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2022年11月ダイヤ改正(修正)の概要と考察

2022年11月26日施行予定の北総線ダイヤ改正については,10月24日付のプレスリリースにて概要が告知されていたところであるが,今般その詳細が公となったことから,ダイヤ改正における変更点について本稿に纏めるものである。

2022.11.26加筆修正:ダイヤ番号は行路表及び一部駅の案内によりNo.118-2と判明した。旅客案内上はダイヤ「改正」としているが,実態は「修正」に位置づけられている。

本件ダイヤ改正は,2022年2月26日に改正・施行された北総線の運行ダイヤを改正するものである。北総線では2022年2月に2015年12月以来の約6年ぶりとなるダイヤ改正を実施していたが,今回それからわずか9ヶ月で再び改正される運びとなった(すなわち,新たなダイヤ番号はNo.119と想定される2022.11.26修正:新たなダイヤ番号はNo.118-2となる)。

前回のダイヤ改正では,新型コロナウイルス感染症の世界的流行に伴ったインバウンド需要の沈静化や,沿線地域におけるテレワークの普及による通勤需要の変化などで輸送計画の前提が変化したことに加え,北総線の重要な地盤である千葉ニュータウン地域の高齢化や人口減少を抑制し,新たな入居者を安定的に確保していく必要から,区間列車の新設などの新たな需要喚起策を盛り込んだダイヤを施行したところである。本件ダイヤ改正でもその考え方を踏襲し,10月1日付で実施された運賃値下げとあわせて沿線地域に対してさらなる需要喚起を図る方針が報道等によって明らかになっている。以上の点を踏まえ,本件ダイヤ改正の概況を紹介する。

車両走行キロ

北総線内の車両走行キロは,平日において284.0キロ増の41,938.4キロ,土休日において2,710.4キロ増の33,321.6キロとなる。各日の内訳は下表に示す通りであるが,アクセス線列車は各日とも車両走行キロに増減はなく,すなわち北総線列車の増減が車両走行キロの増減にそのまま顕れている。

平日土休日
北総線列車営業列車41,563.241,786.430,489.633,139.2
回送列車91.2152.0121.6182.4
小計41,654.441,938.430,611.233,321.6
アクセス線列車営業列車35,400.835,400.835,142.435,142.4
回送列車258.4258.4516.8516.8
小計35,659.235,659.235,659.235,659.2
合計77,313.677,597.666,270.468,980.8

目を引くのは,土休日ダイヤにおける約2,700キロもの車両走行キロの増加だ。その要因は,新鎌ヶ谷発着の区間列車がNo.118ダイヤから10往復も増発されるためである。新鎌ヶ谷・印西牧の原間15.8キロを走る列車を8両編成で運転した際の車両走行キロは126.4キロで,10往復させれば2,528キロとなる。一部列車が印旛日本医大発着であることを踏まえれば,なるほど車両走行キロの増加分はほぼ区間列車の増発によるものと理解できよう。

一方の平日ダイヤでは区間列車の増発は行われず,車両走行キロは全体で284.0キロ増と微増に留まる。急行運転の廃止については,詳細は後述するがNo.118ダイヤに残っていた急行列車2本はいずれも普通列車に格下げされる格好で,全体の車両走行キロには影響していない。すなわち平日の車両走行キロは,車両運用の持ち替えによって生じた若干の変更が反映された程度である。

運転回数

運転回数の現改比較を下表に示す。アクセス線列車については,アクセス特急列車27往復,スカイライナー41往復を基本としたNo.118ダイヤからの運転回数に増減はない。

平日土休日
上り普通85847277
特急5500
アクセス特急27272727
スカイライナー41414141
臨時ライナー1100
回送2346
合計161161144151
下り普通85876372
急行2000
特急2200
アクセス特急27272727
スカイライナー41414141
回送1222
合計158159133142

