北総線における自動券売機の変遷

2012年5月9日公開・ 最終更新

概要

広報用パンフレット『「1979」駅務システム』より

△広報用パンフレット『「1979」駅務システム』より

北総Ⅰ期線北初富・小室間開業に際して1978年度に導入された。仕様要件は駅の無人化を前提として1977年に策定された「駅業務集中化方式」を原案とするもので,社内委員会「デザイン・ポリシー研究会」で意匠の検討がなされた。「入口系は緑」とする約束色の考え方から外観には緑色が採用されており,今日の北総線における自動券売機の配色の原点である。

この券売機には大きく分けて新京成線区間用と北総線区間用があり,このうち北総線区間用は運賃区別の単能機で,新京成線区間用は連絡範囲の運賃区を選択して購入できる多能機だった。各駅にはそれぞれ2台が設置され,券売機上部に掲出された運賃表とおおむね対応する配置とされた。券売機間にはインターホンが別に設けられたが,後の公団線用券売機からは券売機自体に機能が設けられるようになった。

このほか千円札からの両替機も券売機と同様の意匠で設けられたため,駅によっては出札所に8台もの券売機や両替機が並んでいた。いまもⅠ期線区間の出札所の広さにその名残を伝えている。なお,これらの機器を出口側へ5度傾けた鋸刃状に設置する案も検討されたが実現しなかった。

単能機化の狙い

自動券売機の導入方針については,先の駅業務集中化方式とあわせて複数の言及がなされている。

なかでも原案となった駅業務集中化方式では,単能機を活用して運賃改定時の運用面での効率化を図ろうとしていたことが示されている。

運賃改訂時は最高額または最低額の機械を予め設置し改訂当日不要になった低額または高額用の機械を撤去する。従って改訂前日は,機番の変更と区間別運賃一覧表(地図式)の書替えを行うのみでよい。

(北総開発鉄道(1977)「駅業務集中化方式(案)」)

また,当時の関係者による業界誌の記述としては以下のようなものがある。

主任技術者として北総開発鉄道の実現に携わった黒岩源雄氏は,単能機化の狙いを故障率と費用面の抑制であるとした上で,複数台設置による冗長化を図った旨を述べている。

機械には単能機と万能機があるが,前者は当然後者に比して構造簡単であり従って故障が少ない。しかも価格は半分である。よって,当社の場合は安価ですむ単能機を複数台設置して二重系化することとした。

(黒岩源雄(1979)「北総開発鉄道のシステム設計」,『交通技術』1979年5月号)

京成電鉄からの出向で駅務区長や運輸課長を歴任した滝田二郎氏は運輸課長時代の座談会で以下のように述べている。

開業前に,どのようにしたらお客さまは喜ぶか,私どもなりに考えたのち,当初単発を入れたのです,能率がいいだろうと。つまり多能機ですと,どこをセットしたら自分の行くところが買えるのかがわからないんですね。それで単発を入れて,つまり運賃区間ごとの機械をつくりました。

(滝田二郎ほか(1989)「座談会・新しい駅の姿を追い求めて」,『運転協会誌』1989年5月号)

つまり,自動券売機の単能機化は能率と費用面を考慮したものであり,無人化を前提として故障時の冗長化を図るべく2台設置としていたことが分かる。ところが開業後の実態は後述の通りであり,後に稼働率の低い北総線区間用の単能機は各区1台に削減された。このとき削減された単能機の一部は公団線開業に際して同線連絡用の券売機に転用された。

機能及び特長

印字は感熱ドット方式だったが,黎明期の技術であり文字はやや荒くドットが判別できた。1枚あたりの発券時間はカタログスペックで3.5秒であり,発売できるのは普通乗車券のみだった。なお,この当時の回数乗車券は西白井駅の定期券発売所で発売されるのみだったが,駅業務集中化方式による自動集改札に対応させるべく普通乗車券と同様にサイバネ規格に則った磁気エンコード済の券片(エドモンソン券)を発売する方式とされた。回数乗車券を一般的だった「もぎり」ではなく11枚の券片で発売したのは初めての取組みだったという。

