7818編成の貸借開始から終了まで

2021年11月8日公開・ 最終更新

北総所属車両として2014年度末から運用されてきた7800形7818編成(7818以下8両)が,2021年6月末をもって除籍された。老朽化した7260形の代替車両として導入された該編成は,2020年6月に京成線青砥駅構内で発生した列車脱線事故での損傷が原因となり,約7年に及んだ北総所属車両としての歩みに突如終止符を打つことになった。本稿は該編成の貸借開始から終了に至るまでの諸記録を整理したものである。

入籍と運用開始(2014~2015年度)

7818編成の導入まで(~2015年3月)

7808編成(左)と7268編成(右)(2013.5.31)

△7808編成(左)と7268編成(右)(2013.5.31)

北総所属車両における京成電鉄からの貸借車は,2005年度末で除籍された7250形7258編成の代替として7260形7268編成が2006年度に導入されて以降,長らく7800形7808編成と7268編成の2編成16両体制が続いていた。

7260形は京成電鉄から3300形を借り入れた車両で,車齢は約40年に達する高経年車であった。しかし,7268編成の借入直後こそ京成電鉄では3000形の増備による車両代替が進められていたが,2009年度以降は成田新高速鉄道の開業が迫ったことでBルート用新造車の導入が始まり,通勤車の代替が停滞した。すなわち7268編成を代替しうる余剰車は発生せず,7268編成は高経年車にもかかわらず2度の定期検査を通過し,異例の長期貸借車となっていた。

京成電鉄の車両代替は,7268編成が2度目の定期検査を通過した後の2012年度に再開し,これによって2015年4月に定期検査期限を迎える7268編成の代替が現実化した。7268編成を代替する次の貸借車は2014年度の新造車によって捻出されることとなり,結果的に7808編成に次ぐ7800形第2編成として7818編成が導入されることとなった。次期貸借車の選定に対しては,北総から要件に見合った車両選定の要求があったことが推察できる。転落防止幌等のバリアフリー設備が未整備である高経年車に対する今後の展開として,車両代替によって整備率の向上を行っていく旨が当時の安全報告書等には記載されていた。すなわち次期貸借車については,バリアフリー設備が整備済であり,かつ保守実績のある7300形・7800形と共通としている2次車以降の3700形を求めたものと考えられる。

北総貸借前の3748編成(2013.1.29)

△北総貸借前の3748編成(2013.1.29)

7818編成となる3700形の選定は遅くとも2014年度初までに決定していたと想定される。選ばれたのは1994年度に導入された2次車の3748編成で,2014年夏に車体改修工事の施工を控えていた。車体改修工事は同年8月中旬から9月下旬にかけて約1ヶ月間の工期で施工されたが,当時3700形は車体改修工事にあわせて外板の帯フィルムを変更していたものの,3748編成については貼替工程を省略した状態でしゅん功した。貼替工程の省略は,年度末までに北総貸借に際して帯フィルムを変更するため,短期間のために新たな帯フィルムを施工する必要はないという判断があったものと推察できる。なお,3748編成と同じく2次車として導入された3738編成は,3748編成の車体改修工事がしゅん功した直後の9月下旬から車体改修工事の施工を受けたが,こちらは帯フィルムの貼替を経てしゅん功している。

当時のアルバムから…

甲種輸送~公式試運転まで


京成車8両編成として…

7818編成の導入と車両代替(2015年3月)

7811号車に装いを改める3741号車(2015.3.13)

△7811号車に装いを改める3741号車(2015.3.13)

水面下で7818編成の貸借準備が進むなか,2015年3月3日に7268編成の引退に関する発表が行われた。7818編成への改造に向けて3748編成が営業運転から離脱したのは発表の直後,3月10日朝のことだった。この日の朝の運用を最後に宗吾車両基地へ入庫した3748編成は,早くも3月12日日中には外板の車号及び社名銘板の撤去が行われ,車両正面の車号文字も1位を除いて撤去された。さらに,ブレーキシューを北総仕様のRS627/RS652Dに取替し,この時点で北総鉄道への次期貸借車は3748編成であることが明らかになった。

翌13日日中には北総仕様の車号銘板及び社名銘板の取付が行われ,これによって新車号が7818~7811であることが明らかになった。その後も改造工事は続き,17日日中には北総仕様の帯フィルム貼付が始まり,車両正面に対する新車号文字の取付も行われた。なお,前述の通り正面の車号文字は1位のみ3748編成の文字を再利用していて,新たに取り付けられたのは「781」の3文字のみである。

