2018.03.25
北総鉄道においては,2000年度から2007年度まで共通乗車カードシステム「パスネット」による乗車カード「ほくそうパッスルカード」を発売していた。本稿は「ほくそうパッスルカード」の概要ならびに各年度の発売状況について紹介するものである。
ほくそうパッスルカードの概要
パスネットとほくそうパッスルカード
ひところまで鉄道のプリペイドカードといえば,自動券売機で乗車券を買い直すものだった。1990年代に自動改札機が普及するようになると,改札機を通すだけでカード代金から運賃を差し引くことが可能となった。ストアードフェア(SF)システムの始まりである。
最初期は事業者ごとに独立したシステムであったが,次第にシステムの共通利用・統合が進むようになった。こうして「共通乗車カード」が普及していったが,そのなかで2000年に首都圏の民鉄を中心として誕生したのが共通乗車カードシステム「パスネット」であった。北総開発鉄道は当初からパスネット協議会に加盟し,2000年10月のパスネットサービス開始当初の17社局のひとつとなった。
ところでパスネットという名称は,あくまで共通乗車カードシステムの総称にすぎなかった。鉄道事業者は,パスネットというシステム名称とは別にカード名称を定めていた。パスネット以前からSFシステムを導入していた鉄道事業者は従来からの名称を踏襲することが一般的であったが,北総開発鉄道にとっては初めてのSFシステムであったことから,パスネット導入に際して「ほくそうパッスルカード」というカード名称が新たに制定された。
ほくそうパッスルカードの発売体制
パスネットシステムの導入を前に,北総線各駅にはSFカード対応の自動券売機(日本信号SX-5)が設置された。自動改札機は従来からの機種(日本信号GX-5ほか)を使用したが,同時に複数枚のカード投入ができない機種だったことからカード残額不足時には精算を必要とした。また,自動精算機の設置が一部の駅に限られるなど,パスネット導入当初は営業機器の運用に課題が残った。のちに2枚投入対応の自動改札機や自動精算機が整備されていき,これらの課題は次第に解決していった。
購入箇所は,前述の対応券売機もしくは駅窓口が主となった。一部のカードは,北総の参加する即売会や北総本社での通信販売を利用した購入も可能だった。自動券売機での購入の場合,券売機ブース上部に装填している図柄の案内が出ていることが一般的だった。自動券売機での発売額は1,000円,3,000円,5,000円の3段階で,後述する汎用券のみ発売された。なお汎用券には,営業機器によって発売箇所や発売額が印字されたが,北総本社で発売処理したカードの箇所名は「北総」と印字されていた。
カードにはいくつかの種類があった。最も一般的だったのは,発売時にカードの額面設定が可能な汎用券である。公式には1,000円,3,000円,5,000円の3段階のみとされていたが,これとは別に500円という額面でも発売処理が可能で,一部には500円で発売されたカードも存在している。もうひとつは駅窓口と即売会のみで発売された額面固定券で,額面はすべて1,000円固定だった。額面固定券のなかには沿線企業等からの注文で制作される特注券も存在した。特注券の注文方法を時刻表等で一般に広く告知した他社と異なり,北総開発鉄道(北総鉄道)では特注券は広告しなかったため,その存在はほとんど明らかになっていない。
ほくそうパッスルカードは北総線の営業施策のひとつとして位置づけられた。カードは数百枚単位で制作可能だったようだが,北総では数千~数万枚を1ロットとして制作することが一般的で,とりわけ社名変更までの3年間には1ロットごとに図柄を変えることも珍しくなかった。ロット番号はカードの裏面の券番号から確認することができ,汎用券などの種別も券番号に記されていた。ロット番号は券番号の上3桁で概ね判別可能で,上1桁の英字は種別を示している。汎用券はG,額面固定券はB(サービス導入時の17社局合同セットのみA),そして特注券にはEが記されている。ちなみに,2002年度から2004年度にかけて発売された「沿線自治体シリーズ」は北総線沿線の8市区村(葛飾区,松戸市,市川市,鎌ケ谷市,白井市,船橋市,印西市,本埜村,印旛村)との共同で制作されたもので,自治体職員の出張用に購入してもらうなどの営業が行われたという逸話が業界誌に掲載されている。
ほくそうパッスルカードのあゆみ
ほくそうパッスルカードは,前述のようにロットごとに異なる絵柄で制作されることが多かった。新たな絵柄を発売する際には,古くは季刊誌「ほくそう」,公式ウェブサイトの開設後は公式サイト上で告知されることがあり(汎用柄などは告知されないこともあった),発売開始日と発行枚数を知ることができた。
2000年度