この券売機では紙幣は使用できず,100円・50円・10円の硬貨のみ使用できた。硬貨は種類毎に設けられた投入口から投入し,その下部にある覗き窓から投入枚数を数えることができた。この機構は北総開発鉄道とメーカの日本信号が共同開発したもので,その経緯については北総開発鉄道の第2代社長である梶本保邦氏が以下のように述べている。

街のあちこちに罐入りジュース類がお金を入れると出てくる機械がありますね。自分で百円入れたつもりでも五十円しか入れていないかもしれません。出てこないとドンドン叩いて, この機械はおかしいぞといって、いざこざがあるようなことがありますね。これを何とか出来ないかということで、日本信号さんと私どもの間で共同して開発したものがあるのです。入れたお金が入れた本人に全部見えるのです。十円入れたか五十円入れたか百円入れたか、全部目の前に見えるのです。そういう機械はいま日本じゅうどこにもない。あるのは北総の駅だけなんです。

(梶本保邦(1980)「ニュータウン線としての北総開発鉄道の実態について(下)」,『汎交通』1980年11月号)

この硬貨投入部の機構は「きっぷ交換・精算機」の特許申請とあわせて1977年に実用新案の登録申請がなされたといい,黎明期の北総開発鉄道における意気込みを感じることができる。しかし,これ以降の券売機で同様の機構は採用されておらず,期待通りにはいかなかったようだ。ちなみに「きっぷ交換・精算機」は富士電機との共同開発であり,開業当初の自動定期券発行機は東洋電機製造が手掛けていた。

その他

いくつかの新たな試みを盛り込んで導入された自動券売機だったが,自動券売機自体はすでに都市圏の鉄道事業者で導入が進んでいたこともあり,当時はまだ珍しかった営業機器の使用方を旅客に周知するパンフレット『北総線について』には紹介されなかった。ところが,後述の通り使用方のわからない利用者も少なくなかったようで,後の公団線開業時においては自動券売機の使用方がパンフレットに記載されるようになった。

概要

広報用パンフレット『千葉ニュータウン中央駅自動出改札システムのご案内』より

△広報用パンフレット『千葉ニュータウン中央駅自動出改札システムのご案内』より

公団鉄道Ⅰ期線小室・千葉ニュータウン中央間の開業に際して1983年度に導入された公団線仕様の自動券売機である。

公団では,鉄道事業の実施に際して当初開業区間が小規模であることから,運営体制の合理化を目的に現場業務を北総開発鉄道に委託する方針をとった。こうした理由から保守・運用面を考慮して公団鉄道の設備方針は北総開発鉄道に揃えられ,すなわち駅業務においては営業機器の導入による積極的な機械化と省力化が図られた。

一方で仕様管理や設計等の管理業務は公団独自で実施していたため,北総開発鉄道と完全に同一設備にはならなかった。公団線の自動券売機は日本信号製の単能機を標準とした北総開発鉄道と異なり,東芝製の多能機が採用された。

機能及び特長

公団線の東芝製多能機では,普通乗車券のほか回数乗車券や入場券の購入が可能となった。これは技術発展により券売機の制御がマイコン制御化され,複数の券種を同一券売機で発売できるようになったためである。普通乗車券は自社線(公団線)のみならず北総線及び新京成線の連絡範囲にも口座が作られ,後の自動券売機と異なり自社線と連絡会社線の切替操作は不要だった。ただし,回数乗車券は自社線内の普通回数乗車券を発売するのみで,連絡会社線発着の回数乗車券は千葉ニュータウン中央駅の定期券発売所で発売された。公団鉄道の券売機であるため,公団線開業の前年1983年4月に発売された北総線の昼間割引回数乗車券「お買物回数券」は設定されていない。

使用可能な硬貨には,導入されてまもない500円硬貨の追加で10円・50円・100円・500円の4種類の硬貨が使えるようになった。さらに紙幣も千円札のみ使用できるようになり,あらかじめ硬貨への両替を要さなくなった。北総開発鉄道の券売機にあった硬貨の投入枚数を確認する機構は採用されず,一方で北総開発鉄道では外付けだったインターホンによる通話機能が内蔵された。

印字は感熱式だが,先の北総線の券売機よりも印字の解像度は高く,技術の進展を感じさせる。

その他

本機種の導入は千葉ニュータウン中央駅の3台のみで,北総開発鉄道との共同使用駅である小室駅には前述の台数削減で捻出された北総線内用の単能機が公団線用に改修されて使用された。

