沿線点描

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北総線よもやま話1911

2019年11月の北総線よもやま話。このよもやま話は将来的に四季報として纏めていく前段階の落書きコーナー。

運転:「91N」毎日運転となる

なんじゃそりゃ~って見出しでスタート。しかし事実なのである。

ここでいう「91N」とは運行番号のこと。運行番号の命名にはいくつかのルールがあるのだけど,北総車の運行番号は,2桁の数字と北総車での運行を示すサフィックス「N」をあわせた3文字で表されているのね。

そして2桁の数字にも法則性があって,たとえば他社線に乗り入れる定期列車の運用であれば21Nから39Nまで,新鎌ヶ谷~印西牧の原を走る不定期列車であれば61Nから69Nまで…という感じ。では91Nは…というと,これは不定期に運転される列車のなかでもその時限りの運転になるような列車に対して使われてきた。適当な運行番号がないときは大抵が91Nや99Nで,これが重複するような事態になると93Nや97Nを使ってみたり…と,前例にとらわれず毎回変わるような自由度の高い番号だった。

…という説明をすると,宗吾で行っていた定期検査を終えた北総車が印旛に戻ってくる時にも91Nを名乗っているじゃないかという話になるのだけど,これは数年前89Nから派生したもの。いずれにせよ不定期運転であることには変わりなく,そんな91Nが毎日走るというのは注目しないわけがないよね。

ただの入換車両

△ただの入換車両

種明かしをすると,この91Nは先日のダイヤ改定で印西牧の原~車両基地間に設定されたもの。車両基地入出庫線を走るだけなので列車ではなく入換車両であり,「列車番号」と書くのはちょっと違う感じがするのだけど,便宜上の列車番号をつけるならば第890Nから第891Nの1往復が毎朝運転されている。

そしてこれだけでピンと来た人は相当良い勘をしている。以前の記事でどうなるんだろね~みたいなことを書いた第715T~第914Tの後継がこの1往復なのだ。北総線の運行ダイヤにおけるマニアックな見方として,朝9時を跨ぐタイミングで印西牧の原で折返す列車に与えられる使命の存在がある。それは印西牧の原と印旛日本医大それぞれから絶妙に遠い車両基地に勤める社員を輸送すること。9時を跨いで折返すその合間で車両基地まで1往復し,これによって社員の出勤の足として役立ってきたのね。

しかし先日のダイヤ改定でこの使命を担うに相応しい折返しがなくなってしまった。だから後継が気になっていたのだけど,それは当日の予備車を活用して1往復の入換を行うことで解決を図ったようね。それが91Nであり,毎朝しれっと牧の原3番線に据え付けられて車庫に戻っていく。

ただの回送といえばその通りなのだけど,非日常の象徴のような運行番号が日常的に見られるようになったのは面白いね。

車両:車内案内表示器のLCD化ふたたび

京成で2017年度からやっている車内案内表示器のLCD化を北総でも去年度から実施しているのだけど,今年度の改造工事が先ごろから始まり,その1本目として9118編成が上旬にしゅん功している。

LCD化された9118編成

△LCD化された9118編成

北総で実施している車内案内表示器のLCD化施策は京成のそれとほぼ同じ。会社案内によると多言語案内の充実ということで2020年度までに貸借車以外を更新するよというものらしい。貸借車が3分の1くらいいるので,年度あたり2~3本やれば終わる計算で,実際に去年度は北総から7300形2編成,CNTから9100形1編成(9108編成)が選ばれていた。消去法でいけば今年度以降は北総なら7500形,CNTなら9100形をちまちま改造するってことだね。

11月末時点では9118編成だけしゅん功しているけど,単純計算であと2本くらいは今年度もやるんじゃないかな。

車両:2ヶ月ぶり9800形あれこれ

すっかり見なかったので半ば存在を忘れかけていた9800形が2ヶ月ぶりに姿を見せた。9月30日に宗吾に行ってから実に2ヶ月も宗吾に「里帰り」していたもので,11月22日にイメチェンして戻ってきた。