※途中駅での種別変更は主たる種別(最も運転区間の長い種別)で計上

平日ダイヤでは,下り方向に残っていた急行列車の設定がなくなり,これを吸収した下り普通列車の運転回数が2回の増となる。上り普通列車の運転回数は▲1回の減となっているが,これは車両運用の変更によって印西牧の原・印旛日本医大間における区間列車の設定回数が縮小したことによる(具体的には,印西牧の原を境に2本の列車だったものが全線通しで1本の列車となるため)。全体の運転回数としては,回送列車の増を反映して下り方向のみ1回の増となる。

土休日は10往復増の12往復体制に強化される区間列車

△土休日は10往復増の12往復体制に強化される区間列車

一方の土休日ダイヤでは,新鎌ヶ谷発着の区間列車が10往復増発されることにより,普通列車の運転回数は上り5回,下り9回の増となる。区間列車の増発分(10往復)がそのまま運転回数に反映されていないのは,車両基地への入出庫に際して印西牧の原・印旛日本医大間に運転される区間列車など,他の列車の運転回数が見直されたことによるものであり,以下に示す駅別の乗車機会回数表からも読み取ることができる。

新柴矢切北国
秋山
松飛
大町
東松新鎌西白
白井
小室
中央牧原医大新柴矢切北国
秋山
松飛
大町
東松新鎌西白
白井
小室
中央牧原医大

上り747475107107861148687757576108122861148689
下り777876107113861136027777878107123861136227


上り575758858560876086575758859970977087
下り5758588587608759275758588510770976227

※アクセス線との共同使用駅は北総線列車とアクセス線列車の合算

駅別の乗車機会については,前回2月のNo.118ダイヤ改正では一部の駅で平日ダイヤにおける乗車機会の減少が認められたところであるが,本件ダイヤ改正では総じて乗車機会が増加しており,減少した駅は認められなかった。また,急行運転の廃止によって平日下り方向の矢切と北国分・秋山・松飛台・大町の各駅間に乗車機会の差がなくなっている。

新鎌ヶ谷駅では9月頃からライナー券売機と思しき準備工事が始まっていた

△新鎌ヶ谷駅では9月頃からライナー券売機と思しき準備工事が始まっていた

アクセス線開業前の習熟運転で新鎌ヶ谷に停まるAE形

△アクセス線開業前の習熟運転で新鎌ヶ谷に停まるAE形


乗車機会にとりわけ大きな増減が生じたのは新鎌ヶ谷で,土休日下りに至っては20回もの乗車機会の増加が認められた。最も大きな増加要因となったのが,スカイライナーの新鎌ヶ谷停車である。新鎌ヶ谷に停車するスカイライナーは平日・土休日ともに上り14本,下り10本の設定で,日中は60分間隔,すなわち3本に1本が新鎌ヶ谷停車便となる。東京都心と成田空港の最速達列車として位置づけられてきたスカイライナーは,これまで長らく北総線区間を通過運転するのがいわば当然の考え方であったが,今回の新鎌ヶ谷停車を通じて,先の本年7月に公表された京成電鉄の新中期経営計画に盛り込まれた重要施策のひとつ「成田空港の更なる機能強化への対応」中の「スカイライナー停車駅の改良」が早くも発露した格好だ。

今回のスカイライナーの新鎌ヶ谷への停車については,11月1日付の広報紙「広報かまがや」上で鎌ケ谷市の芝田市長が歓迎と期待を表明している。市長は同紙上で,かねてより京成電鉄に対して停車を要望していたことも明らかにしている。

 新鎌ケ谷駅の停車につきましては、これまで、私からも京成電鉄(株)に要望をお伝えしておりましたが、今回、実現することになり、都心
や成田空港への移動がよりスピーディとなるとともに、乗換えの選択肢が広がり、ますます便利になります。

(市長メッセージ「京成スカイライナーが新鎌ケ谷駅に停車」「広報かまがや」2022年11月1日付)

