沿線点描

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2022年度の北総線動静

2022年度(2022年4月~2023年3月)の北総線においては,会社創立50周年を迎え「50周年プロジェクト」として様々な企画が実施されたほか,通学定期運賃を最大64.7%値下げする大規模な運賃改定や,区間列車のさらなる増発を盛り込んだダイヤ修正による利便性の向上,列車無線やATSの更新による安全面の強化が図られ,安全安定輸送の実現と沿線地域の活性化に資する施策が展開された。本稿は当年度における北総線の主な動静を概要として紹介するものである。

全社の動静

経営企画

運賃改定

運賃水準の引下げ及び通学定期乗車券の割引率拡大を柱とした運賃改定が10月1日付で実施され,平均15.4%の値下げが実現した。

値下げにより再び初乗り1区の運賃は200円を切った

△値下げにより再び初乗り1区の運賃は200円を切った

運賃改定に際して行われた運賃表の切替作業

△運賃改定に際して行われた運賃表の切替作業


10月1日付で実施された運賃改定の概要は,かねてより沿線地域から指摘されていた「メタボ運賃」の是正と通学定期運賃の引下げが主で,すなわち千葉ニュータウン対都心の利用を前提に極端な遠距離逓減制で設定されていた運賃カーブを見直し,北総線内の移動需要に鑑みて中距離運賃区で最大100円(IC運賃では105円)を値下げするとともに,通学定期運賃については割引率を拡大して京成電鉄相当の運賃水準とするものである。

なお,本件運賃改定については,2021年6月23日に第49期である2020年度決算の公表にあわせて「運賃値下げの可能性の検討に着手」する旨が告知され,同年11月19日に平均15.4%の値下げを盛り込んだ新しい運賃水準の変更届出を監督官庁に対して実施,同日付で改定日及び新運賃が公表されていた。

運賃改定に伴う案内が並ぶ千葉ニュータウン中央駅

△運賃改定に伴う案内が並ぶ千葉ニュータウン中央駅

改定日には朝5時前から長蛇の列ができた千葉ニュータウン中央駅

△改定日には朝5時前から長蛇の列ができた千葉ニュータウン中央駅


運賃改定に伴う乗車券の買替えや払戻し等の取扱については,改定を前に第2四半期より各駅に案内が掲出された。主な内容としては,改定日を跨ぐ乗車券については改定日以降に新たな運賃で買直すことで旧券の未使用分に対して払戻しが受けられる旨や,改定日直後には定期券発売所の混雑が予想されることから窓口営業時間の延長を行う旨等が案内された。改定日当日には初列車前から多くの利用者が定期券発売所に並ぶ姿も見られ,運賃値下げの様子を複数の報道機関が好意的に報じた。

営業終了を待たずに使用停止となった自動券売機

△営業終了を待たずに使用停止となった自動券売機

北総線の運賃改定に伴い乗車券の発売を中止していた京急の自動券売機

△北総線の運賃改定に伴い乗車券の発売を中止していた京急の自動券売機


運賃改定に際しては,切替作業のため前日9月30日の24時頃より自動券売機での乗車券類の発売を終了し,営業終了後に運賃表の掲示を含めた切替作業が進められた。切替の様子については新鎌ヶ谷駅での作業が報道機関に公開されており,千葉日報や産経新聞等がこれを報じた。なお,本件運賃改定に関連して,地方空港等に設置されている京浜急行線の自動券売機については,改定日まで発売を一時中止する措置がとられた。

線路使用料協定の改定

千葉ニュータウン鉄道と北総鉄道との間で締結されている線路使用料に関する協定が10月1日付で改定され,北総鉄道が千葉ニュータウン鉄道に支払う線路使用料の算定方式が見直された。

小室・印旛日本医大間においては,千葉ニュータウン鉄道は鉄道施設を保有する第三種鉄道事業,北総鉄道は千葉ニュータウン鉄道の鉄道施設を借りて運行を行う第二種鉄道事業を営んできた。同区間は北総とは別に千葉県によって計画された区間で,千葉県から鉄道事業を継承した公団が1983年度から2000年度にかけて順次開業させてきたが,公団は当初より現場業務の大半を北総に委託し,直轄では計画業務のみ実施する体制をとった。

公団線の運営における考え方は,当初の開業区間が小室・千葉ニュータウン中央間と小規模であったことを前提に合理的かつ効率的な運営方として採用されたもので,県営鉄道時代の1973年5月に県と北総が締結した「直通運転に関する覚書」の体制を概ね踏襲したものだった。当初の体制において公団線はあくまで公団によって営業されていたが,鉄道事業法施行を受けて1988年に北総が公団線区間の第二種鉄道事業者となったことで,北総が公団の鉄道施設を借りて公団線区間の営業を行うことによる精算の観点から,両者間に「鉄道施設及び車両の使用に関する協定」等が締結された。

1988年の新体制構築に際しては公団線開業以来の旧来のスキームが極力踏襲されたと考えられ,北総が公団に支払う線路使用料の算定方式は公団線区間の運賃収入の全額相当とされた。公団から鉄道事業を継承した千葉ニュータウン鉄道との間においても同様の算定方式が用いられてきたが,近年においては北総線の運賃値下げに関連して線路使用料の算定方式見直しを指摘する声が沿線の住民団体から上がっていた。

改定後の新たな算定方式は「千葉ニュータウン鉄道が投下資本を適切に回収できる線路使用料額」とされ,改定の経緯について北総鉄道は「制度創設(1988 年)以降の状況変化を踏まえ、本来的かつ安定的な線路使用料の体系に変更する」ためと説明した。新たな算定方式下での線路使用料は,いわゆる総括原価方式として一定額になると想定される。北総鉄道としては同社の経営努力や地域発展による増収効果を享受できるようになることから,同社は「当社としての経営の自由度が高まる」と説明しているが,当年度の運賃改定と直接的な関係はない旨を千葉日報が報じている。また,昨今のコロナ禍のような運賃収入の減少が線路使用料収入に直結しなくなるため,千葉ニュータウン鉄道においても安定的な事業環境の構築に寄与すると考えられる。

会社創立50周年記念「50周年プロジェクト」の展開

会社創立50周年における取組みについては,昨年度から「50周年プロジェクト」と称した周年事業が展開されているところであるが,節目の年となる当年度においては,各種ツアーをはじめとした過去に例のない大規模な企画が多数実施された。

発車標に配信された会社設立日の記念メッセージ

△発車標に配信された会社設立日の記念メッセージ

7502編成による会社創立50周年記念ヘッドマーク電車

△7502編成による会社創立50周年記念ヘッドマーク電車


会社設立から50年を迎えた5月10日には,創立50周年に際してのコメントが公式ウェブサイトや各駅の発車標を通じて配信された。同日からは,昨年度に発表されていた会社創立50周年記念のエンブレムを掲出した7502編成によるヘッドマーク電車の運行が開始されたほか,北総線各駅の入場券に加えて7500形と7000形の写真をあしらったポストカードをセットにした記念入場券「創立50周年記念入場券セット」が各駅で発売された。

5月に発行された初の社史「北総鉄道50年史」

△5月に発行された初の社史「北総鉄道50年史」

印旛日本医大駅での「当社秘蔵写真展」の様子

△印旛日本医大駅での「当社秘蔵写真展」の様子


北総鉄道で初となる社史は会社創立50周年にあわせて5月に発行された。冊子版は社内外の関係者向けとして少数部の制作に留まったが,内容はデジタルブックとして同社ウェブサイト上で7月から一般公開された。また,北総鉄道の所蔵する北総線建設時の写真や車両のデザイン案等の資料を展示した巡回写真展「当社秘蔵写真展」が4月から各駅や沿線の公共施設等で開催された。

フォトコンテスト及び絵画コンテストの告知ポスター

△フォトコンテスト及び絵画コンテストの告知ポスター

インターネットオークションの告知ポスター

△インターネットオークションの告知ポスター


コンテスト企画としては,写真コンテスト「北総線思い出フォトコンテスト」及び絵画コンテスト「北総線ぼくの・わたしの絵画コンテスト」が開催された。いずれも作品は特設ウェブサイト,インスタグラム,ツイッターから応募することが可能だった。絵画コンテストは会社創立30周年時にも実施されており,当時と同様に参加対象は小学生以下とされた。入賞作品は9月8日付で発表され,10月8日より発売された「北総鉄道カレンダー2023」への掲載や,巡回写真展と併催された入賞作品展で展示された。

9月には北総鉄道による初のインターネットオークション「創立50周年記念オークション」が特設ウェブサイト上で開催された。入札期間は9月21日から10月5日までとされ,7000形のほか,7050形,7800形,9000形等で使用されていた銘板や方向幕等計50点が出品された。

季刊誌「ほくそう」誌の応募者に抽選で配布された優待乗車証

△季刊誌「ほくそう」誌の応募者に抽選で配布された優待乗車証

イベントに際してアクロスモール新鎌ケ谷に展示されたパネルや鉄道模型

△イベントに際してアクロスモール新鎌ケ谷に展示されたパネルや鉄道模型


沿線地域における企画としては,沿線の商業施設等での記念イベントが開催された。新鎌ヶ谷駅最寄りの商業施設・アクロスモール新鎌ケ谷では,4月29日に「北総鉄道50周年記念イベント」が開催され,記念撮影やノベルティ配布のほか,7000形をあしらった大型パネルや北総所属車両の鉄道模型が展示された。このほか,8月14日には千葉ニュータウン中央駅最寄りの商業施設・イオンモール千葉ニュータウンで「夏休み 北総鉄道まつり」が開催され,ミニ電車の運転やペーパークラフトの配布,グッズの即売会が行われた。

また,会社創立50周年を記念した優待乗車証が発行され,季刊誌「ほくそう」通巻124号(2022年夏号)の誌上で展開された「お客様ご愛顧キャンペーン」に応募した読者から抽選で1,000名に配布された。優待乗車証は4枚セットで配布され,北総線全線を有効区間として1枚あたり片道1回の乗車に使用することができた。