なお,7818編成への改造においては北総仕様の帯フィルムへ貼替を行うため,この貼替が鉄道事業法施行規則に定められた火災対策の変更として監督官庁への手続対象となる。しかし,使用するフィルムは7808編成と同等で既に7800形として手続した内容から変更がないため,7818編成の貸借開始に伴う法令上の手続は不要だった。すなわち手続は北総と京成の社内及び会社間のみで完結していて,これは後に貸借される7828編成や7838編成においても同様であった。

印旛車両基地に回送される7818編成(2015.3.24)

△印旛車両基地に回送される7818編成(2015.3.24)

7268編成は3月20日に定期列車としての運転を終了し,3月22日の引退運転を以て営業運転を終了した。そして,翌23日に宗吾車両基地への回送が行われて北総車の車籍を失い,約9年間の活躍を完全に終えた。7268編成の引退興行の裏で改造工事を終えた7818編成は,7268編成が回送された翌日に印旛車両基地に回送され,7268編成と交替で北総車の車籍を与えられた。時に2015年3月24日のことだった。7818編成の導入は広報誌『ほくそう』2015年春号にも掲載され,営業運転を3月25日夕方の25N(2)運行,第1625N列車から開始した。かくして,7818編成の北総車としての活躍が始まった。

ちなみに,2002年度以降の貸借車はいずれも京成時代の車籍を抹消せずに貸借されていて,7818編成においても京成車の車籍(3748~3741)を残したまま北総に貸借された。

M2cM1TM1'M2TM1M2c
記号番号7818-17817-17816-17815-17814-17816-17817-17811-1
7818車号78187817781678157814781378127811

当時のアルバムから…

2015年3月12日:3748編成銘板撤去とブレーキシュー北総仕様化

2015年3月13日:3748編成新車号「7818~7811」判明


2015年3月17日:7818編成北総仕様帯フィルム施工開始・正面車号文字取付


2015年3月24日:7818編成北総貸借開始に伴う回送


京成仕様が残る7818編成(2015年3月~)

貸借開始直後の7818編成車内(2015.5.1)

△貸借開始直後の7818編成車内(2015.5.1)

かくして北総車として走り始めた7818編成だったが,既に運用中の7808編成とは同じ7800形を名乗ってこそいるものの似て非なる車両だった。かたや3700形5次車を出自とする7808編成と2次車を出自とする7818編成の間には先天的な差異があった。また,改修や改造を北総と京成どちらで施工したかによる後天的な差異も少なくなかった。さらに,7818編成は北総車への改修に際して京成仕様のまま改修の見送られた箇所もあり,貸借開始当初は京成車の名残がひときわ色濃く残っていた。

車両外観においては,車体改修による改造箇所がとりわけ目立った。当時の7300形や7800形は車体改修前であったことから,固定化された一部の側窓や下方に拡大された引込み防止ゴムは7818編成唯一の特徴だった。屋根上は7808編成と基本的に同一であるものの,3700形2次車からPT4819-B-M形に変更された集電装置は7817号車の2基を除いてPT4819-A-M形だった。

車内においては,車椅子スペースを有しながら該箇所に非常通報器が無いことや,交流電源保護装置が車内に艤装されていることといった3700形2次車ならではの特徴があった。前述の通り当時の北総車に車体改修車はなく,更新された床敷物や袖仕切の化粧板,天地方向に拡大された巾木が妻面にもあるといった車体改修車ならではの特徴も当時7818編成が唯一だった。乗務員室では,運転台は7300形に準じた初期型の機器配置ながら,新京成線乗入れ時に使用していた空間波無線操作器の撤去跡はなく,京成車としての初期仕様を特徴としていた。京成車時代の御守収容箱が空のまま残置されている点や,ICレコーダ接続箱の撤去跡がある点など,同じ貸借車であっても7808編成にはない特徴もあった。このほか,社名銘板の書体が標準と異なる正体の平成丸ゴシック体であったことや,妻面の社名銘板が京成車と同じ楕円形であること,乗務員室の計器盤に記された車号がすべてカッティングシートで施工されたことなど,表記類にも特徴があった。

7818編成には京成車の名残も多くあった。側窓の優先席ステッカーは連結面を軸に線対称,車内の優先席ステッカーは2013年度に増設した箇所にも掲示されている京成仕様の配置だった。側扉の注意喚起テープは7818編成の貸借と前後して北総車でも3編成を対象に試行が始まっていたが,戸先側にも注意喚起テープを貼る北総車の標準とは異なり,車体改修時に施工された戸尻側のみの京成仕様が踏襲された。また,運転台の窓に停車駅確認シールが残っていたり,運客仕切の偏光フィルムは仕切扉のみの京成仕様だったり,さらには客室灯が京成仕様と北総仕様の混在状態であったりと,北総車でありながら色濃く残った京成車の特徴もあわせ持つ特異な車両だった。

