葛飾納涼花火大会実行委員会を主催とする第60回葛飾納涼花火大会が7月28日に江戸川河川敷で開催され,会場付近に新柴又駅を擁する北総鉄道においては,7月10日付プレスリリースの通り新たな施策として臨時列車4本が運転された。当該花火大会開催に伴う臨時列車の設定について,本稿ではその運転方を紹介する。
臨時列車の概要
葛飾納涼花火大会については,従前から近隣の他鉄道駅を利用したアクセスが一般的である一方で,会場付近に位置していながら周辺道路を含めて比較的空いていた新柴又駅を利用する来場者も一定数あり,これまでも社員を動員した混雑対策がとられてきたところである。近年においては新柴又駅を利用する来場者が増加傾向にあることから,当年度も昨年度に引続き混雑緩和を目的とした臨時列車が設定された。

△花火大会当日の臨時ダイヤ
臨時列車は花火大会終了後の帰宅混雑時間帯にあたる新柴又場面20~21時台に上下各2本が設定された。それぞれの運転方について以下に述べる。
第1936N列車~第2036N列車(図中の①)
花火大会終了直後に上り方向の臨時列車として設定されたもので,印西牧の原・矢切間を回送運転,矢切・京成高砂間を普通列車として営業運転した。

△矢切で仕立替という非常に珍しい運転方となった第1936N~第2036N
臨時列車の運転方は,新鎌ヶ谷発印西牧の原行の第1939N列車(印西牧の原19時46分着)の印西牧の原入庫を取止め,臨時の回送矢切行として第1936N列車に運行替の上,第1936N列車の矢切到着場面で同駅始発に延長された第2036N列車(矢切20時45分発)に仕立替し,京成高砂から先は所定の第2036N列車として運転するものとされた。すなわち,第2036N列車は所定京成高砂始発の京成線列車を矢切始発に延長して運転されたもので,第1936N列車は第2036N列車に充当する車両の送り込みを目的として運転されたものだった。

△矢切始発の上り営業列車であることを示す第2036Nの設定器
第2036N列車の延長運転は,上り普通列車の運転間隔が開いていた花火大会終了直後の時間帯における列車増発であると同時に,当日の車両運用を調整する側面も有している。所定では第2036N列車に使用される車両は第1937N列車から京成高砂折返しで充当されるが,花火大会当日の臨時ダイヤでは第1937N列車の車両は後述の第2035N列車に充当されることから,第2036N列車に充当する車両を京成高砂に送り込む必要があったためである。
なお,矢切始発での上り営業列車の運転は,輸送障害等の例外を除けば過去に前例のない設定であった。
第2035N列車(図中の②)
同一時間帯に京成高砂および新鎌ヶ谷で折返す北総所属車両運用の折返し間合いを活用して,京成高砂・新鎌ヶ谷間に下り方向の普通列車を運転したものである。活用されたのは,羽田空港発京成高砂行の第1937N列車(京成高砂20時44分着)から京成高砂発羽田空港行の第2036N列車(京成高砂20時52分発)の京成高砂折返しと,印西牧の原発新鎌ヶ谷行の第2034N列車(新鎌ヶ谷20時42分着)から新鎌ヶ谷発印西牧の原行の第2135N列車(新鎌ヶ谷21時16分発)の新鎌ヶ谷折返しの両間合いである。

△昨年同様に新鎌ヶ谷で仕立替して運転された第2035N~第2135N
臨時列車は,羽田空港発京成高砂行の第1937N列車(京成高砂20時44分着)の京成高砂入庫を取止め,京成高砂到着場面で臨時の普通新鎌ヶ谷行として第2035N列車に仕立替し,さらに新鎌ヶ谷到着場面で所定印西牧の原行の第2135N列車に再び仕立替する運転方とされた。昨年度は上り方向にも同様の臨時列車が設定されていたが,当年度は第1937N列車の所定折返し列車が京成高砂20時52分発に10分程度繰上げられたため,上り臨時列車は時間を繰下げて後述の第2176KN列車に変更された。
当年度の臨時列車4本のうち第2035N列車だけが昨年度と同じ運転方で運転された。したがって,2度の仕立替や矢切での下り特急列車の待避は昨年度と同様の取扱いである。
第2176KN列車・第2193K列車(図中の③・④)
花火大会終了から約1時間経過した新柴又場面21時30分頃に上下各1本が設定されたもので,上り第2176KN列車は新鎌ヶ谷・京成高砂間,下り第2193K列車は京成高砂・印西牧の原間の普通列車として運転された。