開業時に敷設された50Nのカットレール「開業当時から使用レール」

△開業時に敷設された50Nのカットレール「開業当時から使用レール」

記念ゴルフボール及びチップマーカー

△記念ゴルフボール及びチップマーカー


記念グッズについては,5月5日に千葉ニュータウン中央駅で開催された即売会「鉄道会社周年記念グッズ販売会」を皮切りに発売が開始された。同日からは,ペットボトル等に使用できるボトルオープナー「ブレーキハンドル型ボトルキャップオープナー」が1,000円で発売されたほか,北総線開業時に敷設,リフレッシュ工事によって更換された新鎌ヶ谷駅構内の発生レールをカットした「開業当時から使用レール」が4,000円で発売された。

また,7500形のイラストや記念エンブレムをあしらったゴルフボール及びチップマーカーも制作されており,これらゴルフグッズについては沿線の一部ゴルフ場や即売会で限定的に発売された。

5月3日開催「印旛日本医大駅バックヤード見学ツアー」

△5月3日開催「印旛日本医大駅バックヤード見学ツアー」

5月14日ほか開催「西白井保守基地見学・鉄道技術員体験イベント」

△5月14日ほか開催「西白井保守基地見学・鉄道技術員体験イベント」


記念イベントについては,鉄道施設や車両を活用した体験型イベントや見学会等の様々な企画が年間を通じて実施された。

当年度で最も早く5月3日に開催された「印旛日本医大駅バックヤード見学ツアー」では,営業列車では乗車できない引上線の乗車体験のほか,平時には非公開の展望台や駅務室を見学することができた。

西白井駅に隣接する西白井保守基地において,保守用車や保存されている7000形車両の見学,山越器やタイタンパ等を用いた保線作業,転てつ器の転換やATカートの乗車体験等ができた「西白井保守基地見学・鉄道技術員体験イベント」は,当年度で最も多く開催されたイベントで,5月14日の初開催以来,7月28日,7月29日,11月3日,11月5日と計5日間10回の開催を数えた。また,このうち7000形車両の見学のみに内容を限定した「7000形車両を見学するツアー」も企画され,6月11日と10月16日に実施された。

8月25日ほか開催「夜間レール交換作業見学ツアー」

△8月25日ほか開催「夜間レール交換作業見学ツアー」

12月11日ほか開催「電車運転体験イベント」

△12月11日ほか開催「電車運転体験イベント」


8月25日と10月14日の終車後に実施された「夜間レール交換作業見学ツアー」は,リフレッシュ工事の一環として新鎌ヶ谷駅終点方で進むロングレール更換作業を見学するツアーで,緊張器を用いたレールの設定替やゴールドサミット溶接等の更換作業の一部始終を間近で見学することができた。ツアーは「旅と鉄道」誌の取材を受けており,ツアーの様子が同誌2023年1月号に掲載された。

8両の長編成を使用した運転体験として話題を呼んだ「電車運転体験イベント」は,車両基地の留置線で7500形を1回あたり約100m,計3回運転できる内容で,12月11日と3月19日の計2日間4回にわたり開催された。イベントの開催日以外にも3月7日にはフジテレビ系報道番組「Live News イット!」内において番組キャスターが運転体験に臨んでおり,各回ともに高い応募倍率が記録された。

1月21日開催「旧7000形車両カフェトレイン+撮影・見学会」

△1月21日開催「旧7000形車両カフェトレイン+撮影・見学会」

2月26日開催「ヘッドマーク付き車両撮影会」

△2月26日開催「ヘッドマーク付き車両撮影会」


当年度の新入社員が課題の一環として発案した「旧7000形車両カフェトレイン+撮影・見学会」は,西白井保守基地に保存されている7000形の車内でコーヒーブレイクを楽しみながら,車両の撮影や見学ができる内容だった。車内では「北総鉄道7000形バーガー」と称された特製エビカツバーガーやフライドポテト,昨年度末から開催されていた「北総グルメラリー」でもお馴染みだった特製クリームソーダ「北総ーダ」等,新鎌ヶ谷や東松戸駅構内にも出店している鎌ケ谷市のコーヒーショップ・イデカフェの協力によるメニューを喫食できた。

2月26日に開催された「ヘッドマーク付き車両撮影会」は,7503編成「沿線活性化トレイン」の運行終了を前に車両基地で実施されたもので,会社創立50周年ヘッドマークを掲出した7502編成と同編成の撮影を主として,留置中の他車両や車両部品の展示を見ることもできた。

夜間にはライトアップが実施された7000形

△夜間にはライトアップが実施された7000形

6月の見学会より車内には照明が仮設され,10月には広告も掲出された

△6月の見学会より車内には照明が仮設され,10月には広告も掲出された


ライトアップを案内する西白井駅の掲示

△ライトアップを案内する西白井駅の掲示

公開期間の終了に伴い7000形には再びシートが掛けられた

△公開期間の終了に伴い7000形には再びシートが掛けられた


会社創立50周年のイベント等を通じて存在感を示したのが,西白井保守基地の一角に保存されてきた7000形だった。保存に際して撤去されていた銘板類は海側の車号銘板を除いて5月の公開を前に復元され,6月には車内に仮設照明が設置された。その後も10月には車内に往時の広告が掲出されるなど,公開期間を通じて様々な手が加えられていった。

さらに,車両周辺に照明を設けて夜間のライトアップが企画され,会社設立日の5月10日から実施された。ライトアップは19時~21時頃に実施され,車両の行先表示を不定期に変更する等の演出も行われた。当初5月末までとされていた実施期間は12月25日までに延長されたが,6月27日より節電による中断を余儀なくされ,12月22日より終了時間を20時半までに短縮して再開された。ライトアップは最終的に1月9日まで実施され,同月のカフェイベント終了後に照明機材の撤去が行われた。なお,7000形の公開は2月20日をもって終了し,同日日中にシート掛けが行われた。

中止となった「北総鉄道DAY」の告知ポスター

△中止となった「北総鉄道DAY」の告知ポスター

新鎌ヶ谷駅におけるサイン入りポスターと着用制服の展示

△新鎌ヶ谷駅におけるサイン入りポスターと着用制服の展示


鎌ケ谷市に二軍の本拠地を置くプロ野球チーム・北海道日本ハムファイターズのイースタン・リーグ公式戦スポンサードゲームとして新たに企画された「北総鉄道DAY」においては,5月8日の開催を前に鎌ケ谷市出身の女優・藤江れいなによる案内放送が数点収録され,試合当日までICレコーダによる車内放送で用いられた。試合当日には,藤江れいなや女優・倉持明日香を招いた始球式やミニ電車の運行が予定されていたが,新型コロナウイルスの影響により試合は中止となり,球場で撮影されたPR動画数本は動画サイト・YouTube上に開設された「ほくそうチャンネル」上で7月21日から公開された。

また,藤江れいなについては,7月21日より会社創立50周年記念放送と啓発放送の計3種類がICレコーダによる車内放送として用いられたほか,新鎌ヶ谷駅ラッチ内におけるサイン入りポスター及び着用制服の展示,10月2日開催の「ほくそう秋まつり」への出演など,1月10日まで様々な場面で起用された。

周遊謎解きイベントの告知ポスター

△周遊謎解きイベントの告知ポスター

京成トラベルによる車両撮影会の様子

△京成トラベルによる車両撮影会の様子


会社創立50周年における他社とのコラボ企画は多岐にわたった。体験型コンテンツの制作を手掛ける休日ハック社とコラボしたイベント「キミへの想いを列車に乗せて」は北総線各駅と沿線施設を巡る周遊謎解きイベントで,難易度別に用意された3シナリオによって2人と1匹の視点からミステリを楽しむことができた。イベントの実施期間は当初7月23日から8月31日までとされていたが,12月31日まで延長された。

京成トラベルサービスによって6月26日に開催された「北総鉄道50周年ヘッドマーク車両で行く!印旛車両基地見学ツアー」は,会社創立50周年のヘッドマーク電車だった7502編成への乗車と車両基地での撮影会がセットになったイベントで,7502編成による臨時列車の往路は矢切から車両基地まで印旛日本医大引上線を経由する行路とされた。

伊藤園との共同企画で実施されたクオカードのプレゼントキャンペーン

△伊藤園との共同企画で実施されたクオカードのプレゼントキャンペーン

カフェイベントに際して作られたドリップコーヒー

△カフェイベントに際して作られたドリップコーヒー


各駅の自動販売機の管理を手掛ける伊藤園とは,会社創立50周年を記念したクオカードのプレゼントキャンペーンが共同実施された。キャンペーンは7月22日から9月23日まで実施され,同社の管理する自動販売機で対象商品を購入することで引換はがきを当てることができた。

コーヒーショップのイデカフェについては,1月のカフェイベントに際してドリップコーヒー「北総鉄道7000形特選珈琲」が発売された。ドリップコーヒーはカフェイベントの参加者にお土産として配られたほか,イデカフェ各店舗の店頭でも購入が可能である。

このほか,日本郵便株式会社関東支社によりオジリナルフレーム切手セット「Hokuso Railway 50th Anniversary」が10月14日に発売された。7050形及び800形を除く歴代の各車種の写真があしらわれた84円切手10枚とクリアファイル状のチケットケースをセットにしたもので,発売開始日の10月14日には鍋島船橋習志野台五郵便局長から室谷北総鉄道社長に贈呈式が開かれた。発売は県内184箇所の郵便局で10月14日から,日本郵便のウェブサイトで10月15日からとされ,10月17日からは東松戸,新鎌ヶ谷,千葉ニュータウン中央の各駅でも発売されている。

白井市クラウドファンディングによる7000形の公開

西白井及び白井駅に対する副駅名の設定に際して昨年度に白井市の実施したクラウドファンディング(ガバメントクラウドファンディング)の返礼として設定されていた西白井保守基地における7000形保存車両の公開が4月9日に実施された。

