2020年5月31日公開・ 最終更新
はじめに
7300形旅客案内装置シミュレータ(以下,本シミュレータとする)は,北総7300形等において使用される任意の行先種別表示器,車内案内表示器等の旅客案内装置を組み合わせ,装置の動作を疑似的に再現するシミュレータです。
本シミュレータは,約30年にわたる実車の挙動確認を主として,不用品として一般に売却された実機での検証や先人の調査実績等により,各装置の動作論理を推定するとともに分類を試みた結果をシミュレータとして再構築したものです。すなわち本シミュレータにおける各装置の動作論理や分類は結果から推定されたものであり,それらは事実と異なっている可能性があります。本シミュレータの利用には,以上の前提を理解したものとみなします。
もくじ
機能と構成
各部の名称とはたらき
本シミュレータは,以下の装置等から構成されています。
- 設定器
入力された列車種別,始発駅,終着駅等の情報から,列車の運行パターンや走行位置を算出し,各装置に情報を送信します。 - ドラムスイッチ(ドラム)
車両の編成内における前後を決定するスイッチです。 - 速度発電機出力
速度発電機(速発)から出力される周波数を指定することで,車両の走行状態を疑似的に再現します。 - ドア引通し線加圧状態
海山側それぞれの側扉の開閉状態を指定することで,側扉に関する編成内の引通し線の加圧状態を再現します。 - 側面行先種別表示器
上位の指令装置からの情報に応じて,車外に向けて行先,列車種別等の情報を表示する案内装置です。 - 車内案内表示器
上位の指令装置からの情報に応じて,客室内に向けて行先,列車種別,停車駅等の情報を表示する案内装置です。 - モニタ表示器
上位の指令装置からの情報に応じて,乗務員に対して編成内の車両状態を表示する装置です。 - 制御器
字幕(方向幕)式の行先種別表示器に対して,設定器からの運行情報や手動での設定内容に応じた表示指令を行う制御装置です。 - 表示制御装置・表示制御器
車内案内表示器に対して,設定器からの運行情報に応じた表示指令を行う制御装置です。
表示制御器においては,LED式の行先種別表示器に対して,設定器からの運行情報や手動での設定内容に応じた表示指令も行います。
装置等の構成
本シミュレータにおける装置等は,下図のように構成されています。
なお,本シミュレータでは描画等の都合から,実車のシステム構成とは以下の各点において異なっています。
- いずれか一方の先頭車のみを描画する都合により,ドア(側扉)の開閉状態はドラム位置に関係なく制御可能としています。
- 表示制御装置にはA機(主機)とB機(副機)があり,双方間の通信がなされていますが,本シミュレータではこれを省略し,A機単独動作としています。
- 表示制御装置と車内案内表示器との間には,表示変換器による電文の変換がなされていますが,本シミュレータでは表示変換器の描画を省略しています。
- 表示制御器には主機と副機があり,双方間の通信がなされていますが,本シミュレータではこれを省略し,主機単独動作としています。
- モニタ表示器の上位には各車のモニタ端末装置があり,モニタ表示器にも主機と副機がありますが,本シミュレータでは副機側のモニタ表示器のみを再現しています。
使いかた
設定器で模擬走行する
始発駅での操作
- 使用する機器の確認
各装置の機種,ソフトウェアが正しく選択されているかを確認します。
※適切な機種,ソフトウェアが選択されていない場合,機器間の通信が成立しない,表示が出ない等の意図しない状態となることがあります。 - ドラム切替
ドラムを前位置に返し,設定器が電源投入状態となることを確認します。
ドラムは把手を返すイメージでスイッチ左側をクリックすると前位置に切替できます。 - 運行パターンの設定
設定器に対し,列車種別,始発駅,終着駅を入力します。入力完了後,運行パターン設定スイッチを操作し,運行パターンを確定します。
運行パターンの修正は,始発駅を発車するまで再設定スイッチで扱うことができます。
※回送,試運転等の非営業列車は種別スイッチを操作した時点で運行パターンが確定します。 - ドア扱い
営業列車の場合,ドア操作を行うことで,始発駅に停車している状態となります。
※設定器の運行情報を「ホーム外設定」で設定した場合は,指定した始発駅構内の引上線からホームへの距離に相当する移動を行ってから,ドア操作を行う必要があります。
運行中の操作
- 閉扉確認・車両起動
海山双方の閉扉状態を確認します。海山双方の引通し線が閉扉状態にあるとき,速発周波数が入力可能となります。
閉扉確認後,速発周波数を入力し車両を走行させます。車両が走行状態になるとドア操作は無効化されます。 - 途中駅への停車
