2019年7月27日公開・ 最終更新
このほど京成電鉄が2019年度に導入する新造通勤車両3100形(1次車)に関する雑多な情報を整理するページ。
このページに限ったことではないが,あくまで趣味者が鉄道事業者等と無関係に書き留めているものであり,正確性に配慮はしているものの一部に誤った記載が含まれている可能性がある。また,その正誤に限らず内容等に関して鉄道事業者等に問い合わせるなど非常識極まりない行動は厳に慎まれたい。
あらまし
京成電鉄における通勤車両は,優等列車から普通列車まで幅広い種別と,自社のみならず相互直通運転を実施する各社局においても使用できる広汎な性能を有することを前提として製作・運用されてきた。これまで最新形式であった3000形車両は,2002年度から2018年度までの長期間にわたって導入され,その総数は計14次48編成にも及んだ。その間,新型通勤車両への移行は幾度か検討されてきたようだが,ついに2019年度より新型通勤車両の導入に踏み切ることに落ち着いた格好である。
導入の方針は1次車においてアクセス線向けとされた。アクセス線向けには2010年度に3000形7次車6編成を導入しているところであるが(実際には2009年度中に4編成,2010年度に2編成の納入),経年9年という短期間で後継車の投入が決定した。その背景には,同社のイメージを牽引するアクセス線の存在感と昨今の空港輸送における状況を鑑みての判断があると推察される。
3100形は次年度以降も継続して導入される模様だが,これによってアクセス線では3000形7次車が余剰となることが予想される。アクセス線の所要車両数を考慮すると,継続して増備が続いた場合は数年内に京成本線仕様車も導入される可能性が視野に入る。同社の新たな通勤車両の標準として幅広いフィールドでの活躍が期待される車両である。
1次車として2019年度予算にて導入されるのは2編成16両で,このほど諸事情により第2編成となる3152編成が先行して落成した。当該編成は総合車両製作所に発注されており,7月24日から26日までの3日間の工程で宗吾車両基地に搬入された。搬入方法については,諸手続の都合から3600形4両編成による牽引回送の形をとり,各日営業時間帯に回送列車が運転された。
仕様概観
基本仕様
形式ならびに編成の組成
一号線直通車両規格において京成電鉄所属車両に割り当てられた3000代の車両番号に準拠し,当該形式の呼称は「3100形」としている。なお,3000形においてアクセス線仕様車両の車両番号を50番代に区分していたことを踏襲し,専らアクセス線用として導入される当該形式の1次車においても,50番代の車両番号を付与している。
車両番号の付番法則は,従前の京成電鉄所属車両のそれに従っており,車両番号は同社の伝統により北方を基準としている。また,3000形より採用した付番法則を踏襲し,第1編成を3151編成,第2編成を3152編成とし,編成番号に付記したハイフン以下に編成内の連結位置を示している。
当該形式は8両固定編成として製作された。その組成は3700形以来の組成を踏襲し,南方を基準として[M2cS-M1S-TS-M1′-M2-TN-M1N-M2cN]としている。
各車の自重・定員
当該形式の自重ならびに定員は,計画値として一号線直通車両規格に準拠するよう設計されている。各車銘板に示された自重・定員は以下の通り。
M2cS | M1S | TS | M1' | M2 | TN | M1N | M2cN | |
---|---|---|---|---|---|---|---|---|
自重(t) | 33.7 | 34.3 | 28.1 | 33.8 | 31.5 | 28.2 | 34.3 | 33.6 |
定員(人) | 122 | 133 | 133 | 133 | 133 | 133 | 133 | 122 |
各車種ともに3000形より自重は増大しているが,定員は同様である。
車体
構体
当該形式の構体には3000形より採用している日車ブロック方式を採用している。外板にはステンレスを使用しているが,先頭車運転台部分においては引き続き鋼製としている模様。また,外板の仕上は側面においてはBG仕上としており,おそらく3000形同様の#80BGであると推測される。
窓