なお,北総線区間ではすでに2020年10月から千葉ニュータウン中央と印旛日本医大に停車する臨時ライナーが設定されているところであるが,今回のスカイライナーについては両駅への停車は見送られた。臨時ライナーは本件ダイヤ改正後も引続き設定されているが,こちらは通勤ライナーとして今回のスカイライナーとは明確に区別された格好だ。あくまで今回のスカイライナーは,従来の青砥停車便の停車駅に新鎌ヶ谷を追加したというのが実態であり,モーニングライナー・イブニングライナーと競合する朝の上りと夜間下りには設定されていないことから,大多数の通勤通学の選択肢にはなり得ない。

さておき,このほか土休日ダイヤにおける区間列車の増発による効果もあって,新鎌ヶ谷から印旛日本医大までの各駅では乗車機会の顕著な増加が認められた。乗車機会が最も多くなった新鎌ヶ谷平日下りでは123回を数えている。乗車機会の多寡だけで利便性の良否を論じることはできないが,減便を行わざるをえない他の鉄道事業者が昨今散見されていることを踏まえれば,北総鉄道(と京成電鉄)の覚悟と期待を見て取ることができよう。しかし,2期線区間や対都心輸送に関する施策に関しては依然として乏しいのが実情であり,これらの輸送需要を踏まえた適切な輸送のあり方をどのように示せるかが今後のさらなる成長の鍵を握っている。

区間列車の増発

前回No.118ダイヤに引続き今回も新鎌ヶ谷発着の区間列車がダイヤ改正の目玉となり,土休日ダイヤでは1日10往復が増発される運びとなった。平日はNo.118ダイヤと同様に1日6往復であるが,朝通勤時間帯の終盤に1日2往復が設定されるのみであった土休日ダイヤは1日12往復の規模に拡大する。本件については9月30日付産経新聞において,室谷北総鉄道社長が以下のように述べている。

使い勝手を良くするために電車の本数も増やさないといけない。2月のダイヤ改正で増やしたが、秋にも大幅に増やす予定だ

(「「値下げで若い世代呼び込む」 北総鉄道の室谷社長インタビュー」「産経新聞」2022年9月30日付)

室谷社長の発言やプレスリリースにある通り,今回も区間列車は北総線内の移動促進策と位置づけられている。それは区間列車の運転時間帯にも表れていて,朝7時台後半から10時半頃にかけて5往復,14時台後半から19時半頃にかけて7往復といった様相は,まさに休日の行楽利用(と学生の通学利用)を念頭に置いたものと想定される。

朝方は区間列車によって普通列車の10分間隔運転が実現している

△朝方は区間列車によって普通列車の10分間隔運転が実現している

さて,前回のNo.118ダイヤにおいて,区間列車の設定には普通列車の運転間隔確保としての側面があることを述べた。とりわけ土休日ダイヤにおいては,朝8時半頃から9時台はじめまでの上り方向における運転間隔を約10分間隔とすることに重きが置かれ,副次的に9時台前半の下り方向も同様の運転間隔を実現していたところだった。本件ダイヤ改正において増発された土休日の区間列車も基本的にはこの考え方を踏襲していて,上り方向では朝7時半頃から10時頃,下り方向では8時頃から10時半頃までの朝方に設定された区間列車は,新鎌ヶ谷・印西牧の原間における普通列車の約10分間隔,時間6本運転を実現している。

小室の待避設備を活用しながら運転間隔の改善に繋げた日中下り方向

△小室の待避設備を活用しながら運転間隔の改善に繋げた日中下り方向

一方で,上り方向では14時半頃から19時頃まで,下り方向では15時頃から19時半頃までの午後の区間列車は,本数としては上下ともに約40分間隔の設定であり,都心直通列車とあわせた普通列車の運転頻度は時間4.5本となる。こちらは都心直通列車の偏った運転間隔を改善するための設定だ。日中時間帯の新鎌ヶ谷・印旛日本医大間における都心直通の普通列車は,20分間隔のスカイライナーと40分間隔のアクセス特急列車の待避を考慮したダイヤ構成のため,運転間隔に偏りが生じている。具体的には15分と25分の間隔が40分周期で繰り返されるのだが,今回このうち長く空く25分の間に区間列車を設定することで,アクセス線開業以来の懸案だった「25分待ち」の改善を図った格好だ。

