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北総線よもやま話1912
2019年12月の北総線よもやま話。このよもやま話は将来的に四季報として纏めていく前段階の落書きコーナー。
車両:7500形の話題あれこれ
先月の9800形につづき今月は7500形の話題がてんこもり。
不意打ちだった人も少なくないと思うのだけど,改造や改修作業は決して宗吾でしか出来ないなんてことはなくて,むしろ北総マターであれば車基で淡々と進めればいいだけの話。なので今回の7501編成も12月中旬から車基に籠もってゴソゴソしていたわけで,もちろん予兆というのは十分にあったわけね。
さて,そんな7501編成の何が変わったの??という話だけど,一番目につくのは客室内の側引戸カモイにある車内案内表示器だろうね。車内案内表示器のLCD化については先月のよもやま話でも9118編成がしゅん功した件に触れているけど,2020年度の施策完了までには年度あたり2~3本を施工する必要があるわけで,北総の車(≠CNTの車)であれば7500形が消去法的に施工待ちという状態だった。
しかも施策自体が京成で進行中の施策に倣ったものなので,7500形であれば3000形と共通としている17型カラーLCDに換装されるのは言うまでもない話。ソフト的には北総オリジナルのものが入ってるけど,これも昨年度に7300形から展開している19.2ハーフ型カラーLCD(パッとビジョン)に準じた仕様なので,特段これといった話題というほどでもなかろう。淡々とトレースすればいい話だね。
ところが7501編成の話題は今回それだけで済んでいない。そのひとつがLCDのついたカモイにも表示されている監視カメラの存在だ。
これまでも鉄道の監視カメラといえば駅施設などにおいて防犯や旅客案内など遠隔監視手段のひとつとして設備されてきたのだけど,社会情勢を鑑みてここ数年は旅客車の車内にも設備されるようになってきた。近いところでは京成が以前よりAE形を対象として設備していて,今年度からは通勤車にも設置を拡大している。当然,先ごろから走り始めた京成と新京成の新造車にも設備されているのだけど,京成に関しては既存車についても設置を進めていて,3000形を対象に灯具のLED化と並行して施策を進めているところなのね。
…で,その施策が北総でも並行して展開されることになって,7501編成にも設置された…というわけ。7500形(と9200形)は防犯カメラの設置に先立って9月から灯具のLED化を始めていたのは既報の通りだけど,これと並行して作業をすれば効率的だっただろうに…とか思うのは外野の勝手な妄言。。
ちなみに7500形で採用している灯具はパナソニック製だけど,防犯カメラはアイテック阪急阪神によるもの。先月末の鉄道技術展にも同じものが出ていたのでアンテナの感度が3000倍の人にはすぐ分かる代物だった。
そして7501編成の話題はまだまだ続いて床下へ。7501編成は一連の改造が終わった23日の73N運行で矢切・牧の原間を試運転しているのだけど,ここまでの内容でわざわざ試運転するまでのことはあるまい。LCDの表示テストがしたければ擬似的に生成した速発パルスを設定器に与えてやれば終わる話で,車基でしれっと終わる内容だろう。
となると何が変わったのかという話だけど,おそらく走るとか止めるとか車両の基本的な機能に関して何らかの手を施したのだろうね。それに関連している…とは正直言い難いものだけど,床下を見てみると各車海側の第2台車付近に艤装されている空調主回路箱が新しいものに交換されている。でもこれも本質ではなくて,試運転の本質はもっと別のところにあると考えるのが普通だろう。。。
昨年度に取替した7800形から見られるようになった「赤い」スリーダイヤの銘板は今回も床下で自己主張している。海側でさりげなくアピールする赤い銘板が更新車の証だね。
車両:9100形にもデジタルSR準備工事
ついに9100形にもDSR準備工事車が現れた。まあ5カ年計画の2年目と思えば計画の折返しも間近なので,そりゃ1本くらい出てこないとね。
詳細な改造内容については後日7300形や7800形と一緒に会員向けの記事をしたためているので,ここではざっくり事象としてトレースしておくに留めるけど,要は先頭車にアンテナの芽が生えてきて,車内は支障機器の移転や台座の新設などを行った…という他形式同様の準備工事が施工されたもの。