公開を前にシートが撤去される7000形

△公開を前にシートが撤去される7000形

保守基地の一角で初公開された7000形

△保守基地の一角で初公開された7000形


2006年度に全廃された7000形については,2005年度に廃止された7001号車が将来的な活用を前提に西白井保守基地で保存されてきたところであるが,これまで対外的に保存は公表されておらず,本件公開が初めての公開事例であった。公開に伴うシートの撤去は4月8日より行われ,8日には車両後方,9日には車両前頭部のシートが撤去された。本件公開時点では取り外されていた銘板類の復元は行われておらず,公開後には車両前頭部のみシートを掛けた状態とされた。

沿線活性化トレインの運行

北総線沿線の自治体と北総鉄道によって構成される北総線沿線活性化協議会による広告貸切列車「沿線活性化トレイン」が,8月31日から2月28日まで7503編成を使用して運行された。本件列車の運行目的については,協議会の構成自治体の一つである印西市は「北総線の運賃値下げを機に、沿線地域の魅力を発信し、多くの人に知ってもらい、住んでもらう」ためとしており,車内外には各自治体の広告が掲出された。

印西牧の原駅で行われた出発式

△印西牧の原駅で行われた出発式

千葉ニュータウン中央駅に展示された「電車いんザイ君」

△千葉ニュータウン中央駅に展示された「電車いんザイ君」


運行開始初日の8月31日には,沿線自治体の市長やマスコットキャラクター,室谷北総鉄道社長の出席した出発式が印西牧の原駅で行われた。式典では板倉印西市長から印西市のマスコットキャラクター・いんザイ君の北総線仕様となる特大「電車いんザイ君」が室谷北総鉄道社長に贈られており,11月12日から千葉ニュータウン中央駅で展示された。なお,10月2日開催の「ほくそう秋まつり」会場では,小さいサイズの「電車いんザイ君」ぬいぐるみが印西市により600個限定で一般販売されており,早々に完売を記録した。

式典後,沿線活性化トレインは印西牧の原発新鎌ヶ谷行の臨時列車として片道のみ営業運転を実施し,翌日から定期列車として運転を開始した。

白井市の広告が掲出された車内

△白井市の広告が掲出された車内

車両側面には沿線自治体の広告が掲出された

△車両側面には沿線自治体の広告が掲出された


広告については,車外は戸袋に県及び県内6市,車内は中吊り及び戸袋,網棚上に県,印西市,白井市,鎌ケ谷市の広告が掲出された。このほか側窓には北総鉄道による運賃値下げの広告が掲出されており,10月1日の運賃改定に際して貼替が行われた。このうち車内広告については,車両毎に掲出される自治体が異なり,1・4・7号車は印西市,2・5・8号車は白井市,3・6号車は鎌ケ谷市の広告であった。県の広告は各車両北寄の車端部に掲出されていた。

なお,本件列車の運行に際しては,広告貸切列車としての性質から協議会構成自治体による負担金の拠出を要しており,昨年度末から各自治体の予算委員会で本件列車の運行に言及する答弁が散見されていた。

営業系制服の変更

駅社員及び乗務員等の着用する営業系制服が4月1日付で変更された。本件更新について北総鉄道は「お客様にワンランク上の「安全」・「安心」なサービスが提供できるよう、より機能的で「働きやすさ」を追求した」としている。

「白井まきの」社員も新制服を着用している

△「白井まきの」社員も新制服を着用している

従前の営業系制服は2000年7月の印旛日本医大駅延伸開業にあわせて導入されたもので,変更は22年ぶりだった。なお,旧制服については回収の上で自動車用内装材として再資源化されたことが後日公表されている。

運輸部門の動静

輸送関係

No.118-2ダイヤ修正の実施

直通運転先の各事業者に合わせたダイヤ修正が11月26日付で行われ,区間列車の増発や平日夜間の急行運転廃止等が盛り込まれたNo.118-2ダイヤが同日より施行された。北総線では昨年度2月26日付のダイヤ改正によりNo.118ダイヤが施行されていたところであるが,前回改正から9ヶ月でダイヤの変更が行われた。

ダイヤ修正の告知ポスター

△ダイヤ修正の告知ポスター

区間列車は土休日午後にも運転されるようになった

△区間列車は土休日午後にも運転されるようになった


本件ダイヤ修正においては,実務上は修正に位置づけられる小規模な変更でありながらも,区間列車の大規模な増発やスカイライナーの新鎌ヶ谷一部停車化等の利用者に対する影響や話題性を踏まえて,旅客案内上は「ダイヤ改正」とされた。

北総線列車における最も大きな変更点は土休日における区間列車の増発で,朝のみ2往復の設定だった新鎌ヶ谷発着の区間列車は12往復の運転となった。朝は3往復の増発で5往復となり,7時台後半から10時半頃までは新鎌ヶ谷・印西牧の原間における普通列車の約10分間隔,時間6本運転が実現された。また,午後には14時台後半から19時台まで7往復が新設され,アクセス特急列車の運転によって歪となる普通列車の運転間隔改善が図られた。

一方で平日においては,京成高砂基準19時台に2本が運転されていた下り急行列車が普通列車に格下げされ,同18時台~19時台における普通列車の約10分間隔運転が実現した。北総線の急行運転は本件ダイヤ修正をもって廃止され,1993年4月のNo.103ダイヤ改正で設定されて以来30年弱に及んだ歴史に終止符を打った。

新鎌ヶ谷駅コンコースで行われた記念式典

△新鎌ヶ谷駅コンコースで行われた記念式典

出発式の後にはスカイライナー23号に対するお見送りも行われた

△出発式の後にはスカイライナー23号に対するお見送りも行われた


アクセス線列車については,京成電鉄の新中期経営計画に盛り込まれていたスカイライナーの停車駅改良が実施され,本件ダイヤ修正でスカイライナーの一部列車が新鎌ヶ谷に停車するようになった。新鎌ヶ谷に停車するスカイライナーは,平日・土休日ともに上りは10時台から23時台までの14本,下りは7時台から16時台までの10本で,上下ともに同駅で乗降可能とされた。

ダイヤ修正初日の11月26日には,田中京成電鉄鉄道本部長や芝田鎌ケ谷市長,室谷北総鉄道社長らによる記念式典が新鎌ヶ谷駅で実施された。また,1月15日には地元・鎌ケ谷市の小学生を対象とした乗車体験「スカイライナーに乗って成田空港へ行こう!」が北総鉄道の主催で企画され,小学生と保護者36名が招待された。

新鎌ヶ谷駅ラッチ内コンコースに設置されたライナー券売機

△新鎌ヶ谷駅ラッチ内コンコースに設置されたライナー券売機

試験で印西牧の原に残る東芝製発車標に表示された「スカイライナー」

△試験で印西牧の原に残る東芝製発車標に表示された「スカイライナー」


スカイライナーの新鎌ヶ谷停車化に際しては,同駅ラッチ内コンコースにライナー券売機が設置された。券売機は上下列車別に各1台の設置で,印旛日本医大と同様に京成所有ながら北総管理とする運用方である。このほか同駅コンコース及びホーム上には誘導サインや乗車位置目標が追加整備され,1~4番線のすべてにAE形の停車位置目標が新設された。また,駅自動放送装置への音声パーツの追加も行われており,同駅のみ接近放送の一部が変化した。

一連の作業は9月頃から進められ,ダイヤ修正の直前には各設備の確認や試験が重ねられた。

日中は特急運転となった京浜急行線内の北総線直通列車

△日中は特急運転となった京浜急行線内の北総線直通列車

新たに設定された京成所属車両による新鎌ヶ谷行列車

△新たに設定された京成所属車両による新鎌ヶ谷行列車


本件ダイヤ修正では,直通運転先の京浜急行線のダイヤが大幅に見直され,羽田空港・印旛日本医大間を基本とする日中の北総直通系統が京浜急行線内快特運転から特急運転に変更された。これによる所要時分の増加で該系統の運用サイクルは3時間20分から3時間40分に,所要車両数は11編成にそれぞれ増加しており,平日・土休日ともに大幅な運用の持替えが生じた。なお,京浜急行線内品川以南で北総所属車両の特急運転が行われるのは2003年7月のNo.110-2ダイヤ修正以来であるが,本件ダイヤ修正においては従前からの快特及びエ急行運転も引続き設定されている。

また,北総線内においては京成所属車両による新鎌ヶ谷発着の区間列車が設定されるようになった。

ステッカーによる掲示となった7300形の路線図

△ステッカーによる掲示となった7300形の路線図

急行の代わりにスカイライナーが加わった所要時間表

△急行の代わりにスカイライナーが加わった所要時間表


本件ダイヤ修正では急行運転の廃止等により路線図を改定する必要が生じた。改定にあわせて一部車種では掲出方の改良が行われ,9100形用の路線図は従来より寸法を一回り小さくなったほか,7300形等も9100形と同様にステッカーによる掲出に改められた。

前回ダイヤ改正から廃止されたポケット時刻表については,12月より北総鉄道の公式ウェブサイト上でPDF形式によるデータ配布がされるようになった。ポケット時刻表の体裁は廃止前の前々回No.117-5ダイヤから若干変更されているが,駅掲出の時刻表についてはNo.117-5ダイヤ以前の体裁に再び戻された。所要時間表はダイヤ修正当日には間に合わず,各駅には12月から掲出された。

営業関係

運賃制度の改正

当年度においては,10月1日付で運賃改定(値下げ)を踏まえた旅客営業規則ほか各規程の改正が行われた。また,3月18日付で障がい者用ICカードが導入され,新たに「障がい者用ICカード乗車券取扱特約」が制定されたほか,関連する規程の改正が実施された。

企画乗車券・記念乗車券の発売

多客期に設定されている1日乗車券は,昨年度に引続き年4回が設定された。それぞれの設定期間は,春季において3月26日~5月29日,夏季において7月23日~8月28日,秋季において10月1日~11月27日,冬季において12月24日~1月22日であった。これらの1日乗車券には,会社創立50周年記念事業の一環として歴代の北総所属車両があしらわれた季節ごとの台紙が配布された。昨年度から導入されたスマートフォンアプリ・RYDE PASSを用いた電子乗車券としての1日乗車券の発売は当年度も継続して実施された。

夏季「1日乗車券」ポスター

△夏季「1日乗車券」ポスター

配布された台紙(左上から反時計回りに春夏秋冬)

