概要
1990年度の北総2期開業に合わせて導入した7300形向けの種別幕である。
2期開業時の新造車7300形は,京成3700形をベースとした姉妹車であり,行先種別表示器も京成3700形のそれと共通の八幡製センサ式40コマ表示器YA-90199系を装備した。YA-90199系は,YA-4650系接点式表示器の後継機種で,字幕の寸法はほぼ同一であるものの,検知方式の違いから相互に互換性はなく,新規に字幕を制作する必要があった。京成でも同様の理由からセンサ式の種別幕KT30がこのとき制作され,KT30の北総バージョンとして制作されたものが,このNT40である。KT30の配列は1990年度時点の京成の種別体系に則って制作されていて,これを踏襲したNT40もまた同様の内容となった。
当時の北総車方向幕は種別,行先ともに内容の標準化が図られていたが,センサ式の7300形だけは京成車に揃えるかたちとなり,標準化路線から外れていた。とりわけ行先幕N60の異質性が目立つところだが,種別幕に関しては,標準化した内容が1990年度の京成の種別体系に準じていたことから,結果的にKT30の派生であるNT40は北総車標準と同じ内容で制作されることとなった。しかし,内容こそ共通であっても,その配列や細部のデザインは他の字幕と異なっている。それはまさしくNT40にだけ元となるデザイン=KT30があったからで,完全にオリジナルのNT10と似て非なるのはこうした事情ゆえのことである。
その違いとは,最も大きな点として普通表示のデザインが挙げられよう。北総車の標準となる普通表示は,特に装飾せず黒地にヌキ文字で「普通」と印刷するだけなのだが,NT40では京成車に倣い,角丸四角形の枠が文字の周囲に入っている。この枠は1969年度のKT00から採用されている,いわば京成車種別幕のアイデンティティであり,その遺伝子がNT40にも受け継がれていたわけだ。
また,センサ式では接点式のように逆転回路を前提とした配列が不要で,設定器や指令器では配列を気にせずに指令が出せるようになったこともあり,NT40の配列は最上端の基準コマ直下,2コマ目から空白を入れずに通勤特急,特急…と表示が並んでいる。
種別色を地色としたデザインはNT10と同じで,文字にナールを用いているのも共通だが,後者の書体については京成車も同じ書体であることから,KT30を踏襲した結果と見るべきであろう。
センサ式の種別幕には,その後1994年度に英字入りのNT50が後継品として登場するが,NT40はすぐには淘汰されず,NT50と長らく混用状態にあった。また,センサ式表示器そのものも1994年度に7000形,1997年度に9000形へ波及し,センサ式対応の種別幕が装填できる車両は拡大傾向となるが,NT40が7300形以外の形式に装填されることはなく,2000年代中頃までNT50と共に7300形に使われ続けた。側面用は2004年度の快特対応を前にひと足早く淘汰されているが,正面用は予備品含めて快特対応のNT41として長らく残り,2008年度に7308編成が表示システムを更新,LED表示器化されて英字字幕に余剰が発生するまで見ることができた。