/無料公開
No.117-2ダイヤのおはなし
毎年恒例秋のダイヤ改定シーズンですヨということで,今年もそんな時期が迫ってきましたよっと。
といってもプレス発表の通り今回は修正扱い。そんな大きく変わるわけでもないし,今更ここにつらつら書くことも無いような気がするんだな。
じゃあ書かなくていいか…と思ったけど,めったに書かないブログのリハビリも兼ねて新ダイヤをテケトーに見ていきましょしょしょ。
修正のアウトライン
今回改定の概要としてプレスに上がっているのは,高砂での接続改善と運転間隔の調整の2点。前者は本線=上野線列車と北総線=押上線列車の接続を見直すというもので,後者は朝ラッシュ後半の下り列車の運転間隔を見直すというもの。後者については,当該時間帯において西馬込からの列車と羽田空港からの列車が入り交じるため,間隔が不均等(4~5分間隔で普通が3本連続下ると次の普通まで20分程空く)なダイヤ構成となっていたため,輸送力が偏って混雑具合に差が出ていたものを均等化したい意図があるのだろう。
あくまでこれは北総線列車に限った話であって,アクセス線列車には主眼を置いていない。アクセス線に視点を変えれば,アクセス特急・スカイライナーの増発という変更点が京成公式プレスより挙げられている。ともあれ,北総線関連の変更は前述の2点と小規模であることに相違なく,まさに「修正」といったダイヤである。なお,「修正」扱いなのでダイヤ番号はNo.117-2となる。
さて,北総線列車に絞ってダイヤの構成をもう少し掘り下げて見ていこう。
今回,北総車列車としての増発は平日・土休日とも行われておらず,運行本数に変動は無い。さらに土休日に関しては運用自体に大きな変更がなく,日中は北総車があくせく走り回る一方,走行キロ調整の都合で印旛の肥やしとなる都営車…といった構図は今回も変わっていない。
変更点が見られるのは平日だ。都営車列車の一部が北総車・京成車に変更されており,これによってダイヤを彩る様々な列車が影響を受けている。運転時刻は朝ラッシュ後半の下りを除けば概ね現行のままで,列車を担当する車両が変わるだけという感じだが,なかなか趣味的には面白い変わり方をしているので,以下に詳細を見ていこう。
平日朝ラッシュ~日中パターン移行時間帯
朝ラッシュ時のダイヤ構成はNo.117からほぼ変更なしといったところだが,朝ラッシュ後半の8時台以降で幾つかの変更点が確認できる。
前述の運行間隔調整とライナー増発の絡みで,これまで印西牧の原行として運行されていた第723N列車が北総線内から削除された。今回の修正では,同列車は高砂入出庫を挟むかたちで第1022N列車に繋がっており,これまで見られなかった平日朝の北総車高砂行が誕生することになる。
第1022N列車は高砂10:13発,すなわちNo.117における第1010T列車のスジと同一である。第1010T列車は,成田から快速で上ってきた第910T列車を高砂で普通として仕立替することで運行されていた列車だったが,今回の修正でこれを高砂入庫とし,代わりに23Nで入庫していた北総車を出庫させて充当することにしたようだ。第1022N列車以降の23N運行の流れはNo.117における11T運行のそれと同一で,第1411T列車に相当する第1423N列車で牧の原止となり,印旛に入庫することで運用を終えている。
余談だが,列番と発車時刻がゾロ目で揃うとして小さな話題となっていた「羽田空港11:11発の第1111T列車」は今回の修正で第1123N列車に変更されるため,四直ダイヤのスパイスがまた一つ消えることになる。
また,第723N列車が削除されたことで生じたダイヤの空白部分には,増発により運転間隔が調整された第8AE05列車(スカイライナー17号)が挿入されている。第723N列車の3~4分先行で走っていた第845T列車は,この第8AE05列車の待避で運転時間に変更が生じ,これによって当該時間帯下り方向の北総線列車運転間隔がある程度均等化されるといった結果を得ている。つまるところ,スカイライナーの増発と北総線下り方向の運転間隔調整は表裏一体の変更点であると言えよう。
