2025年12月13日施行予定の北総線ダイヤ改正については,11月12日付のプレスリリースにて概要が告知されていたところであるが,今般その詳細が公となったことから,ダイヤ改正における変更点について本稿に纏めるものである。
概要
本件ダイヤ改正は,2024年11月23日に施行されたNo.120改正ダイヤを変更するものである。北総線では,重要な事業基盤である千葉ニュータウン地域の高齢化や人口減少を抑制し,入居需要の喚起ひいては沿線人口の安定的な確保を図るべく,区間列車の新設や運転区間の延長などの需要喚起策が継続的に実施されてきた。本件ダイヤ改正においては,従前の方針を継承し,区間列車のさらなる増発や,区間列車の運転区間延長による都心直通列車への変更といった利便性の向上に資する改善が図られている。本件ダイヤ改正における概況を以下に紹介する。
車両走行キロ
今回のダイヤ改正における車両走行キロは下表の通りである。北総線列車においては,平日は112.0キロ増の42,627.2キロ,土休日は496.0キロ増の34,790.4キロで,アクセス線列車においては,平日は258.4キロ増の36,692.8キロ,土休日は516.8キロ増の36,951.2キロとなる。北総線列車とアクセス線列車を合算した北総線区間における車両走行キロの総計は,平日において79,320.0キロ,土休日において71,741.6キロで,いずれも前回改正のNo.120ダイヤから増加している。
| 平日 | 土休日 | ||||
| 現 | 改 | 現 | 改 | ||
| 北総線列車 | 営業列車 | 42,176.0 | 42,227.2 | 34,051.2 | 34,364.8 |
| 回送列車 | 339.2 | 400.0 | 243.2 | 425.6 | |
| 小計 | 42,515.2 | 42,627.2 | 34,294.4 | 34,790.4 | |
| アクセス線列車 | 営業列車 | 35,917.6 | 36,176.0 | 35,659.2 | 35,917.6 |
| 回送列車 | 516.8 | 516.8 | 775.2 | 1,033.6 | |
| 小計 | 36,434.4 | 36,692.8 | 36,434.4 | 36,951.2 | |
| 合計 | 78,949.6 | 79,320.0 | 70,728.8 | 71,741.6 | |
北総線列車における車両走行キロ増加の主な要因は,区間列車の増発および運転区間延長によるものである。平日の北総線列車における112.0キロの増加分のうち51.2キロは,9時台から10時台にかけて運転されていた矢切折返しの区間列車1往復が運転区間を延長して都心直通列車となることで生じるもので,延長区間にあたる京成高砂・矢切間3.2キロを8両編成で1往復する際の車両走行キロに相当している。同様に土休日の北総線列車における496.0キロの増加分のうち313.6キロは,新鎌ヶ谷・印旛日本医大間19.6キロを8両編成で1往復する際の車両走行キロに相当していて,19時台における新鎌ヶ谷・印西牧の原間(往路は印旛日本医大発)での区間列車1往復の新設,および15時台に運転されていた印西牧の原止の下り区間列車1本の印旛日本医大行への延長を内訳としている。このほか,印西牧の原・印旛日本医大間で運転される回送列車が平日1往復,土休日3往復の増となるものと推察される。
一方のアクセス線列車における車両走行キロの増加は,成田空港場面20時台上りのスカイライナー1本が増発されることに起因していて,さらに土休日においては,前回改正と同様に車両運用の都合からアクセス線経由の下り回送列車1本についても新設されるものと推察される。各日の営業列車および土休日の回送列車における増加分にあたる258.4キロとは,京成高砂・印旛日本医大間32.3キロを8両編成で運転する際の車両走行キロに等しい。
運転回数
列車種別ごとの運転回数の現改比較を下表に示す。今回のダイヤ改正における列車単位での運転回数は,総じて軽微な増減に留まっている。
| 平日 | 土休日 | ||||
| 現 | 改 | 現 | 改 | ||
| 上り | 普通 | 84 | 85 | 75 | 74 |
| 特急 | 5 | 5 | 0 | 0 | |
| アクセス特急 | 27 | 27 | 27 | 27 | |
| スカイライナー | 43 | 44 | 43 | 44 | |