側窓部のガラスには,側引扉をふくめ,3000形にて実績のあるUVカット仕様の強化ガラスが採用されている。
側引扉の窓押さえは3000形に準じた金具押さえ方式としている。なお,当該箇所においても窓ガラスは複層ガラスとなっていない。
意匠
アクセス線での運用を前提としたアクセス色としている。ただし,3000形7次車にて採用した青系の意匠とは異なり,アクセス線のイメージカラーであるオレンジをベースカラーとして再構成している。
公式より発表されている通り,車体側面吹寄には「成田山新勝寺」,「浅草雷門とスカイツリー」,「千葉県側からの富士山遠景」(以上は公式サイトの記載に倣った)の切り絵風イラストをアイコンとして配置している。
走行性能
最高速度・加減速度
性能等については,公式による数値の公表前であるものの,一号線直通車両規格に準じた性能を有していることは確実である。
集電装置
一号線直通車両としてシングルアーム式パンタグラフをM1系に搭載している。搭載数量はM1車で2基,M1’車で1基である。
3700形6次車から採用しているPT71系を引き続き採用しているが,銘板によると型式はPT7131-D(東洋)とサフィックスが改められている。
制御装置
当該形式の制御方式はIGBT-VVVFインバータ制御とされている。公式より言及されている通り,素子にはSiCを採用している。3000形以前と同様に制御装置はM1系に搭載されているのみである。
銘板によると型式はRG6045-A-M(東洋)で,装置1台あたりの質量は696kgである。3000形において採用されたRG681型式と比較すると約3分の2に抑えられており,2016年度より3003編成にて試用してきたRG6040型式とほぼ同等である。
仕様は3000形を踏襲し,1C4Mの2群構成とされている。乗務員室に艤装されるスイッチ盤にはM1・M2系各車のユニットカットスイッチが含まれており,3000形同様に1群単位での開放が可能な設計であることが確認できる。
なお,フィルタリアクトルはM1系各車に2基を搭載し,枕木方向に艤装している。VVVFインバータ装置こそ軽量化しているが,一方でフィルタリアクトルや遮蔽板等の質量増加の影響から,M1系各車の自重は結果として3000形のそれより増加している。
主電動機・駆動装置
詳細な性能等は公式による数値の公表を待つのみであるが,制御装置の素子変更に起因して,主電動機出力について従来の125kWから強化されている可能性が考えられる。
駆動装置については未確認。
制動装置
一号線直通車両として標準のMBSA方式を採用しており,各車海側床下に「KDK-18作用装置」を名乗る作用装置箱を有する。実走行前であるため,ブレーキシステムの詳細な仕様については明らかではないが,3000形を基本とした設計であると考えられる。
なお,マスコンハンドルのブレーキ段数については当該形式より7段刻みとなり,全体では力行5段,ニュートラル段,常用ブレーキ7段,非常ブレーキ段の14段となった。
台車
当該形式の台車は鋼板プレス溶接組立構造とし,軸箱支持方式はモノリンク式である。基本設計は3000形におけるFS564/FS064型式を踏襲しているが,ばね帽や横梁の設計に変化が見受けられ,台車枠全体として見れば溶接箇所が減っている。
これまで電動台車と付随台車の型式には番代区分があったものの,銘板によると当該形式の台車型式は,電動台車でFS583M,付随台車でFS583T(いずれも日鉄)としており,サフィックスのみで区分されるように改められている。
補助機器
空気圧縮機
空気圧縮機には3000形7次車より採用しているスクロール式を採用しており,M2c車山側床下に各1台を搭載している。ただし,装置外観が異なっていることから,これまで採用してきたMBU1600Y-4型式とは異なる新たな装置を採用している模様。
新装置の性能等は公式による数値の発表前であるため不明。
補助電源装置
補助電源装置はT車床下に各1台搭載されている。3000形と同様の静止型インバータ(SIV)で,搭載状況を鑑みると通常時の供給は4両毎と考えられる。
4号車床下には自動受給電装置が搭載されていることから,受給電制御についても3000形と同様であると考えられる。