なお,北総線開業時には『北総線について』と題したパンフレットにより営業機器の利用方が周知されているが,公団線においても『千葉ニュータウン中央駅自動出改札システムのご案内』と題したパンフレットが作成され,旅客向けの周知がなされた。自動券売機に関する説明は『北総線について』では省略されたが,公団線のパンフレットでは上図のように図解を交えて詳細に記載された。

概要

北総Ⅰ期線開業時に導入した単能機の代替として1984年度から導入された。単能機の導入経緯は前述の通りであるが,当初想定していた無人駅化は監督官庁の了承が得られず最低1名の駅員配置で断念しており,稼働率の低い単能機を冗長化する意義が薄れたものと想定される。折しも北総開発鉄道の経営難が深刻化してきた頃であり,機器の維持管理にも苦労があったと推察する。先の滝田課長が当時の業界誌で述べた内容を以下に紹介する。

私どもも券売機をつけておったのですが,使いにくいという投書がございましてね。千葉ニュータウンの場合は,平均年齢が30代後半から40代ぐらいの人が圧倒的で,慣れは早いのですけれども,元からいらっしゃる住民の方には,最初だいぶこごとをいただきましたね,使い方がわからないと。(中略)

ところが,ふたをあけましたら,閑古鳥が鳴くようなかっこうで,機械は遊ぶわ,そのうちに劣化はするわ,結局,多能機を入れるというかっこうになっております。

(滝田二郎ほか(1989)「座談会・新しい駅の姿を追い求めて」,『運転協会誌』1989年5月号)

この多能機に関する資料はほとんど残っていないが,1984年度の都市交通年報において1985年3月に「新式多能型自動券売機」を各駅に1台導入した旨が記されており,滝田課長の言及する多能機への代替を指していると推察できる。本機種のメーカは他機種の例に準じて日本信号であると考えられ,1984年当時において同社製自動券売機の標準機種であったSX-3形が採用されたと想定できる。ところがSX-3形は口座数に限りがあるため,北総Ⅱ期線開業時にはSX-4形への取替を余儀なくされた模様だ。

概要

SX-4形回数券発売機と回数券非発売機

△SX-4形回数券発売機と回数券非発売機

北総Ⅱ期線京成高砂・新鎌ヶ谷間開業に際して1990年度に導入された。自社線に加え,連絡運輸先の京成線・都営地下鉄各線・京浜急行線・新京成線の各線連絡乗車券の出札に対応していた。

接客部の意匠は緑色の約束色を基本とした配色を踏襲しながらも,北総独自に割当てた路線ごとの約束色をボタンやパネルに取り入れた。路線ごとの色の割当ては,北総線が白,京成線がオレンジ,都営線が黄,京急線が青,新京成線が黄緑であり,駅掲出の路線図や運賃表にも同様の配色が使用された(ただし北総線は青色で,重複する京浜急行線は空色で表現された)。

機能及び特長

本機種は大きく分けて回数券発売機と非発売機の2種類があり,北総線各駅に各1台が導入された。回数券発売機では接客部の口座ボタン最下段が回数券専用の口座ボタンとされており,本機種では普通回数券のみ購入することができた。昼間割引回数券や土休日割引回数券には最末期まで非対応だったが,新鎌ヶ谷駅に設置されていた本機種のなかには新京成線の回数券口座が設定されたものもあった。

使用可能な貨幣は10円から500円までの硬貨4種と千円札紙幣のみで,後に新500円硬貨や新紙幣への対応は行われたが高額貨幣には対応しなかった。メーカの日本信号が1991年1月に発行した『日本信号技報』にはカード処理ユニットに対応している旨の記載がある(当時すでにプリペイドカードを導入していた他の事業者では使用していた)が,北総線においては本機種の導入当時にプリペイドカードを採用しておらず,後のパスネットシステム導入後も本機種はカード対応機に改修されなかった。パスネットシステムの導入後は回数券非発売機がSX-5ⅡN形で,パスモ導入以降は回数券発売機がMX-7形で順次代替され,最後に残った新鎌ヶ谷駅の新京成線回数券発売機が2009年度に代替されたことで淘汰された。