次の停車駅までの距離を走行したら速発周波数を0として,車両を停止させます。
停止状態となると開扉操作が有効化されますので,ドア操作を行うことができます。営業列車の場合,ドア操作を行うことで次の停車駅に到着したと判定されます。
※所定の距離に満たない距離で開扉した場合は,駅間で開扉した扱いとなります。この場合,所定の距離に達して開扉するまでは走行距離が累積され,停車駅に到着した扱いにはなりません。
※開扉するまでは,前駅からの区間を走行中として扱われます。設定器が開扉状態を知得することで,停車中と判定し,設定中の運行パターンにおける次の停車駅を参照します。
※機種,ソフトウェアによっては,一部の線区で停車駅の判定を行わないものがあります。この場合,どの位置でドア操作しても停車駅に到着した扱いとなりますが,前駅からの走行距離は通算され続けます。 - 終着駅への停車
終着駅到着後はドア操作を行うことで,設定器に設定されている運行パターンが初期化されます。
※すべての設定が初期化されるため,始発駅同様の操作が可能です。
運行パターンの変更操作(再設定)
途中駅で列車種別,行先等の運行パターンを変更する場合は,開扉後に設定器の再設定スイッチを扱います。再設定スイッチは以下の条件を満たした場合のみ操作できます。
<京成線内・他社線内(始発駅)の場合>
- 始発,終着設定可能駅に停車中であること
※この場合の「停車中」とは,設定可能駅に停車して開扉した後であることを指します。よって,停車後も開扉するまでは「走行中」の扱いとなり,再設定要求は棄却されます。 - 列車種別,始発駅,終着駅のすべての変更が反映される
※よって,京成上野方面から「京成上野始発・京成成田終着・快速」として走行してきた列車を青砥駅で特急に種別変更しようとするときは,「青砥始発・京成成田終着・特急」で再設定します。京成上野始発のまま変更すると,再設定後の現在地点は京成上野に変更されます。 - 京成線から北総線に直通する場合の京成高砂,同じく都営線に直通する場合の押上は他社線扱いとなる
<他社線内(途中駅)の場合>
- すべての列車種別が停車する駅に停車中であること
※ここでいう「すべての列車種別が停車する駅」とは,設定器内のソフトウェアに定められた列車種別のことを指します。たとえば京浜急行線においては設定器にウイング号の列車種別は登録されていないため,ウイング号の通過駅であっても京急川崎,横浜の両駅は設定器上で全列車種別が停車する駅として判定されます。 - 列車種別のみ変更可能,かつ非営業列車(回送等)への変更は不可能
※あくまで途中駅での再設定における条件であり,始発駅停車中の再設定では適用外となります。途中駅での再設定においては,始発,終着駅の設定は変更されません。たとえば,品川方面から営業列車で京急川崎まで走行し,京急川崎停車中に回送列車に変更したい場合は,ドラムスイッチをいったん中位置に返し,設定器の運行パターンをリセットする必要があります。
ただし,再設定スイッチを押下後も運行パターン設定スイッチ操作によって運行パターンが再確定するまでは,設定器は再確定前の運行パターンを送信し続けます。
制御器から単独指令する
- 使用する機器の確認
各装置の機種,ソフトウェアが正しく選択されているかを確認します。
※適切な機種,ソフトウェアが選択されていない場合,機器間の通信が成立しない,表示が出ない等の意図しない状態となることがあります。
※制御器からの指令を受信できるのは字幕式の行先種別表示器のみです。 - 制御器ふたの開閉
ふたをクリックすると開閉することができます。 - 設定番号の入力
列車種別,行先いずれか入力する側のキーを押して入力受付状態とした後に,テンキーで設定番号を入力します。
設定番号の入力が完了したら,セットキー(起動キー)で行先種別表示器に設定番号を送信します。
※設定番号の入力を中止するときは,クリアキー(消去キー)を操作します。このとき,設定番号は確定済の設定番号となります。
※セットキーで設定要求したとき,要求設定番号がソフトウェア上の設定可能範囲から外れている場合は,範囲外の側の設定番号表示部が「 . .」表示となり,要求を棄却します。棄却後,設定番号表示部の表示は現在の設定番号にリセットされます。設定可能範囲はソフトウェアにより異なります。
表示制御装置・表示制御器から表示禁止する
- 表示禁止スイッチの操作
すべての表示文章を表示禁止としたい場合は「表示禁止」スイッチもしくは「車内無表示」スイッチを操作します。
乗換案内文章を表示禁止としたい場合は「乗換停止」スイッチもしくは「乗換削除」スイッチを操作します。
※乗換案内文章の表示禁止は対応していない機種があります。 - 表示禁止の解除
表示禁止を解除する場合は当該スイッチを再度操作し,切状態とします。文章は次の表示指令タイミングから表示されます。
