2024年11月ダイヤ改正の概要と考察

2024年11月23日施行予定の北総線ダイヤ改正については,10月22日付のプレスリリースにて概要が告知されていたところであるが,今般その詳細が公となったことから,ダイヤ改正における変更点について本稿に纏めるものである。

概要

本件ダイヤ改正は,2023年11月25日に施行されたNo.119改正ダイヤを変更するものである。北総線では,重要な事業基盤である千葉ニュータウン地域の高齢化や人口減少を抑制し,入居需要の喚起ひいては沿線人口の安定的な確保を図るべく,区間列車の新設や運転区間の延長などの需要喚起策が継続的に実施されてきた。本件ダイヤ改正においては,従前の方針を継承し,区間列車のさらなる増発による利便性の向上や,北総線列車における所属事業者別の車両走行キロ格差の改善が図られている。本件ダイヤ改正における概況を以下に紹介する。

車両走行キロ

今回のダイヤ改正における車両走行キロは,平日の北総線列車において313.6キロ増の42,515.2キロ,同じく土休日において60.8キロ増の34,294.4キロ,アクセス線列車は各日とも516.8キロ増の36,434.4キロとなる。したがって,北総線列車とアクセス線列車を合算した北総線区間における車両走行キロの総計は,平日において78,949.6キロ,土休日において70,728.8キロで,いずれも前回改正のNo.119ダイヤから微増している。

平日土休日
北総線列車営業列車42,049.642,176.034,051.234,051.2
回送列車152.0339.2182.4243.2
小計42,201.642,515.234,233.634,294.4
アクセス線列車営業列車35,659.235,917.635,400.835,659.2
回送列車258.4516.8516.8775.2
小計35,917.636,434.435,917.636,434.4
合計78,119.278,949.670,151.270,728.8

北総線列車における車両走行キロ増加の主な要因は,平日夜間に区間列車1本が増発されることによるものである。今回新たに設定される区間列車は新鎌ヶ谷・印西牧の原間の下り列車1本だが,当該列車の送り込みとして同区間に上り回送列車1本も新たに設定されるものと推察される。平日の北総線列車における313.6キロの増加分のうち252.8キロは,同区間15.8キロを8両編成で1往復する際の車両走行キロに相当している。また,車両基地の入出庫に伴い印西牧の原・印旛日本医大間に設定されている回送列車が車両運用の都合から各日1往復増加しており,同区間3.8キロを8両編成で往復する際の車両走行キロに相当する60.8キロも各日の車両走行キロに加わっている。

一方のアクセス線列車における車両走行キロの増加は,深夜時間帯において上りスカイライナー1本が増発されることに起因しているが,こちらも車両運用の都合からアクセス線経由の下り回送列車1本が新たに設定されているものと推察される。すなわち,増加する516.8キロとは京成高砂・印旛日本医大間32.3キロを8両編成で1往復した際の車両走行キロに等しい。

運転回数

運転回数の現改比較を下表に示す。今回のダイヤ改正における列車単位での運転回数は,総じて軽微な増減に留まっている。

平日土休日
上り普通82847775
特急5500
アクセス特急27272727
スカイライナー42434243
臨時ライナー1100
回送4667
合計161166152152
下り普通86877272
特急2200
アクセス特急27272727
スカイライナー41414141
回送2424
合計158161142144

北総線列車においては,各日の普通列車の運転回数が上下方向それぞれで微増または微減となる。これは,平日に新設される下り区間列車1本のほか,各日の印西牧の原・印旛日本医大間における区間列車の増減が運転回数に反映されたためである。後者による増減は,車両基地への入出庫に伴って印西牧の原を境に分割されていた2本の列車が車両運用の変更により全線通しの1本の列車となる,もしくはその逆によって発生するもので,実質的な運転回数は増減していない。したがって北総線列車の実質的な運転回数は平日下りの普通列車で1回増えたのみで,一方のアクセス線列車については上りスカイライナーの増発により各日上りのスカイライナーが1回の増となる。また,回送列車については,前述の新設列車や入出庫の都合から各日上下で2~1回の増となる。

新柴矢切北国
秋山
松飛
大町
東松新鎌西白
白井
小室
中央牧原医大新柴矢切北国
秋山
松飛
大町
東松新鎌西白
白井
小室
中央牧原医大

上り747477109124861148690747477109125861148690
下り778080109123861136327778080109126871146327


上り57576491106709770875757649110770977087
下り57646491107709762275764649110970976227

駅別の乗車機会については,区間列車の増発によって新鎌ヶ谷・千葉ニュータウン中央間の各駅で平日下りの乗車機会に増加が生じる。また,新鎌ヶ谷に停車するスカイライナーが増加することから,新鎌ヶ谷についてはスカイライナーによる乗車機会の増も加わり,最も大きく乗車機会が増加する平日下りでは3回の増を記録している。なお,今回のダイヤ改正で乗車機会の減少する駅はない。