| 臨時ライナー | 1 | 1 | 0 | 0 | |
| 回送 | 6 | 7 | 7 | 10 | |
| 合計 | 166 | 169 | 152 | 155 | |
| 下り | 普通 | 87 | 87 | 72 | 72 |
| 特急 | 2 | 2 | 0 | 0 | |
| アクセス特急 | 27 | 27 | 27 | 27 | |
| スカイライナー | 41 | 41 | 41 | 41 | |
| 回送 | 4 | 5 | 4 | 8 | |
| 合計 | 161 | 162 | 144 | 148 | |
営業列車の運転回数は,上り普通列車が平日で1回の増,土休日で▲1回の減となるほか,上りスカイライナーが各日1回の増となる。普通列車の回数増減は,土休日における新鎌ヶ谷折返しの区間列車1往復の新設,および各日の印西牧の原・印旛日本医大間における区間列車の増減によるものである。後者による増減は,車両基地への入出庫に伴って印西牧の原を境に分割されていた2本の列車が車両運用の変更により全線通しの1本の列車となる,もしくはその逆によって発生するものが大半である。このうち土休日上りにおいては,印西牧の原・印旛日本医大間における区間列車の運転回数が▲2回の減となるため,新設される新鎌ヶ谷折返しの区間列車による運転回数の増加分が打ち消されている。また,回送列車については,前述のスカイライナー増発や入出庫の都合から各日上下で4~1回の増となる。
| 現 | 改 | ||||||||||||||||||
| 新柴 | 矢切 | 北国 秋山 松飛 大町 | 東松 | 新鎌 | 西白 白井 小室 | 中央 | 牧原 | 医大 | 新柴 | 矢切 | 北国 秋山 松飛 大町 | 東松 | 新鎌 | 西白 白井 小室 | 中央 | 牧原 | 医大 | ||
| 平 日 | 上り | 74 | 74 | 77 | 109 | 125 | 86 | 114 | 86 | 90 | 75 | 75 | 77 | 109 | 125 | 86 | 114 | 86 | 90 |
| 下り | 77 | 80 | 80 | 109 | 126 | 87 | 114 | 63 | 27 | 78 | 80 | 80 | 109 | 126 | 87 | 114 | 63 | 27 | |
| 土 休 日 | 上り | 57 | 57 | 64 | 91 | 107 | 70 | 97 | 70 | 87 | 57 | 57 | 64 | 91 | 107 | 71 | 98 | 71 | 88 |
| 下り | 57 | 64 | 64 | 91 | 109 | 70 | 97 | 62 | 27 | 57 | 64 | 64 | 91 | 110 | 71 | 98 | 63 | 27 | |
駅別の乗車機会については,区間列車の増発および運転区間延長によって,平日の新柴又,矢切と,土休日の新鎌ヶ谷・印旛日本医大間の各駅で1回の増となる。なお,今回増発されるスカイライナーは新鎌ヶ谷通過便であることから,アクセス線列車による各駅の乗車機会への影響はない。
対都心アクセスの改善
これまでもダイヤ改正の目玉施策として位置づけられてきた列車の増発が新たな局面を迎える。運転間隔の均等化やアクセス特急列車との緩急接続を目的とした新鎌ヶ谷折返しの設定に始まり,矢切への運転区間延長によって増発効果を北総Ⅱ期線沿線にも拡大してきた区間列車が,北総線列車の完成形である都心直通列車に昇華され始める。
今回のダイヤ改正で新たに都心直通列車となるのは,平日朝に設定されていた矢切折返しの区間列車1往復である。自社線内の調整で完結する区間列車と,他社局との調整を要する都心直通列車では,設定のハードルが大きく異なることは想像に難くない。しかしながら,北総線沿線の移動需要は今も対東京都心が主であることはパーソントリップ調査等により明らかで,すなわち都心直通列車には大きな価値がある。わずか1往復ではあるが,今回の運転区間延長は北総線沿線の対東京都心アクセスを少なからず改善するもので,一連の施策が次の段階に進む上での大きな一歩と言えよう。

△土休日夜間下りスカイライナーからの接続列車時刻表