なお,かつて1990年代に新鎌ヶ谷・千葉ニュータウン中央間に運転されていた区間列車は,1993年4月のNo.103ダイヤ改正当時で40分間隔,土休日のみの運転に縮小された1995年4月のNo.105ダイヤ改正当時で60分間隔の運転であったから,運転頻度としては1993年4月のNo.103ダイヤを想起させる。当時とは比ぶべくもないほど沿線地域が発展したとはいえ,新たに設定された区間列車が当時と同じ轍を踏まず,利用が根付いていくことを祈りたい。

上り方向は待避設備の制約が運転間隔の改善を難しくしている

△上り方向は待避設備の制約が運転間隔の改善を難しくしている

ところで,スカイライナーなど速達列車の待避などによる制約から同区間の普通列車を完全に均等な運転間隔とするには至っていないものの,下り方向については朝と午後ともに小室の待避設備を活用することで概ね均等な運転間隔の実現に成功している。スカイライナーの運転本数が少ない朝の上り方向についても運転間隔は概ね均等になっているが,一方でスカイライナーが20分間隔で運転される午後の上り方向については,小室に待避設備がないことから運転間隔は依然として不均等にならざるを得ない状況であり,新鎌ヶ谷・印西牧の原間における待避設備の乏しさが仇となっている。当該時間帯の上り区間列車は後続の都心直通列車に対して約6分先行で走る状況で,乗車機会こそ増えたものの「使い勝手の良」い状態が実現しているかは甚だ疑問ではあるが,現状の設備とダイヤパターンではこれが精一杯であることは上図に示した通りである。

急行運転の廃止

北総線における速達列車のはしりであった急行列車が,ついに本件ダイヤ改正において完全に廃止される運びとなった。

北総線の都心直結からまもない1993年4月のNo.103ダイヤ改正で初めて設定された急行列車は,北総線における最初の速達列車だった。矢切と新鎌ヶ谷の間を通過運転することで所要時分を普通列車から5分「も」短縮し,日本橋・千葉ニュータウン中央間の所要時分は50分となった。平日朝の上り列車2本から始まった急行列車は,都心直通運転の速達性と利便性を活かした花形列車として当時の北総線を支え,運転開始から2年後の1995年4月のNo.105ダイヤ改正で下り方向にも設定されるようになるなど,拡大と発展の一途を辿った。

北総線の帰宅ラッシュを支えてきた急行列車

△北総線の帰宅ラッシュを支えてきた急行列車

上り方向については2001年9月のNo.109ダイヤ改正で特急列車に格上げされるも,下り方向についてはその後も急行列車のまま設定が継続し,急行運転区間の京成線内への拡大や運転本数の増加など利便性を向上させながら,下り方向における唯一無二の速達列車として設定されてきた。2010年7月のNo.115ダイヤ改正でアクセス特急列車が設定されて以降は,夜間1時間ヘッドとなるアクセス特急列車の運転間隔を補完する格好で設定され,2015年12月のNo.117ダイヤ改正で夜間下り方向のダイヤパターンが見直された際にも,京成高砂場面で20時台までの早い時間帯における北総線速達列車に位置づけられて3本が運転されてきた。

ところが,今となっては普通列車から4分「しか」短縮しない急行列車は,アクセス特急列車との比較によって速達性の強みが失われ,通勤利用者にとって往時ほど魅力的な選択肢になり得ないのが現実だ。かつて乗降客数の少なさから通過していた2期線の途中駅は近年の開発で目覚ましく利用が増加し,前後の普通列車に混雑が集中することもあった。かつて下り方向だけで最大6本が運転されていた急行列車は,前回No.118ダイヤ改正で1本が削減されて2本を残すのみとなっていたが,運転開始から30年を目前にした本件ダイヤ改正でついに終止符を打つ。