晴れたらなお良かったのになあ

△晴れたらなお良かったのになあ

2ヶ月という長期間の離脱が許されたのは,ざっくり言えば7828編成が来たから。逆にいえば,特に増発するわけでもないのに北総車を13編成体制にしたのは,こういう事態が前もって予想されていた(予定されていた)からだったのだ。ようやく7828編成がその意義を発揮したってことだね。

はてさて気になる9808編成の2ヶ月間だけど,宗吾でみっちりやることをやってきた。空調整備に始まり,デジタルSR準備工事,そして重要部検査というメニューで納得の2ヶ月。しかも並行して補助電源装置や集電装置の更新まで行うというオプションつきで,これだけのボリュームをやれば話題たっぷり。見るとこいっぱい。

デジタルSR準備工事を終えた9808編成

△デジタルSR準備工事を終えた9808編成

デジタルSR関係,こちらは同じ3700形2次車の7818編成が6月にしゅん功しており,内容はそれと全く同じ。デジタルSR機器の設置に向けて干渉する機器を移設したり,アンテナや操作器などの準備として台座やキセを新設している。重要部検査もいつも通りの定期検査。

集電装置がシングルアーム式になったM1車

△集電装置がシングルアーム式になったM1車

やはり気になるのは集電装置や補助電源装置の更新だろうね。集電装置の更新は,北総車では7300形・9100形を対象に2015年度から実施したように,京成車でも追って3700形の集電装置をシングルアーム式のPT7131Bに変更しているもの。したがってM1系の集電装置はすべてPT7131Bに更新されている。

補助電源装置を更新したT車

△補助電源装置を更新したT車

補助電源装置の更新は,T車に艤装していた補助電源関係の機器をまるっと新しくするもの。これまで3700形や7300形の補助電源装置はDC-DCコンバータを主としていて,これは編成に引き通している母線回路からIVS(インバータ開閉器),IVF(インバータヒューズ),起動装置を経て接続されているのね。このDC-DCコンバータから直流600Vと三相交流440V,そして直流100Vを得ていて,このうち直流600Vが空調インバータ装置を通して各車の冷房機に,三相交流440Vは変圧器を通して単相交流200Vとして蛍光灯などに,そして直流100Vは蓄電池電源で動作する各種機器や,直流24Vに変換されてATS等の電源に用いられていたというわけ。

そんな東芝製のDC-DCコンバータをまるっと三菱製のSIVに置き換えてしまえというのが今回の更新。ただしナウなSIVではコンパチにできないようで,直流600V回路などに対しては補助整流装置を新たに設けることで必要な電圧を得るようにしているもよう。とりわけ山側が超絶東芝だったT車の床下も今回の更新で三菱と入り交じる感じに。IVFなんかはいかにもな箱でちょっとかわいい。

ちなみに施策自体は3700形で2017年度から実施していて,貸借車も3700形としてしれっと更新されていく流れ。そうすると北総の出方が気になってくるけど,そのうち北総も替えると考えていて良さそう。

このほか,M2c車吹寄の車椅子ピクトグラムを7500形と共通化したり,側引戸付近の短いつり革のベルトをナイロンから再び革に戻したり,はたまた車側灯のクリアレンズ化,車外スピーカの更新など本当に変化が盛りだくさん。車側灯については2016年度に北総車全編成でクリアレンズ化を達成していたものの,同年度末にカドミウムレンズの9808編成が来たことで逆戻りしていたので「再達成」という感じ。

車両:7300形にもデジタルSR準備工事

このところ貸借車のしゅん功が続いていた今年度のデジタルSR準備工事が北総車でも始まった。去年度時点で7501編成と9201編成がしゅん功しているのだけど,今回は7308編成で準備工事を実施したのね。順当に7502編成をやらない理由はなぞ。中長期で工程を組んでいるので,いろいろな事情を考慮した結果ということか。

基本的には3700形の色違いでしかない7300形だけど,3000形と7500形のような関係でもないのがミソ。7300形の導入当時はまだ松戸直通運転が続いていたからで,新京成無視で製作した3700形と違って7300形は新京成で運用できるように設備を整える必要があったわけ。だから7300形自体は松戸方面に行くメインの車両ではなかったけど,運用上は松戸運用でも回せるように新京成用の列車無線設備を備えて製作されたのね。