もう少し時間が下ると,更なる変更点が確認できる。これまで印旛日本医大行として運行され,折返し羽田空港行となっていた第831N列車が印西牧の原止に変更されているのだ。すなわち,北総線系統の日中ダイヤパターンを構成する運用の一つだった31N運行が,本修正によって朝ラッシュ時終了後に印旛入庫となる半ドン運用に変化した。31N運行は出庫して医大へ回送後,特急で西馬込まで上り,そのまま下って牧の原で入庫という最速入庫コースになるが,この流れは2009年2月のNo.113当時の27N運行以来である。
No.117ダイヤにおける第1030N列車以降のスジは,本修正で新たに乗入れる75K運行によって補完された。75K運行の京成車は,これまで運行間隔が20分程度開いていた第827N列車と第831N列車の間に新設される第875K列車として直通してくる。この時間帯の京成車といえば,第785K列車~第984K列車として1往復のみ乗入れていた85K運行が想起されるが,本修正において当該スジは27T運行に変更されている。85K運行が都営車に変更された代わりに75K運行が新たに直通する,と捉えることもできよう。
この時間帯の北総車に絡んだ変更は,11T運行→23N運行,31N運行→75K運行の2点で,23N運行の日中運用化と31N運行の半ドン化が結果として生じている。
日中パターン時間帯
この時間帯の北総線系統を構成する運用は,21N・41T・23N・27N・75K・33N・35N・37N・39N・69Kの10運行である(並びは直通順)。都営車運用はついに1運行まで減少しており,前述のように土休日は日中全く運用がないことを踏まえても,昼間の北総線で都営車を見かける機会は滅多になくなってしまう。数字だけ見れば些かの寂寥感を感じなくもないが,相変わらず朝の下りでは濁流のように8連続で下ってくる(第501T列車~第625T列車)のでそんなに寂しくないし,むしろちょっとウザい。
それはさておき,日中時間帯の京成車が2運行に増えたことは特筆されよう。2006年のNo.112で京成車の北総線直通が再開された際には夜間の1往復のみ,No.113で2往復になるも夜間だけ,No.114でようやく朝と日中にも設定されるも1往復ずつの計3往復…と,京成車の北総線乗入れ運用は年が下るごとに増えているものの,走行キロの関係もあって決して多くなく,日中時間帯とはあまり縁がなかった。アクセス開業後にはアクセス特急の間合いで京成車の牧の原停泊が設定され1往復が加わったものの,それでも京成車の北総線内運用はNo.117の時点では3運行4往復しか設定されていなかった。
今回,これまで朝に直通していた1往復が日中時間帯にも運行されることで,日中2運行体制となることから,京成車の北総線内運用はほぼ倍増し,4運行7往復に拡大する(日中2往復→5往復)。ただし,日中運行を担う75K運行と69K運行の間には4運用の隔たりがあり,日中10運行のほぼ対極位置にあることから,北総線内で京成車運用が並ぶことは無い。また,4運行の隔たりということは,ダイヤ乱れで高砂切りとなった場合はK台の列車同士で繋ぐことができる。直通再開後,北総線内に滞留していた京成車をK台のまま京成側に戻しやすくなる(=車両交換の手間が減る)という副次的な効果も期待できよう。
夕方ラッシュ移行時間帯
夕方16時台になると夜間ラッシュ時間帯に向けて稼働車両が増えてくるが,注目は印西牧の原16時頃であろう。前述のとおり11T運行が23N運行になったことで,印西牧の原始発の印旛日本医大行として出庫してきた第1625N列車に接続する下り列車は第1423N列車となる。すなわち北総車同士の接続が見られるわけだ。これまで印西牧の原における北総車同士の接続は不定期で発生する車両交換ぐらいで,あとは入庫待ちの列車に後続の印旛日本医大行が追いつくぐらいだった。定期列車の北総車同士が入出庫絡みで接続するのは,これまでありそうで無かっただけに注目に値するだろう。しかも,第1423N列車は矢切停泊明けの入庫,第1625N列車は矢切停泊の出庫ということで,矢切停泊に絡む一連の運用の始まりと終わりが接続するのだから面白い。