概要

初の傾斜型となったSX-5Ⅱ形

△初の傾斜型となったSX-5Ⅱ形

北総Ⅱ期線開業後の券売機は各駅SX-4形2台を標準として運用されてきたが,利用者の増加に伴い1996年度から増備された券売機が本機種である。本機種は増備用として少数の導入に留まり,矢切駅及び白井駅に各1台が設置されていた。

接客部のパネルには入口系の緑色と路線ごとに割当てられた各色の約束色が配色され,従来の北総線券売機を踏襲した意匠である。操作部は当時メーカが「スラントタイプ」と称した傾斜型で,貨幣投入口を従来機種よりも低くするとともに開口部を拡大した構造により操作性や利便性を向上させている。

機能及び特長

北総線における本機種は,メーカがF型と分類する「硬貨高額紙幣両用型」である。使用可能な紙幣には従来からの千円札に5千円札・1万円札の高額紙幣が加わり,北総線で初となる高額紙幣対応の自動券売機だった。回数券の対応券種は普通回数券のみであり,昼間割引回数券や土休日割引回数券には依然として非対応だった。

接客部の情報表示はSX-4形よりも大型化されたプラズマディスプレイと蛍光表示管ディスプレイの2ヶ所に増えた。従来まで電照式アクリルパネルで表示していた券売機上部の路線名表示はプラズマディスプレイに変更され,発売可能な券種や使用可能な金種に関する情報も併記されるようになった。投入金表示は貨幣投入部に隣接して設けられた下部の蛍光表示管ディスプレイとして独立した構造とされた。こうした機能や性能の拡充は本機種に使用されるマイコンの高性能化により実現したもので,従来までの8bit機から32bit機となった効果である。

本機種はSX-4形と同様にカード処理ユニットを持たず,パスネットシステム導入後は本機種のマイナーチェンジ機でカード対応機のSX-5ⅡN形が主力機種となった。MX-7形や玉突き転配されたSX-5ⅡN形での代替により2009年度で淘汰された。

概要

2000年代の北総線における主力券売機だったSX-5ⅡN形

△2000年代の北総線における主力券売機だったSX-5ⅡN形

2000年度のパスネットシステム導入に際しては,SX-5Ⅱ形のマイナーチェンジ機であるSX-5ⅡN形券売機が導入された。それまで東芝製券売機を独自に導入してきた公団線区間では印旛日本医大駅開業を機に本機種が導入され,北総・公団線全線における主力機種となった。

接客部は従来からの券売機を踏襲した配色であるが,パネルやディスプレイの表面にはノングレア処理により反射が抑制され印象を新たにした。

本機種については,券売機2台設置駅の新柴又,秋山,松飛台,大町,小室の各駅と同3台設置駅の矢切,白井では既設のSX-4形回数券非発売機を本機種で代替,北国分,東松戸,新鎌ヶ谷,西白井の各駅は既設SX-4形2台に本機種を新設して純増,公団線各駅は既設券売機をすべて本機種に代替といった導入がなされ,最大20台が運用された。機器番号は1から順に付与されていた。

機能及び特長

カード及び高額紙幣非対応のSX-5ⅡN形

△カード及び高額紙幣非対応のSX-5ⅡN形

本機種はSX-5Ⅱ形と同様に傾斜型の操作部を有する。それまで「もぎり」で発売されていた昼間割引回数券や土休日割引回数券の発売に初めて対応し,家族連れを想定した大人・小児の組合せ発売機能も付加されるなど,多様な利用形態に対応できるようになった。さらに,パスネットシステムの導入に際してカード処理ユニットが初めて実装され,プリペイドカードの新規発行や残高を使用した乗車券類の引換発券が可能となった。なお,本機種のうち千葉ニュータウン中央駅に設置されていた2台はカード処理ユニットが実装されておらず,千円札のみ対応の紙幣処理ユニットが実装されていた。この2台のうち1台は後に矢切駅へ移設されて同駅のSX-5Ⅱ形を代替した。