京成高砂場面18~19時台では普通列車が約10分間隔で運転されるようになる

△京成高砂場面18~19時台では普通列車が約10分間隔で運転されるようになる

廃止される急行列車2本の処遇については,前述の通り普通列車に格下げされる格好となる。これまで急行列車の運転されていた京成高砂場面19時台の下り列車は,概ね15分間隔で普通列車が設定されていたところであるが,急行列車から格下げされた普通列車が加わることで概ね10分間隔での運転が実現する。都心方面からの下り普通列車は,京成高砂場面18時台から19時台にかけて10分間隔で運転されることになり,混雑の分散に期待ができる。かつては北総線にとって唯一無二の速達列車だった急行列車は,それ自体が運転されなくても十分なほどに他の速達列車が走り,通過運転していた中間駅に利用者が増え,そうした北総線の成長を見届けるようにして,30年弱の走りを終えようとしている。

車両運用の持ち方

車両所属事業者別の車両走行キロの内訳は下表に示す通りである。アクセス線列車に変更はなく,北総線列車において車両運用の持ち替えや区間列車の増発による車両走行キロの増減が発生している。

平日土休日
営業列車回送列車営業列車回送列車営業列車回送列車営業列車回送列車
北総線列車北総車17,984.060.818,176.830.418,086.40.018,993.660.8
京成車4,590.40.05,624.060.84,104.030.43,931.260.8
都営車16,009.630.414,489.660.86,748.891.26,657.660.8
京急車2,979.20.03,496.00.01,550.40.03,556.80.0
小計41,563.291.241,786.4152.030,489.6121.633,139.2182.4
アクセス線列車ライナー21,447.2258.421,447.2258.421,188.8516.821,188.8516.8
京成車8,785.60.08,785.60.06,201.60.06,201.60.0
都営車5,168.00.05,168.00.03,100.80.03,100.80.0
京急車0.00.00.00.04,651.20.04,651.20.0
小計35,400.8258.435,400.8258.435,142.4516.835,142.4516.8
合計76,964.0349.677,187.2410.465,632.0638.468,281.6699.2

北総所属車両の車両走行キロは平日・土休日ともに増加しているが,とりわけ土休日ダイヤで968.4キロ増と大幅に増加している。土休日ダイヤで10往復が増発された区間列車は,9往復が北総所属車両による運転であり,これが車両走行キロ増加の要因のひとつである。ただし,後述する運用の持ち替えによる相殺で9往復分の車両走行キロがそのまま増加分に計上されているわけではない。

前回No.118ダイヤにおいてアクセス特急列車としての運用を開始し,平日の北総線区間においてAE形に次ぐ21,208.0キロもの車両走行キロを数えた東京都所属車両は,北総線列車の受け持ちが▲1,489.6キロの大幅な減少となる。改正後の平日の北総線列車における車両走行キロは14,550.4キロで,北総所属車両との差は約3,600キロに拡大している。それでもアクセス線列車とあわせた北総線区間全体での車両走行キロは,AE形(21,705.6キロ)>東京都所属車両(19,718.4キロ)>北総所属車両(18,207.2キロ)と依然としてAE形に次ぐ存在感を示している。

東京都所属車両における車両走行キロの減少は,運用を持ち替えた他社所属車両の車両走行キロの増加に繋がっている。このうち京成所属車両と京浜急行所属車両の車両走行キロは,平日で京成所属車両が1,094.4キロ,京浜急行所属車両が516.8キロの増加となり,京成高砂・印旛日本医大間を基準とすると前者が約2往復分,後者が1往復分に相当する。これらの増加分は日中時間帯における運用の持ち替えで生じたものだが,その要因は乗入れ先の京浜急行線内における日中ダイヤパターンの見直しにある。