表示制御器から単独指令する
- 使用する機器の確認
各装置の機種,ソフトウェアが正しく選択されているかを確認します。
※適切な機種,ソフトウェアが選択されていない場合,機器間の通信が成立しない,表示が出ない等の意図しない状態となることがあります。
※表示制御器からの指令を受信できるのはLED式の行先種別表示器のみです。
※表示制御装置からLED式の行先種別表示器に指令を出すことはできません。 - 表示制御器ふたの開閉
ふたをクリックすると開閉することができます。 - 設定番号の入力
対照表から列車種別,行先に対応する設定番号をサムロータリスイッチに入力します。
入力完了後,起動スイッチにより行先種別表示器に設定番号を送信します。
※表示制御器の単独指令では経由表示を表示させることができません。
※設定器からの運行パターン情報が未受信のため,列車位置は未確定となります。このため,車内案内表示器は非動作となります。
各装置の機能
設定器
各部の名称とはたらき
- 種別設定スイッチ
列車種別を設定するスイッチです。機種により,照光スイッチ(ボタン)方式とサムロータリスイッチ(デジスイッチ)方式があります。 - 始発・終着駅設定スイッチ
始発駅,終着駅を設定するスイッチで,サムロータリスイッチで設定番号を設定します。 - 運行パターン設定スイッチ
入力された列車種別,始発駅,終着駅から運行パターンを設定するスイッチです。「ホーム上設定」と「ホーム外設定」の2つのスイッチがあります。 - 再設定スイッチ
設定中の運行パターンを新たな運行パターンに変更するスイッチです。 - 表示画面
設定中の運行パターンを表示する液晶画面です。始発・終着駅の名称が表示されます。機種により,バックライトの有無,表示文字の違い(カタカナ表示もしくは漢字表示)があります。
種別設定スイッチがサムロータリスイッチ方式の機種では,設定中の列車種別名称も表示されます。 - 速度発電機・車輪径設定スイッチ
速度発電機(速発)の歯数と車輪径を設定するスイッチです。速発からの出力周波数から速度を算出する際の補正値として使用します。
装置の仕様
- 運行パターン情報の送信機能
入力された列車種別,始発駅,終着駅から列車の運転経路と停車駅情報を算出し,ドア状態や速発の出力周波数から列車の走行状態を判定します。その情報を走行状態に応じた電文として制御器,表示制御装置(もしくは表示制御器),モニタ表示器に送出する機能です。この機能には,以下の各処理が含まれます。 - 運転経路の算出処理
入力された始発駅,終着駅の組合せから運転方向と経路を算出する処理です。
途中駅で運転方向が変わる場合や,始発駅と終着駅が同一の場合は,設定要求を棄却します。たとえば,京急空港線から京急川崎方面への列車は,京急蒲田駅で運転方向が変わるため算出できません。 - 停車駅の判定処理
選択されたソフトウェアに含まれる列車種別毎の停車駅と駅間距離データから,次駅と次駅までの距離を算出します。算出は前駅停車中に行われ,列車の走行位置が次駅手前(おおむね500m手前)に達した時点で次駅までの距離を消化したと判断します。判断地点以降に開扉することで,次駅到着扱いとなります。
なお,ソフトウェアに含まれる停車駅データは,必ずしもその時点で運行されていた列車種別の停車駅に一致しているとは限りません。これは,使用実績のない線区や列車種別のデータが更新されずに残っているためです。たとえば京急川崎以南の停車駅は京成・北総車の運用範囲から長らく外れていたため,快特の金沢八景停車が反映されていなかった時期があるようです。使用実績のない線区や列車種別の情報は,検証実績に乏しいため,一部推測で対応させています。 - 列車種別の自動変更処理
選択されたソフトウェアに列車種別の自動変更に関する設定が含まれる場合,指定駅で列車種別を自動的に変更する処理です。
自動変更を行うのは以下の場合で,各ソフトウェアにそれぞれの設定可否を定めています。
・北総線上り急行列車で矢切に到着した際,列車種別を普通に変更する
・京浜急行線上り急行列車で品川に到着した際,列車種別を普通に変更する - 走行位置の算出処理
走行位置の算出処理には,速発からの出力周波数をもとに設定器に入力された車輪径と速発歯数で補正し,1メートル単位で走行位置を算出しています。
<速度発電機歯数の設定値>
速発歯数は2桁のサムロータリスイッチにより,70~99の間で設定できます。この値は使用する車両の大歯車歯数に一致するよう設定します。
<車輪径の設定値>
車輪径は3桁のサムロータリスイッチにより,700~899の間で設定できます。この値は車輪径をミリメートルで表した数値に一致するよう設定します。 - 試運転モードの処理
