沿線点描

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新リース車、北総7818編成あらわる

除籍される車両あれば入籍する車両あり――

しぶとく走り続けた7268編成もあと10日ほどで廃車となる。それは,10日もすれば7268編成から襷を繋げる車両がやってくることを示している。

たまには車両の話題でも出してみるかと思い,今回は7268編成の代替車両の話でも紹介してみよう。

先日から宗吾車両基地の洗浄線がにわかに騒がしくなっている。

洗浄線を騒がせている存在は,3月10日の77K(1)運行を最後に入場した3748編成に他ならない。何の変哲もない3700形であった3748編成が注目される原因はこれだ。

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△側面のプレートが全て外された3741号車 2015/3/12・宗吾車両基地

宗吾区の洗浄線では,通常の洗車作業のほかにも帯替え作業を行うことがあり,同線で3700形の帯替え(高彩度化)を行う姿はこれまでも日常的に見られてきた。

しかし,今回の3748編成の動向はこれまでと大きく異なり,側面のプレートや正面の車両番号を剥がした姿が目撃されていた。通常の帯替えであれば,プレートや車番の切抜き文字は手付かずで進行する。過去の事例と照らすと明らかな“異常”が3748編成に認められたのである。

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△帯替え作業中の3868編成。プレートや切抜き文字は手付かず。 2013/2/20・宗吾車両基地見学時

帯替えだけなら必要のないプレート撤去を行なった……裏を返せば「プレートを撤去せざるを得ない作業を行なっている」ということである。僅かな違和感から来る己の勘を頼りに,遠目に見えるだけの3748編成を観察してみると,やはり複数の箇所で「兆候」を感じ取ることができた。

まずは正面の車両番号である。前照灯M側上部に「3741」と記されていた車両番号の切抜き文字は,「1」を残して撤去されている。つまり,「374」を別の番号に取り替えることが推測される。

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△末尾の「1」のみが残された正面の車両番号。 2015/3/12・宗吾車両基地

そして,何より確定的な物的証拠となるのがブレーキシューであった。

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△既に台車には北総車用のシューが確認できる 2015/3/12・宗吾車両基地

台車に装着されたシューには薄らであるが「北総鉄道」「RS627」の文字が確認できる。3700形と7300形(9100形)では,同じFS547/047台車であっても装着するシューの形式が異なっている。北総車の場合はFS547台車(M)がRS627という薄橙色のシュー,FS047台車(T)がRS652Dという青色のシューを採用しており,シューには「北総」の文字が記されているために外見上ではっきりと北総のシューであることが認識できるのだ。今回,3748編成に装備されたシューはまさに北総向けのシューであり,これを根拠に北総鉄道への転属が確実になったと宣言しても過言ではない。

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△参考:北総向けのシューには「北総」の文字がある。画像は9000形KHS-101台車用のNS-556。

つまり,プレートの件も切抜き文字の件も全て北総転属に向けた作業ということになる。最終的には帯替えも作業に入ってくるため,洗浄線で行なっているものとみられるが,これまでの違和感は全て北総転属という事実に収束する。

そして,北総転属という事実は日を追うごとにその姿を明確化させていく。

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△早くも「HO<‘SO」「7811」の標記が確認できる3741。 2015/3/13・宗吾車両基地

3月12日から順次行われてきたプレート類の交換は3月13日昼までに全て完了し,13日午後には「7811」の車両番号を掲げた3741が確認できた。側面に貼り付けられた「HO<‘SO」ロゴマーク含め,素人目に見えても北総転属は確実となった。正面では早くも帯替えに向けた既存帯の剥離作業が始まっており,もう間もなく完全な7800形に変身してしまうことであろう。

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△プレートは北総,帯は京成。これが転属の過程である。 2015/3/13・宗吾車両基地

写真で分かるように既に各種標記類は北総仕様になっており,後は帯替えを待つのみといった状態である。車両番号は北寄が「7811」であることから,南方から7818-7817-7816-……-7812-7811と繋がるものとみられ,12年前にリースされた7808編成の続番として導入されることが確実である。

 

7818編成の外観を見ていきたい。種車の3748編成は車体改修車で,改修時に側面窓の一部固定化が施工されているが,7300形/7800形にはこの形態が存在しないため,外見上の大きな差異として認識される。車体改修車であることは客室内の内装においても印象を大きく変えるため,7300形/7800形の形態を一層と賑やかにしてくれるだろう。

そして何より注目したいのは社名プレートである。7300形も7800形も既存車は全て2004年7月に北総自らが「北総鉄道」のプレートに交換しており,「北総鉄道」プレートを京成が用意し交換するのは7818編成が実は初めてのことであった(7268編成はステッカー)。

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△7818編成(上)と7808編成(下)の車番プレート比較

そんな初めての京成発注プレートであったが,北総の“純正”プレートとは「案の定」違うプレートであることが確認できた。上の画像は社名プレートを比較したもので,上側は7818編成,下側は7808編成のものである。「総」の字(「公」「心」に注目)や「道」の字(「首」に注目)を見ると分かりやすいが,そもそもの書体が違うのだ。社名プレートの「北総鉄道」の文字は,かつて北総開発鉄道デザインポリシー研究会によって決定されたナールDを改良した「北総開発鉄道」が原型となっている(文字が縦長なのは「北総開発鉄道」をプレートいっぱいに記していた名残)。7818編成の「北総鉄道」は書体もさることながら,文字の縦横比が異なっており,これまでの事情を無視した新たな形態となっている。そればかりか,車体へ固定する丸リベットも金属色のままであり(これは後日塗装の可能性あり?),見慣れたプレートとの違和感が感じられる。

 

7818編成の導入により7800形は2編成16両となり,自社導入車7300形と合わせるとその陣容は4編成32両と北総随一の規模になる。機器面で共通化されている9100形も含めれば7編成56両,実に北総車の過半数が東洋RG633で占められることになるのだ。VVVF車は9018編成を除く11編成になり,その割合は90%を超える。

また,京成からのリース車は当初は7150形代替という名目で始まったこともあり,北総には7150形と同数の16両の枠を与えられてきた。リース車が16両体制となった1998年の時点では7050形16両という内訳であったが,代替となる3150形が枯渇したことや北総側の要望で2003年に7800形がリースされると,リース車枠が単一形式2本という状態が失われた。今回の7818編成リース開始により,リース車枠は再び単一形式2本という状態に復すことになる。実に12年ぶりにリース車の形式が統一されるのだ。

京成で余剰となった旧型車両をリースされ続けてきた北総にとって,比較的状態の良い車両を借り受けるのは非常に困難なことであったと推察される。今回も順当に行けば3500形更新車8両という流れが想起されていただけに,3700形8両を借りることに成功したのは評価されることだ。その背景には京急のツーハン問題など他事業者との軋轢も感じられるが,結果的に北総にとって整備経験豊富な形式を得られたのは今後の保守整備の円滑化にも寄与することだろう。

 

参考:これまでの車両変遷(下線は購入車)

7158+7154編成(1991~1998)→7068+7064編成(1998~2000)→7088+7084編成(2000~2003)→7258編成(2003~2006)→7268編成(2006~2015)→7818編成(2015~)

7168編成(1991~1995)→7058+7054編成(1995~1998)→7054+7074編成(1998~2001)→7094+7054編成(2001~2003)→7808編成(2003~)

806編成(1991~1992)→代替無し