思えば特急運転だった頃は走っていなかった車両ばかりに…

△思えば特急運転だった頃は走っていなかった車両ばかりに…

さて,羽田空港・印旛日本医大間の運転系統を基本とする日中時間帯の北総線列車には,2012年10月のNo.116ダイヤ改正から京浜急行線内で快特運転が設定されてきた。その運用サイクルは3時間20分で一巡し,日中時間帯における所要編成数は10編成だった。ところが今回のダイヤ改正では,京浜急行線でいわゆる「南エア急」とされる横浜方面のエ急行列車の運転本数が半減し,京急空港線の中間駅におけるエ急行削減分の乗車機会を北総線系統の列車が特急運転に格下げされる格好で肩代わりしている。特急列車への格下げによって北総線系統の運用サイクルは3時間40分に拡大し,所要編成数も11編成に増加しており,車両運用にも少なくない影響を与えている。これが終日にわたる運用の大規模な持ち替えにつながった理屈だ。

なお,京浜急行線内において北総線系統の列車が日中時間帯に特急運転を行うのは,2003年7月のNo.110-2ダイヤ修正で急行運転に格下げされて以来,約19年ぶりのことである。今回の種別格下げがエ急行列車ではなく特急列車となったのは,少しでも品川・羽田空港間の所要時分を短く保ちたかった京浜急行の思惑を感じなくもない。とはいえ,これで北総線系統の快特運転が完全になくなってしまうわけではなく,日中と朝晩の移り変わりなど一部時間帯では快特運転も引続き残っており,朝晩は従来どおりエ急行運転であることから,乗入れ先の運転形態はまさに千差万別といった様相である。

また,特急運転となる日中時間帯には羽田空港での折返し時間が約13分と伸びている。これまでは約2分で折返していたため,ひとたび南行列車で遅延すると折返し後の北行列車も遅れるという状況にあった(しかも北総線内までに回復できる場面がなく,アクセス線列車の待避駅変更が度々発生していた)。羽田空港での折返し時分の延長によって遅延回復のマージンが確保され,ダイヤの弾力性が向上した今回のダイヤ改正では,こうした事象の発生頻度の改善にも期待できる。

夜間滞泊

運用の持ち替えに関連して,印西牧の原における夜間滞泊の設定が久しぶりに変更されそうだ。印西牧の原での夜間滞泊は2010年7月のNo.115ダイヤ改正から京成所属車両1本と東京都所属車両1本の2本体制で設定されているが,2013年10月のNo.116-2ダイヤ改正からは京成所属車両と東京都所属車両の留置番線を振り替えて,京成所属車両が3番線,東京都所属車両が2番線に留置されるようになっていた。これは,夜間滞泊明けとなる翌平日の東京都所属車両の印西牧の原出発時刻が6時26分発と遅く,3番線留置では下り列車から同一ホームで逆乗りできてしまうことの対策と想定される。かねてより印西牧の原では平日の通勤時間帯にコンコースの動線を区切って逆乗り対策を実施しているが,当時の夜間滞泊明け平日第644Tは下りホーム3番線から6時26分発で,直前の6時18分には下り第501Tが4番線に到着するといった状況だった。対策として留置番線を振り替えるのはさもありなんだろう。

以前は2番線に京成所属車両が留置されるダイヤだった

△以前は2番線に京成所属車両が留置されるダイヤだった

アクセス線専用車両同士の接続は短命に終わることに

△アクセス線専用車両同士の接続は短命に終わることに


今回のダイヤ改正では,それまで北総所属車両で運転されていた平日の印西牧の原6時36分発の下り列車が東京都所属車両に変更されており,この第645Tが印西牧の原での夜間滞泊明けの車両で運転されると考えられる。すなわち夜間滞泊明けの列車が下り列車となるため,逆乗り対策での留置番線の振替は不要となり,かつてのように京成所属車両が2番線,東京都所属車両が3番線留置に戻される可能性が高い。