△77Kの所定入庫箇所を活かした北総車代走の裏で所定の車を車両基地に送り込む第2193K
上り方向の臨時列車は,印西牧の原発新鎌ヶ谷行の第2034N列車(新鎌ヶ谷20時42分着)を新鎌ヶ谷到着場面で同駅始発(新鎌ヶ谷21時03分発)に延長された第2176K列車に仕立替し,京成高砂から先は所定の第2176K列車(京成高砂発21時34分発)として運転する取扱いだった。下り方向の臨時列車は,京成上野発京成高砂行の第2093列車(京成高砂21時22分着)を京成高砂到着場面で同駅始発の第2193K列車に仕立替し,臨時の普通印西牧の原行として運転後,車両基地に入庫する運転方とされた。

△昨年度との相違点
両列車は所定ダイヤにおける京成高砂での第2093列車から第2176K列車への折返しと,第2176K列車を含む車両運用が車両基地に入庫する機会があることを利用して設定された。第2176K列車から生じた北総所属車両による代走は,所定車両を第2193K列車で車両基地に送り込んだ上で,第2476K列車で代走車両を車両基地に入庫させることで所定の状態に復している。昨年度の臨時列車は京成高砂および新鎌ヶ谷での折返し間合いを活用して設定されたが,昨年のダイヤ改正で車両運用が変更され,昨年度の運転時刻では京成高砂での折返し間合いに入る上り臨時列車が設定できなくなった。そこで上り臨時列車を約20分繰下げ,当日深夜に車両基地入庫となる第2093列車~第2176K列車の折返し間合いを前述のように活用したと考えられる。

△昨年度から運転時刻が繰り下がり新鎌ヶ谷始発になった第2176KN
第2176KN列車の設定された時間帯は第2036N列車と同様に運転間隔の空いている時間帯で,こちらも混雑緩和策としての増発と捉えることができる。運転時刻は昨年度に設定されていた上り臨時列車から約20分繰下げられていて,代わりに昨年度の時間帯(20時50分頃~21時10分頃)は再び運転間隔が空くことになるため,定期列車の第2024N列車を矢切・京成高砂間で約2分繰下げることで運転間隔の補正が行われた。一方で第2193K列車は定期列車の直後を走るもので,混雑緩和の意図によるものとは考え難く,車両運用の都合により運転されたと考えるのが妥当である。

△こちらも非常に珍しい(懐かしい)新鎌ヶ谷始発の上り第2176KNの設定器
効果と意図
昨年度に続き2年目の運転となった当年度の臨時列車は,花火大会終了後の混雑緩和といった設定目的がいっそう強調された運転方となった。一部列車が花火大会開催時間中に運転されていた昨年度に対して,当年度の臨時列車は4本すべてが花火大会終了後1時間以内に運転されるようになり,花火大会来場者の帰宅移動に効果が発揮された。

△花火大会終了後の新柴又駅時刻表
花火大会来場者の帰宅移動のピークと想定される20時30分~21時30分頃は,新柴又場面では下り方向こそ15分間隔を基本として普通列車が運転されているが,上り方向は通勤通学移動と逆方向であることに加えてアクセス線列車の本数が多いため,普通列車の本数はわずか3本,運転間隔は約20分と空いている。花火大会のような催事輸送は東京都心からの来場者も多く,下り方向のみならず上り方向における運転本数の確保,ひいては運転間隔の短縮が課題であったと考えられる。

△プレスリリースには案内がなかったが,第2024Nは矢切・京成高砂間で時刻変更された
当年度においては臨時列車の運転のみならず,定期列車の第2024N列車が矢切・京成高砂間の運転時刻を約2分繰下げるなどの対策がとられ,新柴又場面20時30分~21時30分の上り普通列車は5本,運転間隔は約12分に詰められた。プレスリリースに記載のなかった第2024N列車の時刻変更は,所定時刻では6・18分間隔となるところを9・15分間隔とするもので,昨年度に設定されていた上り臨時列車が繰下げられたことで空いた時間帯に対する運転間隔の補正として機能した。もちろん,下り方向の普通列車も4本から6本に運転本数が増やされ,上下両方向で混雑緩和が図られた。
また,上り向きのITV設備がない新鎌ヶ谷4番線発の上り列車や,スマートデバイスによる放送案内が非対応の京成高砂行上り列車の設定といった,昨年度の臨時列車に見られた運転と設備の不整合については,当年度は設備が対応している運転方に改められ,昨年度の課題に対する改善が伺えた。
とはいえ,要員や車両運用の都合から臨時列車のリソースには上限があり,課題は完全に解消されたわけではない。ダイヤ改正の度に運転時刻や車両運用が変更されることで,臨時列車を設定する環境が維持されにくいことも課題であろう。今後も限られたリソースの中で改善が重ねられ,催事輸送における施策として定着することを期待したい。