△配布された台紙(左上から反時計回りに春夏秋冬)


当年度に開催された周遊謎解きイベント「キミへの想いを列車に乗せて」においては,謎解きに必要な冊子等を含む「謎解きキット」に付属した1日乗車券が発売された。本件1日乗車券については,定例の発売期間である土日祝日に限らず,同イベント開催期間にあたる7月23日から12月31日まで曜日を問わず購入可能だった。

このほか当年度においては,本邦における鉄道開業150周年記念に加え,京成グループにおける鉄道4社が京成電鉄の開業110周年,関東鉄道の会社創立100周年,新京成電鉄の開業75周年,そして北総鉄道の会社創立50周年といずれも節目を迎えており,これを記念した1日乗車券として「鉄道開業150周年記念 京成グループ鉄道4社共通1日乗車券」が京成グループ4社合同で10月14日「鉄道の日」から発売された。前述の経緯から有効区間は4社の営業する鉄道全線とされ,10月31日までのいずれか1日を有効期間として1,500円で発売された。なお,北総線への割当は350部で,各駅窓口で発売された。

「群青のファンファーレ×北総鉄道記念乗車券」ポスター

△「群青のファンファーレ×北総鉄道記念乗車券」ポスター

「創立50周年記念入場券セット」ポスター

△「創立50周年記念入場券セット」ポスター


当年度は会社創立50周年を迎えたことに加え,スカイライナーの新鎌ヶ谷駅一部停車開始や鉄道むすめ「白井まきの」デビュー等の話題となる出来事が重なったこともあり,例年に比べて多くの記念乗車券が発売された。

4月9日付で発売された記念乗車券「群青のファンファーレ×北総鉄道記念乗車券」はアニメ「群青のファンファーレ」とコラボした500部限定の記念乗車券で,発売箇所は西白井駅及び白井駅,発売額は500円だった。なお,アニメ「群青のファンファーレ」のコラボ企画の詳細は本稿内にて別記している。

会社創立50周年を迎えた5月10日には,北総線14駅の入場券と記念ポストカード2枚を含む「創立50周年記念入場券セット」が3,000円で発売された。発売箇所は北総線各駅で,1,000部限定であった。本件記念入場券セットの発売については,ポスターのほか発車標のスクロール文でも案内が行われた。

「ほくそう秋まつり号運転記念乗車券」ポスター

△「ほくそう秋まつり号運転記念乗車券」ポスター

「ZOZO CHAMPIONSHIP 2022開催記念乗車券」ポスター

△「ZOZO CHAMPIONSHIP 2022開催記念乗車券」ポスター


ほくそう秋まつりにあわせて運行された「ほくそう秋まつり号」については,運転日の10月2日付で「ほくそう秋まつり号運転記念乗車券」が500部限定で発売された。発売箇所は北総線各駅で,発売額は500円だった。また,同日にデビューした鉄道むすめ「白井まきの」については,10月8日付で「白井まきのデビュー記念乗車券」が1,000部限定で発売された。発売箇所は北総線各駅で,発売額は1,000円だった。なお,本件記念乗車券は10月2日の「ほくそう秋まつり」会場で先行発売された。ほくそう秋まつり及び白井まきのに関する詳細については本稿内にて別記しているので,そちらを参照されたい。

沿線で開催された大型ゴルフトーナメント「ZOZO CHAMPIONSHIP 2022」については,開催直前の10月10日から「ZOZO CHAMPIONSHIP 2022開催記念乗車券」が発売された。本件記念乗車券は,千葉ニュータウン中央駅発と印西牧の原駅発の2種類が発売され,前者に限り千葉ニュータウン中央駅以外の北総線各駅でも購入可能だった。発売額は,千葉ニュータウン中央駅発において1,750円,印西牧の原駅発において1,990円だった。

11月26日には,同日付のダイヤ修正でスカイライナーの一部列車が新鎌ヶ谷駅に停車することを記念した「スカイライナー新鎌ヶ谷駅停車記念乗車券」が,京成電鉄と共同で発売された。本件記念乗車券の発売額は1,500円で,北総線については480円区間の乗車券が含まれた。発売箇所は北総線各駅で,2,000部限定であった。なお,ダイヤ修正の詳細は本稿内にて別記している。

サブスクリプションサービスの導入

他の鉄道事業者においても導入が広がるサブスクリプションサービスについて,北総線においても「定期券保有の新たな付加価値創造、駅の利便性及び駅ナカ施設の魅力向上を目的」として当年度より導入された。

サブスクリプションサービス開始の告知ポスター

△サブスクリプションサービス開始の告知ポスター

当年度に導入されたサブスクリプションサービスは,新鎌ヶ谷や東松戸駅構内にも入居している鎌ケ谷市のコーヒーショップ・イデカフェと連携したもので,北総線の定期券を所有する利用者を対象にイデカフェの対象店舗で発売された。第1弾はコーヒーを1日1杯飲める「コーヒー定期券」で,10月1日から11月30日までの発売だった。さらに,2月1日から4月30日までは「コーヒー定期券」に加えて第2弾の「コーヒー定期券ゴールド」が発売され,コーヒーのみならずアルコール類を含むすべてのドリンク(メガジョッキビールを除く)が1日1杯まで利用できる内容とされた。

いずれも通用期間は購入日を含む31日間で,利用しなかった日の権利は消滅するものの,購入した店舗に限らず対象店舗すべてで利用できた。対象店舗は,北総線の駅施設に入居している東松戸駅店,新鎌ヶ谷駅連絡通路店,新鎌ヶ谷駅中店の3店舗だった。発売額は,「コーヒー定期券」が6,980円,「コーヒー定期券ゴールド」が7,980円(いずれも税別)とされた。

イベント・グッズ等の展開

当年度における定例イベントの開催については,依然としてコロナ禍における制約を受けたものの,2018年度を最後に休止していた「ほくそう春まつり」の実質的な復活となる「ほくそう秋まつり」が10月2日に開催された。

4年ぶりの開催で大盛況となった「ほくそう秋まつり」会場

△4年ぶりの開催で大盛況となった「ほくそう秋まつり」会場

千葉ニュータウン中央駅に到着した「ほくそう秋まつり号」

△千葉ニュータウン中央駅に到着した「ほくそう秋まつり号」


当年度の「ほくそう秋まつり」は会社創立50周年の冠事業として位置づけられ,北総鉄道を筆頭に印西市,県内でラジオ放送を手掛けるベイエフエムによって構成された実行委員会形式で開催された。会場については,休止前の時点で既に千葉ニュータウン中央駅前の開発が進み,イベント開催に供することが困難な状況にあったことから,駅近隣のイオンモール千葉ニュータウンの提携駐車場として使用されている中央北第1駐車場が新たな会場とされた。

当日には押上発千葉ニュータウン中央行の臨時特急列車「ほくそう秋まつり号」が運転され,車両には「沿線活性化トレイン」として運行されていた7503編成が使用された。同編成の掲出していた「沿線活性化トレイン」のヘッドマークは本件列車の運行当日に限り「ほくそう秋まつり」に変更された。

「第47回北総ウォーク」「第48回北総ウォーク」の景品

△「第47回北総ウォーク」「第48回北総ウォーク」の景品

「竜ヶ崎駅⇔千葉ニュータウン中央駅 18kmチャレンジウォーク」告知ポスター

△「竜ヶ崎駅⇔千葉ニュータウン中央駅 18kmチャレンジウォーク」告知ポスター


定例の北総ウォークについては,春季(第47回)が4月29日から5月29日,秋季(第48回)が10月27日から12月18日に開催された。いずれも会社創立50周年記念を冠した冠事業として実施され,昨年度までと同様に指定されたコースを期間内に歩く期間設定型の開催だった。春季のコースは白井駅からイオン鎌ケ谷ショッピングセンターまでを白井七福神の来迎寺と西輪寺経由で巡る約14kmのコースで,秋季は松飛台駅から矢切駅までを昭和の杜博物館や道の駅いちかわ経由で巡る約10kmのコースだった。

他社との合同ウォークイベントについては,東武鉄道と合同で「北総・東武合同ウォークラリー」,関東鉄道と合同で「竜ヶ崎駅⇔千葉ニュータウン中央駅 18kmチャレンジウォーク」がそれぞれ開催された。東武鉄道との合同ウォークは2月23日に開催され,白井駅から海上自衛隊下総航空基地経由で東武アーバンパークライン高柳駅までの約9.5kmを巡る内容だった。関東鉄道との合同ウォークは3月1日から3月31日までの期間設定型で開催され,関東鉄道竜ヶ崎線竜ヶ崎駅と千葉ニュータウン中央駅の間を利根川に架かる栄橋経由で巡る約18kmのコースが設定された。

「北総沿線町カフェめぐり」告知ポスター

△「北総沿線町カフェめぐり」告知ポスター

新たな企画として,北総線沿線のカフェとのコラボ企画「北総沿線町カフェめぐりスタンプラリー」が3月25日から5月28日まで開催された。本企画は当年度入社の新入社員が研修課題の一環として発案したもので,北総線沿線7店舗のカフェを巡るスタンプラリーである。昨年度に実施された「北総グルメラリー」と同様に3店舗以上を巡るとマグカップと交換することが可能だが,スタンプの図柄は「北総グルメラリー」とは異なり北総線の歴代車両もラインナップに加わっている。なお,対象のカフェにはイデカフェも含まれているが,当該については鎌ケ谷市内の本店で喫食する必要がある。

当年度の新グッズとしては,会社創立50周年を記念した「ブレーキハンドル型ボトルキャップオープナー」が5月より1,000円で発売されたほか,12月にはオリジナル定規付の「7500形電車型ペンケースセット」が1,500円で発売された。

アニメ「群青のファンファーレ」コラボ企画の実施

西白井駅を最寄駅とする競馬学校を舞台に騎手養成課程を描くアニメ「群青のファンファーレ」においては,作中で西白井駅周辺の描写がなされるなど北総線も舞台の一部として登場しており,4月からの放送に際してコラボ企画が実施された。