ただ,7300形は実際に新京成で教習もしているし営業運転で何度か松戸に顔を出してはいるのだけど,直通廃止後は最初の定期検査で早々に列車無線設備を撤去している。乗務員室M側吹寄のフサギ板は無線切替スイッチと無線操作器の痕で,屋根上もSRアンテナがあった箇所だけビードが途切れているように,当時の痕跡がなんとなく残っている車だった。

摘み取った場所からまたアンテナの芽が出てきた7300形

△摘み取った場所からまたアンテナの芽が出てきた7300形

そんな7300形にちょっと意味合いは違うのだけど,SRアンテナがまた設備される日が来たのだ。もちろん設置位置は3700形や他の貸借車と同じ場所。それは他車にとってはIRアンテナの離隔に過ぎないのだけど,7300形にとってはかつてSRアンテナがあった場所。おかげでかつての痕跡だった切れたビードは台座に隠れて見えなくなったものの,25年ぶりに同じ場所にSRアンテナが設置されるというだけで感慨深い。てかまた新京成ネタかよってね(わら

ちなみに車内は貸借車とほぼ同じ。7300形の特徴だった貫通扉の注意書き「黄色いボッチを押して」は京成車と同じ「黄色いボタンを押して」に揃っちゃった。ボッチ。

電力:高圧ケーブル張替つづく

今月はあまり話題がないからこんな話題をこんな時に消化してみようかなって。ここ最近の継続件名になるのだけど,動力高圧など高圧ケーブルの張替が全線的に進められているのだ。

これは安全報告書にも触れられている件名で,今年度もちらほら工事の様子が確認できる。工事では収容するトラフの撤去新設も行っていて,一時的にケーブルを仮防護した上で新たなトラフを設備して切り替えている。

牧の原の線路脇に仮防護されている動力高圧

△牧の原の線路脇に仮防護されている動力高圧

信通ではC-ATS化,保線ではロングレールの交換を全線的に進めているので,最近はだいたいどこも線路脇が賑やかな感じ。

信通:高砂・矢切間ついにC-ATS化

ついにこの日がやってきた。かねてより話題にしてきた北総線中間閉そく区間のATS更新…すなわちC-ATS化について,最初の切替区間である高砂・矢切間が23日からC-ATS化された。

設備としてはこれといって目立つものはなく,ひたすら閉そく信号機に対するB点が新設されている。といっても春先からB点標識はカバーをかけた状態で植えられていたので今更ここに書くような目新しさはない。見慣れたATS切替標識がなくなり,ATS表示器の表示や鳴動で切替を実感するくらいだった。それでも東京都内から一号型ATSを使う営業線がなくなったという事実はちょっと重たく感じられた。千葉にはまだ残っているけど。

C-ATS化でB点が新設された新柴又

△C-ATS化でB点が新設された新柴又

といっても千葉に残る一号型ATSだって風前の灯火みたい。以前書いたように安全報告書で切替のリミットが2023年度と宣言されているのだけど,すでに次の切替区間となる矢切・東松戸間の工事が始まっている。

すでにB点挿入用の防護マクラギが入った北国分

△すでにB点挿入用の防護マクラギが入った北国分

起点方からB点を入れるための防護マクラギへの交換が進んでいて,器具箱の基礎も設けられている。高砂・矢切間よりも早い時期にマクラギ交換が進んでいるけど,しゅん功時期も繰り上がるのかはまだわからない。もう少し観察してから…といえば,この区間のC-ATS化によって増える処理架をどこの機器室に入れるのかというのも今後ちゃんと追わないといかんね。

信通:新鎌ヶ谷駅コンコースに発車標増設へ

すっかり忘れていそうな話題といえばこれ。年度初から実施してきた新鎌ヶ谷駅のリニューアル工事の一環として,改札外コンコースに発車標が増設される運びとなったのだ。

駅のリニューアル自体は6月の新京成分離によって概ね完了しているのだけど,プレスでは追って冬に発車標の増設を行うという記載があった。それがようやく始まったというわけ。なぜ一足遅れて冬に実施しているのかはようわからん。メーカの生産納期に左右されたのかもしれないし,発車標の新設更新関係はだいたい冬なので,いつものスケジュールでやっているだけかもしれないね。