下りアクセス線列車との接続体制

ダイヤ改正の度に増発や運転区間の延長を繰り返してきた区間列車が今回のダイヤ改正でもまた増える。新設される区間列車は平日夜間の下り最終アクセス特急列車に接続するもので,当該列車から新鎌ヶ谷・印西牧の原間のアクセス特急通過駅を利用する場合,到着時刻を最大8分早められる。

今回の区間列車新設によって,平日の下りアクセス特急列車は朝一番の1本を除く全列車が新鎌ヶ谷で普通列車に接続するようになる。下り方向の緩急接続は,日中については2012年10月のNo.116ダイヤ改正におけるダイヤパターンの見直しにより実現が図られていたが,一時は全てのアクセス特急列車が東松戸もしくは新鎌ヶ谷で緩急接続していた夜間については,夜間の下り普通列車における運転時隔が見直された2015年12月のNo.117ダイヤ改正以降,緩急接続のなくなる列車が発生していて,下り最終アクセス特急列車については2017年10月のNo.117-3ダイヤ修正で接続がなくなっていた。

緩急接続のなくなったアクセス特急列車に対しては,2019年10月のNo.117-5ダイヤ修正以降,区間列車を設けることで都心方面からの普通列車の運転時隔を保ちつつ接続列車の確保が図られるようになり,今回のダイヤ改正まで改善が重ねられてきた。今回のダイヤ改正による緩急接続の「復活」により,アクセス線開業以来続けられてきた運転時隔の均等化と下り新鎌ヶ谷場面での緩急接続の確保を両立させたダイヤ改善はほぼ完成の域に達する。

「夜は下りスカイライナーで座って新鎌ヶ谷まで」がついに実現

△「夜は下りスカイライナーで座って新鎌ヶ谷まで」がついに実現

一方で,今回のダイヤ改正では各日夜間の下りスカイライナー2本が新鎌ヶ谷に停車するようにもなる。2022年11月のNo.118-2ダイヤ修正で一部列車が新鎌ヶ谷に停車するようになったスカイライナーは,新鎌ヶ谷停車便が青砥にも停車する都合からか,京成本線経由のモーニングライナー・イブニングライナーの運転時間帯には新鎌ヶ谷停車便の設定が行われてこなかった。したがって,下りスカイライナーの通勤通学利用は平日朝上りの臨時ライナーのようには望めなかったが,今回の設定によって夜間下り方向の着席保証列車としても利用できるようになる。

平日夜間下りスカイライナーからの接続列車時刻表

△平日夜間下りスカイライナーからの接続列車時刻表

しかしながら,北総線列車のダイヤ構成は前述のようにアクセス特急列車との接続を重視しているため,昼夜を問わず基本的に下りスカイライナーと新鎌ヶ谷で接続する普通列車は設定されていない。臨時ライナーがそうだったように今回の下りスカイライナーも北総線利用者に対する着席保証列車のように宣伝されているところだが,平日に京成上野20時20分発の181号から乗継いで西白井・印旛日本医大間の各駅を利用する場合,青砥を後発する北総線直通列車を利用しても各駅の到着時刻は変わらず,京成上野19時39分発の179号も8分続行で上野線からの下りアクセス特急列車が設定されている状況で,着席保証による快適性はともかく速達性や利便性といった魅力が十分に活かせているとは言い切れない。空港利用者の輸送を第一義とする列車に相乗りしているのが実態ではあるが,今後はアクセス特急列車以外についても限られたリソースを活かして利便性を高め,沿線価値や魅力の向上を図っていく必要があるだろう。

車両運用の持ち方

車両所属事業者別の車両走行キロの内訳を下表に示す。今回のダイヤ改正では,車両運用の持替えや区間列車の増発によって北総線列車における事業者別の車両走行キロ比率に変化が生じている。

平日土休日
営業列車回送列車営業列車回送列車営業列車回送列車営業列車回送列車
北総線列車北総車17,680.060.819,499.2217.619,905.660.821,486.430.4
京成車5,624.060.85,502.460.83,931.260.81,772.830.4
都営車15,249.630.413,678.460.86,657.660.87,752.0121.6
京急車3,496.00.03,496.00.03,556.80.03,040.060.8
小計42,049.6152.042,176.0339.234,051.2182.434,051.2243.2
アクセス線列車ライナー21,705.6258.421,964.0516.821,447.2516.821,705.6775.2
京成車8,785.60.08,785.60.06,201.60.06,201.60.0
都営車5,168.00.05,168.00.03,359.20.03,359.20.0
京急車0.00.00.00.04,392.80.04,392.80.0
小計35,659.2258.435,917.6516.835,400.8516.835,659.2775.2
合計77,708.8410.478,093.6856.069,452.0699.269,710.41,018.4