一方の土休日では,前回改正で新鎌ヶ谷に停車するようになった夜間の下りスカイライナー2本が新鎌ヶ谷で普通列車と接続するようになる。夜間下りのスカイライナーは,空港輸送の最速達列車という本来の役割に加えて,新鎌ヶ谷への停車によって北総線方面における着席保証列車としても機能してきた。ところが,新鎌ヶ谷で接続する列車がなかったことから,西白井・印旛日本医大間の利用者にとっては利便を十分に享受できない状況だった。
今回のダイヤ改正では,平日こそ改善は叶わなかったものの,土休日は2本ともにアクセス特急列車および普通列車との接続が改善していて,東京都心から千葉ニュータウン方面への利便性が向上する。なかでもスカイライナー181号は,青砥場面で10分以上も先行する普通列車やアクセス特急列車に接続でき,速達列車としての価値を高めている。しかし,夜間帯における速達かつ着席保証列車としての価値は特に平日の通勤時間帯に求められるものであり,今回の改善が平日にも波及して,スカイライナーの新鎌ヶ谷停車による価値が最大化されることを願いたいものである。
新鎌ヶ谷停車のスカイライナーに関連したところでは,今回のダイヤ改正から日中時間帯における普通列車の待避駅が一部で変更される。変更の対象となるのは新鎌ヶ谷停車のスカイライナーに対する待避で,上下方向ともに矢切待避となる。これは遅延対策として新鎌ヶ谷を含む各駅でのスカイライナーの停車時分を延長するためと想定される。北総線列車の矢切待避は,2010年7月のアクセス線開業に伴うNo.115ダイヤ改正では日中時間帯にも多く見られたが,新鎌ヶ谷での緩急接続を図った2012年10月のNo.116ダイヤ改正以降は朝晩などの一部列車に限られるようになっていた。
車両運用の持ち方
車両所属事業者別の車両走行キロの内訳を下表に示す。今回のダイヤ改正では,後述する運転系統の見直しや,これにより車両運用のあり方が変更されたことで,事業者別の車両走行キロ比率にも変化が生じている。
| 平日 | 土休日 | ||||||||
| 現 | 改 | 現 | 改 | ||||||
| 営業列車 | 回送列車 | 営業列車 | 回送列車 | 営業列車 | 回送列車 | 営業列車 | 回送列車 | ||
| 北総線列車 | 北総車 | 19,499.2 | 217.6 | 18,688.0 | 248.0 | 21,486.4 | 30.4 | 18,609.6 | 91.2 |
| 京成車 | 5,502.4 | 60.8 | 6,080.0 | 60.8 | 1,772.8 | 30.4 | 4,590.4 | 121.6 | |
| 都営車 | 13,678.4 | 60.8 | 12,960.0 | 60.8 | 7,752.0 | 121.6 | 10,161.6 | 182.4 | |
| 京急車 | 3,496.0 | 0.0 | 4,499.2 | 30.4 | 3,040.0 | 60.8 | 1,003.2 | 30.4 | |
| 小計 | 42,176.0 | 339.2 | 42,227.2 | 400.0 | 34,051.2 | 243.2 | 34,364.8 | 425.6 | |
| アクセス線列車 | ライナー | 21,964.0 | 516.8 | 22,222.4 | 516.8 | 21,705.6 | 775.2 | 21,964.0 | 1,033.6 |
| 京成車 | 8,785.6 | 0.0 | 7,493.6 | 0.0 | 6,201.6 | 0.0 | 8,785.6 | 0.0 | |
| 都営車 | 5,168.0 | 0.0 | 6,460.0 | 0.0 | 3,359.2 | 0.0 | 2,584.0 | 0.0 | |
| 京急車 | 0.0 | 0.0 | 0.0 | 0.0 | 4,392.8 | 0.0 | 2,584.0 | 0.0 | |
| 小計 | 35,917.6 | 516.8 | 36,176.0 | 516.8 | 35,659.2 | 775.2 | 35,917.6 | 1,033.6 | |
| 合計 | 78,093.6 | 856.0 | 78,403.2 | 916.8 | 69,710.4 | 1,018.4 | 70,282.4 | 1,459.2 | |