取付金具が生えてきた新鎌ヶ谷ラチ外

△取付金具が生えてきた新鎌ヶ谷ラチ外

とりあえず11月末時点では発車標を取り付ける金具が天井から生えてきただけ。場所としては運行情報ディスプレイの真横。他の駅のように改札内ではなく改札外に置いているのが特徴で,これは東松の武蔵野線側出入口と同じような位置付け。金具の間隔を見る感じでは他と同じ標準仕様の発車標がつきそう。そうすると改札上の電気時計の去就が気になるところかな。

施設ほか:新鎌ヶ谷改札外に待合スペース「こもれび」開設

新鎌ヶ谷改札外の待合スペース「こもれび」が22日午後より供用開始となった。県の「ちばの木の香る街づくり推進事業補助金」という負担金工事でしゅん功していて,県によれば鉄道駅としては初の補助事例になるみたい。

プレスでは26日開設という発表なのだけど,一足早く22日の午後には一通り完成し供用開始。この時点では自販機が1台足りなかったようで,23日から自販機が1台増えている。

ちょっとした待合スペースとしては良い感じ

△ちょっとした待合スペースとしては良い感じ

待合スペースの設置場所は新京成分離以前における本屋口改札の出場側ラチ外…かつての西口への動線にあたる場所。新京成分離で空間として余ったので有効活用したというところか。ベンチや柱の装飾に山武杉を使っているのが特徴だけど,床のテラゾータイルは張替えされず不揃いな感じが残った。柱や壁を黒く装飾した箇所もあれば以前のまま白い箇所もあり,タイルもそうなんだけど揃えたほうが空間的には良い気がする。

サイネージには「こもれび」の説明なんかも出る

△サイネージには「こもれび」の説明なんかも出る

新設自販機は2台で,それぞれネオスと伊藤園管理。いずれもICカードは非対応なものの,ネオス側は沿線の観光案内やニュースなどを放映するデジタルサイネージつき。北総には初導入の機種である。

施設:西白井基地の倉に小変化

大した件名ではないのだけど,西白井の保守基地の倉に小変化があった。

西白井の基地は2000年度に今の車両基地が完成するまで検車区だったのだけど,当時の倉や事務所の一部はそのまま保守基地に転用されているのね。保守用車庫のほか,検車区時代の西白井には駅の真横と起点方に2箇所の倉があったのだけど,現存しているのは駅の真横にある倉のみ。普段はマルタイなどの保守用車が入っているのだけど,最近はずいぶんと老朽化が目立っていた。

それもそのはず,この倉は開業当時からあるもの。実際には起点方の半分が開業当時からのもので,もう半分は2期線開業で8両編成化した時に増築したもの。その経年の差は屋根に乗っている換気塔の錆具合をみれば一目瞭然だったし,それぐらい開業当時からの換気塔は錆が進行していて,よく見ると穴があいている状況だったのだ。

そんな換気塔がこのほど新しくなった。増築した箇所まであわせて6基すべてが更新されている。だいぶ古くなっていただけに納得の件名ではあるのだけど,それ以上に思うものがあるのが西白井。

きれいなキノコに生え変わった西白井

△きれいなキノコに生え変わった西白井

おまけ

西白井といえば,事業者的には見苦しい絵かもしれないけど,思わずカメラを向けてしまったこれ。

わーお(雑)

△わーお(雑)

駅名標が剥がれてしまった箇所から見えた西白井の色の歴史。1期線の各駅が纏っている色には意味がある…なんて話を何度かしているけど,その色は40年の歩みのなかで微妙に変化してきたのね。その変化がこれだけ綺麗に観察できる場所というのは貴重なんじゃないかな。

西白井に当初決められていた色は「ペールグリーン」といって,うすい緑色だった。ニュータウンの入口に相応しい色を選んだそうなのだけど,時代が下っていくなかで緑色は濃い色になり,そしてベタ塗りはツートーンに変わり今に至っている。駅名標の寸法も当初は今より一回り小さかったので,塗り替えと駅名標取替えのタイミングによっては「色の地層」が出来ている…というわけ。

ちなみにお隣の白井でも剥がれた箇所が1箇所あったけど,こちらには以前の色がほとんど残っていなかった。ざんねん。