今回のダイヤ改正では,北総所属車両の車両走行キロが各日ともに2,000キロ弱の大幅な増となる。北総線列車全体の車両走行キロは前述のように微増であり,すなわち北総所属車両の車両走行キロ増は車両運用の持替えによって生じている。具体的には,平日において東京都所属車両が▲1,571.2キロ,土休日において京成所属車両が▲2,158.4キロ,京浜急行所属車両が▲516.8キロとそれぞれ北総線列車の車両走行キロを減少させていて,これら減少分の列車が北総所属車両による運転に持替えられている。なお,土休日の京成所属車両については,1日9往復あった設定が朝晩のみの4往復に減少するものの,京成所属車両で運転される新鎌ヶ谷発着の区間列車1往復はダイヤ改正後も継続して設定されている。

土休日の北総線内でK台の北総線列車が並ぶ様は見られなくなる

△土休日の北総線内でK台の北総線列車が並ぶ様は見られなくなる

北総線列車とアクセス線列車をあわせた北総線区間全体における車両走行キロは,平日ではAE形(22,480.8キロ)>北総所属車両(19,716.8キロ)>東京都所属車両(18,907.2キロ),土休日ではAE形(22,480.8キロ)>北総所属車両(21,516.8キロ)>東京都所属車両(11,232.8キロ)の順となる。平日の北総所属車両が東京都所属車両よりも多く走行するのは,東京都所属車両によるアクセス線列車の運転が始まった2022年2月のNo.118ダイヤ改正以来である。

条件次第ではホームを埋めてしまうほどよく走っている東京都所属車両

△条件次第ではホームを埋めてしまうほどよく走っている東京都所属車両

車両走行キロについては,北総線列車だけで見てもこれまで平日の実に6割弱は他社局の車両で稼がれていて,すなわち北総線列車における北総所属車両の比率は42%に過ぎなかった。平日の通勤通学時間帯の運転本数を確保する上で他社局の車両を積極的に活用するのは当然のことではあるが,相互直通運転のスキームに鑑みれば不均衡な車両走行キロは課題のひとつでもあったようで,土休日には他社局の車両を朝晩のみの使用として日中は車両基地に留置し,その間は自社の車両を優先的に使用するように調整されてきた。今回のダイヤ改正における運用の持替えで平日の北総線列車に占める北総所属車両の比率は46%になり,従前からの調整に加えて課題の改善に作用するものと推察される。

北総車における車両運用

最後に,北総所属車両の車両運用について述べる。北総所属車両における北総線内の車両走行キロは各日で増加しているが,乗入各線を含めた全体でも同様の傾向にあり,平日で4,585.6キロの増,土休日で3,555.2キロの増となる。同時に運用される最大編成数は平日10編成,土休日9編成から増減なく,依然として13編成中3編成が予備に回る体制だが,朝晩の運用編成数が各日ともに増加していて,1日の大半を通じて10~8編成が稼働するようになる。

北総所属車両の運用概況(棒ダイヤ)

△北総所属車両の運用概況(棒ダイヤ)

夜間滞泊については,新たに京成高砂に1本の滞泊運用が設定されて計4本体制となる。前回改正までの京成所属車両の運用から持替えられたもので,北総線の開業以来初めて他社局線内で夜間滞泊する北総所属車両の運用が設定される。なお,北総所属車両が京成高砂泊となる代わりに車両基地には京成所属車両の滞泊が生じていて,こちらも車両基地の開設以来初めて京成所属車両が夜を明かす。

自社線に帰らず他所で寝る北総車のお泊り運用がついに始まる

△自社線に帰らず他所で寝る北総車のお泊り運用がついに始まる

個々の車両運用行路については,車両運用の持替えに伴い区間列車の運用方に変化が見られる。これまで区間列車を含む運用行路は,2019年10月のNo.117-5ダイヤ修正以前におけるもっぱら都心直通列車のみの運用行路を基本として,従前の入出庫前後に数往復の区間列車を追加した運用方が主であった。今回のダイヤ改正では都心直通列車の間合いに区間列車を設定する行路が増加していて,車両運用がより柔軟で効率的になっている。

また,平日の下り区間列車の増発に伴い,当該運用については送り込みを目的として新鎌ヶ谷・印西牧の原間運転の上り回送列車が設定されている。当該区間に北総線列車として上り定期回送列車が設定されるのはNo.117-5ダイヤ以来であり,コロナ禍で終車繰上げ要請がなされた2020年度末の変更ダイヤを除けば久しぶりに北総線列車の定期回送列車が印西牧の原・印旛日本医大間以外を走ることになる。