ラッチ外に設置された「風波駿」等身大パネルと出演声優のサイン色紙

△ラッチ外に設置された「風波駿」等身大パネルと出演声優のサイン色紙

ラッチ内に設置された「霜月えり」等身大パネル

△ラッチ内に設置された「霜月えり」等身大パネル


コラボ企画では,アニメの放送を記念した記念乗車券が4月9日から西白井駅及び白井駅で発売されたほか,4月12日からは作中に登場するキャラクター「風波駿」と「霜月えり」の等身大パネルが西白井駅に設置された。このうち「風波駿」のパネルはラッチ外に設置され,あわせて出演声優のサイン色紙も展示された。一方の「霜月えり」はラッチ内に設置され,両名ともに北総鉄道の駅務掛として当年度から導入された新制服を着用した姿で描かれた。

なお,昨年度末に設置された競馬学校インフォメーションコーナーでは,本作品の放送直前特番がラッチ外のディスプレイにて紹介されている。

鉄道むすめ「白井まきの」デビュー

鉄道における女性現業社員をモチーフとしてトミーテックが展開するキャラクターコンテンツ「鉄道むすめ」において,北総鉄道の駅務掛「白井まきの」が10月2日付でデビューした。白井駅と印西牧の原駅を名前の由来として,出身は「白井あたりの梨農家」と設定されている。

デビューに際して掲出されたポスター

△デビューに際して掲出されたポスター

白井駅に配属された「白井まきの」社員

△白井駅に配属された「白井まきの」社員


デビューを前に9月27日付でキャラクターデザインの公開が行われ,「ほくそう秋まつり」と同日の10月2日付で正式なデビューを飾った。同日よりデビューを記念した記念乗車券及びクリアファイルが発売されたほか,各駅にB1サイズのポスターが掲出された。また,等身大パネルが2体制作されていて,「ほくそう秋まつり」会場で展示された後は「駅員になるための社内研修」に入ったとのことで,研修を終えた12月16日付で白井駅勤務の駅務掛として配属の辞令を受け,パネル1体が白井駅ラッチ内に設置された。なお,辞令交付の様子は北総鉄道のツイッターで紹介されている。

また,3月17日には京成グループ鉄道4社の「鉄道むすめ」があしらわれた「京成グループ4社 鉄道むすめコラボクリアファイル」が発売された。

駅ピアノスペースの新設
待合スペース「こもれび」に設置された駅ピアノ

△待合スペース「こもれび」に設置された駅ピアノ

駅構内にピアノを設置する「駅ピアノ」の取組みについては,賑わいの創出に繋がるストリートピアノのひとつとして他の鉄道事業者においても導入実績のある取組みであるが,北総線においても「駅の新たな賑わいや魅力を創出する」ことを目的として4月29日に駅ピアノスペースが新鎌ヶ谷駅に新設され,アップライトピアノ1台が設置された。10時から17時の間に1回15分以内の演奏を目安として一般に開放されている。

報道及びプレスリリースによると,本件は北総線沿線のカフェバーで2022年3月まで使用されていたピアノの寄贈を受けたもので,「より地域に親しまれる駅」を目指して開設された新鎌ヶ谷駅の待合スペース「こもれび」のコンセプトを踏まえ,同スペースの一角に設置された。設置初日の4月29日には,オープニングセレモニー「駅ピアノ♪オープニングセレモニー in 北総線 新鎌ヶ谷駅」が15時より開かれ,寄贈者の男性らが演奏を披露した。

横断幕・装飾の実施

当年度も各駅では季節にちなんだ様々な装飾が展開された。笹飾りやクリスマスツリー等の大規模な装飾を展開した駅や,受験シーズンや新年度にあわせて応援メッセージを掲出した駅など,各駅で工夫をこらした取組みを数多く見ることができた。

端午の節句を前に鯉のぼりや兜飾りが置かれた東松戸駅

△端午の節句を前に鯉のぼりや兜飾りが置かれた東松戸駅

七夕の節句を前に笹飾りが置かれた白井駅

△七夕の節句を前に笹飾りが置かれた白井駅


ハロウィンの装飾が施された小室駅

△ハロウィンの装飾が施された小室駅

7500形の「鉄下」が下げられていた千葉ニュータウン中央駅のクリスマスツリー

△7500形の「鉄下」が下げられていた千葉ニュータウン中央駅のクリスマスツリー


当年度は昨年度から継続した装飾に加えて新たな装飾も見ることができた。新鎌ヶ谷駅務管区においては,七夕の節句に際して笹飾りを各駅に設け,後日,利用者が短冊に記した願い事を駅社員が初富稲荷神社に祈願しに行くという新たな装飾の取組みが実施された。

新鎌ヶ谷駅における駅社員からの新入生・新社会人への応援メッセージの掲出

△新鎌ヶ谷駅における駅社員からの新入生・新社会人への応援メッセージの掲出

駅ピアノにひなまつりの装飾を施した新鎌ヶ谷駅

△駅ピアノにひなまつりの装飾を施した新鎌ヶ谷駅


また,同管区において昨年度から実施している応援メッセージの掲出は,昨年度に引続き受験シーズンの1月~2月に加えて,当年度には新入生・新社会人の新生活シーズンとなる3月にも掲出された。駅ピアノや「いんザイ君」にも装飾が施され,これら装飾の一部は北総鉄道のツイッターでも紹介された。

東松戸駅に掲出された市立松戸高等学校の横断幕

△東松戸駅に掲出された市立松戸高等学校の横断幕

全国大会等に出場する沿線学校を祝う横断幕については,第41回全国高等学校弓道選抜大会の男子団体で優勝した松戸市立松戸高等学校に対する掲出があった。横断幕は1月より高校最寄り駅の東松戸駅改札口付近に掲出された。

飲料自動販売機の設置

各駅に設置されている飲料自動販売機については,昨年度に引続き話題の創出につながる自動販売機が積極的に展開され,当年度は生搾りオレンジジュースを提供する自動販売機や電車風自動販売機が設置された。

保存されている7001号風の意匠となった自販機(左)

△保存されている7001号風の意匠となった自販機(左)

新鎌ヶ谷駅に設置された生搾りオレンジジュース自販機

△新鎌ヶ谷駅に設置された生搾りオレンジジュース自販機


電車風自動販売機については,昨年度に7300形車両及び7500形車両を模した意匠の自動販売機が本社社屋前に設置されたところであるが,当年度においては西白井駅ラッチ内の旧精算機室前に7000形車両を模した意匠の自動販売機が6月に設置された。7000形車両を模した意匠は同車の登場時を想定したもので,小室行の行先表示をはじめとして側面には旧社名の「北総開発鉄道」の社名銘板も描かれている。なお,本社社屋前に設置された電車風自動販売機では自動販売機同士の隣接面には装飾が施されていないが,西白井駅における本件自動販売機は隣接面にも装飾が施されており,先の社名銘板と反対側の側面は「7001」の車号銘板が描かれている。本件自動販売機の管理者はネオスで,同社の展開する混載機としての設置である。

2月には,その場でオレンジを搾ってジュースを提供する自動販売機が新鎌ヶ谷駅に設置された。本件自動販売機「Feed ME Orange」は,欧米や東南アジアで広くサービス展開されている生搾りオレンジジュースマシンで,証明写真機等を手掛けるME Group Japan社によるものである。設置箇所は同駅ラッチ外の待合スペース「こもれび」で,本件自動販売機の設置に際して伊藤園管理の自販機1台がラッチ内の上りライナー券売機横に移設されている。

このほか,自動販売機管理会社であるサントリービバレッジ(旧ジャパンビバレッジ)管理の自動販売機がすべてネオスの管理に変更されたことで,複数の自動販売機で置換えが発生した。

デジタルサイネージの導入

可変式の広告媒体としても活用できるデジタルサイネージが当年度より一部の駅に設置され,新たな広告媒体として活用が始まった。

千葉ニュータウン中央駅に設置されたデジタルサイネージ

△千葉ニュータウン中央駅に設置されたデジタルサイネージ

新鎌ヶ谷駅自動券売機ブース上部のデジタルサイネージ

△新鎌ヶ谷駅自動券売機ブース上部のデジタルサイネージ


自立式のデジタルサイネージが設置された新鎌ヶ谷と千葉ニュータウン中央の両駅では,当初は静止画像及び動画による自社広告のみ数点を配信する運用方で使用されていたが,その後京成フロンティア企画(旧・京成エージェンシー)による一般広告の配信も実施されるようになった。

年度初には新鎌ヶ谷に3台設置されている自動券売機のうち両端の2台を対象としてデジタルサイネージが設置されたところであるが,これについては静止画像による自社広告を配信する運用方で使用されている。なお,広告表示はWindows機でPowerPoint上のスライドを再生する方式で,画面下部にタスクバーが表示されていることもある。

広告貸切列車等の運行

当年度における広告貸切列車の運行については,「沿線活性化トレイン」のほか沿線ゴルフトーナメントの開催にあわせた貸切が実施された。

9108編成が使用された「ゾゾチャン」広告貸切列車

△9108編成が使用された「ゾゾチャン」広告貸切列車

7503編成による「第21回京成グループ花火ナイター号」

△7503編成による「第21回京成グループ花火ナイター号」


10月13日から16日にかけて開催された沿線ゴルフトーナメント「ZOZO CHAMPIONSHIP 2022」に際しては,記念乗車券の発売に加え,9108編成を使用した広告貸切列車が9月中旬より運行された。車内の広告は記念乗車券の告知ポスター及び浮世絵風の大会告知ポスターの2種類で,車体広告は展開されなかった。また,例年の「京成グループ花火ナイター号」については当年度も7月15日から8月13日にかけて運行され,7503編成が使用された。

未利用空間の利活用

当年度の鉄道施設の未利用空間におけるテナント等の誘致状況については,秋山第2トンネルの地上部に工事会社が入居したほか,2023年度開店予定の商業施設の店舗建築工事が紙敷高架橋下で進められた。