当時のアルバムから…

2015年5月1日:7818編成形態調査
(表記類)

(車内)



(乗務員室)



北総車の一員としての活躍(2015~2020年度)

北総仕様への統一と携帯電話マナー変更対応(2015年8月~10月)

貸借開始直後における7818編成の蛍光灯使用状況

△貸借開始直後における7818編成の蛍光灯使用状況

色濃く残っていた7818編成の京成時代の仕様は,貸借開始から半年を迎えた頃から次第に北総標準仕様へ統一されていった。

まず8月には,混在していた京成仕様と北総仕様の蛍光灯が北総仕様にすべて統一されたことが確認できた。混在当時の詳しい内容は当時刊行した同人誌『北総電車差異録』に掲載している。これ以降,京成仕様のまま残っていた箇所が次第に北総仕様に変えられていった。

10月に入ると,3月から一部で試行されていた側扉の注意喚起テープが全編成を対象として正式導入され,7818編成も戸先側に追加施工されて北総仕様化された。なお,試行対象だった3編成はテープの幅が太く,戸先側は手掛けの前後でテープを一旦切る必要があったのに対し,7818編成を含む正式導入時に施工された編成では戸先側テープが細くなり切らずに済むようになった。

また,この年の10月1日には車内での携帯電話使用マナーが変更となり,優先席付近での携帯電話について「電源をお切りください」から「混雑時には電源をお切りください」に改められた。これにあわせて側窓の優先席ステッカー及び携帯電話使用マナーステッカーの意匠が各鉄道事業者で概ね統一されたものに変更されることになり,7818編成も新ステッカーへの貼替が行われた。マタニティマークを除いたすべてのステッカーを変更するため北総仕様への統一には最適な時機だったが,貼替後も連結面を軸とした線対称配置の京成仕様の掲出方が踏襲された。この時に携帯電話使用マナーを記していた優先席付近の吊り革のストラップの文言もあわせて更新された。マナー変更に伴う諸対応は10月1日以降に順次行われ,印旛車両基地での検査や清掃にあわせて「優先席ステッカーのみ」,「携帯電話使用マナーステッカーのみ」,「吊り革ストラップのみ」と箇所毎に変更された。そのため過渡期には新旧表記類の混在もあった。

なお,この年の12月には北総線ダイヤ改正があった。2012年度以来3年ぶりとなる改正規模でのダイヤ変更で,平日夜間の優等列車体系が大幅に見直された。この改正で京成線から北総線方面への下り快速運転がなくなり,7818編成は貸借開始から1年と経たずに定期列車としての快速運転から撤退した。

当時のアルバムから…

2015年9月2日:7818編成客室灯北総仕様統一化の確認


2015年11月1日:7818編成優先席付近携帯電話使用マナー変更に伴う表記類変更・注意喚起シール北総仕様化


2015年11月25日:7818編成による快速印旛日本医大行

全般検査の実施(2016年11月~12月)

貸借開始から1年が経過した2016年3月には,北総車のドアステッカーが約8年ぶりに新意匠に切替された。7818編成も3月下旬にドアステッカーの貼替が行われているが,京成車時代の掲出位置を踏襲して7300形よりシール1枚分高い位置に施工された。

ナイロン紐に交換された7818編成の吊り革(2017.03.19)

△ナイロン紐に交換された7818編成の吊り革(2017.03.19)

そして11月には全般検査のため宗吾工場へ入場した。前回検査は貸借開始前の2014年2月に重要部検査,2011年6月に全般検査を実施しているため,重要部検査の検査回帰4年に対して2年9ヶ月,全般検査の検査回帰8年に対して5年5ヶ月と低回帰率での入場だった。結果的には7818編成として最初で最後の分解を伴う定期検査となった。

検査入場は9201編成の重要部検査終了と入れ代わりの時期で,当時京成車で進行中だった側扉付近の吊り革のベルト交換が行われた。吊り革のベルト交換は引きちぎり対策としてナイロン紐に変更するというもので,9201編成も同様のベルトに交換されていた。また,通常は施工されないフィルタリアクトルや屋根の再塗装も行われた。

2016年度末には9000形9018編成が廃車となり,代替として9800形9808編成が導入された。9800形は7800形の千葉ニュータウン鉄道版といった位置づけで,すなわち京成電鉄から3700形車両を千葉ニュータウン鉄道が借り受け,北総鉄道が使用するというスキームで運用される。新たに北総車となった9808編成は,7818編成と出自を同じくするもう1本の3700形2次車,3738編成を貸借したものである。形式こそ異なるが3700形2次車が2編成とも北総車になった。