使用可能な貨幣はSX-5Ⅱ形と同様に5千円札・1万円札といった高額紙幣にも対応しており,Ⅱ期線中間駅の5台は2千円札も使用できた。SX-5Ⅱ形の設計を踏襲しているため釣札は受け入れた千円札及び5千円札を循環使用する方式で,2千円札を釣札として払出す機能は備わっていなかった。硬貨投入口はSX-5Ⅱ形よりも大型化されてテーパがつき,複数枚の硬貨を一括投入可能な構造となった。

接客部上部のプラズマディスプレイはSX-5Ⅱ形と異なる表示方が採用された。SX-5Ⅱ形では蛍光表示管ディスプレイだった投入金表示部は7セグメントのLED表示に改められ,使用可能な金種は硬貨も緑色のバックライトで電照するようになった(SX-5Ⅱ形は紙幣のみ赤色バックライトで電照する)。

乗車券の磁気エンコードは高保磁のF2F(FM)方式を基本としていたが,新京成線の連絡乗車券は最末期まで低保磁のNRZ-1方式だった。新京成線では,北総の管理する新鎌ヶ谷駅連絡改札を除く全改札機が2013年度末をもってNRZ-1方式に非対応となったため,本機種の最末期には新京成線の連絡乗車券を発売制限して運用された。本機種で新京成線の連絡乗車券がF2F方式化されなかったのは,同年度末で本機種の淘汰が予定されていたためと推察される。また,成田スカイアクセス線成田湯川・成田空港間を着駅とする口座は設定されていなかった。2007年度のMX-7形導入開始を機に代替が開始され,最後まで残存していた12台が消費税率改定に伴う運賃変更を控えた2014年3月にMX-8形への代替及び台数削減で淘汰された。

概要

MX-7形の定期券発売機は青色,定期券非発売機は緑色に区別された

△MX-7形の定期券発売機は青色,定期券非発売機は緑色に区別された

交通系ICカード乗車券「パスモ」のサービス開始に際して2007年度より導入された。2007年3月のパスモ導入に際しては交通系ICカードに対応した営業機器が必要となったが,北総線においては自動券売機の導入がサービス開始に間に合わず,暫定対策として日本信号製のチャージ機CH-7iが各駅に導入された。遅れて2007年度から順次導入されたのが本機種であり,SX-5形に代わる主力機種として最大で23台が運用された。

本機種は定期券発売機能を有した「マルチ券売機」であることから,パネルの配色は従来の約束色であった緑系から青系に変更されて区別が図られた。後年には定期券発売機能を制限した本機種が増備されているが,この定期券非発売機についてはパネルの配色が従来と同じ緑色とされた。また,初期画面におけるボタンの背景色には従来から使用されてきた路線ごとの約束色が継承されている。

機器番号は35から順に付与され,非発売機は10を加えて40番代で区別されていた。ただし,後年に非発売機に改修された券売機は機器番号を変更されず30番代のままだった。なお,印旛日本医大駅には成田スカイアクセス線用として京成電鉄所有のMX-7形1台が設置・運用されていた。

機能及び特長

定期券発売機能の機能制限を解除された非発売機

△定期券発売機能の機能制限を解除された非発売機

普通乗車券及び各種回数券の発売に加え,「マルチ券売機」として新たに定期券の発売機能を備えた。定期券は通勤定期及び通学定期の発売に対応し,定期券発売所の混雑緩和に大きく貢献した。ただし,日割り発売の学期定期券や自治体割引定期券等には非対応であり,通学定期についても新規発売は最繁忙期となる年度初を除いて機能制限されていたことから,通学定期利用者等の一部旅客は本機種の導入後も引続き定期券発売所を利用する必要があった。なお,後に導入された緑色の本機種は定期券発売機能を機能制限したものであり,定期券発売の最繁忙期には機能制限を解除して運用されることもあった。

さらに,交通系ICカードに対応した処理ユニットを搭載し,新規発売やカード残高のチャージ,記名式への変更や定期券情報の付加を伴うリライト,カード残高を使用した乗車券類の引換発券,履歴表示といった交通系ICカード関係の各種機能が利用可能となった。一方で,本機種の導入時点でパスネットシステムはサービス終了に向けた対応が始まっており,従来の磁気カード処理ユニットについては当初より非搭載とされた。このほか,後述の発券方式の変更により乗車券類の購入に際して領収書の発行が可能となった。