日中時間帯の41T運行はこれまでの15T運行のスジを踏襲しているが,No.117の第1614T列車以降は流れが異なる。第1415T列車相当で下ってきた第1441列車は,以降はNo.117ダイヤの23N(2)運行のスジに入り,第1522N列車相当の第1540T列車として折返す。第1614T列車相当のスジは第1628N列車となり,印旛出庫の北総車が充当される。なので,第1540T列車は印旛日本医大発,第1628N列車は印西牧の原発となり,両列車の始発駅は踏襲前の列車と逆転する。
夜間ラッシュ時間帯
正直ここまでは「だから?」といった程度の変更点しか上がっていなかった今回のNo.117-2ダイヤだったが,夜間ラッシュ時間帯はなかなかに面白い変化を遂げている。基本的な運行形態はNo.117を踏襲しているものの,これまで再三挙がっていた運用の変化がダイヤの印象を大きく変えている。
まず,第1829T列車~第2328T列車として2往復乗入れていた29T運行は,今回の修正から前半1往復が91K運行に変更された。No.116で消えた夜間の京成車運用1往復が再び復活する。北総線内における90番台のK台列車はこれまでも架線検測等の事由から不定期列車として97Kが度々設定されてきたが,あくまでこれは京成乗務員によるアクセス線列車として運行されたものである。北総乗務員が担当する90番台のK台列車は,1999年7月のNo.107-2における93K運行(第693K列印西牧の原行~第792K列車西馬込行・8両編成)まで遡る。91Kという運行番号そのものを対象とするならば,1998年11月のNo.107に設定されていた第691K列車印西牧の原行~第690K列車川崎行に遡ることになり,実に約20年ぶりの91K復活ということになる。
また,後半1往復のうち第2129T列車は33N運行が踏襲する。このため,33N運行はそれまで2往復としていた西馬込~泉岳寺間のピストン列車を4往復とし,第2129T列車相当の第2133N列車で印西牧の原まで下り,入庫するようになる。従って,遅延常習犯として夜のダイヤに名を馳せていた第2033N列車は後継の第2031T列車にその座を譲り,ダイヤからその名を消している。なお,平日の都心終だった第2328T列車のスジは第2332T列車となった。第2332T列車は第2132T列車で印旛に入庫した車両を再出庫の上で充当するもので,第2132T列車の折返し前の第1933T列車は,後述の35N運行の運用変更によってスジが空く第1935N列車のスジを踏襲したものである。
さらに,No.117における第1951T列車以降の51T運行を35N運行が踏襲する。これに伴い,第1734N列車は羽田空港行から西馬込行に変更され,第1935N列車から2往復西馬込~泉岳寺間のピストン列車に入る。そして,第2035Nb列車として特急印旛日本医大行に充当され,折り返し第2234N列車で印旛入庫となる。つまり,北総車による夜間の下り特急列車が設定されるのだ。
北総車による下り特急列車はそれだけではない。前述の通り15T運行のスジを29N(2)運行が踏襲したことで,それまで第2115T列車として運行されていた3本目の特急印旛日本医大行が第2129N列車に変更される。スジそのものはNo.117の第2115T列車から変更されていないので,品川~泉岳寺間における種別扱いという限定的な措置とはいえ,京急線内で北総車の特急が再び見られるようになる。定期列車での京急線内の北総車特急は2002年10月のNo.110ダイヤ以来。わずか1駅間の特殊措置かつ当時は無かった状況とはいえ,14年ぶりに品川で北総車特急が拝めそうだ。