当時のアルバムから…

2017年1月24日:7818編成と3738編成ほか

2017年3月12日㋵:特殊信号発光機見通し確認試験

2017年3月20日:全般検査後の7818編成走行写真

小規模な変化の連続(2017年3月~2019年6月)

車側灯がクリアレンズとなった後の7818編成(2018.8.17)

△車側灯がクリアレンズとなった後の7818編成(2018.8.17)

7818編成にはその後も様々な改修や変更が続いた。2016年度末には客室内の温湿度センサが更新されたほか,2017年夏には車側灯のクリアレンズ化が行われている。いずれも7808編成と同時に施工されたものであった。また,2017年冬にはホームドア制御用のQRコード「tQR」の実証実験が始まり,4~6両目海側第3ドアの窓にQRコードの掲出が行われたほか,年度末にはドアステッカーが2年ぶりに京成車と同一の意匠のシールに変更された。同じく2017年度末には,日医大開業以来18年ぶりの純増として7800形の第3編成となる7828編成が新たに導入され,7818編成に次ぐ新たな7800形がやってきた。

2018年度には,年度初の4月16日からICレコーダによる多言語案内放送が実施されることになり,制御増幅器にICレコーダ接続掛箱が新設された。7818編成は京成車時代に同等の機能を有するICレコーダ接続箱を車掌側ベンチボード上に設けていたが,貸借開始に伴い撤去されていたため,他車同様に接続掛箱の新設が行われた。7月中旬には弱冷房車に指定される3両目のラインデリアが使用停止され,その後には整風板が各車両車端部の吹出口に設置された。また,9月中旬には昨年度から実施していたホームドア制御用QRコードの本番運用が始まり,2・3・6・7両目両側の第3ドアに本番用のQRコードが掲出されたほか,側扉には車両及び扉の位置を示す点字シートも掲出された。年度末には優先席付近の側窓にヘルプマークが掲出された。

2016年度末から2018年度にかけての7818編成の記録を振返ると,大半は北総車全体における改修や変更によるもので,7818編成単独での特筆すべき事項はほぼなかった。あえて書くとすれば,この頃から銘板の劣化が目に見えて進行するようになったということで,それは貸借終了まで続いた。

当時のアルバムから…

2019年3月13日:7818編成ヘルプマークの記録


2019年4月29日:劣化が進行した7817号車山側の車号銘板

デジタル列車無線への対応と旅客案内の多言語化(2019年6月~2020年6月)

準備工事を終えて出場した7818編成(2019.7.20)

△準備工事を終えて出場した7818編成(2019.7.20)

7818編成に大規模な変化が生じたのは2019年度に入ってからだった。最初の変化は列車無線デジタル化に伴う車両工事によるものだった。列車無線デジタル化に際して車両側にも無線装置の新設を行うための工事で,車両運用計画への影響の最小化と工事の平準化を目的として,無線局の開局が免許される前でも実施できる準備工事と,免許後のみ実施可能な本設工事の2段階で施工が計画された。このうち準備工事が2018年度末から北総車でも始まっていた。

ちなみに,法令上は準備工事であっても鉄道事業法施行規則に定める「主要な機器の配置」及び「火災対策に係る事項」の変更が発生するため,工事に先立って2018年10月17日付で鉄道事業法に基づく車両構造装置変更確認申請が行われていた。なお,7818編成については準備工事に伴う記号番号の変更はなく,2014年度の貸借開始以来の記号番号が引続き用いられている。

7818編成におけるデジタル列車無線工事は,7800形として最も早い2019年7月下旬に準備工事を終えた。京成電鉄の財産であることから工事は京成電鉄で施工され,そのため施工箇所は宗吾工場とされた。なお,北総鉄道及び千葉ニュータウン鉄道財産の車両は印旛車両基地で施工していて,この時点で7501編成と9201編成の2編成が準備工事を終えていたため,7818編成の準備工事しゅん功は北総車で3編成目だった。

続く本設工事については,鉄道事業法施行規則に定める「主要寸法及び車両限界との関係」,「主要な機器の配置」,「火災対策に係る事項」,「電気回路」,「列車無線装置の車上設備の周波数帯及び通信方式」に変更が生じるため法令上の手続きがやはり必要であり,書類上では2019年4月27日付で車両構造装置変更確認申請が行われている。本設工事がしゅん功すれば,7818編成の記号番号は北方先頭車「7811-1」が「7811-2」に,南方先頭車「7818-1」が「7818-2」に変更される予定となっていた。

駅名変更に対応した車内案内表示器(2020.3.20)

△駅名変更に対応した車内案内表示器(2020.3.20)