秋山第2トンネル地上部に入居した大東企業の社屋

△秋山第2トンネル地上部に入居した大東企業の社屋

紙敷高架橋下で建築工事が進む業務スーパー東松戸店

△紙敷高架橋下で建築工事が進む業務スーパー東松戸店


秋山第2トンネル地上部への工事会社入居については,橋りょうの塗装工事等を手掛ける大東企業株式会社の本社社屋及び駐車場が整備されたものである。建築工事は5月から9月にかけて施工され,社屋は松戸市の都市計画道路に面したトンネル地上部に設けられた。なお,本件建築物は該トンネル地上部における初の建築物である。

東松戸駅終点方の紙敷高架橋下においては,2023年5月中旬に開店を予定している食品スーパー「業務スーパー東松戸店」の店舗建築工事が進められた。建築工事は9月に着工しており,3月にはフランチャイジーとみられる京成ストアから求人とあわせて開店予定時期が告知されている。なお,店舗予定地は月極の東松戸第2有料駐車場として活用されてきた高架下の賃貸用地で,本件工事の施工に先立ち駐車場の閉鎖が行われた。都市計画道路を挟んだ終点方には東松戸第3有料駐車場が営業しているが,当該駐車場の閉鎖に伴う名称の変更(第3→第2)は行われていない。

改修中の旧京成電設工業建屋

△改修中の旧京成電設工業建屋

東急テクノシステムの事務所棟となった建屋

△東急テクノシステムの事務所棟となった建屋


このほか,西白井保守基地内に入居している工事会社の東急テクノシステムにおいては,西白井事務所の移転が11月に行われた。移転先は同地起点方にある京成電設工業の使用していた建屋で,移転に先立って改修工事が9月より施工された。なお,車両基地時代から同社が入居していた旧事務所建屋については,同社の厚生棟として引続き使用されている。

技術部門の動静

施設関係

エレベータの更新

バリアフリーの観点から各駅に整備されているエレベータについては,千葉ニュータウン中央駅のエレベータ1基が3月15日付で更新された。該駅は北総線で最も早くエレベータが整備された駅で,コンコースとホームを結ぶバリアフリー経路として住都公団時代の1995年度に新設されていた。一般的にエレベータの計画耐用年数が25~30年とされている中で,北総線においては本件が初の更新事例であった。

更新前のコンコース階乗場付近

△更新前のコンコース階乗場付近

更新前のエレベータかご内

△更新前のエレベータかご内


更新中のコンコース乗場付近

△更新中のコンコース乗場付近

更新中に用いられた昇降機

△更新中に用いられた昇降機


本件工事においては,既設エレベータの乗場ドアや三方枠等の乗場まわりを再利用することで工期短縮と費用の縮減が図られている。既設のエレベータは北総線区間で唯一のシンドラー社製であったが,同社の事業撤退に伴って日本オーチス社製のエレベータに更新された。工事期間は1月30日から3月15日までの約2ヶ月で,この間における車いす利用者等の対応には階段昇降機が用いられた。

更新後のコンコース乗場付近

△更新後のコンコース乗場付近

更新後のエレベータかご内

△更新後のエレベータかご内


赤外線センサによる非接触操作を可能としたボタンスイッチ

△赤外線センサによる非接触操作を可能としたボタンスイッチ

ホーム柱に巻付け整備された誘導サイン

△ホーム柱に巻付け整備された誘導サイン


更新後のエレベータについては,操作盤のボタンに小型の赤外線センサを内蔵することで非接触での操作を可能とした「タッチレスボタン」が採用されたほか,パナソニック社「ナノイー」によるかご内の空気清浄機能も搭載された。また,本件工事にあわせて乗場周辺のサイン類が再整備され,乗場への「優先エレベーター」表記が追加されたほか,ホーム上の柱や壁面に誘導サインが新設された。

エスカレータ運転方の見直し

北総線各駅に整備されているエスカレータについて,4月20日より一部のエスカレータを対象とした運転方の見直しが図られた。運転時間の見直しにより機器の損耗抑制が図られることから,大半が経年25~30年となった北総線各駅のエスカレータにおける取替計画の平準化や保守費用の抑制が期待できる。

地上~改札階のエスカレータが終日運転休止となった新柴又駅

△地上~改札階のエスカレータが終日運転休止となった新柴又駅

駅前広場側出入口~2F間のエスカレータが終日運転休止となった東松戸駅

△駅前広場側出入口~2F間のエスカレータが終日運転休止となった東松戸駅


早朝時間帯のエスカレータ運転休止を告知する掲示

△早朝時間帯のエスカレータ運転休止を告知する掲示

早朝時間帯の運転が休止された千葉ニュータウン中央駅のエスカレータ

△早朝時間帯の運転が休止された千葉ニュータウン中央駅のエスカレータ


4月20日時点で運転方が見直されたのは,新柴又,矢切,北国分,東松戸,西白井,白井,小室,千葉ニュータウン中央,印西牧の原,印旛日本医大の10駅で,早朝・深夜時間帯の運転を取りやめたほか,新柴又及び東松戸のラッチ外エスカレータについては運転を終日取りやめた。

見直し後の運転方は,上りホームに対しては6:00~22:00,下りホームに対しては6:00~終車の運転を基本として,上下同一の島式ホームの場合は下りホームの運転時間が適用された。ただし,印西牧の原においては下りホーム起点方の上りエスカレータを除いて22時運転終了の設定とされたほか,印旛日本医大においては起点方の上りエスカレータは6:00~終車,終点方の下りエスカレータは始発~22:00の運転とされた。また,印西牧の原と印旛日本医大の両駅では深夜時間帯に下りエスカレータを上り運転に変更する運転方だったが,本件施策の開始で時間帯による運転方向の変更は行われなくなった。

自動運転制御化で終日下り運転となった印旛日本医大終点方エスカレータ

△自動運転制御化で終日下り運転となった印旛日本医大終点方エスカレータ

自動運転制御化に際してセンサポール設置中の小室上りホームエスカレータ

△自動運転制御化に際してセンサポール設置中の小室上りホームエスカレータ


その後,小室上りホームと印旛日本医大の3基については,3月から運転時間を制限せず人感センサによる自動運転制御となった。このうち印旛日本医大では既設のポールに自動運転制御用の人感センサを備えていたことから工事等は行われず,3月1日付で自動運転制御機能が使用開始された。一方の小室はセンサポールの新設を要し,3月下旬にポールの新設工事が行われた。なお,小室上りホームのエスカレータは9:00まで下り運転とする運転方であったが,自動運転制御化に伴って終日上り運転に変更された。

待合室出入口の自動ドア化
自動ドア化された印西牧の原上りホーム待合室

△自動ドア化された印西牧の原上りホーム待合室

自動ドア化された印旛日本医大ホーム待合室

△自動ドア化された印旛日本医大ホーム待合室


ホームに設置している待合室については,2020年度より出入口の自動ドア化が進められているところであるが,当年度は印西牧の原と印旛日本医大の両駅で自動ドア化が実施された。いずれも既設の押戸を撤去して自動ドアを新設しており,赤外線ビームによる疑似タッチレススイッチを採用することで非接触での開閉を可能としている。各駅の施工時期は,印西牧の原が7月,印旛日本医大が12月だった。

なお,出入口の自動ドア化が完了していない待合室は,東松戸及び新鎌ヶ谷の上りホーム待合室を残すのみとなった。

五輪関連施設使用木材によるベンチの新設

北総線では,2019年度に整備された新鎌ヶ谷駅ラッチ外の待合スペース「こもれび」を筆頭に,千葉県産の木材を使用した駅設備が整備されてきたところであるが,当年度においては,秋山,西白井,白井,小室の4駅に対して,昨年度に開催された東京五輪の関連施設で使用されていた千葉県産木材を再利用したベンチが新設された。

白井駅に設置された木製ベンチ

△白井駅に設置された木製ベンチ

秋山駅に設置された木製ベンチ

△秋山駅に設置された木製ベンチ


本件のベンチは2月24日付で4駅に設置された。各駅における設置箇所と数量は,秋山が上下ホームに各2脚,西白井,白井,小室がラッチ内コンコースに各2脚である。このうち秋山は背合わせに2脚を連結した形状で,2020年度から実施されているホーム上ベンチのマクラギ方向設置を踏まえた設置方とされた。本件施策に伴う既設ベンチの撤去は発生しておらず,各駅ともにベンチは純増となった。

秋山駅のベンチに取付けられている五輪木材再利用を示す銘板

△秋山駅のベンチに取付けられている五輪木材再利用を示す銘板

ベンチに設けられている北総ロゴマークの木製銘板

△ベンチに設けられている北総ロゴマークの木製銘板


本件施策は,「お客様にとってより快適な駅、より地域に親しまれる駅となることや、地球環境の保全、循環型社会の形成、森林の有する多様な公益的機能の発揮、地域経済の活性化に貢献しつつ進めていくこと」を目指して展開されたものである。使用された木材は,東京五輪において各自治体の提供した木材を用いて選手村を整備する取組み「日本の木材活用リレー~みんなで作る選手村ビレッジプラザ~」で千葉県が提供したスギのLVL材。五輪終了後に返却された木材の活用方について県が募集した「東京2020オリンピック・パラリンピック競技大会の会場等で使用された千葉県産木材のレガシー利用者募集」に採択されたことで,本件施策が実現した。

前述の経緯から,ベンチには東京五輪で用いられた木材を再利用したことを示す銘板が設けられており,秋山に設置されているベンチについては木製,それ以外のベンチは金属製の銘板である。この銘板とは別に北総ロゴマークの銘板も取付けられているが,こちらは各駅ともに木製とされている。これら銘板を含むベンチの加工は,2021年度に整備された西白井及び白井のホーム待合室において木材加工を担った北総線沿線の木製建具メーカ・山二建具が引続き担当しており,加工及び設置工事は県の補助金制度「ちばの木の香る街づくり推進事業」によって行われたことから,これによる銘板が脚部に設けられている。

テラゾータイルの張替

北総線各駅のコンコースに使用されているテラゾータイルについては,雨天時に滑りにくい加工を施す等の安全対策が実施されてきたところであるが,経年による劣化や汚損が見られることから,当年度においては北国分及び印西牧の原の両駅でタイルの張替が行われた。