使用可能な貨幣はSX-5ⅡN形と同様であるが,硬貨投入口が大型化されて同時投入枚数は6枚に倍増した。さらに,カード処理ユニットを使用したクレジットカード決済にも対応し,定期券取扱時に活用された。なお,クレジットカード決済は京成カードに限定され,他ブランドは使用制限されていた。発券ユニットは本機種から57.5mm幅ロールを使用した「横切り」発券となり,エドモンソン券に加えて大型券も発券できるようになった。ただし,本機種において大型券の乗車券類は発売されず,大型券サイズの発券は履歴印字や領収書発行に限定された。

MX-7形導入当初の初期画面

△MX-7形導入当初の初期画面

口座ボタン追加改修後の初期画面

△口座ボタン追加改修後の初期画面


本機種の制御はマンマシン制御とユニット制御でそれぞれの特性に応じたOSを搭載する方式とされ,このうちマンマシン制御にはWindowsNTが採用されたことから,ハードとしてはPC/AT互換機となった。接客部のインタフェースは,組合せ発券ボタンを除き従来のボタンスイッチから15型の液晶ディスプレイによるタッチパネルに変更され,柔軟な操作が可能となった。導入当初は初期画面で路線ボタンを選択をしないと口座選択画面に遷移しない画面構成だったが,2013年度末のソフト改修で北総線内と成田湯川・成田空港間の成田スカイアクセス線,羽田空港2駅の各口座ボタンが初期画面に追加された。なお,2014年4月の運賃改定で運賃表の路線表示色が変更されたことから,先のソフト改修時に初期画面における路線ボタンの背景色も同様に変更された。

2013年度にはSX-5ⅡN形の代替を目的として後継機となるMX-8形が導入され,この際に青色の本機種は定期券発売機能を制限,接客部のパネルは緑色に取替えられた。以降は定期券非発売機として運用されていたが,2018年度よりMX-8形マイナーチェンジ機で代替が開始され,2019年度をもって淘汰された。

概要

MX-8形初期型(左)・MX-8形改良型(中),MX-7形定期券非発売機(右)

△MX-8形初期型(左)・MX-8形改良型(中),MX-7形定期券非発売機(右)

SX-5ⅡN形の代替に際して2013年度より導入された機種で,MX-7形に次ぐマルチ券売機である。2013年度に矢切,新鎌ヶ谷,西白井,白井を除く10駅に各1台が配置された後,2018年度よりMX-7形代替用としてマイナーチェンジ機の改良型が導入された。2019年度までに全線の券売機が本機種で統一され,単一機種では歴代最多となる31台が運用されている。

外観の意匠はMX-7形に類似し,液晶ディスプレイによるタッチ操作が可能な接客部を有する。配色もMX-7形を踏襲しており,定期券発売機が青色,非発売機が緑色のパネルである。接客部の画面インタフェースは2013年度末のソフト改修後におけるMX-7形と同様である。一方で投入口や放出口周辺の電照表示の追加,テンキーや硬貨投入口の構造見直しにより,細部の意匠や構造についてはMX-7形と異なっている。

機器番号は2013年度導入の初期型では01から,2018年度以降のマイナーチェンジ機ではMX-7形同様の35から付与されている。定期券非発売機は40番代に区別されているが,改修された券売機は従来の機器番号のままである。また,印旛日本医大駅には京成電鉄所有の成田スカイアクセス線用券売機としてMX-8形1台が設置されている。

機能及び特長

定期券非発売機に改修された初期型MX-8形

△定期券非発売機に改修された初期型MX-8形

本機種で発売可能な券種についてはMX-7形と同様である。使用可能な金種もMX-7形と同様だが,硬貨処理ユニットが循環式となり運用面の改善が図られている。クレジットカード決済については当初MX-7形と同様に京成カードのみにブランドを限定していたが,2019年度末のソフト改修により2020年4月から各ブランドでの決済が可能となった。

MX-7形からは操作性の改善が図られていて,テンキーはキートップが大型化して中央配置となった。2013年度導入の初期型ではすべてのキートップが黄色だが,2018年度以降に導入された改良型ではキートップがさらに大型化され,キーによって色を変えた意匠とされた。