また,東京オリンピック・パラリンピックの開催を前に案内表示の多言語化への取組を京成電鉄で実施していたため,7800形についても京成電鉄の財産である3700形の一部として車内案内表示器を多言語表示可能なLCD式に変更し,多言語案内放送が可能な自動放送装置を新設する工事が計画された。法令上の手続きは2019年4月18日付で他の7800形とともに自動放送装置新設に関する車両構造装置変更確認申請が行われていて,工事は2020年4月下旬に実施された。工事に先立つ2020年3月上旬には,京急線内の駅名変更にあわせた車外及び車内表示器のソフトウェア変更が行われていて,変更後のソフトウェアによるLED式車内案内表示器の挙動は約1ヶ月間のみ見ることができた。

2019~2020年度には他にも7818編成に関する様々な工事計画が監督官庁に提出されていた。2019年7月5日付の車両構造装置変更確認申請では,7300形・7800形・9800形ともにT車に搭載する補助電源装置をDC-DCコンバータからSIVに更新し,これにより7818編成のT車の記号番号を「7816-1」から「7816-2」とする計画が示されている。また,7月11日付の同申請では7800形及び9800形の集電装置をシングルアーム化し,7818編成のM1車を「7817-1」から「7817-2」,M1’車を「7815-1」から「7815-2」にそれぞれ変更する工事計画もあった。記号番号の変更はないが,2020年9月7日付の同申請では客室灯のLED化も計画されていた。

ところが,貸借開始以来となる7818編成の大変貌が確実視されるなかで,その前途を大きく狂わせる事故が発生してしまう。

当時のアルバムから…

7818編成あれこれ…

2019年7月20日:7818編成デジタル列車無線準備工事しゅん功の記録


2019年8月24日:7818編成デジタル列車無線準備工事しゅん功の記録(車内)


脱線事故と貸借終了(2020~2021年度)

脱線事故の発生と車両損傷(2020年6月12日~13日)

脱線現場と7818編成(2020.6.12)

△脱線現場と7818編成(2020.6.12)

様々な改造工事を控え今後も長期的な活躍が見込まれていた7818編成が脱線事故により損傷したのは,2020年6月12日のことだった。

6月12日10時15分頃,京成高砂始発羽田空港行の普通第1022N列車として京成高砂・青砥間を走行中だった7818編成は,青砥駅進入中に異常を認めて非常停止した。幸い乗客及び乗務員に負傷者はいなかったが,7両目にあたる7812号車は第2台車の2軸すべてが脱線していた。

事故当時の時系列等については別稿にて整理している通りであるが,その後の調査や報道によって7818編成には多数の損傷が確認された。脱線した7812号車は,第2台車の全2軸が山側に約20cm脱線していたが,その側はりには亀裂及び塑性変形が生じていたばかりか,板ばねの折損も認められた。第2位の集電装置は失われ,付近の電車線に垂下している状態で発見された。避雷器等の付属装置も同様に失われ,これらの中には線路上や隣接する8両目の7811号車屋根上で発見されたものもあった。また,衝撃によって7811号車の冷房機キセは損傷していた。さらには,大きな衝撃が加わったことで,7812号車の車体には衝撃による変形や歪みも認められた。

脱線事故による損傷状況(確認箇所のみ)

△脱線事故による損傷状況(確認箇所のみ)

現場の復旧は事故当日の夜に始まったが,この時点で7812号車第2台車の台車枠損傷によって7818編成は自力走行できない状態だった。現場開通に不可欠な車両搬出には損傷台車の応急処置が必要で,結果的には京成電鉄が宗吾車両基地に保管していた3500形由来の仮台車を現地で損傷台車と交換することで解決が図られた。搬出に際しては,まず1~6両目の7818~7813号車を切り離して起点方に小移動させ,7両目の7812号車と8両目の7811号車も切り離した。7811号車はそのまま保守用車に牽引されて高砂検車区に収容され,入れ代わりで仮台車を現地に搬入し,7812号車の台車交換を実施している。台車交換後,7812号車は再び7818~7813号車と連結し,電車線設備や軌道の復旧を待って翌13日朝に自力走行により高砂検車区に収容された。

なお,損傷した台車や一部の機器は13日の運転再開後もしばらく青砥駅構内の現場付近にブルーシートに覆われて保管されていたが,これらは6月20日終車後までに搬出された。

当時のアルバムから…

2020年6月12日:京成線青砥駅構内列車脱線事故


高砂検車区での留置と印旛車両基地への回送(2020年6月~8月)

事故で大きく損傷した7818編成は,事故翌日の朝までに最寄りの高砂検車区に全車が収容された。しかし,7818編成を収容した高砂検車区は車両の修繕に必要な能力を持たず,長期間の車両留置を可能とするほど留置能力にも余裕がなかった。高砂検車区への収容が応急措置であることは明白だったが,社内と社外の双方から事故に関する調査が行われるであろう状況において,車両の移送判断に相応の時間を要することも明らかだった。