29N(2)運行が15T運行の踏襲用に変わったことで,No.117ダイヤにおける29N(2)運行のスジは31N(2)運行が担うことになった。一部で些細な変更が加えられているが,大まかな運用の流れはNo.117ダイヤの29N(2)運行を踏襲しており,西馬込までの1往復を担うだけという点は変わっていない。偶然にも午前中の31N(1)運行も西馬込までの1往復を担うだけであり,31Nという運行番号を平日の京急線内で見ることはなくなる。
N運用
北総車運用については,23Nの運行時間帯拡大と31Nの半ドン化により,No.117の23N(2)運行相当が無くなり,31N(2)運行が誕生した。31Nが前後2分割になるのは2011年の震災ダイヤ以来。全体数としてはNo.117から変動なく,平日13運用,土休日9運用のままである。
走行キロは平日で4679.4キロと22.4キロ増を記録したが,土休日では運用に変動がなかったことから4788.8キロに据え置かれた。北総車の走行キロは2012年のNo.116で5000キロ/日を超えたのをピークに年々減少しており,今回若干の増加があったものの未だ4600キロ台にある。
停泊もNo.117と同様で,医大泊は平日39N/土休日27N→平休21N,矢切泊は平日25N(2)・土休日25N→平休23Nである。
運用の流れに変更があったのは平日のみで,土休日はNo.117から僅かな時間変更が加わったのみである。平日の北総車運用の変更点としては,以下の点が挙げられよう。
- 第723N列車の北総線内運転を取りやめ,高砂入庫とする。第1022N列車で再出庫の後,No.117の11Tを第1411T列車相当まで踏襲し,羽田空港までの2往復を追加。
- 第831N列車は印西牧の原止とし,印旛入庫とする。第1030N列車相当以降は75K運行を以って運行する。これにより羽田空港までの2往復を削減。
- 都営車の運用変更に伴い,15T運行相当に29N(2)運行(265.2キロ)を充てる。代わりに,23N(2)運行相当(200.6キロ)を41T運行とする。
- 都営車の運用変更に伴い,33N運行ならびに35N運行に西馬込~泉岳寺間のピストン列車を加える。
- 29N(2)運行(122.6キロ)の代替として31N(2)運行(115.0キロ)を設定する。
このように全体から俯瞰すると,23N運行の運行拡大と31N運行の運行縮小は羽田空港~印旛日本医大間2往復の相殺として表裏一体であると分かる。また,23N(2)運行の廃止と新29N(2)運行も増減する走行キロが200キロ台で概ね釣り合っている。いずれもNo.117の走行キロと同程度に抑えられるように調整しているのだと考えられる。
列車的な話をすれば,平日朝に北総車による高砂行,平日夜間に北総車の特急がそれぞれ見られるようになる。一方で,23N(2)運行が担っていた押上線ピストン列車が都営車に変わることで,北総車による押上行は定期列車として消滅する。押上行そのものはダイヤ乱れの状況次第で設定されることが多々あるので今後も見られるだろうが,深夜帯に走る押上行は当分見られなくなるだろう。
はてさて,昨年のNo.117改正当時,北総車の下り優等が消えたことでヒジョーに残念な思いを抱いたものの,「数年すれば北総車急行や特急が見られるだろう」と記事に記した通り,見事1年後に北総車下り特急が2本も誕生した。あとの優等はどうなったかと言えば,相変わらず急行3本特急2本とも列番含めてそのままである。結果的に,急行は京急車1本・都営車2本,特急は京急車1本・北総車2本・都営車1本といったところで,撮る側としても乗る側としてもアドみの深いダイヤになった。
今回は修正規模ということで利用者視点で大改善という点はあまりなかったものの,じわりじわりと気になっていた点が改善されてきている印象だ。まだまだ気になるウィークポイントは残っているものの,年々使いやすくなっているのは事実なので,今後の改正に期待していきたいものである。