北総線列車については,とりわけ土休日の事業者別の車両走行キロが大きく変動している。北総所属車両の車両走行キロは平日,土休日ともに減少していて,土休日では▲2,861.0キロと大幅な減となる。京浜急行所属車両も土休日は同様に大幅な減となり,改正後は京成高砂・印旛日本医大間わずか2往復に相当する1,033.6キロしか走らなくなる。北総線列車全体の車両走行キロは前述のように各日で増加していることから,すなわち北総所属車両や京浜急行所属車両の車両走行キロ減は車両運用の持替えによって生じている。具体的には,土休日の京成所属車両が2,908.8キロ,東京都所属車両が2,470.4キロの増となっていて,これらが北総所属車両および京浜急行所属車両の減少分を持ち替えている。なお,京成所属車両については,土休日夜間に運転されていた新鎌ヶ谷折返しの区間列車1往復が東京都所属車両に持ち替えとなるため,区間列車の設定がなくなる。
アクセス線列車については,各日のアクセス特急列車で車両運用の持ち替えが生じている。平日は京成所属車両から東京都所属車両に,土休日は逆に東京都所属車両および京浜急行所属車両から京成所属車両に,各日2.5往復相当の1,292.0キロが持ち替えられる。土休日の京浜急行所属車両はアクセス線列車でも車両走行キロを減らしていて,北総線区間における乗入れの規模は北総線列車2往復,アクセス線列車5往復の計7往復にまで縮小する。
北総線列車とアクセス線列車をあわせた北総線区間全体における車両走行キロは,平日ではAE形(22,739.2キロ)>東京都所属車両(19,480.8キロ)>北総所属車両(18,936.0キロ)>京成所属車両(13,634.4キロ)>京浜急行所属車両(4,529.6キロ),土休日ではAE形(22,997.6キロ)>北総所属車両(18,700.8キロ)>京成所属車両(13,497.6キロ)>東京都所属車両(12,928.0キロ)>京浜急行所属車両(3,617.6キロ)の順となる。北総所属車両の車両走行キロが減少したことで,平日は北総所属車両より東京都所属車両の方が再び多く走行するようになる。また,土休日については,京成所属車両が東京都所属車両を上回るまでに車両走行キロを大きく伸ばしている。
北総線列車の車両走行キロについては,これまでも社局間の不均衡を是正しようとする取組みが続けられてきたところである。具体的には,平日の通勤通学時間帯の運転本数を確保する上で他社局の車両の使用比率が高くなることから,土休日には他社局の車両を朝晩のみの使用として日中は車両基地に留置し,その間は自社の車両を優先的に使用するように調整されてきた。ところが,改正後の土休日は自社の車両の走行キロが大きく減り,その分だけ他社局の車両が走るようになる。土休日の北総線列車に占める北総所属車両の比率は,前回改正のNo.120ダイヤでは63%もあったが,改正後は54%まで低下する。会社間の様々な制約から一筋縄にはいかない課題であることは想像に難くないが,今回の比率が適当でないならば,早い段階で揺り戻しがあると想定される。
運転系統の見直し
さて,北総線列車の車両走行キロ比率に大きな影響を与えている要因が,今回のダイヤ改正における運転系統の見直しである。日中時間帯の運転系統は,長年にわたり羽田空港・印旛日本医大間が基本とされてきた。羽田空港発着での運用サイクルは3時間40分で一巡し,所要編成数は11本だった。ところが今回のダイヤ改正では,京成本線経由の西馬込・成田空港間の運転系統と発着駅が入れ替えられ,西馬込・印旛日本医大間での運転となる。この場合,運用サイクルが一巡するまでの時間は3時間20分に,所要編成数は10本に減少する。しかしながら,一部の列車においては西馬込での折返しの際,西馬込・泉岳寺間の往復を経るものもあり,結果的に北総線列車における北総所属車両の車両走行キロ抑制,ひいては北総線列車の車両走行キロ比率に影響を与える要因となっている。なお,日中の車両運用が西馬込・印旛日本医大間での単純な往復とならなかった背景には,都営浅草線内における増発が少なからず影響しているものと想定されるところである。
今回のダイヤ改正における運転系統の見直しは,あくまで日中時間帯に限って実施される。朝晩のダイヤは従前と大きく変わらず,むしろ大きく変わることのないように車両運用を調整するなどして帳尻を合わせている。また,日中時間帯においても,北総線普通列車が京成高砂場面で上下方向ともに約4分間の時間調整を挟むようになるなど,運転系統の見直しが北総線や他社線のダイヤに与える影響を最小限に抑える工夫が随所に見て取れる。
