概要
1978年度の7000形導入に際して制作された北総最初の種別幕である。
7000形の行先種別表示器は当初,3500形で導入実績のある八幡製の接点式表示器YA-4650を採用しており,これに合わせた字幕として制作されている。
開業当時の北総線において,将来の優等列車の運転計画は存在していたものの,もっとも1期開業時点では夢のまた夢といったところで,ダイヤ上では普通列車か回送列車の区別があるのみ,旅客案内においては列車種別を示す必要はどこにもなかった。この状況は現在でも新京成線に見られるものだし,近傍では東武野田線も少し前までそうだったが,いずれの事例でも車両に列車種別を表示する装置は必ずしも必要ではない。後に登場する公団2000形は,こうした考えから種別表示器を持たず,行先表示器のみの設計で導入されることになるが,過剰設備とも映る種別表示器を持った7000形と,それを排した2000形の設計,どちらが最終的に正しい考え方だったかは,ここで論ずるべきでは無い。
さて,NT00の基本仕様はYA-4650向けの接点式字幕で,コマ数は11コマである。
当時の北総線に必要な種別表示は普通と回送,それに不定期で設定される試運転を加えた3種類であるが,このうち,回送と試運転の2種は当時行先側の字幕に収録されており,種別側に必要な表示といえば,消去法で普通の1種類だけだった。したがって,この字幕に収録されている内容は無地と普通のみということになる。
実際の配列を見てみると,最上部に黒無地の基準コマが入り,無印刷の無地2コマと普通が交互に3セット入っている。同じ表示だけを表示する使用環境では,紫外線に晒された当該のコマだけが劣化し,字幕の寿命を著しく短くしてしまう。それを避けるためか,普通を3コマにわたって収録しているというわけだ。普通同士の間に無地が入っている理由は定かではないが,当時のダイヤでは北初富~小室間に普通列車の間合いで定期回送列車が複数設定されており,表示を迅速に切り替えるのであれば,この配列は非常に合理的である。
というのも,YA-4650系の接点式表示器は内部検知回路の仕様上,字幕を逆方向に回転させるには,順方向で字幕を最下端まで回して,逆転回路にリレーを切り替えなければいけない。無地のコマは基準位置,つまり最上端に入っているが,このコマを出すためには一度最下端まで回転させ,再び最上端に字幕を送り…という冗長な動作を必要とするのだ。この動作を少しでも改善するには,逆転回路切替えのトリガーとなる
字幕の最下端付近に使用頻度の高い表示を集めることが有効である。普通と無地が3セット入っているというのは,まさしくこの考え方からであろう。