なお,現在3700形の一部編成にて補助電源装置の更新が行われており,DC-DCコンバータを三菱製のSIVに変更している状況ではあるが,当該形式においては3000形で実績のある東芝製のSIVを採用している。銘板による型式はINV192-E-0であり,3000形とは別形式である。
蓄電池
蓄電池は3000形以前と同様にM2系各車に搭載されている。3000形の実績を鑑みれば,M2車ならびにM2cN車が常用,M2cS車が非常用として区分されているものと考えられる。
連結装置
連結器・緩衝器
先頭車運妻の連結器については,一号線直通車両の標準であるNCB-2形小型密着連結器を継続して採用している。連妻側の連結器については,過去の車両にて実績のある半永久棒連結器を採用している。
緩衝器については今回未確認であるが,すでにダブルアクション式が標準となっていることから,当該形式も同様であると考えられる。
電気連結器
電気連結器の接点数については,公式による発表を待つのみである。
保安装置
自動列車停止装置
自動列車停止装置(ATS)には,一号線直通車両の標準である1号型ATS機能を内包したC-ATSを採用している。車上装置はM2c車に搭載されており,機器箱は3000形7次車以来となる床下搭載となった。
列車無線装置
列車無線装置には,一号線直通車両の標準であるIR方式を採用している。送受信アンテナはM2c車運妻側屋根上に搭載され,無線制御装置については3000形以前と同様に乗務員室仕切板窓上に搭載されている。
なお,新たな列車無線方式として一号線直通車両規格に追加されたデジタルSR方式については,当該形式では準備工事として竣功している。
空調装置
冷房装置
冷房装置は3000形と同様にインバータ式ユニットクーラを採用し,各車屋根上に1台を搭載している。
空調制御器は3000形と同様にM2c車乗務員室のC側吹寄せに設備され,操作モードは3000形と同様に設定されている模様。
暖房装置
暖房装置は3000形と同様に座席吊下形のアルミカシーズ線を基本としており,乗務員室内にも3000形同様の暖房装置が設備されている。
また,乗務員室内には3000形同様にファンヒータ2基が設備されている。
換気装置
換気装置は3000形と同様に横流ファンを採用している。
客室設備
戸閉機
実運用前のため戸閉機の性能等については不明であるが,3000形を踏襲して単シリンダVベルト方式を採用しているものと考えられる。
ドアスイッチは一号線直通車両の標準として乗務員室側開扉横の吹寄せに設備されているが,規格の改訂により当該形式においては間接制御方式を採用している。間接制御方式の採用は同社所有の通勤車として初である。
また,既存通勤車両と同様に再開閉機能を有し,その操作スイッチは3000形と同様である。
さらに,北方M2cN車の乗務員室仕切のM側には,同社所有の通勤車として初めてドアカット扱いスイッチが搭載された。実運用前のため機能等の詳細は不明であるが,空港第2ビル駅において京成本線上り列車の後方2両がアクセス線ホームを支障している現状をふまえると,7・8号車(M1N・M2cN車)のドアカットが可能な戸閉回路設計となった可能性がある。
従来は座席下に設置していた非常用ドアコックについては,混雑時の使用を考慮してカモイ部に設置位置を改めている。このほか,カモイ部には千鳥配置にて防犯カメラを各車3台設けているほか,側引扉の開閉に応じて動作する開閉表示灯が設けられている。なお,防犯カメラのないカモイ部にはプラズマクラスター発生器(空気清浄機)を搭載している旨の表示がある。
当該形式の側引扉においては車内側の仕上が変更されており,化粧板が張られている。黄色の啓蒙ラインは同社通勤車両の標準である戸尻側のみ。
座席
同社所有の通勤車として標準的な長手方向の座席配置を採用しているが,全席がハイバック仕様とされている。このため,背ずりの上端は側窓の下端よりも高い位置にある。
すでに公式から発表されている通り,側引扉間の8人掛け座席は3-2-3で分割される構造であり,中央2人掛け部分は折り畳み可能な構造とすることで,空港利用者等の大型荷物置き場として使用可能な設計としている。
この折り畳み座席については鎖錠可能な設計としているようで,乗務員室内C側ベンチボード上に折り畳み位置での鎖錠スイッチが設備されている。下げ位置(座席状態)での鎖錠も可能とみられるが,今回観察した範囲にこの機能を持つスイッチは確認できなかった。