印旛車両基地への収容回送(2020.8.22㋵)

△印旛車両基地への収容回送(2020.8.22㋵)

結果として7818編成は所属区である印旛車両基地に収容されることになり,移動は8月22日終車後に自力走行で行われることになった。収容に伴う回送は細心の注意を払って行われ,京成高砂から印西牧の原までの走行に約2時間を要した。この時点の7818編成には,損傷に対する復旧が応急処置を除いてほとんど認められない状態だった。依然として7812号車第2台車は制動機を備えない仮台車を使用したままで,落失した集電装置の復旧も行われていなかった。北方ユニットはユニットカットされ,回送時の運転速度は極めて低速だった。

また,7818編成は高砂検車区への収容直後から使用休止(休車)措置がとられていたが,回送時点における前回月検査からの経過期間は,休車による検査回帰の延長を考慮しても実施基準に定める検査回帰を超過していた。冬には重要部検査の検査期限が迫っていたが,2ヶ月ぶりに所属区への帰区を果たした7818編成は満身創痍の状態だった。

当時のアルバムから…

2020年8月22日㋵:7818編成印旛車両基地収容回送


応力測定に係る台車の供出(2020年8月~12月)

印旛車両基地に収容された7818編成は,屋外にある留置線のうちの1本,26番線を定位置として留置が続いた。少なくとも10月27日まで7818編成に目立った動向は認められなかったが,10月28日から11月2日までの間に台検線のS5番線に移動し,留置線から姿を消した。

応力測定に臨む3712号車第2台車(2020.10.27)

△応力測定に臨む3712号車第2台車(2020.10.27)

ところで,7818編成が台検線に移動する直前の10月26日・27日の両日には,3718編成を使用した台車の応力測定が実施されていた。応力測定に際しては京成高砂から青砥までの走行時に上り外線から青砥駅構内1番線に至る,すなわち事故の発生した当該の運転線路が設定されたばかりか,車両についても損傷台車と同一の住友FS-547型式のロット番号81-375の台車を使用する3718編成が選定され,損傷台車と同じ7号車第2台車が測定箇所とされた。測定と事故との関連は疑いようもなかった。

応力測定に選ばれた台車と損傷台車との間には,前述の通り同一ロットであるという関係があった。7818編成の種車である3748編成は1994年度に製造され,1990年度に製造された3718編成とは車体の製造年次に約4年の差がある。しかし,台車については後年の整備過程で振替がなされていたため,車体の製造年次とは無関係だった。7818編成に使用されていたFS-547型式の台車は,1990年12月に製造された81-375ロット及び翌1991年1月に製造された81-376ロット(銘板には「製造番号」欄に打刻)の台車で,その一連番号はM213~M224までの連番(銘板には「No.」として打刻)である。M213が7818号車第1台車,M224が7811号車第2台車に割り当てられ,損傷台車は81-375ロットの一連番号M222だった。そして,3718編成で使用していた台車には損傷台車と同一ロットの81-375が含まれていた。その一連番号は7818編成で使用していた台車の直前の連番に相当し,3711号車第2台車のM212が最大番号で,測定箇所に選ばれた3712号車第2台車の一連番号はM210だった。

応力測定及び台車振替の概要

△応力測定及び台車振替の概要

7817号車の台車に交換された3712号車第2台車(2020.11.2)

△7817号車の台車に交換された3712号車第2台車(2020.11.2)

3718編成を使用した応力測定の終了後,測定に使用した3712号車第2台車のM210は取り外され,代替として7817号車第2台車で使用されていたM216に交換された。M210は本線上以外での解析等によって一時的に供出された可能性が考えられるが,復元までの消息は現時点で不明である。7817号車から供出されたM216は,台車枠の再塗装やブレーキシューを京成仕様に変更するなどの整備を経て3712号車第2台車となった。台車を変更した3718編成は11月2日に試運転を実施し,以降M216は12月まで3718編成の通常運用の中で使用された。

つまり,7818編成がS5番線に移動した10月末から11月初旬の時期とは,3712号車の台車振替が行われた時期に一致していた。台車取外し設備のある台検線へ移動は,一連の台車振替を目的としていた可能性が高い。なお,M216供出中の7817号車第2台車の代替台車については,北総が仮台車を所有していないことから,京成から代替台車を借りていたと考えるのが現実的だ。その代替台車の正体は確認できていないが,廃車となった3600形のうち3663号車が同時期に宗吾車両基地の倉に取り込まれていたことから,3663号車の台車を使用していた可能性が考えられる。

