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葛飾納涼花火大会開催に伴う臨時列車運転

葛飾納涼花火大会実行委員会を主催とする第59回葛飾納涼花火大会が7月22日に江戸川河川敷で開催され,会場付近に新柴又駅を擁する北総鉄道においては,7月11日付プレスリリースの通り新たな施策として臨時列車4本が運転された。当該花火大会開催に伴う臨時列車の設定について,本稿ではその運転方を紹介する。

臨時列車の概要

当該花火大会については従前から近隣の他鉄道駅を利用したアクセスが一般的である一方で,会場付近に位置していながら周辺道路を含めて比較的空いていた新柴又駅を利用する来場者も一定数あり,これまでも社員を動員した混雑対策がとられてきたところである。近年においては新柴又駅を利用する来場者が増加傾向にあることから,当年度において臨時列車4本が新たに設定され,来場者輸送の強化と利便性向上が図られることになった。

花火大会当日の臨時列車ダイヤ

△花火大会当日の臨時列車ダイヤ

臨時列車は新柴又駅を含む京成高砂・新鎌ヶ谷間に上下各2本の普通列車として設定された。下り普通列車1本を除いて新柴又場面20時台の運転で,すなわち花火大会(19時20分~20時20分)終了後の帰宅混雑時間帯における運転だった。臨時列車の設定に際しては,京成高砂や新鎌ヶ谷での折返し間合いを活用し,代走などの運用調整を不要とした合理的な運転方がとられた。それぞれの詳細については以下の通りである。

第1963K列車~第2062K列車(図中の①)

京成上野発京成高砂行の第1995列車(京成高砂19時33分着)の京成高砂入庫後,京成高砂発羽田空港行の第2062K列車(京成高砂20時33分発)として出庫するまでの折返し間合いを京成高砂・新鎌ヶ谷間1往復の臨時列車として充てたものである。

普通新鎌ヶ谷行として運転された第1963K

△普通新鎌ヶ谷行として運転された第1963K

新鎌ヶ谷4番線発の上り営業列車となった第2062K

△新鎌ヶ谷4番線発の上り営業列車となった第2062K

臨時列車の運転方は,京成線第1995列車を京成高砂到着場面で臨時の普通新鎌ヶ谷行として第1963K列車(京成高砂19時35分発・新鎌ヶ谷19時55分着)に仕立替し,新鎌ヶ谷到着後は臨時の普通羽田空港行である第2062K列車(新鎌ヶ谷20時14分発・京成高砂20時33分着)として折返すものとされた。

第2062K列車は所定京成高砂始発の京成線列車を新鎌ヶ谷始発に延長したもので,途中駅での行先変更がないことからも分かる通り,今回の臨時列車では唯一途中駅での仕立替が発生していない。また,第2062K列車の新鎌ヶ谷折返しは,上り列車用の車掌用ITV設備を持たない新鎌ヶ谷4番線から上り方向に営業列車として折返すもので,まず見ることのない取扱いである(節電ダイヤの際に運転された新鎌ヶ谷始発の上り列車はITVのある3番線発の設定で,折返しに支障する下り列車はすべて4番線発着に変更されていた)。このほか,京成高砂での仕立替を挟んでいるものの,第1963K列車は上野線方面から来た京成所属車両による新鎌ヶ谷行という前例のない列車であった。

第2030N列車・第2035N列車(図中の②)

同一時間帯に京成高砂および新鎌ヶ谷で折返す北総所属車両運用の折返し間合いを活用して,京成高砂・新鎌ヶ谷間に上下各1本の臨時列車を運転したものである。活用されたのは,羽田空港発京成高砂行の第1931N列車(京成高砂20時44分着)から京成高砂発西馬込行の第2130N列車(京成高砂21時01分発)の京成高砂折返しと,印西牧の原発新鎌ヶ谷行の第2034N列車(新鎌ヶ谷20時42分着)から新鎌ヶ谷発印西牧の原行の第2135N列車(新鎌ヶ谷21時16分発)の新鎌ヶ谷折返しの両間合いで,すなわち31N(2)運行と35N(2)運行を入れ替える格好で臨時列車が設定された。

印西牧の原行の下り発車標に対して入線してくるのは下り新鎌ヶ谷行という妙

△印西牧の原行の下り発車標に対して入線してくるのは下り新鎌ヶ谷行という妙

下り方向の臨時列車は,所定京成高砂止の京成線第1931N列車を京成高砂到着場面で臨時の普通新鎌ヶ谷行として第2035N列車(京成高砂20時45分発・新鎌ヶ谷21時05分着)に仕立替し,さらに新鎌ヶ谷到着場面で所定印西牧の原行の第2135N列車に再び仕立替する運転方であった。上り方向の臨時列車は,所定新鎌ヶ谷止の第2034N列車を運休とし,印西牧の原から新鎌ヶ谷までを第2034N列車と同時刻で運転する臨時の普通京成高砂行である第2030N列車(印西牧の原20時27分発・新鎌ヶ谷20時43分発・京成高砂20時59分着)に変更した上で,第2030N列車の京成高砂到着場面で所定羽田空港行の京成線第2130N列車に仕立替するものとされた。

第2035N列車から第2135N列車への仕立替は行先を変更して同一方向に営業運転が継続されるもので,平常時の北総線列車ではまず見ることのない取扱いである(異常時には印西牧の原で別列車となることもあるが,それでも今日において新鎌ヶ谷で仕立替することはまずない)。

効果と意図

当年度が初めての施策であった臨時列車設定の取組みについては,今後その効果を踏まえて次年度以降の継続判断を行うものと推察するところであるが,まずは字面通りの増発によって少なからず利便性向上と輸送力強化が図られたことは言うまでもない。

臨時列車運転に関する告知ポスター

△臨時列車運転に関する告知ポスター

花火大会来場者の帰宅混雑時間帯においては,下り方向には約15分間隔で普通列車の運転がある一方で,上り方向はスカイライナーの影響で普通列車の運転間隔が不均等となり,約20分空いてしまう時間帯が存在する。たとえば臨時の第2130N列車が設定された時間帯は,まさに上り普通列車の間隔が空いている時間帯であり,混雑のピークとなる時間帯に対して所定の定期列車の運転間隔を補うことで混雑緩和を狙う意図があったものと推察される。

とはいえ,これらの臨時列車による混雑緩和が期待通りの効果を生んでいたかは定かではない。不確定要素の多い催事輸送に対して要員や車両運用の都合から理想的な増発が難しいことは想像に難くないが,臨時列車の運転時間帯や区間といった設定内容の精度向上など,限られたリソースの中でより的確で効果的な内容に改善が重ねられ,さらなる混雑緩和に寄与する施策となっていくことを期待したい。