タイルが張り替えられた北国分駅

△タイルが張り替えられた北国分駅

タイルが張り替えられた印西牧の原駅B階段付近

△タイルが張り替えられた印西牧の原駅B階段付近


滑り止め加工の剥がれが目立ち始めていた北国分では,当年度からタイルの張替えが始まった。当年度はラッチ外コンコースを対象に施工されたが,自動販売機やコインロッカーの周囲は施工範囲から外された。同じく滑り止め加工の剥がれが目立つ秋山は当年度の施工に含まれなかった。2019年度から順次張替が進められている印西牧の原では,当年度はB階段付近等で張替が行われた。

水飲み器の撤去
水飲み器が撤去された大町駅下りホーム

△水飲み器が撤去された大町駅下りホーム

ホームに設置されている水飲み器については,2020年度より撤去工事が実施されているところであるが,当年度においては大町駅で撤去工事が行われた。なお,水道配管については散水栓で使用することから残置されている。

伸縮継目付近のラダーマクラギ化
印西牧の原構内上り線のラダーマクラギ化箇所

△印西牧の原構内上り線のラダーマクラギ化箇所

伸縮継目箇所における軌道狂い対策として実施されてきたラダーマクラギ化については,2013年度に施工された千葉ニュータウン中央・印西牧の原間を最後にしばらく施工されてこなかったが,当年度においては印西牧の原駅構内の上り線がラダーマクラギ化された。当年度の施工箇所は京成高砂起点28km付近の印西牧の原駅構内上り線で,従来の施工箇所と同様のバラスト・ラダー軌道に改良されている。なお,隣接する下り線については既設の通りである。

レール更換の実施
レール更換が行われた新鎌ヶ谷・西白井間

△レール更換が行われた新鎌ヶ谷・西白井間

レール更換が行われた京成高砂・新柴又間

△レール更換が行われた京成高砂・新柴又間


当年度も引続きリフレッシュ工事の一環としてロングレールの更換が進められた。当年度の主な施工箇所は新鎌ヶ谷・西白井間で,このうち新鎌ヶ谷駅付近での更換作業については会社創立50周年記念で見学ツアーが開かれた。また,新鎌ヶ谷駅構内での発生レールについては,会社創立50周年記念のカットレールとして販売された。このほか,当年度は京成高砂・新柴又間や千葉ニュータウン中央駅構内でもレール更換が実施されている。

電気関係

船尾変電所の更新
新たなトランス室の間取りが見えてきた船尾変電所

△新たなトランス室の間取りが見えてきた船尾変電所

小室・千葉ニュータウン中央間の開業にあわせて設備された船尾変電所については,老朽化による更新工事が2021年度に監督官庁より認可されていたところであるが,当年度においては変電所建屋の間取りが一部変更となる等の更新工事の進捗が確認できた。

自動列車停止装置の更新(C-ATS化)

2018年度より実施している中間閉そく区間における自動列車停止装置の更新については,かねてより施工されてきた東松戸・新鎌ヶ谷間が当年度よりC-ATS化された。新鎌ヶ谷・小室間では昨年度に引続き付帯工事が進められ,未着手だった小室・印西牧の原間でも付帯工事が始まったほか,印西牧の原・印旛日本医大間では信号側の本体工事が始まった。

C-ATS化された大町駅構内

△C-ATS化された大町駅構内

新鎌ヶ谷3番線で折返す確認列車

△新鎌ヶ谷3番線で折返す確認列車


東松戸・新鎌ヶ谷間については,1月21日付で該区間のC-ATSへの切替が完了した。本件区間以前の工区では着手から概ね1年で切替を迎えていたが,本件区間は2020年度の着手から切替まで2年を要した。その要因には,2021年1月に発生した京三製作所鶴見工場における火災や昨今の半導体不足による機器納入の遅れ,コロナ禍における設備投資予算の圧縮による工期の延伸が背景にあると考えられる。

本件区間では切替前の試験が簡略化され,従来の工区で切替前に実施されていた実列車での走行試験を省略し,切替当日の早朝に確認列車を往復させるのみとなった。確認列車は所定ダイヤで矢切滞泊となる車両を使用し,下り初列車の前に矢切・新鎌ヶ谷間を1往復する運転方とされた。

西白井保守基地内に完成した西白井機器室

△西白井保守基地内に完成した西白井機器室

防護マクラギの敷設が行われた西白井駅付近

△防護マクラギの敷設が行われた西白井駅付近


新鎌ヶ谷・小室間については,昨年度に引続き西白井保守基地内で西白井機器室の建築工事が進められたほか,B点に対する防護マクラギの挿入も行われた。このうち西白井機器室の建屋は第1四半期に完成し,その後第3四半期にかけてトラフが敷設された。年度末時点で器具箱の設置には至っておらず,切替まではまだ年単位で時間を要するものと考えられる。

防護マクラギの敷設が行われた小室・千葉ニュータウン中央間

△防護マクラギの敷設が行われた小室・千葉ニュータウン中央間

千葉ニュータウン中央駅起点方に完成した機器室

△千葉ニュータウン中央駅起点方に完成した機器室


小室・印西牧の原間では,当年度より施設側の付帯工事が始まった。10月には千葉ニュータウン中央駅の起点方で機器室の建築工事が始まったほか,第4四半期からはB点に対する防護マクラギの挿入にも着手している。機器室の建築工事は年度内で完成しているが,信号側の本体工事には至っていない。

器具箱の設置が進んだ印西牧の原・印旛日本医大間

△器具箱の設置が進んだ印西牧の原・印旛日本医大間

印西牧の原・印旛日本医大間については,現地に器具箱の設置が始まるなど本体工事が始まった。残る3区間のうち最も進捗しているのが当該区間で,これまで起点方から順に切替がなされてきたところであるが,進捗状況を踏まえれば次の切替区間は印西牧の原・印旛日本医大間と考えられる。

列車無線の更新(デジタル化)

2018年度より実施している列車無線のデジタル化については,昨年度までに自社線内における自社所属車両との交信に限定した運用を開始していたところであるが,当年度においては他社線内及び他社所属車両における運用が2月中旬より順次開始された。

試験を終えて馬込車両検修場に入庫する7501編成

△試験を終えて馬込車両検修場に入庫する7501編成

いわゆる「新品川」の引上線に入る姿も見られた

△いわゆる「新品川」の引上線に入る姿も見られた


品川での試験を終えて1番線から「新品川」に引き上げる7501編成

△品川での試験を終えて1番線から「新品川」に引き上げる7501編成

早朝の品川駅に停車する7501編成

△早朝の品川駅に停車する7501編成


他社線内での運用に際しては,運用開始に先立ち各社局間での機能確認試験が12月より実施された。北総所属車両に対する他社線内機能試験は,12月19日早朝に西馬込で実施された都交における試験を皮切りに,1月16日早朝には品川で京浜急行の試験,1月27日早朝には京成高砂で京成の試験と続いた。

いずれも7501編成が使用されており,京成での試験時には第2498N~第499Nで所定の矢切滞泊車両を京成高砂に臨時回送,京浜急行での試験時には第2398N~第599Nで印西牧の原から品川まで臨時回送させる手配方とされた。都交での試験時には前日の第2042T~第2342Tを代走させて西馬込での試験に供し,終了後は馬込車両検修場での留置を経て,翌日の第515T~第915Tの代走により印旛車両基地に戻された。

京成線内でデジタル列車無線が使用可能となった7308編成

△京成線内でデジタル列車無線が使用可能となった7308編成

対応車両も当初は都営浅草線内で従来の誘導無線を使用していた

△対応車両も当初は都営浅草線内で従来の誘導無線を使用していた


北総線内でデジタル列車無線が使用可能となった東京都所属車両

△北総線内でデジタル列車無線が使用可能となった東京都所属車両

都営浅草線でもデジタル列車無線を使用するようになった9100形

△都営浅草線でもデジタル列車無線を使用するようになった9100形


北総所属車両における他社線内でのデジタル列車無線の運用は,2月15日の第1636Nで出庫した9808編成から始まった。同日以降,車両基地で1日あたり2~3編成に対して他社線内でのデジタル列車無線の運用に対応させる作業が行われ,重要部検査中だった7828編成を除く12編成が2月20日までに運用可能な状態とされた。7828編成は重要部検査終了後に後追いで施工されており,対応作業を終えた車両の車上操作器及び列車無線操作器上部には「相直SR使用可」のテプラが掲出された。対応車両は当初デジタル列車無線を京成線内及び京浜急行線内のみ使用し,都営浅草線内では従前のアナログ列車無線を使用していたが,3月頃より同線内でもデジタル列車無線を使用するようになった。

一方で,北総線内における他社所属車両のデジタル列車無線の運用は,2月中旬より京成所属車両及び京浜急行所属車両,2月下旬より東京都所属車両の対応車両が乗入れるようになり,以降においてデジタル列車無線を順次使用するようになった。

当年度における各社局間での運用開始をもって,2018年度から実施されてきた列車無線のデジタル化は完了したものと考えられる。既設アナログ列車無線の今後の取扱いについては明言されていないものの,列車無線は保安通信設備として定期検査を要する設備であることから,時期を踏まえて撤去,除却されると推察される。

ITVの更新(モニタ縦型化)

曲線等によって乗降の確認が困難なホームに整備されているITVについては,昨年度より縦型モニタへの更新が進められているところであるが,当年度は2駅4ホームが縦型モニタに更新された。

縦型の新型モニタとなった新鎌ヶ谷1番線・2番線のITV

△縦型の新型モニタとなった新鎌ヶ谷1番線・2番線のITV

縦型モニタに更新された印西牧の原1番線のITV

△縦型モニタに更新された印西牧の原1番線のITV


当年度に更新されたのは,新鎌ヶ谷1番線,同4番線,印西牧の原1番線,同4番線の4箇所である。新鎌ヶ谷は9月,印西牧の原は12月に更新され,いずれも昨年度と同様に画角調整を目的とした臨時列車を当該ホームに留置した状態で施工された。カメラの台数やモニタの面数に変更はない。