上部パネルには監視カメラ及び覗き見防止用のミラーが設けられ,運用トラブル防止が図られた。上部パネル左上の発売中と準備中を判別するインジケータは,MX-7形ではLED点灯色での表現だったが,本機種では文字による電照表示に変更された。電照表示は本機種の導入当初「発売中」の日本語単独表記で,2018年度の改良型の導入に際して下部に英語表記が追加された。この際に上部パネルの案内表示が日英2ヶ国語から中国語,韓国語を加えた4ヶ国語となり,初期型についても定期券非発売機への改修にあわせてパネルの意匠が統一された。

2013年度導入の初期型と2018年度以降に導入された改良型では前述のように細部に様々な差異があり,2019年度の消費税変更に伴うソフト改修までは履歴印字の書式も異なっていた。2013年度に導入された初期型10台は当初いずれも定期券発売機として運用されていたが,2019年度までにすべて定期券非発売機に改修された。定期券非発売機は初期型,改良型ともに2019年度末のソフト改修で定期券発売機能が削除されたため,以降は発売制限の有無によらず定期券を発売できなくなった。

概要

新鎌ヶ谷駅に設置されていたV7形券売機

△新鎌ヶ谷駅に設置されていたV7形券売機

新鎌ヶ谷駅における新京成線定期券の発売を目的として2013年4月に設置された。V7形は当時の新京成電鉄で使用されていた標準的なマルチ券売機で,新鎌ヶ谷駅における駅業務受託の一環として同社所有機が設置・運用されたものである。本機種は北総線各駅で唯一のオムロン製券売機だった。

かつての新京成線新鎌ヶ谷駅は北総線新鎌ヶ谷駅と駅施設を一部共用した仮駅であり,1992年7月の駅開業時から北総が駅業務を受託して営業していた。新鎌ヶ谷駅における新京成線の券売機は北総所有のSX-4形やSX-5ⅡN形,MX-7形を共用しており,新京成電鉄がマルチ券売機を各駅に導入して定期券の購入を可能とした後も新鎌ヶ谷駅では新京成線の定期券が購入できないといった課題を残していた。その解決策が本機種の設置であり,薬園台駅3号機を移設することで2013年4月より運用が開始された。

前述の経緯から本機種は新京成線の定期券専用機として位置づけられ,マルチ券売機ではあるものの普通乗車券や回数券といった他の乗車券類の発売は制限されていた。一方で他社線券売機ながらも交通系ICカードのチャージは可能で,通常時は交通系ICカード関係と定期券関係の機能のみ使用可能だった。新京成線各駅では券売機を使用して障がい者割引乗車券を発売しており,導入を機に新鎌ヶ谷駅においても本機種で障がい者割引乗車券を発売するようになった。障がい者割引乗車券の発売に際して普通乗車券等の発売制限を一時的に解除する取扱いをしていたことから,その後何らかの理由で発売制限が復位されなかった場合は本機種で新京成線の普通乗車券が購入できた。

連続立体交差事業による新京成線新鎌ヶ谷駅新駅舎の供用開始をもって北総の駅業務受託は終了し,2019年6月15日に本機種の運用を終了した。

新鎌ヶ谷駅で運用されるライナー券売機

△新鎌ヶ谷駅で運用されるライナー券売機

スカイライナーの新鎌ヶ谷駅停車化に伴い2022年11月のダイヤ改正に際して導入された。本機種は京成電鉄で使用されている標準的なライナー券売機で,北総線各駅における唯一の高見沢サイバネティックス製券売機である。

印旛日本医大駅設置の成田スカイアクセス線券売機と同じく本機種は京成電鉄の所有機で,北総鉄道が管理等を受託している。発売可能な券種はライナー券に限定され,乗車券の発売や交通系ICカードのチャージ等には使用できない。

本機種はラチ内コンコースの終点方側ホーム階段横に設置され,上りホーム側に91号機,下りホーム側に92号機の計2台が設置・運用されている。上りホーム側は上り列車,下りホーム側は下り列車に対するライナー券の発売に用いられる。なお,上りホーム側の券売機は2012年3月まで新京成線との乗継精算機(64号機,65号機)が置かれていた場所で,電源や通信線の配線は以前の乗継精算機で使用していたものを再利用している。本機種自体も京成線内の他駅で使用していたものを移設しており,91号機が2019年3月製,92号機が2020年1月製である。

主要参考文献