列車種別を試運転を指定したとき,営業列車の運行パターンを重ねて指定することができます。試運転に重ねて営業列車の運行パターンが設定されているとき,営業列車の運行パターンにそって停車駅判定を行う処理です。たとえば,試運転指定後に「京成上野始発・京成成田終着・快速」を重ねて設定すると,設定器は同区間の快速として停車駅判定を行います。
<設定方法:照光スイッチ式の場合>
試運転スイッチを押下し,続けて営業列車の列車種別スイッチを押下する(押下順は逆でも構わない)。その他は通常の営業列車と同様に設定する。
<設定方法:サムロータリスイッチ式の場合>
列車種別のサムロータリスイッチに対し,照合表で試運転と営業列車種別が併記されている欄の設定番号を入力する。その他は通常の営業列車と同様に設定する。
機種とソフトウェア一覧
作成中
行先種別表示器(字幕式)
装置の仕様
- 機種変更機能
プルダウン選択にて機種をYA-90199とYA-90199H(YA-90199J)に切り替えることができます。YA-90199は京成車用(北総貸借車を含む)で,YA-90199H/Jは北総車用です。両機種の違いは仕切板の塗色で,使用する字幕の地色にあわせ京成用は青,北総用は黒となります。
YA-90199とYA-90199Hは安定器1次側電圧がAC100Vですが,YA-90199JはAC200Vとなります。本シミュレータでは電圧を考慮していないので,YA-90199HとYA-90199Jは同一機種として扱っています。
表示器の機種により装填できない字幕はありません。 - 表示切替機能
制御器から受信した列車種別,行先の設定番号に対応する表示を行う機能です。
字幕の表示する位置は,設定番号から算出した天地方向の座標(Y座標)により都度指定しています。実機のように基準位置からのマーク検知数で制御していないため,検知数の狂いによる表示位置の不正は発生しません。
受信した設定番号が1のとき,1を受信した側の字幕を最上部まで巻き上げる動作(基準位置のリセット動作)を行いますが,上述の仕様のため,あくまで模擬的な動作にすぎません。同様に,各表示位置におけるインチング(表示位置の微調整動作)も本シミュレータでは模擬的な動作にすぎません。
実機には制御基板のリセットスイッチにより単独で強制リセットできる機能がありますが,この機能は再現していません。
種別字幕一覧
2022年12月時点:全14種
行先字幕一覧
2022年12月時点:全43種
行先種別表示器(LED式)
装置の仕様
- 機種変更機能
プルダウン選択にて機種をCS858(CS999)とCS1060,CS1175に切り替えることができます。機種毎の仕様は以下の通りです。
・CS858(CS999):3色LEDを使用した表示器です。経由表示には対応していません。
・CS1060:種別にフルカラーLED,行先に白色LEDを使用した表示器です。経由表示に対応するソフトウェアにおいて,経由表示が可能です。
・CS1175:フルカラーLEDを使用した表示器ですが,実機では同時発色数に制約があります。経由表示に対応しています。 - 表示切替機能
表示制御器から受信した設定番号に対応する表示を行います。指定した表示器ソフトウェアに対応する表示パターンの集合体から必要な表示パターンを呼び出して表示します。
また,経由表示に対応している表示器・ソフトウェアを選択している場合,表示制御器からの電文に経由表示に関する情報が含まれていれば,行先表示と交互に経由表示を行います。
ソフトウェア一覧
- 表中の「※」印は,CS858/CS999では「×」となる項目を示します。
- 表中の「修正」とは,「Via Narita SKY ACCeSS Line」の誤字が修正されていることを示します。
車内案内表示器
装置の仕様
- 機種変更
表示制御装置(表示制御器)の選択機種に応じて,対応する車内案内表示器が自動的に選択されます。表示制御装置を選択するとCS406,表示制御器を選択するとCS863になります。
両機種とも車内案内表示器の筐体オオイをプルダウンから選択できます。3700形・7300形タイプと9100形タイプがありますが,外観上の画像が変わるのみで機能に差はありません。
※9100形の旧機種がCS406であったかは未確認で,CS406との互換性も不明のため,暫定で同一の扱いとしています。 - 文章表示機能
表示制御器から受信した表示文を表示する機能です。文章は表示制御器側に登録されているため,車内案内表示器は表示のみ行います。
実機においては,3色LEDを使用したマトリクスによるフリーパターン表示で,赤,緑,アンバーの3色を使用できますが,本シミュレータではLEDマトリクスを模した格子状の画像を文字に被せることで,疑似的にLED表示を表現しています。表示文字幅はCS406が全角11文字まで,CS863が全角7文字までです。