一連の台車振替は12月初旬まで続けられたが,12月11日には3712号車第2台車が元のM210に戻された状態での試運転が行われ,M216は印旛に戻されて再び7817号車第2台車となった。振替を終えた7818編成は倉から出されて再び26番線に留置されるようになり,2020年の年末を迎えた。

当時のアルバムから…

2020年8月30日:印旛車両基地で留置中の7818編成(2020年8月)


2020年10月27日:3718編成台車応力測定


2020年11月2日:3718編成台車振替


2020年12月29日:印旛車両基地で留置中の7818編成(2020年12月)


2021年2月22日:台車振替終了後の7817号車


7812号車の内装撤去と除籍(2021年1月~2021年6月)

台車振替と前後して7818編成にはもう一つの動向が認められた。7816号車2位の冷房機が交換されたことである。冷房機交換の経緯は不明だが,その後も7817号車2位の冷房機も交換されるなど,ときおり留置線を離れて倉で整備を受けている様子が認められた。しかし,屋外の留置線で洗車もされずに留め置かれる日が大半の7818編成は,次第に雨垂れや褪色の様が著しくなっていった。そして,2020年12月に検査期限が迫っていた重要部検査は,結局施行の目途が立たぬまま年末を迎えた。

内装の一部が撤去されている7812号車(2021.5.1)

△内装の一部が撤去されている7812号車(2021.5.1)

年度を跨いだ2021年4月頃には,7812号車の内装が一部撤去されている様子が確認できた。撤去が確認できたのは北寄の約半分だったが,脱線に起因するとみられる損傷も北寄の妻部などに集中していた。また,7812号車における事象との関連は明らかでないが,隣接する7813号車の車内に板状の部材も確認できた。

5月27日には,運輸安全委員会から事故について「事実情報に関する情報の入手、原因の分析及び再発防止策の検討のために更に一定の時間を要する状況」であり,「本事故が発生した日から一年以内に調査を終えることが困難であると見込まれる」と発表があった。そして事故から1年が経過した6月末,原因究明と対策の発表を待たずして7818編成は貸借終了となった。それは7818編成の北総車としての終焉だった。

当時のアルバムから…

2021年2月22日:印旛車両基地で留置中の7818編成(2021年2月)


2021年3月19日:印旛車両基地で留置中の7818編成(2021年3月)


2021年5月1日:7812号車内装撤去


2021年6月20日:印旛車両基地で留置中の7818編成(2021年6月)


貸借終了後の元・7818編成(2021年7月~)

貸借の終了した7月以降も「元」・7818編成は印旛車両基地に留置され続けた。すっかり定位置となった26番線に留置される様子は貸借終了前と何ら変わらず,引続き休車札が掲出されていた。しかし,水面下では元・7818編成の処遇に関する手続が着実に進んでいた。現在の鉄道法制には,車両に変更を行おうとした際に変更内容が技術基準と適合しているかを確認する「設計確認」と呼ばれる行為があり,この設計確認について,財産の帰属先である京成電鉄によって「3700形復旧工事(6連化工事)」と第された件名の設計確認が行われていたのである。京成による設計確認は7月27日付で完了していて,件名や他事業者における設計確認の実施状況に鑑みれば7818編成の処遇は明らかだった。それは,貸借契約の終了による京成車への復帰と,6両編成への編成短縮による車両復旧を示していた。

6両のみ帯フィルムが撤去された元・7818編成(2021.8.12)

△6両のみ帯フィルムが撤去された元・7818編成(2021.8.12)

印旛車両基地に留置されていた元・7818編成は,この時点においても特段の復旧作業が行われておらず,依然として損傷した車両を含んでいた。少なくとも自力走行に支障のない状態まで復旧させなければ,再び所属区となった宗吾車両基地への収容もままならなかったと推測される。結果として元・7818編成の設計確認に基づく復旧工事はそのまま印旛車両基地にて施工されることになり,8月9日から準備作業が始まった。洗浄線に移動した元・7818編成は,色褪せた外板の帯フィルムの撤去後,新たな帯フィルムが貼られることなく洗浄線を離れた。このとき元・7812号車と元・7814号車は帯フィルム撤去の対象外となり,6両編成化に伴う脱車がこの2両であることが明らかになった。その後,翌10日には一旦台検線であるS5番線の倉に収容されるが,12日日中までに再び屋外に出され,定位置だった26番線に留置された。