京成高砂場面での時間調整の設定は,とりわけ土休日の午後を中心として空港輸送に起因する列車遅延が常態化し,アクセス線列車のみならず北総線列車にも影響が生じている現状に鑑みれば,北総線列車の運行の弾力性が確保され,遅延回復に寄与することが期待できる。さらに,現状では北総線列車が遅延を回復できずに京浜急行線に乗り入れることも常態化しているが,運転系統の見直しによって京成本線からの列車が直通することになれば,京浜急行線の空港輸送における定時運行の確保にも良い影響が生じる可能性も考えられる。
一方で,北総線列車の西馬込発着化は北総線沿線から品川や羽田空港に直通する列車の減少を意味する。対東京都心や対羽田空港の移動において,北総線沿線の利用者の多くが速達性に優れたアクセス特急列車を優先的に選択していることは明らかであり,改正後もアクセス特急列車は羽田空港発着である以上,今回のダイヤ改正で北総線列車が品川や羽田空港に直通しなくなることによる影響はかつてほど大きくないと想定される。しかしながら,北総線沿線の空港利用者にとって乗換不要な直通列車の減少のみならず,交通広告の営業戦略など他方面に負の影響が生じる可能性も考えられないわけではない。むしろ,こうした側面を踏まえると北総鉄道自らが北総線列車の運転系統見直しを積極的に推し進めるとは思えず,昨今の他社線の事情に半ば巻き込まれる格好で今回のダイヤ改正に至ったのだろう。
今回のダイヤ改正での運転系統の見直しの詳細を北総鉄道はプレスリリースで積極的に言及しなかった。1991年3月のNo.101ダイヤ改正による京急川崎・千葉ニュータウン中央間を基本とした都心直通運転の開始から35年弱にわたって続いてきた京浜急行線方面の発着を基本とする北総線列車の運転系統は,功罪両面を孕んだ見直しの時を迎える。
北総車における車両運用
最後に,北総所属車両の車両運用について述べる。北総線内における北総所属車両の車両走行キロは各日で減少しているが,乗入各線を含めた全体でも同様の傾向にあり,平日で▲4,732.8キロの減,土休日で▲4,862.4キロの減となる。同時に運用される最大編成数は平日10編成,土休日9編成から増減なく,依然として13編成中3編成が予備に回る体制だが,平日ダイヤでは終日運用に代わって,いわゆる「2回目」のある車両運用が増加している。

△北総所属車両の運用概況(棒ダイヤ)
個々の車両運用行路については,前述の運転系統の見直しに伴って日中時間帯の運用方が変更され,西馬込・印旛日本医大間の往復が主となる。西馬込での折返しに際しては,都営浅草線内の区間列車が挟まる場合もある。西馬込折返し場面に挿入される区間列車は,西馬込・泉岳寺間を最大2往復する運転方が主だが,土休日においては西馬込・押上間の往復も設定されている。都営浅草線北行列車における北総所属車両の押上行は,2011年3月末の節電要請による土休日ダイヤを基本とした平日臨時ダイヤで設定されて以来の運転である。
京浜急行線内では,日中時間帯に北総所属車両を見かける機会が大幅に減少する。これまで羽田空港・印旛日本医大間で設定されてきた北総線系統の列車は,京浜急行線内において日中時間帯は特急,その他の時間帯は急行または快特として運転されていた。今回のダイヤ改正における運転系統の見直しは,すなわち京浜急行線内における北総所属車両による特急運転の激減を意味していて,平日ダイヤではわずか1往復相当にまで減っている。
北総線系統の列車が羽田空港発着から西馬込発着に移り変わる時間帯においては,北総所属車両が変則的な運用方となる場面もある。なかでも平日ダイヤでは,羽田空港・京成高砂間を快特運転し,その後13時から19時にかけて京成高砂に留置される車両運用が設定されていて,北総所属車両による京成線内快特列車が見られるようになる。その一方で朝晩の運用方は多少の持ち替えに留められていて,前回改正からの大きな変更はない。
なお,今回のダイヤ改正では,土休日ダイヤの運行番号が出庫順と一致しておらず,31Nの後は37N,35N,33Nの順で出庫する。運行番号と出庫順に不一致が生じるのは2012年10月施行のNo.116ダイヤ改正で平日37Nと39Nの逆転が生じて以来であり,車両運用の設定としては非常に珍しい。これに限らず,公式ウェブサイトでの改正後時刻表の公表予定時期が例年よりも2~1週間ほど遅い「2025年12月中旬」と告知されたことなども含めて,今回のダイヤ改正は調整に相当の労力と時間を要したものと推察される。新たなダイヤが沿線価値をさらに高めていくことを願うばかりである。