導入初年度にあたる2000年度には,汎用券2種類と記念券1種類の存在が確認できている。G02は開業からまだ日の浅かった印旛日本医大駅を背景にしたものである。この絵柄はGシリーズであるが,パスネット開始時の事業者合同セットにも額面固定タイプとして収録されており,これはA01として別ロットである。
年度末には都心直通運転開始10周年の記念券も発行された。パスネット導入前にもカードを使った記念券は存在し,北総では1998年度に印西牧の原駅「関東の駅百選」選定記念でカードの記念券を出している。このときは東京都交通局の乗車カード「Tカード」500円券だったが,さらに昔にはⅡ期線開業直前のウォークラリー参加者向けにテレホンカード(50度数)を配ったこともある。
2001年度
2001年度からはいわゆる「シリーズもの」が展開されるようになった。この年の冬からスタートした「四季シリーズ」は汎用券だが,G05~G08の春夏秋冬をまとめた台紙つきセットでも発売された。また,年初には「七福神シリーズ」が柴又七福神でスタートした。
9月のダイヤ改正による特急運転開始に際してはG04「特急デビュー」が汎用券として発売され,ダイヤ改正の目玉を宣伝する媒体として活用された。なお,G04発売の半年ほど前には,東急東横線の特急運転開始(2001年3月)に際して「東横特急デビュー」と題したパスネットカードが東急から発売されていて,G04はこの類例と見ることもできる。
2002年度
会社創立から30年を迎えた2002年度には,創立30周年を記念して開催された児童絵画コンクールの優秀作品4点を絵柄に採用した「児童絵画シリーズ」G10~G13や,同じく創立30周年記念でヘッドマークを付けて走った7000形3編成を車両基地で並べた絵柄のB02が発売された。
日韓ワールドカップに際して訪日外国人の利用を想定した英語版パスネットが5月に発売されたことも特徴的な出来事であった。英語版パスネットは,事業者ごとに1,000円(水色)・3,000円(オレンジ)・5,000円(緑)から券種を選んで発行するものだったが,北総ではB01B025のロットで1,000円券(水色)のみが発売された。B01というロットは2000年度の都心直通運転10周年でも存在しているが,英語版パスネットとは別ロット扱いである。北総発行分のパスネットカードで発行番号の頭3桁からロットが判定できないのはこの2種だけと思われる。なお,都心直通運転10周年記念券のロットはB01B013である。
前年度から続いた「四季シリーズ」は当年度に春,夏,秋が発売されて完結した。カードのロット番号は冬のG05から続番を与えられた。秋のG08は当初の図柄にスペルミスがあり,早々に図柄の修正が図られた経緯がある。また,沿線自治体と共同制作した「沿線自治体シリーズ」が10月の印旛村からスタートした。当時沿線で開催されていたゴルフトーナメントを増収に活かそうと「サントリーオープンシリーズ」もこの年に始まった。
さらに,鉄道の日にあわせた記念券もこの年から発売されるようになった。鉄道の日前後に開催されるイベント等で鉄道ファン向けに発売して増収を狙ったもので,当年度は北総・公団・京成・都交・京急の各社局所属車両が車両基地で勢揃いした絵柄の「乗入車両大集合!」が発売された。この絵柄は2002年当時,7050形の検査期限延長のために京成から一時的に3400形を借り入れていたことで実現したものである。また,年度末には「ほくそう春まつり」にあわせた記念券も発売され,これも鉄道の日記念と同様に春まつりにあわせて毎年発売のシリーズとして定着した。
2003年度
前年度に引き続いて「沿線自治体シリーズ」が発売されたほか,「四季シリーズ」は電車ではなく沿線の名所を1枚に集めた図柄としてリニューアルされた。当年度の「四季シリーズ」は年度初にG20が発売されただけでなく,年度末にも図柄を変えたG31が発売された。
秋に発売されたG25はG02以来のオリジナル汎用柄で,9100形・7300形・9000形・7000形を車両基地に並べた図柄である。G24・サントリーオープン発売終了からG26・市川市発売開始までのつなぎとして発売されたが,この年に発売された鉄道の日記念カレンダーにも500円券のG25が封入されていた。
G28は中山競馬場のクリスマスイルミネーションを図柄としたカードで,続くG29は北総線内でも撮影が行われたことで話題となった映画「ゴジラ・モスラ・メカゴジラ 東京SOS」の公開記念タイアップだった。
鉄道の日記念はB06「北総7000シリーズ」で,7000形・7300形・7800形の各車両を車両基地で撮影したもの。当年度は鉄道ファン向けの記念券が多く発売され,年末には12月23日限りで廃車となった7050形引退記念のB07「さよなら7050形」,年度末には公団Ⅰ期線開業20周年記念でB08「小室⇔千葉ニュータウン中央間開業20周年記念」の発売が続いた。春まつり記念は春まつりヘッドマーク電車の7000形を図柄としたB09「北総線開業25周年」が発売された。