実機では使用可能文字にJIS第2水準漢字までの制約が加わりますが,本シミュレータではウェブフォントを使用しているため,理論上は文字コード表にある文字がすべて使用できますし,現実的にはグリフのある限りすべて表示することができます。ただし,スクロール文は実機準拠のため,実機以上の文字を出すことはありません。
また,実機では明朝体の等幅書体が表示されますが,本シミュレータではゴシック体の等幅書体が表示されます。これは,本シミュレータ制作時点で使用可能だったウェブフォントの都合と,本シミュレータにおける車内案内表示器の表示構造の都合でゴシック体を選ばざるを得なかったためです。このほか,CS863には外字表示機能があるため,いくつかの外字を追加登録しています。
モニタ表示器
装置の仕様
- 機種変更
京成3700形・北総7300形導入にあわせて1991年から使用していた旧モニタ表示器と,2003年の京成3000形導入にあわせて使用開始した新型モニタ表示器の2機種を選択できます。
旧モニタ表示器は計量法改正による圧力単位の変更,3700形6次車の導入を機に使用開始された表示書体の変更を反映したソフトウェアを選択することもできます。 - 時刻表示機能
旧モニタ表示器のみ対応し,内蔵時計の時刻を表示する機能です。本シミュレータでは,パソコンの内蔵時計の時刻がhh:mm形式で表示されます。
実車のモニタ表示器には主機側に時刻補正機能がありますが,本シミュレータでは上述の動作仕様のため,補正機能のない副機側を再現しています。 - 列車種別表示機能
旧モニタ表示器のみ対応し,設定器からの受信データに含まれる列車種別情報を表示する機能です。
表示する列車種別の文字列は全角4文字までに制限されます。一部の列車種別はモニタ表示器のソフトウェアに含まれないため,未設定時と同じ文字列を表示します。 - 速度表示機能
旧モニタ表示器のみ対応し,設定器からの受信データに含まれる走行距離情報から列車速度を算出し,時速で表示する機能です。表示最大値は255です。 - 走行距離表示機能
旧モニタ表示器のみ対応し,設定器からの受信データに含まれる走行距離情報を表示する機能です。
走行距離は前駅発車からの距離を0.01キロメートル単位で表示します。距離の表示最大値は99.99です。 - ドア状態表示機能
新旧モニタ表示器ともに対応し,側扉の開閉状態を車両単位で表示する機能です。
実車では各車のモニタ装置により状態監視していますが,本シミュレータでは引通し線加圧状態により編成内一括で開閉を表示します。
旧モニタ表示器ではドア状態画面に遷移することで海山別に確認できますが,新モニタ表示器では海山を一括した表示がメイン画面に表示されます。 - 故障等表示機能
モニタ装置により状態監視している車両の異常等を表示し,乗務員に対処を促す機能です。本シミュレータでの監視項目は設定器との通信状態とドア状態のみで,後者は故障動作を定義していないため,前者の異常のみ表示します。
異常表示は設定器からの受信データが未設定データである場合に表示され,設定済データを受信することで自動復帰します。実車では通信状態にある側の車両が明示されますが,本シミュレータでは編成内の車両を作り分けていないので,常に1号車の異常として表示します。
なお,この機能は旧モニタ表示器のみ表示されます。 - 無表示機能
旧モニタ表示器のみ対応し,メイン画面から無表示キーを操作することでモニタ表示を無表示とする機能です。このとき,右下の状態キーを操作することでメイン画面に遷移します。
無表示中に故障が発生した場合は,故障表示画面に遷移します。
制御器
各部の名称とはたらき
- 列車種別キー
列車種別の設定番号を入力しようとする際に使用するキーです。 - 行先キー
行先の設定番号を入力しようとする際に使用するキーです。 - テンキー
設定番号を入力しようとする際に使用するキーです。 - クリアキー(消去キー)
設定番号の入力を中止する際に使用するキーです。 - セットキー(起動キー)
入力した設定番号を確定し,行先種別表示器に指令要求する際に使用するキーです。 - 設定番号表示部
2桁の7セグLED2組で構成され,左側が列車種別,右側が行先の設定番号を表示します。
装置の仕様
- 機種変更
装置の製造時期によるキートップの刻印の違いをプルダウンから選択することができます。初期形では列車種別キー,行先キー,クリアキー,セットキーのキートップは英字ですが,改良形では漢字です。
それぞれの機能に差はなく,キートップの文字のみ変更されます。 - 設定器からの自動表示指令機能