とはいえ,7300形(ほか色とか出自の違う差分号あれこれ)や7500形(ほか色差分号)のように京成側に共通としている車のいない9100形は「前例のない」車両。それゆえ設計は個別に行わざるを得なかっただろうし,工事についても他に類を見ない内容のものもある。
今回のしゅん功は,形式単位で見れば7300,7500,7800,9100,9200,9800の6形式全てが1編成の準備工事を終えたことになる。7800形に至っては今月出てきた7828編成のしゅん功で3編成全てが準備工事を終えたことになり,全体の6割強となる8編成が準備工事完了。これから本設工事で同じだけ改造するとはいえ,5カ年計画の2年目として「数字」が現れてきた感じだね。
ちなみに,もちろんこれも北総マターなので車基でしれっと工事している。工事は11月下旬から始まっていて12月中旬に完了しているので,だいたい7300形や7800形と同じくらい。
車両:7300形に車椅子スペース設置へ
これはまだ今後の案件。月末27日に公式から発表された「移動等円滑化取組計画書」をどこに分類しようか困ったので主管ごとに分けてみた次第。
そんな移動等円滑化取組計画書,それ自体については今更ここで説明するのも…という感じだけど,ざっくり言えばバリアフリー関係の計画書。ざっくりバリアフリーといっても法令などに色々な指針があって,設備的なハード対策から人によるソフト対策まで様々ではあるものの,前者のハード対策については特に注目しておきたい。というのも上場する各社と違って中経など外に出てくる情報が圧倒的に少ない北総にとって,具体的な設備投資計画に踏み込んだ言及がある計画書というのはどれだけ意義深いかってね(力説)。
そして車両分野においては7300形への車椅子スペース設置が言及されている。車椅子スペースはいわゆる「移動円滑化基準」と呼ばれる省令のなかで1列車に対して1箇所以上を設備するように定められているのね(移動等円滑化のために必要な旅客施設又は車両等の構造及び設備に関する基準を定める省令:第32条)。北総車で唯一車椅子スペースをもたない7300形に新設する根拠としてはこれによるところが大きい。
とはいえ7300形の改造は京成に前例のない内容なだけに特に注目しておきたい案件だ。単に座席やヒータを撤去して床敷物を直すだけならまだ話は簡単だが,実際には支障する戸閉電磁弁の移設であったり,非常通報装置の増設による放送回路の変更などが発生する。工事内容もさることながら,法令上の手続きとして車両確認も必要になる…けど,これについてはもう終わってるみたいね。別件で調べ物をしていたらこの件の車両確認についても確認できてしまった。
転落防止幌の新設だ何だと2000年代から長らく続いてきた移動円滑化関係の施策,オンボロ電車の置換えだったり7300形の扱いだったり…不透明な要素が片付いて,いよいよ終わりが見えてきたというのが感慨深いものだね。
信通:新鎌ヶ谷駅改札外コンコースに発車標増設
先月の記事でそろそろつく頃だよね~なんて書いた新鎌ヶ谷のラチ外コンコース向け発車標について,予定通り設置が完了し中旬より供用を開始している。「予定通り」なんて書いているのは,忘れている人も多いだろうけどプレス発表にちゃんと「12月工事完了」って予定が書いてあったからなのだ。
いざ設置されてみれば確かにその通りなのだけど,先月の記事で仕様はあまり変わらないんじゃないか的なことを書いたものの,蓋を開けてみれば意匠はがらりと変わってしまった。そりゃ駅全体のリニューアルをしているのだから,発車標だってそれに合わせた意匠になってもおかしくないわね。
とはいえ,あくまで変わったのは意匠だけ。それもそのはず発車標はしょせんシステムの末端にある表示器のひとつに過ぎず,その上位にある制御装置が大きく変わらない限りは機能や性能がそう大きく変化するようなものではないってわけ。
そんな新発車標の意匠だけど,5月からスタートした新しいサインシステム(このウェブサイトで第6世代と呼んでいる黒地のもの)の考え方を取り込んできた。表示内容が可変であるというだけで発車標だってサインのひとつと考えれば納得できるもので,それ自体はむしろ駅全体としての統一感を醸成する意味で一躍買っている。そのくせ書体が既設サインと揃っていないと言われればそうなんだけど,これはむしろ既設発車標に揃えている。