それまで先頭車のみ配置していたフリースペース(車椅子スペース)は各車に配置され,中間車においては優先席付近に配置されている。当該箇所においては,他箇所と床材の色を変えるなどカラースキーム全体を改めている。
また,袖仕切については従来の樹脂成形品からガラス嵌め込み方式に改めている。
照明装置
客室照明装置には3000形8次車の一部車両より試用したLED式を採用している。
行先種別表示器
行先種別表示器には,3000形と同様のセレクトカラー方式のLED表示器を採用している。とりわけ側面用表示器については,天地方向が48ドットと拡大されており,高解像度の大型表示器化による視認性の向上や提供する情報量の改善が期待される。
表示内容等については実運用前のため詳細は不明である。
車内案内表示器
車内案内表示器については,ワイドLCD表示器を全カモイに各2台設置している。画面サイズは3000形や他社において17インチが標準的であることから,当該形式もこれに倣ったものとみられる。
すでに公式から発表された内容によると,向かって左画面には移動円滑化で言及される次駅案内等の案内表示画面として,右画面には広告等の表示画面として運用される。
その他の客室設備
当該形式の車両仕切戸は全面ガラス張りとなっているほか,ガラス部には飛行機などのイラストが描かれている。
網棚については従来のパイプ方式からスリットを入れた板材に変更され,つり革については掴み部分を従来の丸型から三角形形状に改められている。
また,出入口付近の天井部にはプラズマクラスター発生器(空気清浄機)が設けられている。
その他の設備
放送装置・非常通報装置
放送装置については3000形と同様としている模様で,非常通報装置は対話式を採用している。
なお,3000形7次車以降で採用しているアクセス線向けの自動放送機能については,既存車両で実績のある自動放送変換器が当該形式の乗務員室内に確認できなかった。後述のモニタ装置に機能を統合されたものとみられる。
モニタ装置
各車両の状態監視を目的としたモニタ装置は当該形式においてもM2c車運転台コンソールに設置されている。
なお,行先・種別等の設定により停車駅予報ならびに行先種別表示器,車内案内表示器等の案内機器への指令を行ってきた設定器については,当該形式よりモニタ装置に統合された模様で,3700形以来採用されてきた設定器は乗務員室から排されている。
乗務員室内その他
運転台コンソールにはマスコンハンドルの右側に定速スイッチが確認でき,さらに14点表示灯には「定速」表示灯が含まれていることから,当該形式においては定速制御が可能となったものと考えられる。使用可能な速度や解除条件などについては実運用前のため不明。
計器下部で戸閉や不緩解等の表示を担ってきた表示灯は今回14点となり,これまでの一体型パネルから各灯が独立した方式に改められた。一方で,これまで現在位置のみ表示していたノッチ表示器は14段表示可能な照光式に変更された。
また,行路表置きは運転台コンソールならびにC側ベンチボード上に配置されている。前者は既存通勤車両と同様にLED照明つきで,かつ照度の調整機能を有している。置き台自体は大型化され,軸により左右に回転可能な設計となっている模様。さらに,後者の付近には乗務員の携帯するタブレット端末等の充電に使用するものとみられる電源コンセントが設置されている。
なお,計器類については従来どおりの配置とされ,空気圧力計は継続してブルドン管方式を採用した。空気圧力計の元空気圧力範囲(緑帯)は690~780[kPa],安全弁吹出し圧力は880[kPa]で3000形と同一である。
転落防止幌
当該形式の転落防止幌には3000形で実績のある板状の幌を採用しているが,車体側取付金具においては形状の見直しが図られている。
点検灯
一号線直通規格の見直しに伴い,従来床下に搭載してきた点検灯は省略された。
銘板等
車両側面に設置していた車両番号銘板については,当該形式ではカッティングシートによる表現となったため省略された。
連妻側の妻面には,従来の車両番号銘板と自重定員銘板が一体となった銘板,ならびに定期検査銘板等が配置されているが,こちらもフィルムへの印刷で表現されている。
また,3号車に連結される弱冷房車の表記は,すでに新京成車で採用されている意匠のものに変更された。