設定器から受信した列車種別,終着駅情報を設定番号に変換し,行先種別表示器に送出します。列車種別,終着駅情報は,指定されたソフトウェアに登録されている変換対照表によって変換されます。
変換対照表に含まれない情報を含む電文は破棄され,行先種別表示器に対する指令は行われません。 - 設定キーによる手動表示指令機能
設定キーにより手動で入力された設定番号を行先種別表示器に直接指令する機能です。
セットキーで指令要求したとき,要求設定番号がソフトウェア上の設定可能範囲から外れている場合は,範囲外の側の設定番号表示部が「 . .」表示となり,要求を棄却します。棄却後,設定番号表示部の表示は現在の設定番号にリセットされます。設定可能範囲はソフトウェアにより異なります。 - 設定番号表示機能
設定番号表示部に設定番号を表示する機能です。このとき表示される番号は,入力中である場合には入力中の設定番号,それ以外の場合は現在設定済みの設定番号となります。
設定番号の表示は,最後のキー操作から10秒経過により自動的に消灯しますが,いずれかのキーを押せば再度点灯します。点灯中,入力を受け付けている状態では点滅表示となります。 - 羽田空港口に関する表示変更処理機能
羽田空港口(行先設定番号25)の表示指令が要求されたとき,羽田(行先設定番号33)を表示するように設定要求を自動的に改める機能です。
駅名が羽田に確定する前後(1993年前後)の一部のソフトウェアが対応しています。この機能が実機で有効だったソフトウェアのバージョンが絞り切れていないため,確認できているバージョンをもとに有効なバージョンの範囲を推定しています。
この機能が有効であるとき,行先設定番号25を要求すると行先種別表示器には33を指令します。ただし,制御器の表示は25のまま保持され,指令電文のみ33に改変されます。
ソフトウェア一覧
本シミュレータにおける制御器のソフトウェアには,以下の設定情報が含まれています。
- 設定器受信電文との変換対照データ
- 設定番号の有効範囲データ
※行先の有効範囲はすべてのソフトウェアで1~40で,列車種別のみソフトウェアにより有効範囲の変更が発生します。 - 羽田空港口に関する表示変更処理の実施可否フラグ
各ソフトウェアにおける上の各項目の設定は以下の通りとしています。
- 表中の列車種別名称・行先名称は,設定器から受信した電文内の対応する名称を示します。
- 表中の数字は,変換後の設定番号を示します。
- 表中の「羽田」には羽田空港口を含みます。
- 表中の「快速(旧)」と「エ快速(旧)」は,千住大橋通過の列車種別コードを示します。
- 表中の「快速(新)」と「エ快速(新)」は,千住大橋停車の列車種別コードを示します。
表示制御装置
各部の名称とはたらき
- 表示禁止スイッチ
車内案内表示器に対して表示の停止要求を行うスイッチです。表示禁止スイッチはすべての文章を非表示とします。スイッチが入状態のとき,スイッチ上部に赤色LEDが点灯します。 - 乗換停止スイッチ
車内案内表示器に対して表示の停止要求を行うスイッチです。乗換停止スイッチは乗換案内文章を非表示とします。スイッチが入状態のとき,スイッチ上部に赤色LEDが点灯します。 - 放送停止スイッチ
自動放送装置に対して放送の停止要求を行うスイッチです。本シミュレータでは放送装置を備えていないので,押下しても機器の制御は行いません。 - 状態表示灯
表示制御装置の動作状態および表示変換器等との通信状態の健全性を示すLEDです。本シミュレータではすべて健全表示(緑点灯)で固定されています。 - 時刻設定部
表示制御装置A(親機)の内蔵時計を設定する箇所です。本シミュレータでは内蔵時計を活用する機能を使用しないため,動作しません。
装置の仕様
- 案内文章表示制御機能
設定器から受信した運行パターン情報から,ソフトウェア上に記録された表示タイミング,表示方法,表示文例等を参照し,案内文章を生成,車内案内表示器に対して案内文章の表示制御を行う機能です。本シミュレータにおいて,表示制御器の文章表示制御は次項2および3の処理により行われます。 - 運転方向判定処理
設定器から受信した運行パターン情報のうち,始発駅と終着駅の組合せから列車の運転方向を判定します。判定は始発駅停車中に行います。
設定器同様,途中駅で運転方向が変わる運行パターンは判定不能として棄却されます。また,ソフトウェアに規定していない駅の組合せの場合も判定不能として棄却されます。 - 停車駅判定処理
設定器から受信した運行パターン情報のうち,列車種別と自駅の組合せから次の停車駅と停車駅までの判定距離を算出します。判定は駅停車中に行います。
ソフトウェアの判定データに当該の列車種別に関するデータが含まれていない場合や,停車駅が規定されていない区間を参照した場合は,停車駅判定不能として処理されます。