今回もっとも評価されるべきは表示色について見直しが図られた点だろう。昨年度更新の3駅(新柴又,松飛台,大町)の時から兆候はあったものの,今回の発車標はいよいよフルカラーLED仕様で導入されている。すなわち,赤・緑とその混色である橙にとらわれない柔軟な色指定が可能になったというわけだね。ただし,上にも書いた通り上位装置が3色分の制御電文しか吐かないので,フルカラーLEDを完全に活かすには及ばず,使用できる色は3色に限られてしまう。新発車標では,従来の赤がやや色味の異なる赤に,橙は黄色に,そして緑は白でそれぞれ表示されるようになっている。この処理は色ごとにIDを持たせてこのIDのときは何色…というのを発車標側でやっているからだろうね。
新しい表示色については,白の表示が出せる点は輝度コントラストの観点から好ましいものと言えよう。赤が若干明るい赤になったのは正常な色覚を持たない利用者への配慮として評価できるね。鉄道はその安全を保つ上で欠かせない信号保安の分野で色を重要視していることもあって,色には特に厳しい業界ではあるのだけど,利用者に向けての色表現というのは一線を引いて考えたほうがいいのだろうね。身近な例なら八広を皮切りに京成が入れ始めた新しい発色の発車標であったり,関東近郊では小田急のように色に配慮したサインの制作であったり,そういったカラーユニバーサルデザインの観点というのは鉄道にも少しずつ浸透してきている。先日の鉄道技術展でも行先表示器や踏切警報灯にこうした考え方を取り入れた製品が出ていたけど,時宜を得た施策展開として評価すべきことだと思うかな。
しかし一方で課題も多い。そもそも上期にサインシステムを新意匠化した時から指摘しているように,黒地に青という配色は輝度コントラストの観点から高齢者などにおいて判別しづらい。これは今回の新発車標でも同様で,番線表示の青については再考の余地があろう。さらに厳しい配色なのは,表示部の上に記された方面案内の背景色で,一見すると筐体色と同じ黒色に見えるが実は方面案内の部分のみさらに濃い黒になっている。マンセルでいえばN1.0とN1.5くらいの差のデザインにどういう意味があるのかと言えば…???
とはいえ,この配色の課題については案内上の不都合があるわけでもなく,デザインの問題にすぎない。今回の課題として最も強く感じたのは,ラチ内から本屋口に向けての動線…すなわち出場側の動線を歩く際に新発車標によって既設サインが遮られ,出口を示す誘導サインが視界から消えてしまうこと。既設サインを遮るのは距離にすれば僅かな間ではあるのだけど,サインの本質として致命的だと思う。まあ新発車標が片面仕様なのだから裏面には「出口」のサインを貼ってやれば十分に解決しうる話なので,そのうちしれっと変わってたりしてね。
信通:既設発車標の文字色に変化
これは↑の案件に関連したものなのかは不明。ただ,↑と同時期に松飛台と大町の発車標の表示色に小変化があった。
というのも表示色に橙を指定していた文字がすべて黄色で出るようになった…というもの。てことはこれもフルカラーLEDだったの?という話になるけど,出せるには出せるんだろうね。以前のよもやまに書いた通りすでに昨年度導入駅からLEDの仕様が変わっている。
今のところ橙が黄色になった以外に色の変化はなく,しかも同時期に導入した新柴又については橙のまま変化なし。これもなぞ。
色以外の点ではスクロール速度がやや速くなっている。↑の新鎌ヶ谷の新発車標も速いので,両者に何らかの関連性があるとは思うけども。
発車標といえば,千葉ニュータウン中央終点方の下り発車標が中段だけゴシック体で表示される(標準は明朝体)なんていうようわからん話も数年前にあったけど,謎が片付く前に新たな謎が降ってくる感じ…。
信通:小室局鉄塔の塗装修繕工事はじまる
これって信通なのか施設なのか?というところから入りたいんだけど,とりあえず小室の「例の鉄塔」が塗り直されることになった。
北総線で鉄塔といえば…なんて書き出すとあとが面倒なのでこの書き出しはボツ。でも鉄塔といえば小室でしょう。北総に関係なくても新京葉変電所の立地から鉄塔の多い街としてきっと印象に残っている人も多いはず。
