:高砂~矢切間まもなくC-ATS切替へ
これまでも何度か取り上げてきた高砂~矢切間の中間閉そく区間におけるC-ATS化について,19日終車後に現車による試運転が実施された。
試運転は京成車を使用して行われ,前半2時半頃まではS91運行を名乗る3718編成,後半はS93運行を名乗るAE5編成が使用された。両編成が同時に走ることはなかったものの,前半の開始前にAE5編成も高砂2番線に据え付けられ,後半までしばらく留置されていた。
今回はあくまで京成側の試運転といったところなのか,乗務は京成乗務員が担当。本社・現場社員のほかメーカ技術者が先頭車に添乗しており,その状況からC-ATS関係の試運転と推測した次第。この時期に現車を走らせるということは,過去の実績と同様に3Q中には切替ってスケジュール感の認識でよさそう。
ちなみに運転区間は時間から考えて高砂~新鎌ヶ谷間だったみたい。最初の1往復は矢切で折り返してきたのかすぐ戻ってきた。
施設:松飛台で多機能トイレ整備はじまる
かねてより怪しい雰囲気を出していた松飛台コンコースで多機能トイレ設置に向けた工事が始まった。
多機能トイレの設置は移動円滑化基準において定められた項目のひとつで,旅客施設に1箇所以上の設置が義務付けられているのね。北総線では,触地図案内板やエレベータなど移動円滑化基準に定められた他の設備とともに整備を進めてきて,多機能トイレについては年度初の時点で松飛台と大町を除く12駅で整備を完了していた。
これまでに整備されてきた各駅においては,施策開始時点で整備済みだった1期線を除いて自治体からの助成金を活用した負担金工事として施工していて,この関係でエレベータと多機能トイレの新設はワンセットの扱いになっていた。ところが松飛台はちょっと事情が違っていて,2007年度にエレベータのみ単独で整備していたのね。しかも助成金銘板がないことから,恐らくは自己資金工事だったよう。とにかく松飛台は異例だったわけ。
そんな松飛台だけど,エレベータだけ先行してしまったとはいえ多機能トイレを見捨てるわけにはいかないのだ。誘導ブロックの改修を行った際には多機能トイレの設置を見越して,予定地の周辺のみ誘導ブロックの取替を行っていなかった。なので「その日」は近いな~なんて思っていたのだけど,ようやく工事に着手したわけだね。
設置場所は写真から分かる通りラッチ内コンコースの突き当り,旅客用トイレの目の前。工期は1月までとのことで,過去の事例と同様に年明けにはしゅん功しそう。今回の工事で助成金が得られたのかはまだ分からない(調べてない)けど,その頃には判明してるだろね。
施設:白井でホーム舗装修繕はじまる
だいぶ傷みが出てきていた白井のホーム舗装がついに修繕されることになった。
白井に限らず1期線各駅といえば,開業から40年を迎えながらも当時の面影が今もなお色濃く残っているのが魅力のひとつだった。裏を返せば設備の陳腐化が進んでいるということでもあり,最近は積極的な改修に努めていたのね。
それでも手つかずで残っていたのがホームの舗装で,なんと開業当時のまま残っている箇所すらあった。1期線各駅は開業当時から8両編成に対応したホームを整備していたのだけど,当時は橋上駅舎である駅本屋とほんの僅かな上家しか整備されておらず,ホームのほとんどは雨ざらしだった。時代が下って利用者が増えてきた1990年代から上家の延伸を行うようになったものの,それでもホーム全体に上家が設置されたのは西白井だけで,それも2007年度になってようやく完了したに過ぎなかった。
ホームのアスファルト舗装は雨ざらしの環境で劣化が進んでいたものの,根本的な修繕工事は行われてこなかった。これまで舗装し直した箇所は限定的で,自由通路の架替で支障した白井の3号車付近や,線形改良工事で支障した小室2番線側(旧・1番線側),最近では点状ブロックを整備した際の笠石周辺などが主な箇所だったわけ。舗装の修繕や上家の整備に対する過去の姿勢については,資産として経営上の判断があったのだろうけど,流石にそろそろ手を入れる時期が来たみたい。
今回修繕されるらしい白井の起点方は丸40年にわたって雨ざらしという特にボロい箇所なのね。ここは過去に部分的な修繕も実施していたものの焼け石に水。今回は起点方の40m程が対象のようで,2000年代初頭まで使用していた開業当時の自立式駅名標の痕も失われる。
その他
北総線の「即位礼正殿の儀」関係あれこれ。
祝祭日なので運行ダイヤが土休日ダイヤとなるため,各駅にはポスターを掲出。
ポスターと同様に発車標にもスクロール文を登録して周知に努めていた。
ちなみに↑の試運転は19日の75N:7308。No.117-4ダイヤ土休日の75Nは下り小室で待避するダイヤになっていて,6月の記事で取り上げた北総車が北総車に抜かされる場面はここでも見られる。試運転列車でこのような場面が見られるのはNo.115ダイヤの土休日67N以来だったのだけど,今回は当時のように3本並ぶようなことはない。