元・7818編成が留置線に出されている間,S5番線の倉には足場が組み立てられていた。元・7818編成は足場の完成を待って再びS5番線に収容されたが,この際に6両編成化を前提とした編成組替が行われた。まず脱車される元・7812号車と元・7814号車がS5番線終点方に押し込まれると,次に切り離された元・7811号車と元・7813号車の間に元・7815号車を入れた3両がS5番線の倉に収容された。残る元・7816号車から元・7818号車は3両のまま26番線に留置され,かくして改造工事に向けた準備が整った。なお,この頃から車両基地では,日本車輌や日本電装の作業者や資材を見かけるようになった。既に北総の手を離れている車両であるから北総社員が改造工事を担当することは当然あり得ず,現実的には改造工事に割ける要員も設備もない。たとえ京成が京車工を含め社員を派遣したとしても対応不能という結論に至ったようで,結果的には車両メーカや業者の出張作業となったようだ。

6両編成化に必要な工事内容

△6両編成化に必要な工事内容

脱車した2両と組成変更された6両が並ぶ(2021.10.22)

△脱車した2両と組成変更された6両が並ぶ(2021.10.22)

作業は8月下旬に始まったが,10月中旬まで実に2ヶ月弱の工期を要した。編成短縮を伴う改造は未だかつて経験したことのない大規模な作業だった。車体に歪みが認められていた元・7812号車が修理不能と判断され,北方M1車が失われていた。健全な状態の車両を6両編成化するのと異なり,損傷車両の修理や代替を伴っていたことが工期の長期化につながった。具体的には,6両編成化によって不要となる中方電動車ユニットのうち,中方M1’車の元・7815号車を新たな北方電動車ユニットのM1車にするため,集電装置の増設を始めとする作業が発生していた。

作業の進捗により,元・7818編成は10月8日日中までに6両編成への組成を終えて留置線に移動した。その数日後にはS5番線の奥に留置されていた元・7812号車と元・7814号車が26番線に引き出され,元・7818編成は25番線に移動した。この時期には宗吾車両基地への回送に向けて構内での試運転が実施されていて,車両の状態を詳細に確認することができたが,この時点でも車体外板や車内には北総仕様の車号銘板及び社名銘板が依然として残置され,新たな帯フィルムの貼付は未施工のままだった。とはいえ,運転台コンソールには「3748-3741」の新車号が記され,車内でも側扉の注意喚起シールは戸先側が剥がされて京成仕様化,さらには側扉の点字シートは6両編成用に変更されるなど,京成車としての仕様に次第に変わりつつあった。

北総線を去る元・7818編成改め3748編成(2021.10.30)

△北総線を去る元・7818編成改め3748編成(2021.10.30)

そして元・7818編成,改め3748編成の改造工事は終わりを迎え,印旛車両基地を離れる日がやってきた。2021年10月30日の終車後,書類上ではとうに北総車ではなくなっていたが,その後も4ヶ月間を過ごした印旛車両基地を出庫した3748編成は,印西牧の原~空港第2ビル~宗吾参道の経路で宗吾車両基地に回送された。検査期限を超過していることもあって営業時間帯の回送はできず,回送は終車後に線路閉鎖を伴った。既に京成車であることから全区間で京成乗務員が担当(印旛車両基地からの出庫のみ北総の限定運転士が担当)する京成線列車として運行されたため,運転経路はアクセス線経由となった。なお,この時点でも銘板類や表示器のソフトウェアなどは北総仕様のままだった。また,印旛に残った元・7812号車と元・7814号車の2両はしばらく26番線に留置されていたが,7818編成の代替として新たに貸借された7838編成が回送されてくる直前の12月中旬に車両基地起点方の保守基地に移動し,車体を2分割されて解体場へ搬出された。

かくして元・7818編成は名実ともに北総線の線路を去り,古巣・京成電鉄に帰っていった。元・7818編成は再び京成車として3748編成を名乗り,京成電鉄で新たな活躍を始めることになる。他社での貸借車から京成に戻って北総に貸借される車両は過去にあった(京成電鉄→千葉急行電鉄→京成電鉄→北総開発鉄道と歩んだ7093号車と7094号車が該当)が,北総から京成に戻って新たな活躍を始める車両は今回が初めてである。北総車の一員であった元・7818編成の新たな活躍と次こそは無事に使命を全うできることを祈り,約7年に及んだ7818編成の記録をここに終える。

当時のアルバムから…

2021年7月4日:印旛車両基地で留置中の元・7818編成(2021年7月)


2021年8月1日:印旛車両基地で留置中の元・7818編成(2021年8月)


2021年8月9日:元・7818編成車体外板帯フィルム剥離


2021年8月10日:S4番線に移動した元・7818編成


2021年8月12日:26番線に移動した元・7818編成


2021年10月2日:26番線に留置される元・7818編成南方3両


2021年10月10日:6両編成になった元・7818編成


2021年10月22日:26番線に引き出された元・7812号車,元・7814号車


2021年10月30日㋵:宗吾車両基地へ回送される元・7818編成(3748編成)




2021年10月31日:宗吾車両基地に到着した元・7818編成(3748編成)