そんな小室の鉄塔でも駅舎に生えてる例のツノ…その正体はもともと小室局と呼ばれた無線通信設備の鉄塔。これは開業当時の北総線における通信設備のひとつで,有線通信設備のバックアップとして設備されたものだったのね。北総線には当時からCTCやITVなどの回線を収容した通信ケーブルが設備されていたのだけど,そのケーブルは一般的な鉄道と同様に線路脇のトラフに収容されていたのね。ただ,北総線の場合はその真横を北千葉道路の専用部が通る計画だった。万が一にも専用部を走る自動車が事故って線路に転落したときにトラフごとケーブルが巻き込まれてしまうかもしれない。ならば,そのバックアップは無線でやるのがいいよね…という経緯によって新鎌ヶ谷と小室に無線局が開設され,非常用の通信設備が設けられたというわけ。
なので小室の鉄塔の正体は無線局の名残で,かつては頂上部にパラボラアンテナが設置されていた。同じアンテナは新鎌ヶ谷にもあって,当然こちらも鉄塔が立っていた。もちろん今も立っている。新鎌ヶ谷の起点方…海側を望むと新京成線の高架との間に高い鉄塔があるけど,これが小室局の対になる鎌ヶ谷局だったもの。
そんな小室局もとうの昔に更新されて,今は八木アンテナがついているのみ。すでに本来の役目は終えているだろうけど,開業当時の逸話を今日に伝える歴史的構造物として今後も見られるのであればちょっとうれしい。
施設:シャッター改修あれこれ
今月は取り上げるような話題が少ないので千葉ニュータウン中央のシャッター改修について紹介してみよう。
北総線各駅では数年前から駅施設におけるシャッター改修を実施していて,これはシャッターの老朽取替にあわせて袖扉(避難扉)など付帯設備についても見直しを図っている施策のひとつなのね。一見地味ではあるのだけど防火のみならず防犯の観点からも重要な施策で,すでにかなりの箇所が袖扉つきのシャッターに改修(取替)されてきた。
…のだけど,なかには袖扉のあるシャッターが袖扉なしのシャッターに取替される箇所もあるわけだ。それが今回紹介する千葉ニュータウン中央の増設階段(B階段)で,月内の更新工事において袖扉のないシャッターが設置された。
それもそのはず,すでに駅開設時からのA階段については2014年度の取替時に袖扉つきのシャッターに改修しているため,非常時の経路としてはA階段で賄えるような状態になっていた。ならばB階段は袖扉なしでも良いだろうという判断が適当なのかは専門家じゃないので知らんけど,ともあれ逆パターンの改修だって存在するんだねという話。
施設:大町駅バリアフリー化に目処?
決して施設系統の話題がないわけではないのだけど,今月気になった話題としてはこれをチョイス。
出どころは↑↑で車両関係でも取り上げた「移動等円滑化取組計画書」。これには施設系統の計画として駅施設のバリアフリー化…たとえばエレベータや多機能トイレなどの新設についても触れられているのだけど,今年度工事としてすでに着手している松飛台のしゅん功によって3,000人/日以上の利用者数がある駅については整備完了となる旨の記載に加え,2020年度すなわち次年度までに全駅,全車両についてバリアフリー化を完了させるという記載があった。
この記載はなかなか興味深くて,「基準に満たない駅であってもバリアフリー化はするよ」という明確な意思表明なのね。その工事が負担金工事なのか自己資金工事なのか,そういう工事の性格までは分からないけども,大町のバリアフリー化工事が次年度に発生するということは少なくともここから読める事実のひとつ。
大町についてはこのウェブサイトをくまなく読み込んでいる人なら気づいているだろうけど,2018年5月の時点でエレベータの新設に向けた測量を実施しているのね。なので基本的な設計構想はある程度決まっていると見てよさそう。
いよいよ耐震補強に続いてバリアフリー化という大件名も終わっちゃうな~なんて終わる前から感慨深く思っている(さっきも書いた)。3,000人/日を割っている小室とか大町とかどうするんだろね~なんて以前思っていたけど,そんな小室が完了して大町をやらないというのは…とも思っていたので,納得の着地点ではあった。
ちなみに今年度設置の松飛台については来月のしゅん功に向けて絶賛工事中。排水関係で開けたのか床タイルの一部が変わっているほか,JIS規格品への更新が保留されていた点字ブロックについても更新を終えるなど付帯工事も進んでいる。今年度からはサインが新意匠化されているので多機能トイレ設置後のサインをどうするのか気になっていたけど,トイレのピクトグラムの周辺だけくり抜いて去年度以前の仕様で制作した「多機能トイレ」のピクトに差し替えるに留まっている。