2004年度
2002年度より続いた「沿線自治体シリーズ」は,当年度に4月のG32・松戸市,6月のG33・葛飾区が発売され,社名変更前に全自治体の図柄が揃った。
7月の北総鉄道への社名変更に際しては,B10「さよなら北総開発鉄道」,B11「はじめまして北総鉄道」がセットで発売された。B10とB11はそれぞれ右下の社名欄が車両の社名銘板になっている図柄で,裏面の発行事業者名もB10は北総開発鉄道株式会社,B11は北総鉄道株式会社とされている。
社名変更後には汎用券のリニューアルも行われ,2003年度から使われるようになったデフォルメ電車キャラクターと路線図を組合せたG34が発売された。また,パスネット各社局共通の絵柄として存在した各社局の車両をあしらった共通汎用柄もG35としてリニューアルされた。常備券などと異なり社名変更前の図柄は廃棄されておらず,しばらくはG33以前の図柄も購入できた。
鉄道の日記念は昨年度のB06「北総7000シリーズ」と対になるB12「北総9000シリーズ」が発売された。さらに,当年度はB12に加えて,懐かしい社内蔵写真を使ったB13,B14が秋の鉄道イベントに合わせて発売された。10月下旬発売のB13は新京成くぬぎ山基地公開にあわせ「北総7000形&新京成500形」,11月中旬発売のB14は都営フェスタ馬込合わせで「北総7150形&都営5200形」という具合に出店先の事業者を想定した図柄とされていた。年度末にはB16「ほくそう春まつり」が発売されたが,番号の前後するB15「印西牧の原駅開業10周年」は翌年度4月からの発売だった。
このほか,恒例の「七福神シリーズ」は再び柴又七福神に戻ってG37が正月から発売された。
2005年度
この年以降,新規の「シリーズもの」はなくなった。昨年度に制作されたオリジナル汎用柄のG34や共通汎用柄がロットを跨いで重版されるようになったほか,1ロットあたりの制作枚数も増加した。年度末に発売されたG45は1ロット100,000枚という従来の倍以上の枚数が制作されている。
鉄道イベント向けに発売してきた社内蔵写真シリーズは,5月の京急久里浜工場公開あわせでB17「北総7150形&京急600形」が発売されて終了した。記念券はこまめに発売しており,7月にはB18「印旛日本医大駅開業5周年」,10月の鉄道の日記念ではB19「公団2000形→公団9000形」が発売された。B19は1994年夏の定期検査にあわせて公団2000形の改形式が行われた際のもので,6月に出場した9008編成(旧2001編成)と8月に入場を控える2002編成(→9018編成)が西白井車庫で並んだ際の図柄である。なお,この写真は2016年度末に9000形が全廃となる際にもポスター用の写真で使われた。
年度末に登場した7500形は北総鉄道にとって15年ぶりの新造車としてカードの図柄に採用され,2月にB20「7500形デビュー」で記念券を発売するだけに留まらず,3月にはG45でオリジナル汎用柄も発売されている(パスネット以外では硬券入場券も発売したほか,ポスター展開や試乗会,絵画展なども開催した)。
2006年度
新規の図柄はほとんど作成されていないが,パスネット協議会の共通汎用柄は加盟する他事業者の都合で毎年のように図柄を改めており,この時点で通算5代目となるG41が重版されてG46として発売されていた。
鉄道の日記念はB22「7500形」で,これは京成グループ標準車体を採用した各車種を図柄としたカードをグループ3社(京成・新京成・北総)がセット発売したものである。年度末には7000形が引退し,オリジナル汎用柄としてG53「さよなら7000形」が発売された。
年度末にはパスネットに代わる交通系ICカードシステム「パスモ」が導入された。パスネットの発売自体は翌年度まで続くが,この時点で利用者はパスモに移行し始めており,パスネットの需要は収束に向かっていった。パスモ導入でパスネットはロットの捌けが悪くなっており,駅によっては最末期までG53が残った。
2007年度
長らく続いた「サントリーオープンシリーズ」の最終作G55「サントリーオープン2007」が発売され,これが駅向けには最後の新規図柄となる。そのサントリーオープンも2007年度の開催を最後に大会終了となった。
すでに発売終了が目前に迫っていたこともあり,この年に記念券は制作されなかった。鉄道の日記念はⅡ期線開業当初のダイヤ(ただしNo.7ダイヤの北総線区間のみ)が付属した乗車券セットだった。その一方で,鉄道の日記念として昨年度末に引退した7000形の記念写真集が発売され,G56「ありがとう7000形」が500円券で付録される。G56は駅発売されず,このロットをもって「ほくそうパッスルカード」の図柄制作は終了した。




































