車両関係

定期検査の施行

当年度においては4編成の定期検査が施行された。各編成の検査種別及び施行日は,7503編成の全般検査が5月30日付,9118編成の重要部検査が8月10日付,7318編成の全般検査が12月6日付,7828編成の重要部検査が3月9日付である。

従来どおりの外板フィルムで出場した9118編成

△従来どおりの外板フィルムで出場した9118編成

7300形と同一の青地ステッカーとなった9118編成の車いすスペースピクトグラム

△7300形と同一の青地ステッカーとなった9118編成の車いすスペースピクトグラム


なお,9100形は2019年度より定期検査にあわせて外板フィルムの貼替を実施してきたが,当年度に定期検査を施工した9118編成については外板フィルムを貼替えずに出場した。このため,これまで外板フィルムの貼替に伴って幕板部に移設されていた戸袋の優先席表記は従前の位置に残されている。一方で,先頭車客室内の車いすスペースに掲示しているピクトグラムが貼替えられ,シールの地色が従前のグレーから7300形等と同一品の青地に変更された。

列車無線デジタル化に伴う車上局整備

当年度のデジタル列車無線導入に伴う車両工事については,車上局が未整備であった残る3編成に対する工事が完了した。本件工事については,毎年の安全報告書において当年度内に整備完了の予定が公表されてきたところであるが,予定通り北総所属車両のすべてがデジタル列車無線に対応した。

デジタル列車無線用アンテナが設備された7503編成

△デジタル列車無線用アンテナが設備された7503編成

デジタル列車無線用の車上機器が設備された9108編成

△デジタル列車無線用の車上機器が設備された9108編成


当年度の施工編成と施工時期は,6月に7503編成,11月に7502編成,12月に9108編成だった。施工箇所の考え方は従来どおりで,すべて自社所有車両の施工となるため印旛で施工された。7503編成は昨年度の9128編成と同様に準備工事の未施工車で,本工事と一括で施工を終えた。9108編成のしゅん功をもって,2018年度施工の7501編成を皮切りに進められてきたデジタル列車無線車上局の新設工事が全編成で完了した。

本稿内の別記「列車無線の更新(列車無線デジタル化)」において記載している通り,2月中旬より他社線内でデジタル列車無線を使用可能とする作業が各編成に対して行われた。なお,都営浅草線内でデジタル列車無線が使用可能となって以降は直通先を含む全線でデジタル列車無線を使用しているが,従来のアナログ列車無線については年度末時点で全編成とも使用可能な状態で残置されている。

補助電源装置の更新(SIV化)

当年度も7800形及び9100形において補助電源装置の更新が行われた。本件施策はDC-DCコンバータを補助電源装置とする各車種を対象に2019年度から展開されているもので,当年度から新たに9100形が対象車種に加わった。

SIV化された7808編成のT車(海側)

△SIV化された7808編成のT車(海側)

SIV化された9108編成のTS車(山側)

△SIV化された9108編成のTS車(山側)


貸借車両の7800形及び9800形においては,DC-DCコンバータのまま残っていた7808編成が1月に更新を終えた。貸借車両の資産及び予算管理の観点から施工は宗吾工場で行われ,本件編成の更新をもって7800形及び9800形の補助電源装置更新はすべて完了した。

当年度より補助電源装置更新の対象に加わった9100形においては,12月に9108編成が更新された。機器の艤装方については他車種と同様で,本件施策によってT車1両あたり0.3tの軽量化が図られている。

車側灯のクリアレンズ化

車側灯のクリアレンズ化については,2012年度より貸借車両を含めた北総所属車両の全車両を対象に施工が進められてきたところであるが,当年度においては,昨年度における貸借車両の代替によって生じた赤レンズ使用車両に対する施工が行われた。

車側灯がクリアレンズ化された7838編成

△車側灯がクリアレンズ化された7838編成

本件施策は2019年度までに北総所属車両の全編成で施工を完了していたが,昨年度の貸借車両代替によって赤レンズ使用車両が再び生じたことから,当年度において当該の7838編成に対して施工されたものである。本件編成は9月に施工され,これにより再び全編成の車側灯がクリアレンズとなった。

照明装置の更新(LED化)

かねてより進められてきた照明装置の更新については,最後の蛍光灯使用編成であった7808編成が1月にLED化された。2016年度施工の7300形を皮切りに進められてきた照明装置のLED化は,本件編成の更新をもって貸借車両を含む北総所属車両の全編成で完了した。

LED化された7808編成の照明装置

△LED化された7808編成の照明装置

本件編成における照明装置の更新工事については,貸借車両の資産及び予算管理の観点から京成の宗吾工場で施工された。貸借車両においては編成毎に異なるメーカの照明装置が使用されているが,本件編成については7300形及び9100形と同じパナソニック製の照明装置が使用された。なお,監督官庁に対する本件工事の確認申請は2020年度に行われており,施工まで約2年を要した。

客室内防犯カメラの整備

当年度においては,千葉ニュータウン鉄道所有車両の9100形及び9200形を対象として客室内に防犯カメラが整備された。客室内への防犯カメラの整備は,2019年度に北総所有車両の7300形及び7500形に対して実施されていたが,京成貸借車両及び千葉ニュータウン鉄道所有車両については整備の対象外とされていた。

9100形に整備された防犯カメラと防犯カメラ作動中を示す掲示

△9100形に整備された防犯カメラと防犯カメラ作動中を示す掲示

9200形に整備された防犯カメラ

△9200形に整備された防犯カメラ


両形式に対する防犯カメラは1月初旬より印旛で新設され,照明装置と一体型の防犯カメラが1両あたり3台設置された。防犯カメラは2019年度に7500形及び7300形に設置されたものと同一のアイテック阪急阪神製である。

防犯カメラの設置位置は,9200形については7500形と同一のチドリ配置,9100形については1~4号車は海側,5~8号車は山側の側扉付近とされ,両形式とも側扉のカモイ部に7500形及び7300形と同一の「防犯カメラ作動中」ステッカーが掲出されている。

制輪子の変更

昨年度より一部の車両で実施されてきた制輪子の供試については,当年度は7828編成における供試車両の追加を経て,供試編成を含む7300形,7800形,9100形,9800形の各車種における制輪子が変更された。

供試車両追加で7824(左)と7825(右)にも使用された栃木日信製制輪子

△供試車両追加で7824(左)と7825(右)にも使用された栃木日信製制輪子

供試車両追加にあわせて車号の記載がなくなった供試中のテプラ

△供試車両追加にあわせて車号の記載がなくなった供試中のテプラ


7828~7826の3両を対象として2021年11月より制輪子の供試が行われていた7828編成は,6月下旬より供試制輪子を使用する車両が追加され,編成内の全車両が供試対象車両とされた。供試された制輪子は昨年度と同一の栃木日信製の合成制輪子で,M台車用がNS-540B型式,T台車用がNS-564型式だった。供試対象車両の追加に際しては,運転台計器パネル下に掲出していたテプラの文言が供試中の車号を含まない内容に変更された。

9100形に使用されるようになった栃木日信製制輪子

△9100形に使用されるようになった栃木日信製制輪子

2月26日の車両撮影会ではM台車用のNS-540Bが展示された

△2月26日の車両撮影会ではM台車用のNS-540Bが展示された


制輪子の供試結果は良好であったと推察され,7828編成で供試されていた制輪子は1月中旬より7300形,7800形,9100形,9800形の各車種に順次展開されているのが認められた。なお,7500形及び9200形に使用する制輪子は従来どおりである。これにより北総所属車両の使用する制輪子は,7300形,7800形,9100形,9800形用が栃木日信製,7500形及び9200形用が曙ブレーキ工業製の2社体制となった。

9100形における側扉化粧板の取替

公団Ⅱ期線の印西牧の原延伸開業にあわせて導入された9100形1次車においては,これまで客室内の大規模な修繕が実施されていないことから経年による内装の老朽化が進んでいたが,当年度においては側扉の化粧板を取替えた車両が生じた。

化粧板が取替えられた9106号車海#2ドア

△化粧板が取替えられた9106号車海#2ドア

意匠の変更により既存のドアとは若干印象が異なる

△意匠の変更により既存のドアとは若干印象が異なる


化粧板の取替が行われたのは9106号車の海#2ドアで,印旛で12月に施工された。取替られたのは内装の化粧板のみで,扉本体や窓ガラス,手掛け等の金物は既存のままである。化粧板については,2次車と同じツヤありの仕様に改められたほか,窓に挟まれた戸先部分を黒くすることで一体感をもたせた意匠が省略された。また,戸先及び戸尻の注意喚起表示は従来どおりフィルムテープによる後施工で,扉番号の表記は水色の公団仕様ながら近年標準のステッカー方式である。

ブレーキ電機品の更新

ブレーキ受信器等の電機品に対する更新については,当年度は7300形に対して実施された。なお本件については,京成貸借車両の7800形及び9800形は2018年度に京成件名で実施されていたが,自社所有車両の7300形は未実施だった。

更新された7300形のブレーキ受信器(右端)

△更新された7300形のブレーキ受信器(右端)

更新は7300形の全2編成を対象として2月初旬に印旛で実施され,ブレーキ受信器と圧力検出装置の取替が行われた。更新に伴う性能や仕様の変更はない。

空調装置の更新

7500形を対象として2019年度より実施されている空調装置の更新については,当年度は初年度以来3年ぶりに実施され,7502編成が更新を終えた。

更新を終えた7502編成の屋根上の冷房機と床下の空調主回路箱(右端)

△更新を終えた7502編成の屋根上の冷房機と床下の空調主回路箱(右端)

7502編成に対する空調装置の更新工事は,会社創立50周年記念ヘッドマーク掲出期間の最終盤であった3月中旬に宗吾工場で施工された。2019年度に更新された7501編成においては宗吾工場での冷房機の更新に先立って印旛で空調主回路箱の更新が行われていたが,本件編成は宗吾工場での一括更新とされた。更新後の空調装置は更新前と同じ三菱製で,冷房機の型式は7501編成と同じCU718Aである。