たとえば京成線押上方面から北総線日医大方面に直通する快速として運行しているとき,表示制御器は高砂開扉場面で次の快速停車駅を参照します。このとき,高砂から先の北総線区間に快速の停車駅が規定されていないため参照不能となり,停車駅判定は棄却されます。停車駅判定が棄却されると,車内案内表示器は非表示となります。参照可能な状態に復帰すると,車内案内表示器への表示制御が再開されます。
ソフトウェア一覧
作成中
表示文一覧
※文例(旧)は1991年2月版のソフトウェア,文例(新)は1991年12月版以降のソフトウェアを指します。なお,MS-A193には3700形・7300形の営業運転開始前にAE100形試乗会用の文章が登録されていましたが,本シミュレータでは対応するソフトウェアを用意していません。
※文例(旧)は今後の研究進捗次第で大きく変更することがあります。
以下に文例の表示順序を示します。
- 駅停車中
文例A1を繰り返しスクロール表示します。
※表示設定色がアンバー以外の列車種別のときは文例A1を以下のように置き換えます(新のみ)。
・赤色:A2
・緑色:A3
※始発駅停車中はA0→A1の順でスクロール表示します(旧のみ)。 - 駅発車時
文例A1→B1の順でスクロール表示します。
※表示設定色がアンバー以外の列車種別のときは文例A1を以下のように置き換えます(新のみ)。
・赤色:A2
・緑色:A3
※次駅が終着駅の場合は文例B1をB2に置き換えます。
※次駅に乗換路線の設定がある場合,文例B1表示後にD1を表示します。
MS-A193の場合,スクロール回数は以下の通りとします。
・都営線内,京浜急行線内:1回
・北総線内,京成線内:2回
※ただし,京成線内で判定距離が2.5km未満の区間は1回
MS-A312の場合,スクロール回数は以下の通りとします。
・全区間:1回
2回表示時の表示順は,A1→B1→A1→B1とします。
停車駅判定対象外区間では,文例A1を1回のみ表示します。
成田空港行での運転時,以下のタイミングで成田空港ターミナル案内を行います。
・空港第2ビルの2駅手前発車時:X1(旧のときX)
・空港第2ビルの1駅手前発車時:X2(旧のときX) - 駅到着時
次駅判定地点以降,文例C1をスクロール表示します。
※次駅が終着駅の場合,文例C1をC2に置き換えます。
MS-A193の場合,スクロール回数は以下の通りとします。
・設定器から停車中電文を受信するまで無限
MS-A312の場合,スクロール回数は以下の通りとします。
・2004年6月以前のソフトウェア:判定距離3kmまで1回,3km以上で2回
・2004年6月以降のソフトウェア:設定器から停車中電文を受信するまで無限
MS-A312の場合,2004年6月以前のソフトウェアでは到着直前に文例E1を設定器から停車中電文を受信するまで固定表示します。
MS-A193の場合,以下の区間は到着案内文章の表示対象外とします。
・京浜急行線内,都営線内,停車駅判定対象外区間
表示制御器
各部の名称とはたらき
- 表示設定スイッチ
設定器からの受信内容によらず,任意に行先種別表示器に対して表示指令をしようとするとき,表示内容に対する設定番号を入力するサムロータリスイッチです。
列車種別に対しては16進(0~F),行先に対しては10進2桁(00~99)のサムロータリスイッチを備えています。 - 起動スイッチ
設定器からの受信内容によらず,任意に行先種別表示器に対して表示指令をしようとするとき,表示設定スイッチに入力された設定番号を表示器に送出するスイッチです。 - 車内無表示スイッチ
車内案内表示器に対して表示の停止要求を行うスイッチです。車内無表示スイッチはすべての文章を非表示とします。スイッチは入状態のとき点灯します。 - 乗換削除スイッチ
車内案内表示器に対して表示の停止要求を行うスイッチです。乗換削除スイッチは乗換案内文章を非表示とします。
このスイッチが入状態のとき,表示文章は文例D1を表示せず,文例C1のみの表示とします。スイッチは入状態のとき点灯します。 - テスト表示スイッチ
機能確認用のテストパターンを表示させるスイッチです。本シミュレータでは動作しません。 - ソフト書換スイッチ
ソフト書換時に表示制御器の動作モードを変更するサムロータリスイッチです。本シミュレータではプルダウン選択と「反映」ボタンでソフトウェア変更を行うため,スイッチや接続端子は使用しません。 - 状態表示灯
表示制御器の動作状態を表示するLEDです。「カード」,「電源」,「システム故障」,「伝送」,「伝送異常」の5項目があります。
「カード」はメモリーカードの有無を示し,本シミュレータでは常時点灯します。
「電源」は表示制御器の電源状態を示し,本シミュレータでは常時点灯します。