余談だが,夜間滞泊と無関係に京成所属車両のうちアクセス線専用車両で運転されていた土休日第505Kb~第704Kの1往復は,列車番号が第569Kb~第768Kとなって京成一般車両の運用に変更されている。第704Kは新鎌ヶ谷でアクセス特急列車の第608Kと接続しており,アクセス線専用車両同士の接続が見られていたが,誤乗対策なのか早々と見納めになる。

北総車における車両運用

最後に,北総所属車両の車両運用について述べる。車両走行キロは,前述の通り北総線内では平日と土休日ともに増加しているが,乗入各線を含めた全体では平日で▲657.6キロ,土休日で▲1,042.4キロの減となる。同時に稼働する最大運用数は平日10運用,土休日9運用のまま増減なく,依然として13編成中3編成が予備に回る体制である。夜間滞泊の本数や箇所についても変更はない。

北総車の運用概況図

△北総車の運用概況図

時間帯別の運用状況としては,区間列車の増発された土休日7時~10時と15時~18時の稼働運用数が軒並み増加しており,とりわけ9~10時と15時~18時はその日最大の9運用が稼働する。平日の時間帯別運用数は大きく変化していないが,入庫時間が繰り下がったことで深夜帯の稼働運用数が若干増加している。No.118ダイヤでは偶然か幾分体系的になっていた平日における運行番号と入庫時間の関係は再び混迷としてしまったが,一方で土休日の運行番号は平日と同様に出庫時間順に付与されていて分かりやすくなった。

京浜急行線内では珍しくなくなるが北総線内で見る機会は減る北総車の特急運転

△京浜急行線内では珍しくなくなるが北総線内で見る機会は減る北総車の特急運転

概況表からは読み取れないが,今回のダイヤ改正における車両運用の持ち替えは北総所属車両にも大きな影響を与えている。平日朝の持ち替えは2010年7月のアクセス線開業以降では最大規模で,わかりやすい例では上り特急列車の5本中3本が北総所属車両による運転であったところ,3本目の第732N以外はすべて東京都所属車両に持ち替わっている。ちなみに特急列車の5本中4本が東京都所属車両になるのは2010年5月のNo.114ダイヤ改正以来である。

ところが,これだけ大規模に持ち替えが発生していながら,日中時間帯に羽田空港・青砥間を往復して北総線内に戻ってこない「珍運用」の平日39Nは中盤の第1839Nまで設定がそのまま残存している。羽田空港・青砥間の運転系統は改正後も京浜急行線内で快特運転となるため,平日は引続き日中の京浜急行線内で快特運転を行う北総所属車両を見ることができる。

同じ車で延々と区間列車を回すのはこの時代も同じ

△同じ車で延々と区間列車を回すのはこの時代も同じ

土休日における区間列車の具体的な運用方は,入出庫の前後で数往復ほど区間列車として運用するものが大半である。朝方の区間列車は5往復とも北総所属車両による運転であるが,これまで日中時間帯に他所属車両との車両交換によって出庫していた北総所属車両の出庫時間を繰上げて,都心直通列車として運用する前に区間列車として1~2往復を運用する格好に改めている。朝方の29N,31N,35Nがそれで,このほか25N(1)は朝の入庫前に区間列車を1往復する運用方とされている。

また,午後の区間列車は7往復中6往復が北総所属車両による運転であるが,こちらも使用する2運用のうち1運用は他所属車両との車両交換によって入庫させる北総所属車両の入庫時間を繰下げて使用車両を捻出している。午後の21Nがそれで,このほか区間列車として運用するためだけに25N(2)が設定されており,こちらはNo.118ダイヤにおける土休日35N(1)の思想に近い。ひとつの運用で延々と区間列車を回すのは往時の区間列車を彷彿とさせるが,当時とは1サイクルの時間が違うため,同一時間帯に列車番号が重複して「a,b,c」の区別をする取扱いは生じていない。なお,土休日午後の残る1往復は第1872K~第1973Kとして京成所属車両による運転となる。平日には東京都所属車両による運転もあることから,今回のダイヤ改正では京浜急行所属車両以外のすべてで新鎌ヶ谷行の区間列車を見ることができる。