「システム故障」は表示制御器の主機・副機間の健全性確認を示し,本シミュレータでは常時滅灯します。
「伝送」は設定器との通信状態を示し,設定器から設定済電文を受信しているとき点灯制御します。
「伝送異常」は設定器との通信に異常が発生した場合に点灯しますが,本シミュレータでは常時滅灯します。 - 対照表
行先種別表示器に対する設定番号の照合表です。表示制御器から単独指令する場合に使用します。
装置の仕様
- 行先種別表示自動制御機能
設定器から受信した運行パターン情報のうち,列車種別と終着駅情報を参照し,ソフトウェア上に対応する列車種別データと行先データが存在する場合,その設定番号を行先種別表示器に送信し,表示制
御を自動で行う機能です。 - 行先種別表示手動制御機能
起動スイッチが押下された場合,表示設定スイッチに入力された列車種別,行先の設定番号を行先種別表示器に送信し,表示制御する機能です。設定器からの運行パターン情報を受信している場合は自動制御を上書きします。 - 案内文章表示制御機能
設定器から受信した運行パターン情報から,ソフトウェア上に記録された表示タイミング,表示方法,表示文例等を参照し,案内文章を生成,車内案内表示器に対して案内文章の表示制御を行う機能です。本シミュレータにおいて,表示制御器の文章表示制御は以下の処理で行われます。 - 運転方向判定処理
設定器から受信した運行パターン情報のうち,始発駅と終着駅の組合せから列車の運転方向を判定します。判定は始発駅停車中に行います。設定器同様,途中駅で運転方向が変わる運行パターンは判定不能として棄却されます。また,ソフトウェアに規定していない駅の組合せの場合も判定不能として棄却されます。 - 停車駅判定処理
設定器から受信した運行パターン情報のうち,列車種別と自駅の組合せから次の停車駅と停車駅までの判定距離を算出します。判定は駅停車中に行い,2駅先までのデータを参照します。
ソフトウェアの判定データに当該の列車種別に関するデータが含まれていない場合や,停車駅が規定されていない区間を参照した場合は,停車駅判定不能として処理されます。
たとえば京成線押上方面から北総線日医大方面に直通する快速として運行しているとき,表示制御器は青砥停車時に快速停車駅を2駅先まで参照します。このとき,1駅先は高砂と規定されていますが,高砂から先の北総線区間に快速の停車駅が規定されていないため参照不能となり,停車駅判定は棄却されます。停車駅判定が棄却されると,車内案内表示器は非表示となります。2駅先まで参照可能な状態に復帰すると,車内案内表示器への表示制御が再開されます。
ソフトウェア一覧
作成中
表示文一覧
2010年10月版のソフトウェア以降,英表記駅名に駅番号を併記します。駅番号の併記は当該駅名に対する駅番号としますが,以下の例外処理を行います。
- 羽田空港国内線ターミナル(羽田空港第1・第2ターミナル)駅:
行先となるとき,駅番号はKK-16,17とします。ただし,羽田空港国際線ターミナル(羽田空港第3ターミナル)発車時はKK-17とします。 - 成田空港駅:
行先となるとき,駅番号はKS-41,42とします。乗換案内文章においても同様の扱いとします。
以下に文例の表示順序を示します。
- 駅停車中
文例E1→E2を繰り返し表示します。
※日本語自駅名が7文字以内のとき,E1は固定表示します。8文字以上のときはスクロール表示します。
※E2は文字数にかかわらずスクロール表示します。 - 駅発車時
文例A1→B1の順でスクロール表示します。
※経由情報が設定されているとき,文例A1はA4に置き換えます。
※表示設定色がアンバー以外の列車種別のときは以下のように置き換えます。
・赤色:A2もしくはA5
・緑色:A3もしくはA6
※次駅が終着駅の場合は文例B1をB2に置き換えます。
スクロール回数は以下の通りとします。
・都営線内・京浜急行線内:1回
・京成線内・北総線内:2回
※2010年7月以降のソフトウェアにおいて空港第2ビル・成田空港間は1回表示とします。
2回表示時の表示順は,A1→A1→B1→B1とします。
成田空港行での運転時,以下のタイミングで成田空港ターミナル案内を行います。
・空港第2ビルの2駅手前発車時:X1
・空港第2ビルの1駅手前発車時:X2 - 駅到着時
次駅判定地点以降,文例C1をスクロール表示します。
※次駅が終着駅の場合,文例C1をC2に置き換えます。
次駅が途中駅,かつ乗換路線の設定がある場合,文例C1→D1の順で表示します。
スクロール回数は以下の通りとします。
・2006年12月以前のソフトウェアでは2回
・2006年12月以降のソフトウェアでは開扉まで無限
以下の各駅では表示を行いません。
・京浜急行線内
・都営線内で乗換路線の設定がない駅